
電子インボイスとデジタルインボイスは非常に似ていますが、それぞれ異なるものを指す言葉です。
しかし、2つの言葉が混同される場面も多く存在します。
電子インボイスやデジタルインボイスという言葉を見聞きした場合、どのような意味で使われているのか確認が必要です。
また、用語を正しく使うためにも、それぞれの意味や両者の違いを押さえる必要もあります。
今回は電子インボイスとデジタルインボイスの違いについて詳しく解説します。
適格請求書(インボイス)については以下の記事をご覧ください
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電子インボイスとデジタルインボイスは定義が異なる

電子インボイスとデジタルインボイスは一見すると非常に似ていますが、それぞれ異なるものを指す言葉です。
デジタルインボイスを直訳すると「電子請求書」となります。
しかし日本国内でデジタルインボイスという言葉を使う場合は、電子請求書の中でも特定の要件を満たす請求書を指します。
ただし、2つの言葉が混同される場面が存在するのも事実です。
そのため、電子インボイスやデジタルインボイスと見聞きした場合、その言葉がどのような意味で使われているのか確認するべきでしょう。
この章では電子インボイスとデジタルインボイスそれぞれの意味を詳しく解説します。
電子インボイスとは
電子インボイスとはインボイスを電子化したもの全般を意味する用語です。
使用しているシステムやインボイスの仕様は問わず、電子化されたインボイスはすべて電子インボイスに該当します。
もともとPDF等で作成・送付された請求書だけでなく、紙の請求書をスキャンし電子データに変換したものも電子インボイスに含まれます。
デジタルインボイスとは
デジタルインボイスとは、標準化・構造化された電子データのインボイスです。
デジタル庁の資料では以下のような説明がされています。
- 「請求情報(請求に係る情報)を、売り手のシステムから、買い手のシステムに対し、人を介することなく、直接データ連携し、自動処理される仕組み」
出典:デジタル庁「デジタルインボイス(Peppol e-invoice)について」
前述した電子インボイスは電子化されたインボイス全般を指す用語で、システムや仕様は問わないと紹介しました。
一方でデジタルインボイスは、Peppol(ペポル)と呼ばれるインボイスの国際規格をベースとした標準仕様のインボイスのみを指します。
デジタルインボイスは電子インボイスの一種であり、より狭い範囲を指す言葉といえるでしょう。
なお、デジタル庁の資料ではデジタルインボイスについて、ベースとしている規格名を用いた「Peppol e-invoice」と表現しています。
Peppolとは
Peppol(ペポル)とは、インボイスをはじめとした電子文書をネットワーク上でやり取りするための国際規格です。
ベルギーの国際的非営利組織である「Open Peppol」が管理等を行なっており、30ヵ国以上での利用が進んでいます。
日本のデジタルインボイスの標準仕様である「JP PINT」はPeppolをベースとしたものです。
とはいえ、デジタルインボイスの利用にあたってユーザーがPeppolの技術的な要素を理解する必要はないとされています。
「デジタルインボイスを使うためにはPeppolに対応したシステムやツールを選べば良い」という認識で問題ないでしょう。
電子インボイスとデジタルインボイスそれぞれのメリット・デメリット

前章で、電子インボイスとデジタルインボイスは異なる定義をもつと紹介しました。
電子インボイスとデジタルインボイスを比較するとメリット・デメリットにも違いがあります。
この章では電子インボイスとデジタルインボイスそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
電子インボイスのメリット
電子インボイス、すなわち電子化された請求書全体に共通するメリットは2つです。
ペーパーレス化につながる
電子インボイスの導入による大きなメリットとして、ペーパーレス化につながる点が挙げられます。
ペーパーレス化により、以下のような効果を得られます。
- ・請求書を保管するためのスペースが不要になる
- ・消耗品費、印刷費、請求書の郵送費などのコストを削減できる
