2025年施行!育児・介護休業法改正の変更点とポイントについて解説!

2025.03.18

育児・介護休業法とは、仕事と家庭の両立を目的に、育児や介護を行う人を支援する法律です。

2025年(令和7年)に同法の改正が行われます。

変更点は全部で11点あり、4月1日から9つ、10月1日から2つの変更が施行される予定です。

 

今回は育児・介護休業法改正の変更点と、企業が行うべき対応のポイントについて解説します。

 

社会保険の改正については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

育児・介護休業法改正による変更点

育児・介護休業法とは、仕事と家庭の両立を目的に、育児や介護を行う人を支援する法律です。

正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。

2025年(令和7年)4月より段階的な改正が行われます。

今回の改正による変更点は全部で11点です。それぞれ詳しく解説します。

子の看護休暇の範囲拡大

今回の改正により、子の看護休暇の対象となる子供の範囲が従来のルールに比べて広くなります

  • 改正前:未就学児
  • 改正後:小学校3年生修了まで
  •  

また、病気・ケガや予防接種・健康診断のほか、以下の理由による休暇も可能となる予定です。

  • ・感染症を原因とした学級閉鎖等
  • ・入園式、卒園式、入学式等の行事

 

病気等以外も休暇を取得できる理由に含まれるようになったため、名称が「子の介護休暇」になります。

残業免除の範囲拡大

従来のルールでは、残業免除の申請をできるのは3歳未満の子供を養育する労働者のみに限られていました。

今回の改正により、対象者が未就学児である子供を育てる労働者に変更となります。

短時間勤務制度の代替措置を追加

これまでのルールでは、3歳未満の子供を育てる場合に取得できる短時間勤務制度の代替措置は以下の2つでした。

  • ・育児休業に関する制度に準ずるもの
  • ・始業時刻の変更等

 

今回の改正により、新たにテレワークが加わります

従来のルールに比べてさらに柔軟な働き方が可能になるでしょう。

育児のためのテレワーク導入の努力義務化

前項に関連する内容として、育児のためのテレワーク導入の努力義務化が挙げられます。

事業主には、3歳未満の子供を育てる社員がテレワークを実施できるような措置を講ずることが求められます。

育児休業取得状況の公表義務の対象企業の拡大

従来のルールにおいては、育児休業の取得状況を公表する義務があるのは従業員1,000人超の企業のみでした。

今回の改正により、当該義務を課せられるのが従業員数300人超の企業に変更されます。

企業の公式ホームページ等、広く一般に閲覧できるやり方での公開が必要です。

介護休暇の取得要件緩和

従来のルールでは、以下のいずれかに該当する場合は介護休暇の対象外とすることが可能でした。

  • 1.週の所定労働日数が2日以下である
  • 2.継続雇用期間が6ヵ月未満である

 

今回の改正により、2の要件が撤廃されます。

実質的には取得要件の緩和となるため、より多くの社員が介護休暇を取得できるようになるでしょう。

雇用環境整備の義務化

介護を理由とした離職を防ぐため、以下のうちいずれかの措置を講ずることが義務付けられます。

  • ・介護休業や介護両立支援制度等(以下「介護休業等」)に関連する研修を行う
  • ・介護休業等に関する相談窓口の設置等、必要に応じてスムーズに相談できるような体制を整える
  • ・自社の介護休業等の利用事例の収集および提供
  • ・制度の利用促進に関する方針の周知

 

仕事と介護を両立できるよう、制度を利用しやすい環境を整えることが求められます。

個別の周知・意向確認等の義務化

事業主は介護の申し出をした従業員に対し、個別で以下の周知が必要です。

  • ・介護休業等の制度に関する内容
  • ・制度を利用する場合の申し出先
  • ・介護休業給付金に関する内容

 

また、制度を利用するか意向を確認する必要もあります。

確認手段は原則として面談または書面交付ですが、対象者が希望した場合はFAXまたは電子メールによる連絡も可能です。

 

また、制度への理解および関心を深めるため、介護に直面する前の段階であっても情報提供が求められます。

情報提供を行うべき期間は以下のいずれかです。

  • ・対象者が40歳になる日の属する事業年度
  • ・対象者が40歳になる日の翌日から1年間

 

提供するべき内容および周知の手段は、介護の申し出をした従業員に対するものと同じです。

介護のためのテレワーク導入の努力義務化

育児に関する内容と同じく、家族の介護をする社員が在宅勤務等を選択できるような措置の実施も努力義務化されます。

現時点ではあくまで努力義務であり罰則はありませんが、家庭との両立を可能にするため、離職を防ぐためにも積極的に対応しましょう。

 

