業績連動給与のメリット・デメリット|導入前に抑えるべき注意点とは

業績連動給与とは役員報酬の1つで、会社の利益や株価などの業績に連動して金額が決まります。
損金算入ができる役員報酬は業績連動給与を含め3種類あり、それぞれ要件が厳しく定められています。

業績連動給与の導入を検討しているのであれば、まずは要件の細かな確認が必須です。
その上で、業績連動給与のメリット・デメリットをしっかり把握し、導入するか検討すべきでしょう。

今回は業績連動給与について詳しく解説します。

役員報酬の決め方については以下の記事をご覧ください。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

CONTENTS

業績連動給与とは

業績連動給与とは、会社の利益や株式の市場価格など、業績に連動して金額が決まる役員報酬です。
要件を満たすことで損金算入ができる役員報酬の1つです。
2017年度の税制改正により「利益連動給与」から「業績連動給与」に名前が変わりました。

前提|役員報酬を損金算入するための要件

前提として、役員報酬を損金に算入するためには一定の要件を満たす必要があります。
前述のように、損金算入ができる役員報酬は3種類です。
それぞれの概要と損金算入するための要件について解説します。

定期同額給与

定期同額給与とは、役員に対して1ヶ月以下の一定期間ごとに支給する報酬です。
従業員に対する通常の給与に近い性質をもちます。

原則として、以下2つの要件を満たす場合に定期同額給与として認められます。

  • ・支給時期が1ヶ月以下の一定期間ごとである
  • ・各支給時期における支給額または支給額から源泉税等を控除した額が同額である

定期同額給与は原則として事業年度開始から3ヵ月以内に1回のみ変更可能です。
要件を満たさない変更をした場合の増額分や、過大な支給分は損金算入ができません。

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、支給額および支給日を事前に税務署に届け出た上で支払う役員報酬です。
役員に対する賞与のような性質をもちます。

事前確定届出給与の要件は以下の2つです。

  • 以下のうちいずれか早い方までに税務署へ事前確定届出給与に関する届出をする
  •  1.株主総会等の決議をした日から1ヶ月を経過する日
  •  2.会計期間の開始日から4ヶ月を経過する日
  • 届出の内容通りに支給する

事前確定届出給与は、1円単位・1日単位のズレも認められません。
届出と実際の支給内容に少しでも違いがある場合、該当の会計期間に支給する事前確定届出給与の損金算入が不可となります。

業績連動給与

業績連動給与は名前の通り業績に連動して金額が決まる役員報酬です。
業績に連動するという性質上、定期同額給与や事前確定届出給与と違い、支給直前まで金額が確定しません。

業績連動給与を損金算入するためには、報酬の決定に使用する指標や算定方法などの開示が必要です。
業績連動給与の要件については次節で詳しく解説します。

業績連動給与の要件

業績連動給与を損金算入するための要件として以下の3つが挙げられます。

  • 1.同族会社ではない内国法人である
    (例外として、同族会社以外の法人による完全支配関係にある同族会社は、その他の要件を満たせば業績連動給与の支給・損金算入が可能です)

  • 2.業績連動給与の算定方法を有価証券報告書等の中で開示する

  • 3.以下の日までに交付する、もしくは交付見込みである
  • 金銭による給与の場合:支給額の算定に用いる指標の数値が確定した日の翌日から1ヵ月を経過する日まで
  • 株式又は新株予約権による給与の場合:業績連動指標の数値が確定した日の翌日から2ヵ月を経過する日まで


国税庁の「令和6年度分会社標本調査」によると、単体法人の96%超は同族会社です。
また、有価証券報告書を提出しない非上場会社では、算定方法の開示という要件を満たすことが困難です。
以上の理由から業績連動給与の要件を満たせる法人は少ないといえます。

参考:令和6年度分会社標本調査|国税庁

業績連動給与を導入するメリット

業績連動給与を導入するメリットを2つ紹介します。

役員の意欲を高める効果が期待できる

前述のように、業績連動給与の金額は利益や株式の市場価格など業績に連動して決まる仕組みです。
業績の良し悪しが金額に直接関係する性質上、成果が反映されやすいともいえるでしょう。
特に役員は会社における地位が高く権限の強さもあるため、業績に与える影響が大きいです。
業績連動給与を導入すれば、業績アップ、すなわち報酬アップの実現に向けて仕事に対する意欲が高まる効果が期待できます

