運転資金とは?概要や創業計画書の書き方、注意点を解説!

2023.06.08

創業融資と呼ばれる制度には複数の種類があり、それぞれ融資限度額が決まっていて、総額での限度とは別に運転資金としての限度が設定されています。

運転資金とは、事業を行うために継続的に必要な資金、すなわちランニングコストです。

創業融資の申し込み時に提出する創業計画書には運転資金を記載する欄があり、運転資金としていくらの融資を希望するかを明確にする必要があります。

今回は運転資金の概要や、創業融資の申し込みに際して押さえておきたい情報について解説します。

創業融資と呼ばれる制度について、運転資金以外の条件・特徴もあわせて解説した記事もありますので、ぜひこちらもご覧ください。

CONTENTS

創業融資 運転資金とは

はじめに、創業融資の申し込み時に記載が必要となる運転資金について、どのようなものであるかを解説します。

運転資金の概要

運転資金とは、事業を行うために継続的に必要となる資金です。

ランニングコストとも呼ばれます。

 

運転資金は金額の変動こそありますが、基本的に毎月必ず発生します。

しかし、創業直後は売上収入がなく赤字が続く状態であり、収入から運転資金を払うことができません。

そのため、創業前に運転資金としてある程度の資金を確保する必要があります。

 

創業融資の申し込み時に提出する創業計画書には、必要な資金と調達方法を記載する欄があります。

必要な資金は創業資金として必要な金額であり、設備資金と運転資金と2つの欄について、それぞれ内訳の記載が必要です。

資金調達方法は、自己資金・知人等からの借入・公庫からの借入・その他の借入と手段別に金額を記載します。

 

運転資金の具体例として、以下の支出が挙げられます。

  • ・商品や材料の仕入
  • ・外注費、業務委託費
  • ・消耗品費
  • ・支払手数料
  • ・通信費
  • ・人件費
  • ・地代家賃
  • ・広告宣伝費
  • ・リース料
  • ・減価償却費

上記はあくまで一例であり、事業のために毎月発生する費用はすべて運転資金となります。

 

なお、融資申し込みに必須である創業計画書の運転資金欄はあまり広くないため、細かな内訳を記載するのは困難です。

しかし、創業融資の申し込み時には事業に対する計画の具体性が求められ、詳細な説明が必要となります。

たとえ自分の中に明確なビジョンが存在しても、融資審査の担当者に伝わらなければ評価につながりません。

そのため、必須資料である創業計画書とは別に、より詳しい事業計画を説明するための事業計画書を別途用意するのが一般的です。

運転資金は大きく2種類に分けられる

運転資金は事業のために毎月発生する支出全般と紹介しました。

そんな運転資金ですが、性質によってさらに以下の2種類に分けられます。

  • 固定費
    売上額に関係なく金額が一定の支出です。
    前項で紹介した支出のうち「地代家賃」「リース料」「減価償却費」等が該当します。
  •  
  • 変動費
    売上の有無や金額等の要素によって変動する支出です。
    主な例として「仕入」が挙げられます。

生活費は含まれない

運転資金に含まれるのは、あくまでも事業のために毎月発生する支出のみです。

生活費は事業に関係しないため、創業融資の運転資金に含まれません。

運転資金の中に生活費を含めてしまうと、事業関連の資金と生活費を明確に区別できていないとみなされ、悪印象を与える恐れがあります。

事業とプライベートを明確に区別に、運転資金に含まれるものを正しく把握しましょう。

 

もし生活費に含まれてしまうか判断に悩む費用があれば、専門家である税理士に相談するのが安心です。

設備資金と運転資金の違い

創業計画書の「必要な資金」欄は、設備資金と運転資金に分けられています。

 

設備資金とは、事業のために必要な設備の購入・用意・整備などに要する資金です。

設備の具体例として、以下の内容が挙げられます。

  • ・土地や建物などの不動産
  • ・建物
  • ・外装、内装工事
  • ・機械
  • ・車両
  • ・什器備品
  • ※消耗品との違いとして、1単位10万円以上または耐用年数が1年以上という基準があります

設備資金と運転資金の大きな違いは支出の頻度です。

運転資金は前述したように毎月必ず発生します。

 

一方で、設備資金が必要となるタイミングは決して多くありません。

上述した設備はいずれも購入時の金額は大きいものの、その後何年・何十年にもわたって使用し続けることができます。

そのため、設備資金の支出が起こるのは設備を購入する特定のタイミングのみであり、一切発生しない年もあります。

 

