会社設立時の調査報告書とは?必要シーンと作成方法について解説!

2025.03.28

調査報告書とは、出資に用いる現物の価額についての調査結果等を記載した書類です。

会社設立時、資本金の払込を現金ではなく現物出資で行う際には調査報告書を提出する必要があります。

 

調査報告書の作成方法は、出資する現物について検査役による調査が必要か否かで大きく異なります。

書類の不備や漏れがあると登記申請が受理されず、会社設立が想定よりも遅くなってしまう恐れがあるため注意しましょう。

 

今回は現物出資で必要となる調査報告書について詳しく解説します。

 

会社設立時に法務局へ提出する書類全般については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

調査報告書とは

調査報告書とは、出資に用いる現物についての調査結果等をまとめた書類です。

法人登記申請書とあわせて法務局に提出する必要があります。

調査報告書の必要シーン

調査報告書が必要になるシーンとは、出資を金銭の払込ではなく現物によって行う場合です。

金銭の払込による出資を行うケースにおいては、調査報告書を提出する必要はありません。

会社設立時の資本金払込は金銭によって行うのが一般的なため、調査報告書が必要になるケースは少数といえます。

 

なお、かつては株式会社を設立する際には必ず調査報告書を提出する必要がありました。

現在用いられている新会社法では前述の通り、調査報告書は現物出資を行う際に限り必要と定められています。

調査報告書の記載事項

法務局による「添付書面の記載例」で調査報告書の例が公開されています。

こちらをもとに記載するべき事項について紹介します。

 

  • 現物出資を行う者
  • 「現物出資をする者は発起人○○であり、……」と、対象となる発起人の氏名の記載が必要です。
  •  
  • 現物出資に用いた財産の詳細および価額
  • 財産価額だけでなく、より詳細な情報まで記載が必要です。
  • たとえば不動産であれば所在地、有価証券の場合は種類や発行元まで求められます。
  •  
  • 各財産に割り当てる設立時発行株式
  • 各財産の詳細や価額の下に、当該財産に対して割り当てる株式の種類や数の明記が必要です。
  •  
  • 現物出資財産の価額設定が適切であるか
  • 定款に記載した各財産の価額が適切である旨を、根拠を挙げた上で述べる必要があります。
  • 具体的な文例は法務局による見本をご確認ください。
  •  
  • 財産の給付が完了しているか
  • 財産の給付についての詳細は、登記申請時に調査報告書とあわせて提出する「財産引継書」にまとめるのが一般的です。
  • 調査報告書には「財産の給付があったことは,別紙財産引継書により認める。」のような書き方をします。
  •  
  • 払込が完了しているか
  • 引受株式の払い込みが完了しているかの調査結果も記載が必要です。
  •  
  • 法令または定款に反していないか
  • 株式会社設立の手続きが法令または定款に違反していない旨の明記も必要です。

 

調査報告書の最下部に、日付、会社名、設立時取締役を記載します。

【参考】現物出資のメリット・デメリット

現物出資の主なメリットは以下の3つです。

  • ・金銭が少なくても多額の資本金を計上できる可能性がある
  • ・金銭が少なくても発起人になり、会社設立後の保有株式数も多くできる
  • ・償却資産を用いた場合は減価償却費を計上できるため節税につながる

 

金銭だけでは資本金が少額になってしまうケースや、ほかの発起人より引き受け株式数が少なくなるケースでは、現物出資は効果的な手段となります。

 

一方で、以下のようなデメリットがあります。

  • ・金銭で資本金を払い込む場合に比べて工程が多く、手続きに時間がかかる
  • ・資本金に対する現金比率が低くなり、キャッシュ不足に陥る恐れが大きくなる
  • ・出資者に対して所得税が課税されるため、個人の税負担が重くなる恐れがある

 

メリット・デメリットについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。

 

調査報告書の作成方法

調査報告書の作成方法は検査役による調査が必要か否かで大きく異なります。

 

検査役とは、評価内容が適切かを確認する役割をもつ者です。

現物出資を行う際には原則として、裁判所によって選任された検査役による調査を受ける必要があります。

 

ただし、一定の要件を満たす場合は検査役による調査を受ける必要がありません。

現物出資に関する手続きが簡略化され、調査報告書の作成に必要な工程も少なくなります。

 

検査役の調査が必要な場合と不要な場合、それぞれにおける調査報告書の作成方法について解説します。

検査役の調査が必要な場合

検査役の調査が必要になるのは、後述する免除要件を満たさない場合です。

現物出資の額が高額(500万円超)の場合は、原則として検査役による調査を受ける必要があります。

 

検査役の調査が必要な場合、現物出資の大まかな流れは以下の通りです。

 

  • 1.現物出資に用いる財産の時価評価を実施
  • 2.定款に財産の詳細について記載
  • 3.裁判所に検査役選任の申し立てを実施
  • 4.検査役による調査を受ける
  • 調査の結果、設定された価額が不相当と判断されてしまった際には評価額の変更が必要です
  • 5.調査報告書・財産引継書を作成
  • ※調査報告書に検査役の署名押印が必要です
  • 6.現物出資に用いた財産の名義を個人から法人に変更

 

なお、財産引継書とは現物出資によって個人から法人へ引継ぎが行われる財産について詳細を記載する書類です。

財産の種類や詳細、定款への記載額などを記載します。

複数人が現物出資を行う場合には、各人がそれぞれ作成する必要があります。

いずれも法務局への登記申請時に提出が必要です。

検査役の調査が免除される場合

検査役の調査が免除されるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  • ・現物出資の額が500万円以下である
  • ・上場会社の株式や社債など市場価格がある有価証券を、市場価格を超えない額で出資する
  • ・弁護士、公認会計士、税理士等により、定款に記載された価額が相当である旨の証明を受けている
  •  (不動産は弁護士、公認会計士、税理士等の証明に加え、不動産鑑定士による評価も必要)

 

出資額が500万円以下であれば、用いる財産の種類を問わず検査役の調査を省略できます。

ただし、調査自体が免除されるわけではありません。

検査役による調査が免除されるケースでは、代わりに設立時取締役が調査を行う必要があります。

 

検査役による調査が免除される場合の大まかな流れは以下の通りです。

  • 1.現物出資に用いる財産の時価評価を実施
  • 2.定款に財産の詳細について記載
  • 3.設立時取締役が調査を実施
  • 4.3の結果問題がなければ必要書類を作成
  • 5.現物出資に用いた財産の名義を個人から法人に変更

 

検査役に代わって設立時取締役が調査を行う点以外、大きな違いはありません。

まとめ

現物出資の調査報告書とは、現物出資に用いる財産の価額等に関する調査結果等を記載した書類です。

会社設立時の出資を金銭の払込ではなく現物出資によって行う場合は、法務局への登記申請時に調査報告書も提出する必要があります。

現物出資を行わない場合は調査報告書の作成は不要です。

 

調査報告書の作成方法は、検査役による調査が必要か否かで大きく異なります。

現物出資による出資額が高額であり、かつ、用いる現物の市場価格を把握するのが困難な場合等は検査役による調査が必要です。

現物出資の額が500万円以下であれば、財産の種類に関係なく検査役の調査は必要ありません。

 

検査役による調査の有無に関係なく、現物出資を行う際は調査報告書の作成が必須です。

作成手順や記載事項を押さえ、不備や漏れのない書類作成を行ないましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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