役員報酬に関する透明性が高まる

業績連動給与を損金算入するための要件として、「業績連動給与の算定方法を有価証券報告書等の中で開示する」があると紹介しました。
有価証券報告書等は誰もが閲覧できる資料であるため、業績連動給与の算定方法も広く公開されることになります。
役員報酬に関する透明性が高まることで、株主や投資家等からの信頼獲得につながるでしょう。

業績連動給与のデメリット

続いて、業績連動給与のデメリットを2つ紹介します。

短期的な業績向上を優先しがちになるリスクがある

前節で、業績連動給与の導入によって役員の意欲を高める効果が期待できると紹介しました。
しかし同時に、役員報酬の増額を目的に短期的な業績向上を優先しがちになるリスクも存在します。
近年はESG経営やサステナビリティ経営など、持続可能性に配慮した経営が求められています。
短期的な業績向上を目的とした活動は、企業に求められる姿と逆行しているといえるでしょう。

従業員からの不満が生じる恐れがある

業績連動給与が従業員からの不満につながるケースとして以下の2つが挙げられます。

  • 算定方法が業績を正確に反映するとはいえない内容で納得感を得られない
  • 業績の向上が給与に反映される仕組みが役員報酬のみであり、従業員には恩恵がない

従業員の不満はモチベーションダウンにつながり、結果として生産性の低下や将来的な業績悪化を招く恐れがあるため注意が必要です。

業績連動給与の導入に関する注意点

最後に、業績連動給与の導入に関する注意点を2つ紹介します。

報酬の基準や計算方法を明確にする

業績連動給与の導入に際して最も注意すべき事項は算定方法が明確であるかです。
算定方法に少しでも曖昧な箇所があると、損金算入を否認される恐れや、利害関係者からの不信感につながる恐れがあります。

算定方法を決める上でのポイントは以下の3つです。

  • 算定方法として用いる基準が、国税庁が明示する要件を満たすものであるか
  • 計算式が明瞭であり、不正の余地がないか
  • 算定方法について曖昧な箇所がなく、利害関係者や従業員からの不信につながる部分がないか


損金算入のための要件を満たすのはもちろん、利害関係者や従業員からの不信感につながる要素をなくすことも大切です。

最低保障額や固定分を設定する

業績連動給与を導入する際は、最低保障額や固定分も設定すべきといえます。
最低保障額や固定分がなければ、急激な業績悪化により報酬額が大幅に下がる事態や、報酬がゼロになる事態が起こり得ます。
報酬の激減は役員のモチベーション面はもちろん、生活面にも悪影響を及ぼす要素です。
報酬額の全額を業績と連動させるのではなく、固定部分と業績連動部分に分けて設定するのが良いでしょう。
なお、最低保障額や固定分についても、金額および根拠の明示は必須です。

役員報酬設計のご相談はBIZARQへ

業績連動給与は、一定の要件を満たすことで損金算入が認められるため、税務面でもメリットがあります。一方で、制度設計を誤ると損金不算入となるリスクがあり、税務上のルールを踏まえて事前に設計しておくことが重要です。算定方法や支給タイミング、社内ルールとの整合性など、実務上確認すべきポイントも少なくありません。

「自社で業績連動給与を導入できるのか知りたい」
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こうした課題をお持ちの経営者様は、BIZARQ(ビズアーク)までご相談ください。現状の利益計画や経営体制を踏まえ、節税・モチベーション・資金繰りのバランスを考慮した最適な役員報酬制度の構築をサポートいたします。

まとめ

業績連動給与は利益や株価などの業績に連動して金額が決まる役員報酬です。
業績連動給与を損金算入するためには、算定方法を有価証券報告書等で開示する必要があります。

業績連動給与の導入により、役員の意欲向上や役員報酬の算定に関する透明性の確保等が期待できます。
一方で、短期的な業績向上を優先しがちになる可能性や、算定方法によっては従業員からの不信感につながる恐れがある点に注意が必要です。

業績連動給与を導入する際は、報酬の基準や計算方法を明確にすることを重視すべきでしょう。
税法上の要件を満たすだけでなく、曖昧な部分をなくし、不信感につながるリスクを抑えるべきです。
業績悪化時に報酬が激減するのを防ぐため、最低保障額や固定分を設定する必要もあります。

業績連動給与は要件が厳しく、導入の進め方で疑問や不安に思う箇所も発生し得るでしょう。
少しでも気になる事項があれば、専門家に相談しサポートを受けるのが安心です。

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