- ・社内関係者間での請求書の共有が容易になる
ヒューマンエラーのリスクを低減できる
電子インボイスは紙のインボイスに比べてヒューマンエラーのリスクを低減できる
可能性が高いです。
理由として以下の3つが挙げられます。
- ・請求書業務の工程数自体が少なくなり、ミスが発生する余地が減る
- ・ツールやシステムの活用により自動化できる部分が多い
- ・紙の請求書よりもミスの発見や修正がしやすいため、ミスが起きても迅速な対応が可能
電子インボイスのデメリット
続いて、電子インボイスのデメリットを3つ紹介します。
業務フローの見直しが必要
紙のインボイスから電子インボイスに切り替える場合、業務フローの見直しが必要です。
新たな業務フローの策定、周知、移行などが必要なため、電子インボイスが定着するまではかえって業務負担が重くなる恐れがあります。
取引先によっては対応できない
インボイスを電子化するためには取引先の協力も必要です。
取引先が紙のインボイスを希望する等の理由により、電子インボイスへの切り替えができない可能性があります。
紙のインボイスを希望する取引先がいる場合は、電子インボイスと紙のインボイスが混在した状態になってしまいます。
経理処理の完全な自動化はできない
電子インボイスは電子化されたインボイス全般であり、規格は統一されていません。
そのため、経理処理を自動化できるか否かが請求書によって異なるという事態が起こります。
また、請求書の仕様がバラバラである以上、1枚1枚目視で確認し処理する手間も生じます。
経理処理の完全な自動化ができない点は電子インボイスならではのデメリットといえるでしょう。
デジタルインボイスのメリット
前述した電子インボイスのメリット以下2つは、デジタルインボイスにも共通するメリットです。
- ・ペーパーレス化につながる
- ・ヒューマンエラーのリスクの低減ができる
以下では、デジタルインボイスならではのメリットを3つ紹介します。
請求書業務の自動化が可能
デジタルインボイスでは売り手側・買い手側ともに請求書業務の自動化が可能です。
会計システムへの仕訳登録はもちろん、請求書発行および受領、入金消込の自動化も実現できます。
システムの差異を問わない
デジタルインボイスによる請求書業務の自動化はシステムの差異を問いません。
インボイスの標準化・構造化が行われているため、デジタルインボイス対応のシステムであれば自動処理が可能です。
海外企業とのスムーズな取引にもつながる
デジタルインボイスの標準仕様である「JP PINT」は、国際規格であるPeppolをベースとしたものです。
そのため海外企業、特にPeppolを採用している企業とのスムーズな取引も期待できます。
デジタルインボイスのデメリット
通常の電子インボイスと同じく、デジタルインボイスにも以下のデメリットがあります。
- ・業務フローの見直しが必要
- ・取引先によっては対応していない可能性がある
デジタルインボイスならではのデメリットは、デジタルインボイスに対応したソフトの導入が必要な点です。
電子インボイスと違い、請求書の電子化やWebでの管理ができれば良いとは限りません。
ソフト選びの際に、デジタルインボイスに対応しているかの確認が必須となります。
導入コストはソフトやプランによって異なるため一概にはいえませんが、通常の電子インボイスよりも高額になる可能性があります。
なお、BIZARQがクラウド会計導入で推奨しているfreee会計とマネーフォワードクラウド会計はデジタルインボイスに対応しています。
まとめ
日本において、電子インボイスとデジタルインボイスは異なる意味をもつ言葉として使われています。
電子インボイスは電子化されたインボイス全般を指す言葉です。
一方でデジタルインボイスはPeppolと呼ばれる国際規格をベースとした標準仕様のインボイスのみを指します。
電子インボイスの方が広い範囲を指しており、デジタルインボイスは電子インボイスの一種といえるでしょう。
電子インボイスとデジタルインボイスはメリット・デメリットにも違いがあります。
インボイスの電子化を行う際は、電子インボイスとデジタルインボイスの違いを押さえた上で、導入するソフトやツールを検討しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士