経営安全率(安全余裕率)とは?計算方法と適正水準の考え方を解説

経営安全率(安全余裕率)は現在の売上が損益分岐点をどれほど上回っているかを示す指標です。

経営安全率が高いほど売上の変動に強く、赤字に強い経営体質といえます。

反対に経営安全率が低い場合は少しの売上減少により赤字転落となる恐れがあるため、早急に改善を図る必要があります。

経営安全率の改善方法として複数の種類がありますが、それぞれ適した場面やメリット・デメリットが異なるため、自社に合う方法選びが大切です。

今回は経営安全率について詳しく解説します。

 

経営安全率と似た概念である損益分岐点比率については以下の記事をご覧ください。

 

 

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

CONTENTS

経営安全率(安全余裕率)とは

経営安全率(安全余裕率)は経営の安全性を判断するのに用いられる指標です。

現在の売上が損益分岐点をどれほど上回っているかを示します。

経営安全率が高いほど現在の売上が下がっても赤字になりにくく、売上の変動に強い経営体質をもっているといえます。

経営安全率(安全余裕率)の計算方法

経営安全率(安全余裕率)の計算式は以下の通りです。

経営安全率(%)=(売上高-損益分岐点売上高)÷売上高×100

 

損益分岐点売上高は損益がプラスマイナスゼロになる売上高、すなわち、売上と費用が等しくなる売上高です。

売上高に占める損益分岐点売上高の割合を損益分岐点比率といいます。

 

経営安全率の求め方として、具体的な数字を用いた計算例を3つ紹介します。

 

  • 現在の売上高が200万円、損益分岐点売上高が150万円
  • 前述の式に当てはめて計算した結果は以下の通りです。
  • (200万円-150万円)÷200万円×100=25%
  • 経営安全率は25%となります。
  •  
  • 現在の売上高が200万円、損益分岐点売上高が180万円
  • (200万円-180万円)÷200万円×100=10%
  • 今回の例の場合、経営安全率は10%となりました。
  • 1つ前の例と比べて現在の売上高と損益分岐点売上高が近いため、経営安全率の数値が低くなっています。
  •  
  • 現在の売上高が200万円、損益分岐点売上高が220万円
  • (200万円-220万円)÷200万円×100=▲10%
  • 現在の売上高が損益分岐点売上高よりも低い、すなわち赤字状態です。
  • 赤字の場合は経営安全率がマイナスとなります。

経営安全率と損益分岐点比率の関係

前節でも触れたように、損益分岐点比率とは売上高に占める損益分岐点売上高の割合のことです。

損益分岐点比率は以下の式で求められます。

損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷売上高×100

損益分岐点比率と経営安全率の合計は必ず100%になります。

経営安全率(安全余裕率)の適正水準とは

経営安全率(安全余裕率)の適正水準を考える基準として、一般論としての理想や目安と、業種別の平均および分布を紹介します。

経営安全率(安全余裕率)の理想は20%超

経営安全率の数値経営状態
20%超理想とされる水準
多少の売上変動があっても赤字転落のリスクは低いと考えられる
10~20%平均的な水準
売上の変動による赤字転落のリスクをいさえるためには、さらに数値を上げるのが理想
0~10%未満少しの売上変動により赤字転落となる恐れがある
0%未満(マイナス)赤字状態のため早急な対応が必要

経営安全率(安全余裕率)の平均的な水準は10~20%程度といわれています。

とはいえ、経営安全率が10~20%の範囲内でも安全とは限りません。

黒字状態かつ平均的な水準に含まれるとはいえ、売上の変動による赤字転落のリスクを下げるためにも、より数値を上げるのが理想です。

 

経営安全率の理想は20%超といわれています。

20%超の状態は損益分岐点売上高までに余裕があり、多少の売上変動があっても赤字転落のリスクは低いと考えられます。

 

経営安全率10%未満は黒字状態ではあるものの、少しの売上変動により赤字転落となるリスクが高いです。

経営安全率アップのための改善が求められます。

 

経営安全率がマイナスの場合は既に赤字状態であり、早急な対応が必要です。

業種別の経営安全率(安全余裕率)の平均と分布

前節で紹介した数値はあくまで目安であり、業種や規模の違いを考慮していません。

経営安全率として目標とする数値を決める際は、全体の目安だけでなく、業種や事業規模ごとの平均も参考にするべきでしょう。

 

2021年版中小企業白書の中で、中規模企業の損益分岐点比率の平均および分布が紹介されています。

当該データの損益分岐点比率を経営安全率に計算し直した結果が以下の表です。

業種損益分岐点比率の平均
宿泊業、飲食サービス業2.5%
運輸業、郵便業8.9%
情報通信業11.5%
小売業11.6%
生活関連サービス業、娯楽業14.8%
製造業14.9%
卸売業19.1%
建設業21.8%
全産業(除く金融保険業)14.9%

 

