創業融資とは、起業・開業・独立の際に利用できる融資制度の総称ですが、創業融資という名称の制度があるわけではなく、さまざまな融資制度をまとめた呼び名です。
つまり、一口に創業融資といっても制度によって要件や特徴が異なるということです。
金利についても融資制度の種類によって大きな違いがあります。
創業融資を申し込むのであれば、融資制度ごとの金利についても確認が必要です。
今回は創業融資制度ごとの金利比較や、創業融資の金利をチェックする際の注意点について解説します。
創業融資全般については以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
CONTENTS
創業融資の制度ごとに金利を比較
創業融資の制度ごとに、特徴や要件、金利を紹介します。
日本政策金融公庫の融資制度
はじめに紹介するのは、日本政策金融公庫の融資制度です。
日本政策金融公庫は主要利率という仕組みを導入しており、融資ごとの詳細ページでは具体的な利率ではなく「基準利率」「特別利率A」といった表記がされています。
そのため、具体的な利率については主要利率一覧表の確認が必要です。
基準利率は原則として適用される利率です。
特別利率は一定の要件を満たす場合に適用される利率であり、基準利率よりも低い数値が設定されています。
また国民生活事業の融資制度の場合、基準利率2.03~3.15%のように、多少の幅が設けられています。
正確な利率は返済期間などの諸条件によって決定されるため、申し込み時点では確認できません。
このように日本政策金融公庫の融資制度は、利率のルールがやや複雑になっています。
今回は簡単な解説のみであるため、詳しい内容は制度ごとの詳細ページや、利率に関する案内ページをご確認ください。
創業融資制度4種類について、大まかな特徴および具体的な金利を紹介します。
※今回紹介する金利は、いずれも2023年2月時点の情報です。金融情勢によって変動の可能性があるため、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。
新創業融資制度
新創業融資制度は、新たに事業を始める、もしくは事業開始後税務申告を2期終えていない人を対象とした融資制度です。
新創業融資制度の基準利率は2.33~3.45%です。基本的には基準利率の範囲内で利率が設定されます。
新創業融資制度には、より細かな特別利率が設定されています。
特別利率は全部で8種類あり、それぞれ以下のとおりです。
- ・特別利率A:1.93~3.05%
- ・特別利率B:1.68~2.80%
- ・特別利率C:1.43~2.55%
- ・特別利率D:1.68~2.50%
- ・特別利率E:0.93~2.05%
- ・特別利率J:1.28~2.40%
- ・特別利率P:2.13~2.95%
- ・特別利率Q:1.93~3.05%
適用される利率は担保や保証人の有無・開業する業種など、さまざまな要素によって決定されます。
自分で利率を決める・特別利率を選べるわけではない点に注意しましょう。
新規開業資金
新規開業資金は新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人を対象とした融資制度です。
先ほど紹介した新創業融資制度よりも広い範囲を対象としています。
新規開業資金の利率は基本的に、国民生活事業の基準利率です。
新規開業資金は担保や保証人の有無を相談しながら決定します。担保有の場合の基準利率は1.08~2.80%、担保なしの基準利率は2.03~3.15%です。
なお新規開業資金は特別利率の適用対象となる要件が明確に公表されています。
たとえば、女性および35歳未満または55歳以上の人は特別利率A、地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付を受ける人は特別利率Bとなります。
ほかにも特別利率の対象となる要件が細かく設定されているため、詳しくは公式サイトでご確認ください。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、以下2つの要件を満たす人が利用できる制度です。
- ・新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人
- ・女性、35歳未満、55歳以上のいずれかに該当する人
基本的には国民生活事業の特別利率Aが適用されます。
ただし以下のように、異なる利率が適用されるケースもあります。
- ・技術・ノウハウ等に新規性がみられる:特別利率A,B,C,D
- ・地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める:特別利率B
- ・地方創生推進交付金を活用した起業支援金および移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める:特別利率C
担保および保証人の有無は相談した上で決定します。
担保の有無によって利率が異なる点にご注意ください。
中小企業経営強化資金
中小企業経営強化資金は中小企業事業による、中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援する目的の融資制度です。
中小企業経営強化資金を利用するためには、以下の1または2いずれかの要件を満たす必要があります。
1.以下2つの要件をどちらも満たす
・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓を行おうとする
・事業計画書を策定し、かつ、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている
2.以下2つの要件をどちらも満たす
・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している、もしくは適用予定である
・事業計画書を策定する
適用される利率は原則として、中小企業事業で設けられている基準利率です。返済期間が長くなるほど利率も高くなります。
ただし前述した利用対象となる要件の1に該当し、その上で以下の要件を満たす場合は特別利率①が適用されます。
- ・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している、または適用する予定である
- ・「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」および「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している
地方自治体の制度融資
制度融資とは地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して実行する融資制度です。
自治体によって制度の要件や具体的な金利が異なるため、自治体ごとに案内を確認する必要があります。
金融機関による一般的な融資制度より金利が低いケースが多く、高くても2%程度となっています。
制度によっては金利1%未満のケースもあり、制度融資は金利面において非常に魅力的といえるでしょう。
創業融資の金利をチェックする際の注意点
創業融資制度について調べる上で、金利は必ずチェックするべき要素のひとつですが、金利を重視しすぎない・金利の情報を上手く活用することが重要です。
創業融資の金利をチェックする際の注意点を2つ紹介します。
金利が低いという理由だけで決めない
どの創業融資を申し込むか考えるにあたって、金利が低いという理由だけで決めないようにしましょう。
金利が低い融資制度は、要件が厳しい・審査が厳しい・融資実行までに時間がかかるなど注意するべきデメリットもあります。
たとえば今回紹介した制度融資は、自治体や制度の種類にもよりますが金利が低い傾向です。
しかし地方自治体・金融機関・信用保証協会の3者によって審査が行われるため、申込から融資の実行まで長い時間を要します。
また、金利が低い制度が魅力的とも限りません。
資金の使用用途や利用するための条件によっては、金利が低くても使い勝手が悪いケースもあります。
金利は融資制度について理解する上で大切な情報ではありますが、あくまでも参考程度に確認しましょう。
申し込む融資を決める際の条件にはしないことが大切です。
例外や注意事項の確認も必要
同じ融資制度でも、要件によって金利が違うケースがあります。
そのため金利について例外や注意事項の確認も大切です。
同じ融資制度でも金利が異なる例として、中小企業経営力強化資金が挙げられます。
中小企業事業の融資制度は返済期間によって利率が異なりますが、今回は返済期間5年以内の場合を例にします。
中小企業経営力強化資金で原則として適用される基準利率は1.08%です。
一方で前述したように、一定の要件を満たす場合は特別利率①が適用されます。
返済期間5年以内の特別利率①は0.70%と、基準利率と0.38%の違いがあります。
金利の適用要件について確認が不足していると、想定よりも高い金利が適用される恐れがあるため注意が必要です。
金利を確認する際は、細かな部分まで注意事項や説明を読みましょう。
まとめ
一口に創業融資といっても、制度によって設定されている金利は異なります。
また、同じ制度でも該当する要件によって金利がまったく異なるケースもあります。
金利は複雑でわかりにくい部分もあるため、金融機関の窓口や、融資に詳しい専門家に相談するのが安心です。
そもそも金利はさまざまな条件や基準によって決定されるため、申し込み段階で正確な利率を把握することはできません。
金利が低い制度が最適とは限らず、金利以外のさまざまな条件を考慮した上で、自身に合う融資制度を選ぶ必要があります。
創業融資を利用したい・創業融資について疑問があるという人は、創業融資のサポートに強い専門家へご相談ください。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士