
会社設立の数に制限はないため、1人の経営者が複数の会社を設立・運営するケースは珍しくありません。
規模の大きい企業の経営者に限らず、中小企業を複数経営する人も多くみられます。
実際別会社の設立にはさまざまなメリットがあるため、上手く活用すれば大きな成果を得られる可能性があります。
ただし、2社目の設立が必ずしも最善とは限りません。
タイミングを計るのはもちろん、注意点もしっかり押さえる必要があります。
今回は2社目の会社設立をするメリットや適切なタイミング、注意点について詳しく解説します。
グループ会社を複数設立する場合、大株主となるホールディングスを設立するケースも多いです。
ホールディングスについては以下の記事で詳しく解説しています。
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CONTENTS
別会社設立のメリット

はじめに、別会社を設立するメリットを4つ紹介します。
利益分散による節税ができる
別会社を設立するメリットの1つが、利益分散による節税ができる点です。
法人にかかる税金の中には、以下のように所得が一定額を超える部分により高い税率が適用されるものがあります。
※資本金1億円以下の法人に適用される税率です。
- 法人税
- ・所得800万円以下の部分:15.0%(適用除外事業者は19.0%)
・所得800万円超の部分:23.2% - 法人事業税
- ・所得400万円以下の部分:3.5%
- ・所得400万円超800万円以下の部分:5.3%
- ・所得800万円超の部分:7.0%
1社だけを運営しており所得1,000万円の場合と、1社目で600万円、2社目で400万円の所得が出ている場合、合計所得は同じです。
しかし1社目で600万円、2社目で400万円の所得が出ている場合の方が税額は安く済みます。
このように利益分散によって大きな節税効果が期待できます。
損金算入できる交際費の額が増える
資本金1億円以下の法人で損金算入できる交際費の額は以下のいずれかです。
- ・飲食および飲食に類する行為のために要する費用の50%相当額まで
- ・1事業年度につき800万円まで
実務上は「交際費として損金算入できるのは800万円まで」と扱われるのが一般的です。
2社目の会社を設立すれば、それぞれの会社で交際費800万円まで損金算入が可能です。
運営するのが1社だけの場合よりも損金算入できる交際費の額が増えるため、交際費が多い会社では節税につながるでしょう。
リスク回避の手段として活用できる
別会社の設立はリスク回避の手段としても効果的です。
複数の事業をすべて同じ会社で展開する場合、1つの事業の業績悪化がほかの事業にも影響を及ぼす恐れがあります。
また、例えば事業Aでトラブルが起きたために一時的にリソースを集中させる必要が生じ、事業Bのリソースが足りなくなる事態も有り得ます。
ある事業でトラブルや不祥事が起きた結果、他の事業も含め会社全体の信用を失ってしまうこともあるでしょう。
別会社を設立すれば、前述したリスクの回避や軽減が可能です。
会社同士でのリスク分散や支え合いにより、安定した会社経営ができるでしょう。
事業の区分化ができる
別会社の設立によって事業の区分化も可能です。
例えば企画、製造、販売のすべてを1社で行なっている場合、利益が出るのは最終的な販売の段階のみとなります。
一方、工程ごとに会社を分ければ各工程で利益を生み出せます。
また、事業の区分化は前述したリスク分散の面でも効果的です。
ほかにも財務諸表がわかりやすくなる点や、事業区分別に融資などの資金調達ができるといったメリットもあります。
2社目を設立するタイミングの例

続いて、2社目を設立するのに適したタイミングの例を3つ紹介します。
事業規模が大きくなり税負担が増えた
2社目の設立に適したタイミングの1つが、事業規模が大きくなり税負担が重くなったときです。
特に所得が800万円を超えて法人税の軽減税率が適用されなくなったタイミングで2社目を設立するケースが多くみられます。
所得800万円以下の部分に適用される法人税率は15%、800万円超の部分は23.2%と、税率の差は8%以上です。
2社目の設立によって利益を分散すれば、所得額によっては大きな節税効果を得られる可能性があります。
新規事業の展開を検討している
新規事業の展開を検討しているタイミングで2社目を設立するケースもあります。
主な理由として以下の3つが挙げられます。
- ・既存事業と新規事業を別会社にすることで、各事業のリソースや損益、責任の明確化が可能
- ・新規事業立ち上げの段階からリスク分散ができる
- ・すでに融資を利用している場合でも、新たに設立した会社で別途融資を受けられる可能性がある
すぐにメリットを得るためというよりは、将来得られるメリットを見据えて早めに2社目を設立する考え方です。
さらなる事業拡大を進めようとしている
新規事業の立ち上げではなく、既存事業の拡大を進めようとしているタイミングも2社目の設立に適しています。
前述のように、利益分散による節税対策や新設会社で別途融資を受ける等の対応ができる可能性があるためです。
2社目の会社設立で押さえるべき注意点