これまでに紹介した9点が、2025年4月1日から施行される変更です。

この後に紹介する2点は同年の10月1日から施行されます。いずれも育児に関する内容です。

柔軟な働き方を実現するための措置等

法改正後、事業主は3歳以上の未就学児を育てる従業員に対して、以下のうち2つ以上の措置を講ずる必要があります。

  • ・始業時刻等の変更
  • ・月10日以上の在宅勤務等の実施
  • ・保育施設の設置や運営
  • ・年10日以上の休暇付与
  • ・短時間勤務制度

 

従業員は事業主が講ずる措置のうち、いずれか1つの選択が可能です。

 

また、以下の期間中に、前述の措置について周知および制度を利用するかの確認が必要です。

  • 従業員の子供が1歳11ヵ月になる日の翌々日~2歳11ヵ月に達する日の翌日までの1年間

 

必須ではありませんが、上記以外の期間にも定期的な面談を行い、社員が選んだ制度が適切であるか適時確認するのが理想です。

仕事と育児の両立に関する個別の移行聴取および配慮

事業主は以下に該当するケースにおいて、従業員の意向を確認する必要があります。

  • ・従業員から本人または配偶者の妊娠、出産の申し出を受けたとき
  • ・従業員の子供が1歳11ヵ月になる日の翌々日~2歳11ヵ月に達する日までのうちで適した時期

 

確認するべき内容は以下の4点です。

  • ・始業時間および終業時間
  • ・業務を行う場所(出勤、在宅勤務、その他テレワーク等)
  • ・休暇制度等を利用する期間
  • ・仕事と家庭を両立するために必要な要素(業務量や労働条件の見直し等)

 

また、事業主には以下のような配慮が求められます。

  • ・就業時間や勤務場所に関する配置の変更
  • ・状況に応じて利用期間等の見直し
  • ・状況にあわせた業務量の調整
  • ・仕事と家庭を両立するための労働条件の見直し

育児・介護休業法改正に向けた対応のポイント

法改正により、就業規則の変更をはじめさまざまな対応が求められます。

事業主や企業における人事労務の担当者が押さえるべきポイントとして以下の5つが挙げられます。

  •  
  • 変更点について内容の確認を徹底する
  • まずは変更内容を確認し、義務化・努力義務化の対象となる事項を把握しましょう。
  • どちらも対応するのが理想ではあるものの、より優先するべきなのは新たに義務化される事項といえます。
  •  
  • 社内規則やルールの整備に向けて早めに対応を進める
  • 法改正により、社内規則やルールの変更・整備も必要です。
  • 作業には時間と手間がかかるため、早めに対応を進めるのが良いでしょう。
  •  
  • テレワーク導入のために業務フローの見直しやツールの導入等を行う
  • 前章で紹介したように、仕事の家庭を両立するためのテレワーク導入が求められます。
  • したがって、業務フローの見直しや新たなツールの活用が必要になる可能性があります。これらの対応も早めに行うのが理想です。
  •  
  • 従業員への周知を徹底する
  • 社内規則の変更や環境の整備をしても、社員が認知していなければ利用につながりません。
  • 社員向けホームページ、メール、ポスター等を使った社内への周知の徹底が必要です。
  •  
  • 対象でない従業員に負荷がかかりすぎないよう調整する
  • 本制度の対象者の休暇取得により、他の社員の業務量が増大する恐れがあります。
  • 他の社員に負荷がかかりすぎないよう調整が求められます。

 

なお、必要な対策・最適な対策はケースによって異なるため一概にはいえません。

自社に合う対策を確実かつ効率的に行うためには、専門家である社労士のサポートを受けるのが安心です。

まとめ

育児・介護休業法の段階的な改正により、従来に比べて家庭と仕事の両立がしやすくなるでしょう。

今回の改正による変更点は全部で11点あり、いずれも事業主による何らかの対応が必要となります。

中には時間や手間がかかる対応も含まれるため、制度について理解を深め、やるべきことを確認し早めに進めるのが理想です。

 

育児・介護休業法に限らず、法制度の改正・変更について正しく把握するには専門知識が必要なケースもあります。

すべてを自社内で対応する場合、時間がかかりすぎてしまう可能性や、ミスが発生するリスクが高いです。

制度について理解することは大切ですが、無理に自社で対応しようとせず、社会保険労務士をはじめとした専門家への相談も検討しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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