
株式会社の設立時に決めるべき事項の1つとして、1株あたりの金額が挙げられます。
金額の決め方に特別なルールはありません。
会社にとって重要な要素のため、ある程度の根拠をもって自社に適した金額にするのが理想です。
今回は会社設立時に1株あたりの金額を決める際の考え方の例や、金額を決める際の注意点について詳しく解説します。
発行可能株式総数については以下の記事をご覧ください。
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【会社設立時】1株あたりの金額の決め方に規定はない

会社設立時には資本金の額と設立時発行株式の数を決める必要があります。
資本金を設立時発行株式数で割ると自動的に1株の金額が決まります。
先に1株あたりの金額を決め、資本金を1株の金額で割って設立時発行株式数を決めることも可能です。
1株あたりの金額および設立時発行株式の数の決め方に特別なルールはありません。
下限・上限ともに定められていないため、好きな株式数および金額に設定できます。
ただし、発起人が複数の場合には発起人全員で決定する必要があります。
会社設立時の1株あたりの金額でよくみられる考え方

会社設立時、1株あたりの金額は利便性や分かりやすさを考慮して決める会社が多いです。
そのため特別なルールがないとはいえ、考え方にはある程度のパターンが存在します。
この章ではよくみられる考え方を3つ紹介します。
わかりやすい金額にする
1株あたりの金額をキリが良くわかりやすい金額にする会社は多いです。
具体的な例として、1株1,000円や1万円などが挙げられます。
わかりやすい金額にするメリットの1つが、発行済株式数や各株主が保有する株式数をすぐに把握できることです。
たとえば1株1万円でAさんの出資額が300万円であれば、Aさんの保有株式数は300株とすぐに計算できます。
仮に出資額が183万円のように少し半端な金額でも、1株1万円のため183株と簡単に計算可能です。
必要な計算が簡単なものであれば、その分手間や時間も抑えられるでしょう。
したがって1株あたりの金額をわかりやすい金額にするケースが多くみられます。
1株あたりの金額を低めに設定する
資金調達のしやすさを考慮し、1株あたりの金額を低めに設定するケースもみられます。
1株あたりの金額が低ければ少額の出資がしやすくなり、不特定多数からの資金調達が見込めるためです。
なお、1株あたりの金額を低めに設定する会社は、将来的に他の投資家からの資金調達を想定している場合が多いです。
節税目的でペーパーカンパニーを設立する場合やIPO(上場)を考えていない場合は、他の投資家からの出資はあまり必要ないでしょう。
そのような会社では金額を低めにする方法は選ばず、前述のようなわかりやすさを優先する傾向にあります。
旧商法の名残から1株5万円とするケースも多い
旧商法では1株あたり5万円以上にする必要がありました。
2001年のルール改正により、1株あたりの金額に関するルールは撤廃されています。
しかし旧商法の名残で現在も1株5万円に設定する会社が多くみられます。
会社設立時に1株あたりの金額を決める際の注意点

