開業・起業に際して創業融資を申し込む場合、融資の審査に際して利用できる事業実績がありません。
そのため、事業計画書や自己資金の額などから返済能力を判断されます。
一定の自己資金が要件に設定されている創業融資制度もありますが、創業融資の申し込みに際して必ずしも自己資金が必要とは限りません。
自己資金なしでも創業融資を受けられるケースもあります。
今回は自己資金なしで利用できる創業融資や、自己資金なしで申し込む際の注意点について解説します。
創業融資全般については以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
CONTENTS
創業融資は自己資金なしでも受けられる?
原則として、融資制度には自己資金や事業実績などの要件があります。
創業時には事業に関する実績がないため、事業計画の内容や自己資金の額といった情報が審査に用いられます。
ある程度の自己資金を用意した方が審査の通過率が高くなるのは事実です。
しかし、自己資金がなくても創業融資を利用できるケースは存在します。
自己資金なしで創業融資を受けるためのポイントについて解説します。
自己資金なしで創業融資を受けるためのポイント
自己資金なしで創業融資を受けるためのポイントを5つ紹介します。
要件を入念に確認する
大前提として、すべての創業融資が必ずしも自己資金なしで利用できるわけではありません。
また、自己資金なしで利用する場合、別の要件を満たさなければならないケースもあります。
融資を確実に受けるためには、要件の入念な確認が必要です。
返済能力を示す
融資を受けられるか否かは、返済能力の高さによって大きく左右されます。
すなわち自己資金なしでも融資を利用するためには、返済能力があると証明する必要があります。
説得力のある事業計画はもちろん、信用情報にキズがない・税金の滞納歴がないことも重要です。
事業計画書を丁寧に作る
創業融資では事業計画書が入念にチェックされます。
融資の可能性を高めるため、希望額の融資を受けるためには、事業計画書を丁寧に作ることが大切です。
自分に合う融資制度を申し込む
一口に創業融資といってもさまざまな種類があり、制度によって要件・使用用途・金利などが異なります。
自分に合う融資制度に申し込みましょう。
専門家のサポートを受ける
融資制度の申し込みにはさまざまな作業が必要であり、融資経験や個人事業の経験がない人が確実に対応するのは容易ではありません。
融資を受けられる可能性を高めるため、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
自己資金なしで創業融資を申し込む際の注意点
続いて、自己資金なしで創業融資を申し込む際の注意点を4つ紹介します。
自己資金がない場合は要件が厳しい可能性が高い
前述したように、自己資金がない場合は別の要件を満たす必要がある可能性があります。
要件が厳しい可能性が高い点について事前に把握が必要です。
審査通過率が低くなってしまうのは避けられない
自己資金なしで利用できる創業融資であっても、自己資金がある方が有利なのは事実です。
自己資金なしの場合は、どうしても審査通過率が下がってしまう点を押さえておきましょう。
融資額が低くなりやすい
自己資金なしの場合、同じ融資制度でも条件が厳しくなりがちです。
融資額についても、自己資金の用意がある場合と比較すると低くなりやすいといえます。
金利が高くなる恐れ
これまで解説してきたように、自己資金なしでは通常よりも条件が厳しくなりやすいです。
金利についても、自己資金がある場合よりも高い利率が適用される恐れがあります。
自己資金なしで申し込める創業融資制度
自己資金なしで申し込める創業融資制度を3つ紹介します。
それぞれ制度の概要や自己資金なしの場合の要件、利率などをまとめました。
新創業融資制度
新創業融資制度は日本政策金融公庫が運営・提供する融資制度で、新たに事業を始める人や、事業を開始したばかりの人が対象です。
新創業融資制度を利用するための基本的な要件は以下の2点です。
- ・新たに事業を始める、もしくは事業開始後税務申告を2期終えていない
- ・新たに事業を始める人および事業開始後税務申告を1期終えていない場合、創業時点において創業資金総額の10分の1以上の自己資金がある(自己資金の金額や存在を確認できる)
このように本来は自己資金の要件がありますが、以下のようなケースに該当する場合は、自己資金の要件を満たすものとしてみなされます。
- ・現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める
- ・産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める
自己資金の要件を満たしたとみなされる要件はほかにも存在するため、担当者に確認しましょう。
新創業融資制度の利率は年2.33~3.45%です。特定の要件を満たす場合はより低い利率が適用されるケースもあります。
返済期間や使用用途などの条件によって、適用される利率が異なります。
中小企業経営力強化資金
中小企業経営強化資金は、中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援する目的で設けられている融資制度です。
次の1または2に当てはまる人を対象としています。
1.以下2つの要件をどちらも満たす
・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓を行おうとする
・事業計画書を策定し、かつ、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている
2.以下2つの要件をどちらも満たす
・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している、もしくは適用予定である
・事業計画書を策定する
資金用途は、事業計画実施のために必要な設備資金および長期運転資金に限られます。
適用される利率は、日本政策金融公庫の中小企業事業が規定する基準利率です。
なお一定の要件を満たす場合はより低い利率である特別利率が適用されます。
担保の有無や担保の種類は相談の上で決定します。
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、国民生活事業による制度と、中小企業事業による制度の2種類があります。どちらの制度も自己資金の要件がありません。
今回は国民生活事業による制度に絞って解説します。
利用するためには、融資制度およびその他条件のいずれも満たす必要があります。
詳しい要件は以下のとおりです。
・融資制度:以下いずれかの融資制度の対象となる人
・新規開業資金
・新事業活動促進資金
・海外展開・事業再編資金
・事業承継・集約・活性化支援資金
・企業再建資金
・その他条件:以下2点どちらの要件も満たす人
①地域経済活性化にかかる事業を行う
②税務申告を1期以上行っている場合、所得税等を完納している
挑戦支援資本強化特別貸付の特徴のひとつが、この制度による債務は、金融機関の資産査定において自己資本とみなすことができる点です。
すなわち融資額を自己資本として扱えるため、その他の融資制度などの審査において自己資金要件を満たせる可能性が高くなります。
担保および保証人はどちらも不要であり、返済期間は5年1ヵ月以上20年以内です。
返済期間によって年利率が異なり、返済期間が短いほど利率が低くなります。
なお、税引後当期純利益額が0円未満(赤字)の場合、返済期間を問わず利率0.90%が適用されます。
融資の申し込みに際して事業計画書の提出が必要です。
まとめ
このように、創業融資は自己資金なしで利用できるケースもあるため、起業・開業に際しての資金調達手段として有用です。
ただし、自己資金なしで創業融資を利用する場合、自己資金がある場合よりも条件が厳しくなる可能性が高い点については認識しておきましょう。
創業融資の種類ごとに制度の内容をしっかり押さえ、自分に合う制度に申し込む・入念な準備を行うことが大切です。
融資制度の申し込みにはさまざまな準備が必要で、融資申し込みの経験を持たない人がすべて対応するのは容易ではありません。
創業融資を利用したい・創業融資の申し込みを検討している人は、ぜひ創業融資のサポートに強い専門家にご相談ください。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士