
企業生存率とは、会社設立から廃業や倒産に至らず経営を存続できている企業の割合です。
企業生存率は業種や事業規模によって異なるため一概にはいえませんが、規模が大きい企業より中小企業の方が低いといわれています。
実際、会社設立から10年後も残っているベンチャー企業は1割にも届かないというデータも存在します。
会社設立の10年後も会社を存続させるためには、企業生存に重点を置き、中長期的な戦略を立てることが大切です。
今回は中小企業の企業生存率や、10年後も会社を存続させるための戦略について解説します。
生存率を長くするために大切なのは、倒産に至る原因や要素を避けることです。
中でも黒字倒産は帳簿の数字を追うだけでは気付くのに遅れやすいため、原因や兆候について知っておく必要があります。
黒字倒産については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
企業生存率とは

企業生存率とは、会社設立から廃業や倒産に至らず経営を存続できている企業の割合です。
日本の企業生存率は欧米諸国に比べて高めといわれています。
しかしベンチャー企業の生存率は低く、創業から10年で多くの会社が倒産しているというデータも存在します。
「設立から10年経っても会社が続いているか」は、会社経営や事業活動の成否を考える上で1つの目安となるでしょう。
中小企業の企業生存率
中小企業白書の2017年版によると、日本における起業から5年後の企業生存率は81.7%です。
5年後の企業生存率について欧米諸国と比較すると以下のようになります。
- ・日本:81.7%
- ・アメリカ:48.9%
- ・フランス:44.5%
- ・イギリス:42.3%
- ・ドイツ:40.2%
出典:中小企業庁「2017年版中小企業白書 第2部 中小企業のライフサイクル」
日本の企業生存率は国際的にみると高めといえるでしょう。
しかし一方で、日経ビジネスではベンチャー企業の生存率として以下のデータが公表されています。
- ・創業5年後:15.0%
- ・創業10年後:6.3%
- ・創業20年後:0.3%
出典:日経ビジネス 「創業20年後の生存率0.3%」を乗り越えるには
上記のデータから、会社設立後10年以内に倒産・廃業するベンチャー企業は9割を超えると判断できます。
日本の企業生存率は高い一方で、ベンチャー企業は早期に廃業・倒産となるケースが多いといえるでしょう。
会社設立後10年以内の廃業・倒産が多い理由
会社設立後10年以内の廃業・倒産が多く、企業生存率を下げる要因として考えられるものを6つ紹介します。
業績不振
廃業・倒産に陥る直接的な原因として多いものが業績不振です。
業績不振となってしまう原因として以下の例が挙げられます。
- ・他社との差別化ができず埋もれてしまう
- ・ターゲット層にあわない製品やサービスの提供、マーケティングを実施してしまう
- ・為替変動や物価上昇など外的要因への適切な対処ができなかった
業績が好調な時期が続いても、何らかの変化に上手く対応できなかったため急激に業績悪化に陥るケースも多くみられます。
資金繰りの悪化
資金繰りの悪化も廃業や倒産に陥る原因の1つです。
キャッシュ不足に陥りやすいタイミングとして以下の例が挙げられます。
- ・開業直後でビジネスが軌道に乗っていない時期
- ・予期せぬ高額な支出が続いた時期
- ・売上が急激に伸びており、その分経費額も増大しているとき
- (売掛金が手元に入るまでの間に資金繰りが苦しくなる可能性が高いためです)
資金繰りの悪化は帳簿上で業績好調な時期にも起こり得ます。
帳簿上は黒字であるのに倒産に陥る「黒字倒産」については以下の記事をご覧ください。
人手不足
中小企業の廃業理由として特に多いものの1つが人手不足です。
人手不足のために手が回らなくなり、やがて組織力の低下や業績悪化に陥る会社が多くみられます。
近年は少子高齢化の影響で、業界・業種問わず人手不足で悩む企業が増加傾向です。
後継者不在
後継者がいないために会社を継続できず、代表者の引退に伴い廃業するパターンです。
前述した人手不足と同じく、少子高齢化によって後継者不在の問題に悩む企業は増加しています。
市場規模や経済情勢の変化