続いて、業種別の経営安全率の分布を紹介します。

業種0%未満0~10%10~20%20%超 

製造業

19.9%21.9%16.7%41.6%

建設業

28.3%21.9%15.5%34.3%

情報通信業

16.1%34.7%15.3%34.0%

運輸業・郵便業

25.3%29.8%12.9%32.0%

卸売業

18.2%22.3%17.7%41.8%

小売業

29.0%26.4%16.9%27.7%

宿泊業

29.1%20.1%15.5%35.3%

飲食サービス業

28.4%35.3%16.3%20.1%

生活関連サービス業

27.8%29.3%15.4%27.5%

娯楽業

25.1%23.9%15.0%36.0%

いずれの業種も、経営安全率の平均的な水準といわれている10~20%の割合が最も低いです。

経営安全率が高い企業と低い企業の差が大きく、適正水準を明確に定めるのは難しいといえるでしょう。

参照:2021年版 中小企業白書 第2-1-11図、第2-1-12図

経営安全率(安全余裕率)の改善方法

経営安全率(安全余裕率)の改善方法は「固定費を減らす」「変動費を減らす」「売上を増やす」の3つに大別されます。

中でも最初に検討するべき事項は固定費の削減です。

固定費は売上が少ないほど負担が重くなるため、最初に見直しを行う必要があります。

固定費を減らす方法の例と見直しのポイント

固定費を減らす方法として以下の例が挙げられます。

 

  • リースや定額払いサービスのプラン見直し
  • 固定費の中でも最優先で見直すべきポイントは、リースや定額払いサービスのプランです。
  • 改めて見直しをすると、より安価なプランでも問題ないケースや、そもそも解約しても良いサービス等が見つかる可能性があります。
  •  
  • アウトソーシングの活用
  • 人件費、採用費、人材育成費等の削減につながります。
  •  
  • テレワークやリモートワークの導入
  • テレワークやリモートワーク導入により、通勤費・複合機に関する費用・水道光熱費などを削減できる可能性が高いです。

 

固定費見直しのポイントとして以下の2つが挙げられます。

  • ・支出額が多い項目から見直しを進める
  • ・必要な支出まで減らさないよう注意する

 

固定費に限らず、経費削減は「無駄の削減」が大前提です。

経費を削ろうとするあまり必要な支出までなくすことがないよう注意しましょう。

変動費を減らす方法の例と見直しのポイント

変動費の削減方法について主な項目ごとに紹介します。

  •  
  • 仕入関連
  • 仕入先や原材料の変更、プランの変更、値下げ交渉など
  •  
  • 消耗品費関連
  • 消耗品の購入ルールの変更、購入する消耗品の変更、ペーパーレス化による消耗品削減など
  •  
  • 旅費交通費関連
  • オンライン面談の活用による交通費削減、出張に関するルール見直し等
  •  
  • その他
  • 過剰在庫の削減、外注費の見直し、業務効率化による労働時間削減(残業代削減)等

 

前節で、経費削減は無駄を減らすことが大前提であり、必要な支出まで削らないよう注意が必要と紹介しました。

特に変動費は売上高や生産量に連動するため、無理に減らすと売上への悪影響や生産性の低下を招く恐れがあります。

売上を維持しつつコストを減らすためには、必要な支出と無駄な部分の見極めが大切です。

売上を上げる方法の例と見直しのポイント

売上アップにつながる方法の例を紹介します。

 

  • 新規顧客の獲得
  • 新商品の開発、販路拡大、新規層に向けた広告展開等
  •  
  • リピート率を上げる
  • フォローメールの送信、定期購入プランの創設など
  •  
  • 客単価アップ
  • 商品の販売価格を上げる、セット販売の実施(クロスセル)、顧客が検討中または購入済みの商品よりも上位の商品の購入を促す(アップセル)
  •  

経費削減と違い、売上アップに向けた施策は効果が出るまでに時間がかかりやすいです。

経営安全率の早急な改善という意味では優先順位が低いため、まずは経費の見直し・削減を優先するべきといえます。

 

そもそも、前述の施策を行なっても確実に売上アップが実現するとは限りません

小まめな経過観察および改善を行い、効果が見込めない場合は別の施策へ切り替える必要があります。

節税・経営のご相談はBIZARQへ

経営安全率の改善には複数の打ち手を組み合わせた戦略が求められます。数値の解釈を誤ると、適切な経営判断ができず、資金繰りや成長戦略に影響を及ぼす可能性もあります。

 

「自社の安全余裕率は適正水準なのか判断したい」
「利益体質を強化するための具体的な改善策を知りたい」

 

こうした課題をお持ちの経営者様は、BIZARQ(ビズアーク)までご相談ください。財務データをもとに経営状況を可視化し、収益構造の改善から中長期的な成長戦略の立案まで、実践的なサポートをご提供いたします。

まとめ

経営安全率(安全余裕率)は現在の売上が損益分岐点売上高をどれほど上回っているかを示す指標です。

経営安全率が高いほど売上変動に強く、赤字になりにくい状態といえます。

 

経営安全率の平均水準は10~20%程度、理想は20%超といわれています。

しかし実際のところ、事業規模や業種によって異なるため一概にはいえない上、企業によって差が大きいのが事実です。

適正水準の明確化は難しいため、まずは自社の業種における平均を上回ることを目指しましょう。

 

経営安全率の改善に向けた施策は「1.固定費削減」「2.変動費削減」「3.売上アップ」の準に進めます。

どのような方法が適しているかはケースによって異なるため、まずは自社の状態を把握する必要があります。

 

自社に適した施策を行い、経営安全率の改善を目指しましょう。

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