続いて、会社設立時に1株あたりの金額を決める際の注意点を3つ紹介します。
1株あたりの金額を低くしすぎるとデメリットも生じる
前章で、1株あたりの金額の考え方として「金額を低めに設定する」を挙げました。
1株あたりの金額が低ければ少額の出資がしやすくなり、不特定多数からの資金調達を見込めるためです。
しかし、出資する人が増えるほど株主として経営に関わる人が増えるため、配慮するべき人も多くなってしまいます。
人数が増えれば、その分株主の意見はまとまりにくくなるでしょう。
結果として、株主の意向とは異なる決定が必要になる場面も起こり得ます。
株主の意向を無視してしまうと反感を買い、株主から不信感をもたれてしまう恐れや、トラブルになる恐れがあります。
1株の金額が安価であれば資金調達がしやすいですが、経営の自由度が下がる恐れがあるというデメリットに注意が必要です。
高額に設定すると後の資金調達に影響を及ぼす恐れがある
前項で、1株あたりの金額を低くしすぎるとデメリットが生じると紹介しました。
しかし高額に設定することにもデメリットが存在します。
金額を高額に設定してしまうと、投資家からの出資を募れず資金調達がしにくくなる恐れがあります。
低額の場合とは逆に1株買うだけでも高額の支出が必要となり、出資のハードルが上がるためです。
なお、1株あたりの金額は後から変更できるため、出資を受けるために1株あたりの金額を下げるのも1つの手段です。
しかし、後から1株あたりの金額を下げてしまうと、最初に高額で出資した既存株主が不利益を被ることになってしまいます。
たとえば最初にMさんが1株あたり10万円で300万円の出資をした場合、Mさんの保有株式数は30株です。
その後1株1万円で新たに株式を発行し、Nさんが300万円出資すると、Nさんの保有株式数は300株になります。
MさんとNさんの出資額は同じであるにもかかわらず、Nさんの方が保有株式数が多く、権利が強くなってしまうのです。
株式分割を行えば出資額を変えずに保有株式数を増やすことが可能です。
しかし株式分割は手間がかかるため容易な手段とはいえません。
1株あたりの金額は低くても高くても何らかのメリット・デメリットがあるといえるでしょう。
中途半端な金額にすると株式数がわかりにくい
「わかりやすい金額にする」で紹介したように、1株あたりの金額がキリの良い数字であれば保有株式数等の計算が容易です。
反対に中途半端でキリの悪い数字にすると、発行済み株式数や各株主が保有する株式数がわかりにくくなってしまいます。
特に大きな問題はありませんが、実務の手間を抑えるためにもわかりやすい金額にするのが一般的です。
会社設立時に株式について決めるべきその他の事項

会社設立時には、1株あたりの金額以外にも株式に関するさまざまな事項を決める必要があります。
発行可能株式総数
株主総会の決議なく発行できる株式総数の上限です。
登記事項の1つであり、変更するためには変更登記の手続きを行う必要があります。
変更登記は手間やコストがかかるため、変更の必要性が生じないよう多めに設定するのが一般的です。
発行可能株式総数の上限は、譲渡制限の有無によって以下のように異なります。
- 譲渡制限がある場合
- 上限の定めはありません。好きな数に設定できます。
- 譲渡制限がない場合
- 発行済株式総数の4倍が上限となります。
発行可能株式総数についての詳細は以下の記事をご覧ください。
持株比率
持株比率とは株式会社における株主の出資割合です。出資比率とも呼ばれます。
株式会社における権利は持株比率によって大きく変わるため、慎重に決める必要があります。
持株比率による権利の違いについては以下の記事をご覧ください。
譲渡制限の有無
株式の譲渡制限とは、株主が保有している株式を自由に譲渡することができない決まりです。
株式の譲渡制限をつけている会社を非公開会社、譲渡制限のない会社を公開会社と呼びます。
会社設立時は、特に理由がない限りは譲渡制限をつけるのが一般的です。
主な理由として以下の3つが挙げられます。
- ・会社に不都合な人へ株式がわたるのを防げる
- ・取締役会の設置義務がない
・取締役、会計参与、監査役の任期を10年まで延長できる
なお株式の譲渡制限をつけるには、定款に「株式を譲渡によって取得するには株主総会の承認を受ける必要がある」旨を定める必要があります。
まとめ
会社設立時は1株あたりの金額を決める必要があります。
金額の決め方にルールはありませんが、キリが良くわかりやすい金額や、出資しやすいよう少額に設定する会社が多くみられます。
金額が高すぎる・低すぎる、どちらも不都合が生じる恐れがあるため、自社に合う適切な金額に設定するのが理想です。
会社設立時には他にも、持株比率や譲渡制限の有無なども決める必要があります。
後にトラブルが起こるリスクを下げるためにも、さまざまな要素を考慮した上で慎重に検討しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士