
融資制度と聞くと、法人のみが利用できる制度で個人事業主は対象外と考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、融資制度のなかには個人事業主が利用できる制度も複数存在します。
創業時に利用できる創業融資制度にも個人事業主が利用できるものがありますが、制度によって要件や特徴が異なります。
また、融資を申し込む際は事前に注意点について確認が必要です。
今回は個人事業主が利用できる創業融資について、制度の種類や利用する際の注意点などを解説します。
創業融資全般については以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
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個人事業主が利用できる創業融資制度の種類

前提として、創業融資は独立・開業・起業などの際に利用できる融資制度の総称です。創業融資という名前の制度があるわけではありません。
個人事業主が利用できる創業融資制度として、大きく3種類が挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
新創業融資制度
新創業融資制度は新たに事業を始める人や、事業を開始したばかりの人を対象とする融資制度です。
新創業融資制度を利用するためには、以下の要件をどちらも満たす必要があります。
- ・新たに事業を始める、もしくは事業開始後税務申告を2期終えていない
- ・新たに事業を始める人および事業開始後税務申告を1期終えていない場合、創業時点において創業資金総額の10分の1以上の自己資金がある(自己資金の金額や存在を確認できる)
資金用途は事業を始めるため、および事業開始後に必要となる設備資金・運転資金に充てるためと限定されています。
融資限度額は3,000万円で、うち運転資金が1,500万円です。
新創業融資制度は原則として、担保および保証人が不要です。
これから個人事業主として活動しようと考える人にとって使いやすい制度といえるでしょう。
2023年2月1日時点における利率は年2.33~3.45%です。
金融情勢によって金利が変動するため、申し込む前に必ず最新の情報をご確認ください。
特定の要件を満たす場合は、より低い利率である「特別利率」が適用されるケースもあります。
適用される利率は返済期間などの条件によって決定されるため、申し込み段階では確認できず、申込者が選ぶこともできません。
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)には、国民生活事業による制度と、中小企業事業による制度の2種類があります。
個人事業主が利用できるのは国民生活事業による制度です。そのため今回は国民生活事業の挑戦支援資本強化特別貸付に絞って解説します。
挑戦支援資本強化特別貸付の特徴は、本制度による債務を金融機関の資産査定において自己資本とみなせる点です。
本制度の利用によって申告できる自己資本額が大きくなるため、ほかの融資制度などにおける自己資金の要件を満たせる可能性が高くなるでしょう。
制度の利用対象となるのは、以下の融資制度条件・その他条件のいずれも満たす人のみです。
・融資制度:以下いずれかの融資制度の対象となる人
・新規開業資金
・新事業活動促進資金
・海外展開・事業再編資金
・事業承継・集約・活性化支援資金
・企業再建資金
・その他条件:以下2点どちらの要件も満たす人
①地域経済活性化にかかる事業を行う
②税務申告を1期以上行っている場合、所得税等を完納している
申し込みに際して事業計画書を提出する必要があります。
担保および保証人はいずれも不要です。
返済期間は5年1ヵ月以上20年以内に設定されており、返済期間が短いほど利率が低くなる仕組みです。
なお、税引後当期純利益額が0円未満で赤字の場合、返済期間を問わず利率が0.90%となります。
制度融資
制度融資とは特定の融資制度の名称ではなく、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して実行する融資制度の総称です。
自治体によって制度の内容や要件に違いがあるため、詳しい内容は自治体の公式サイト等で確認する必要があります。
制度融資全体で多くみられる特徴として、以下の3点が挙げられます。
- ・融資の申し込み先が金融機関ではなく自治体である
- ・ほかの融資制度と比べて金利が低めに設定されている
- ・融資の申込から審査までに時間がかかる傾向にある
- ※制度融資は地方自治体・金融機関・信用保証協会の3者で審査が行われるため、金融機関が提供する融資よりも時間がかかってしまいます
個人事業主が創業融資に申し込む際の注意点

個人事業主の開業に際して多額の資金が必要となる場合、資金調達の手段として融資制度は非常に便利な方法です。
しかし、創業融資はメリットばかりではなく注意すべき点も存在します。
個人事業主が創業融資に申し込む際の注意点を3つ紹介します。
申し込みは原則1回かぎり
創業融資の審査に挑戦できるのは原則として1回限りです。
一度申し込んだ創業融資制度は、審査に落ちてしまうとその後再度の申し込みはできません。
提出した事業計画書の訂正や、面接のやり直しなどもできません。審査は一発勝負となります。
また、審査に通過したとしても希望した額の融資が受けられるとは限りません。
融資額の希望はあくまで希望であり、事業計画書や面接の内容から融資額が決定されます。
審査の通過率を高めるため、そして希望額の融資を受けるためには、入念な対策が必要です。
事業計画書や面接対策など、しっかり準備を整えましょう。
創業融資に詳しい専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
自己資金を用意するのがおすすめ
創業融資は開業や起業にあたって資金が足りない場合に、資金調達の手段として利用する制度です。
しかし資金不足のために利用するとはいえ、事業に向けてある程度の自己資金を用意することをおすすめします。
創業融資は自己資金がなくても申し込めるケースがあります。
たとえば今回紹介した新創業融資制度には「新たに事業を始める人および事業開始後税務申告を1期終えていない場合、創業時点において創業資金総額の10分の1以上の自己資金がある」という要件があります。
しかし現在勤めている企業と同じ事業を始める人など、一定の要件を満たす場合は自己資金の要件を満たすものとみなされます。
ただし自己資金の要件を満たすとみなされる場合でも、自己資金があった方が望ましいとされており、審査の通過率が期待できるのが事実です。
自己資金がまったくない場合、どうしても審査の通過率は低くなってしまうでしょう。
必要となる自己資金は制度によって異なりますが、新創業融資制度の要件である、創業資金総額の10分の1以上がひとつの目安となります。
自己資金を用意するためは、長期的にコツコツ貯金を続ける・副業など収入を増やすといった地道な方法がもっとも確実です。
個人事業主として独立を考えているのであれば、早いうちから自己資金の用意をはじめましょう。
信用情報のキズや滞納歴があると利用できない恐れが大きい
個人事業主が創業融資制度を申し込む場合、信用情報のキズや滞納歴があると利用できない可能性が高くなります。
融資審査の際は、申し込みを行う本人(法人の場合は代表者)の信用情報がチェックされます。
信用情報のキズや税金等の滞納歴があると返済能力に懸念があるとみなされ、融資を受けられない恐れが大きくなってしまうのです。
審査が不利になる要素の例を紹介します。
- ・クレジットカードの滞納
- ・携帯電話端末代の分割料金の延滞
- ・債務整理の実施
- ・税金の滞納
信用情報のキズには登録期間があり、一定期間を過ぎるとキズのないホワイトな状態に戻ります。
審査に悪影響を与える要素がある場合、登録期間が経過するのを待つのが安心です。
まとめ
創業融資は個人事業主の開業・起業における資金調達の手段として有用です。
利用するハードルが低い制度もあり、創業資金を無理なく調達できるでしょう。
しかし、創業融資制度の審査は必ず通過するとは限らない上、申し込みに向けた入念な準備も必要です。
融資制度の申し込み経験がない人がいきなりすべて対応するのは容易ではないでしょう。
創業融資制度の利用を検討している方は、創業融資のサポートに強みを持つ専門家に相談するのが安心です。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士