設備資金としてもっとも大きな額を要するタイミングが開業時です。

開業時は事業のために必要な設備が一切整っていない状態であり、事業内容や業種によっては多額の設備投資を行う必要があります。

そのため創業融資では、設備資金の方が限度額が大きい・設定できる返済期間が長い傾向があります。

 

とはいえ、設備資金であればいくらでも融資を受けられるわけではありません。

事業における必要性や金額の妥当性を考慮した上で金額が決定されます。

創業計画書の運転資金欄の書き方・注意点

前章で、創業融資の申し込みには創業計画書が必須であり、その中に運転資金を記載する欄があると紹介しました。

続いては、創業計画書の運転資金欄の書き方および注意点について詳しく解説します。

運転資金として妥当な額とは

創業直後は売上収入がないため、創業資金として用意した分から必要な支出を行います。

運転資金も同様に創業資金から支払います。

その後売上収入が出てくれば、必然的に売上から運転資金を含めた各種費用を支払うことになるでしょう。

すなわち創業資金としての運転資金は、安定した売上が出て運転資金が払えるようになるまでの期間分を用意することになります。

 

それでは、創業時に用意する運転資金として妥当な額はどれくらいでしょうか。

創業融資の運転資金として認めてもらいやすい額は、3ヶ月分が目安となります。

より正確に表現すると、創業時に運転資金として用意する分は6ヶ月分が目安であり、そのうち3ヶ月分までを融資によって調達するイメージです。

 

3ヶ月を超える運転資金の融資が必要な場合、採算性が低いとみなされる恐れがあります。

3ヶ月分の運転資金は、会社に何かあっても耐えうるだけの資金目安といわれています。

そして起業から黒字化までにかかる期間は、平均7ヶ月程度です。

あくまで黒字化にかかるまでの期間であり、実際はより早い段階で売上収入は発生しているでしょう。

以上の内容から、創業時に6ヶ月分の運転資金を用意し、そのうち3ヶ月分を融資で調達するのが妥当といえます。

 

なお、運転資金3ヶ月分はあくまで目安です。

事業内容によっては黒字化までにかかる期間がさらに長いケースもあるでしょう。

3ヶ月分を超える運転資金の融資を受けたい場合、以下のポイントを押さえることが大切です。

  • ・3ヶ月分を超える長期の運転資金が必要な理由を明示する
  • ・将来的に返済できる見込みがある旨を客観的に明示する

事業の見通し欄と矛盾がないようにする

創業計画書の運転資金欄を記載する上で大切なのが、事業の見通し欄と矛盾がないようにすることです。

 

「必要な資金と調達方法」欄の下に、「事業の見通し(月平均)」欄があります。

「事業の見通し(月平均)」欄は毎月の売上高や主な支出について見通しを記載する部分です。

毎月の主な支出はランニングコストのことであり、運転資金の内容と一致するはずです。

 

事業の見通し欄と運転資金欄に記載された額にズレがあれば整合性がないとみなされ、悪印象や低評価につながる恐れがあります。

見通しや採算性に根拠があることや、入念な検討や計算をした旨をアピールするため、ほかの欄と矛盾がない内容を記載する必要があります。

創業融資の運転資金について専門家に相談するのが安心

創業融資を申し込むためには、事業の見通しや必要な資金額の試算などを行う必要があります。

これらには会計や経営の知識が必要であり、専門知識のない人が正確な試算をするのは容易ではありません。

運転資金や融資額、事業計画の内容などに不適当な部分があると、融資審査に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 

創業融資の運転資金として適切な額を設定するには、専門家に相談するのが安心です。

専門家のサポートを受ければ、ご自分の負担を最小限に抑えながらも根拠があり現実的な内容の創業計画を立てることができます。

運転資金の金額に限らず、設備資金の融資額や返済期間の提案、さらには書類作成のサポートなども受けられます。

創業融資の申し込みを一人ですべて対応しようとせず、ぜひ専門家へご相談ください。

まとめ

創業計画書に記載する運転資金とは、毎月必ず発生するランニングコストを意味します。

創業直後は売上収入がないため、創業資金としてある程度の運転資金を用意する必要があります。

創業時に用意しておきたい運転資金は6ヶ月分、そのうち融資を受けるのは3ヶ月分が目安です。

 

必要な資金額や事業の見通しなど会計・経営の知識が必要な部分について、専門知識のない人が自分で対応するのは容易ではありません。

適切な創業計画書を作成するため、専門家のサポートを受けるのが確実です。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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