「業績不振」でも少し触れましたが、市場規模や経済情勢の変化など外的要因が原因で廃業・倒産に陥るケースもみられます。
外的要因による悪影響を最小限に抑え業績を回復させるためには、なるべく早いうちに的確な対応を行うのが理想です。
トラブルや不祥事による信用失墜
トラブルや不祥事による信用失墜を機に業績が急激に悪化し、そのまま廃業・倒産に至る会社もあります。
常にリスク管理を行うことを前提としつつ、万が一トラブルが起きた時は早急に対応するべきといえるでしょう。
会社設立の10年後も会社を存続させるための戦略

会社設立の10年後も会社を存続させるための戦略を5つ紹介します。
資金の余裕をもたせる
会社経営や事業活動に欠かせない要素の1つが十分な資金です。
資金繰りがギリギリの状態を続けるのではなく、なるべく資金に余裕をもたせるのが理想といえます。
とはいえ、経常的な支出はともかく、突発的・臨時的な支出まで売上収入等だけでまかなうのは困難です。
自社が生み出す収益ですべて対応しようとせず、必要に応じて融資や補助金、助成金の申し込みも積極的に行いましょう。
コストを削減する
会社を長く続けるためには、収入を増やすことだけでなくコスト削減も意識する必要があります。
たとえ高額の収益が出ていても、無駄なコストが多ければ資金繰りが苦しくなる可能性が高いです。
目に見える課題が起きたときに限らず、日頃から徹底したコスト管理を行い、定期的にコストの見直しを行うようにしましょう。
時代に合わせた改善・革新を続ける
設立から10年が経過しても続いている会社になるためには、時代に合わせた改善・革新を行う必要もあります。
一度上手くいった方法だからといって、その先もずっと良い結果を生み続けるとは限りません。
むしろ、時代に合わせた柔軟な対応は必要不可欠といえます。
トレンドの変化、競合による新商品・新サービスの提供、法改正など様々な要素によって、上手くいく方法は全く別のものに変わります。
経営理念や軸となる考え方のように、何年たっても変わらず維持し続けるべき要素が存在するのも事実です。
しかし同じやり方に固執し過ぎず、時代の変化に気を配り、必要に応じて改善や革新をしましょう。
早いうちから後継者の確保や育成をする
自身の引退後も会社を存続させたいと考えるのであれば、早いうちから後継者の確保や育成をすることをおすすめします。
前述のように昨今は少子高齢化により人手不足や後継者不在に悩む企業が増加傾向です。
後継者の確保はもちろん、育成や引継ぎにも多大な時間と労力がかかるため、数年単位で計画するべきといえます。
なお、親族や自社の関係者を後継者にする方法だけではなく、M&Aによる事業承継も視野に入れるのが良いでしょう。
小規模企業のM&AやM&Aによる起業については以下の記事をご覧ください。
リスクマネジメントを徹底する
会社を長く存続させるためにはリスクマネジメントも非常に重要です。
会社経営に伴うリスクとして以下の例が挙げられます。
- ・災害や事故による資産の損傷、損失
- ・経済情勢の変動
- ・消費者動向の変化
- ・税法、条例、その他法改正
- ・従業員や役員の病気、事故
一口にリスクといってもさまざまな種類がある上、起こり得るリスクを完璧に把握するのは不可能です。
しかし「完璧な対策はできないから無意味」なわけではありません。
事前の想定や備えがあれば被害を抑えられる可能性が上がります。
また、さまざまなリスクが存在すると日頃から意識しているだけでも、リスクへの対応に良い変化が生まれるでしょう。
まとめ
創業10年後の時点におけるベンチャー企業の生存率は10%に満たないというデータがあります。
業績不振や資金繰りの悪化など、さまざまな要因によって会社設立後10年以内に廃業・倒産に陥る会社が多いのは事実です。
設立から10年経った後も会社を存続させるためには、長期的な会社経営を見据えた戦略を立てるべきといえます。
今回、会社設立の10年後も会社を存続させるための戦略を5つ紹介しました。
どの戦略が適しているか、どのような対策を優先的に行うべきか、それらは会社の状況によって異なります。
自社に適した施策を行い、10年後も続く会社を作り上げましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士