最後に、2社目の会社設立で押さえるべき注意点を4つ紹介します。
租税回避とみなされないよう注意する
複数の会社を設立するとその分税務調査のリスクが上がると考えられます。
別会社の設立が租税回避とみなされないよう注意しましょう。
複数の会社設立が租税回避とみなされてしまうケースとして以下の例が挙げられます。
- ・2社目の会社で収益が出ていない
- ・支払いサイトが整っていない、領収書や請求書などの書類がないなど取引が不自然
- ・別会社を設立した合理的な理由が見受けられない
2社目の会社設立が租税回避とみなされないためのポイントとして以下の3つが挙げられます。
- ・2社目を設立した理由について合理的に説明できるよう準備しておく
- ・2社目でも事業活動を行い収益を上げる
- ・なるべくグループ会社間や親子会社間での取引をしない
- 取引を行う場合は、グループ会社間・親子会社間でも支払い条件等をしっかり整理する
ケースに適した方法を選ぶ
2社目の設立方法として、自社のケースや希望条件に合うやり方を選びましょう。
別会社を設立する主な方法として以下の2つが挙げられます。
- ・既存会社の子会社として設立する
- ・社長出資の別会社にする
それぞれの特徴を解説します。
既存会社の子会社として設立する
現在運営している会社から既存事業を切り離して、新たに設立した会社に移す方法です。
2社目は既存会社の子会社となります。
親子会社間取引であれば利益相反に関する承認決議が不要なため、社長出資の別会社に比べて手間が少ない方法です。
子会社設立については以下の記事で詳しく解説しています。
社長出資の別会社にする
社長出資の別会社を設立するメリットとして、株主が法人(既存会社)の場合より会社売却時に発生する税金が安くなる点が挙げられます。
一方で、競業避止義務違反に該当する恐れや、利益相反取引を行う場合に承認決議が必要などのデメリットに注意が必要です。
赤字会社を放置しない
会社を2社以上運営していると、赤字状態の会社があるものの、すべての会社をトータルすれば黒字というケースも起こり得ます。
全体で見れば黒字のために赤字会社を放置することも多くみられますが、赤字会社を放置するのはおすすめできません。
赤字でもランニングコストや事務処理の手間などは発生し続けるため、必要以上に負担が重くなってしまいます。
複数の会社を運営するメリットよりもデメリットが大きい状態になってしまうのです。
赤字状態の解消見込みがないのであれば、会社をまとめてしまうのも1つの手段といえます。
疑問や不安があればすぐに専門家に相談する
親子会社や関係会社として運営する場合と、社長個人出資で複数の会社を運営する場合、それぞれ異なる注意点が存在します。
1社だけを運営する場合に比べて考えるべき事項も多く、専門知識が求められる場面もあります。
税務・会計リスクを避けながら複数の会社を運営し、すべての会社で成果を上げるのは容易ではありません。
複数会社の運営について疑問や不安があれば社内ですべて対応しようとせず、すぐに専門家に相談しましょう。
まとめ
2社目の会社設立によって、節税対策やリスク回避などさまざまなメリットを得られる可能性があります。
事業の区分化ができる点も大きなメリットといえるでしょう。
利益が増えて税負担が重くなったタイミングや、新規事業の開始・既存事業の拡大を検討している時期は2社目の設立に適しているといえます。
2社目を設立する場合、租税回避を目的とした会社設立・運営とみなされないよう注意しましょう。
自社の状況に適した設立方法を選ぶ、赤字会社を放置しない等にも注意が必要です。
2社目の会社設立・運営により、1社だけを運営する場合よりも注意するべき事項が多くなります。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士