自己資金は、創業融資の審査で重視されるポイントの1つです。
自己資金が全くない、もしくは少ないと、創業融資の審査に落ちてしまう恐れがあります。
融資を受けられるとしても、希望額よりも低くなってしまうでしょう。
創業融資で高額の借入を受けるためには、なるべく多くの自己資金を用意するのが理想です。
今回は創業融資を受けるのに必要な自己資金の割合や、自己資金割合を増やす上での注意点について解説します。
以下の記事で自己資金がない状態で創業融資を申し込む際の注意点について解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
創業融資に必要な自己資金の割合の目安
始めに、創業融資を受けるために必要な自己資金の割合について解説します。
最低基準は1割程度
自己資金について明確な定めがある創業融資制度として、新創業融資制度が挙げられます。
新創業融資制度はこれから事業を始める人および事業開始後税務申告を2期終えていない人を対象とした融資制度です。
新創業融資制度では、以下に該当する人に対して「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が要件として定められています。
- ・新たに事業を始める人
- ・事業開始後税務申告を1期終えていない人
創業前後のタイミングの場合は一部のケースを除き、創業資金総額の10分の1以上の自己資金がなければ申し込み自体ができません。
創業融資に該当する制度として他にもいくつかの種類がありますが、自己資金要件が定められているのは新創業融資制度のみです。
したがって、創業融資全般における自己資金の最低基準は、新創業融資制度の要件である1割程度といえるでしょう。
融資額の3割程度が目安
前項で紹介した「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という基準は、創業融資を申し込む上で最低限準備すべきラインです。
実際は、融資額の3割程度の自己資金を用意するのが理想といえます。
融資額の3割程度という目安は、日本政策金融公庫総合研究所による「2022年度新規開業実態調査」から推測できます。
こちらの調査結果によると、2022年度における資金調達先別の金額は以下の通りです。
- ・自己資金:271万円
- ・金融機関等からの借入:882万円
- ・配偶者、親、兄弟、親戚:49万円
- ・友人、知人等:52万円
- ・その他:20万円
創業資金のうち自己資金の平均は、金融機関等からの借入の3割程度の額となっていることがわかります。
年度によって金額に多少の変動はあるものの、全体的な割合にそれほど大きな違いはありません。
金融機関等からの借入すべてが日本政策金融公庫の創業融資とは限りませんが、必要な自己資金の割合を判断する上での参考にできでしょう。
そもそも|自己資金は必須なのか
結論として、自己資金がなくても創業融資を受けられるケースは存在します。
最初に少し触れたように、新創業融資制度以外の創業融資には自己資金要件がありません。
将来的な返済能力が十分と判断されれば、自己資金がなくても融資を受けられる可能性は十分にあります。
信用情報の傷や税金の滞納歴がないのはもちろん、説得力のある事業計画を立てることも大切です。
とはいえ実際のところ、自己資金が大きいほど審査で有利なのは事実といえます。
自己資金以外の面で十分な返済能力を示す必要がありますが、決して容易ではありません。
そもそも自己資金がない・少ない状態は、創業に向けた準備が不十分と判断されてしまう恐れがあります。
たとえ融資を受けられるとしても、融資額が希望よりも下がったり金利が高くなったりと、条件が悪くなってしまうでしょう。
自己資金なしで創業融資を受けられるケースがあるとはいえ、自己資金が多いに越したことはありません。
将来的に創業を考えている場合、創業融資の申し込みを視野に入れて早いうちから自己資金の用意を始めましょう。
創業融資 自己資金割合を増やす上での注意点
創業融資の審査で有利になるよう、融資額に対する自己資金割合をなるべく大きくするのが理想です。
この章では、自己資金割合を増やす上での注意点を紹介します。
資本金と自己資金はイコールではない
大前提として、資本金と自己資金はイコールではありません。
融資審査でチェックされるのは資本金ではなく、あくまでも自己資金となります。
自己資金と認められるのは、お金の出所が明確であり、借入金ではないと証明されたお金のみです。
資本金には自分で用意したお金だけでなく、親戚や友人・知人からの借入が含まれている可能性があります。
資本金がどこから出てきたかは、財務諸表を見るだけでは判断できません。
仮に資本金がすべて自分で用意したお金であっても、出所を明確に示せない限りは自己資金として認められないのです。
創業融資の申し込み時には、自己資金の出所を証明する書類が必要となります。
資本金の証明だけでは不十分である点に注意しましょう。
自己資金と認められるお金を正しく把握する
自己資金として認められるのは、お金の出所が明確であり、借入金ではないと証明されたお金のみと紹介しました。
ここでは、自己資金と認められるお金・認められない可能性があるお金、それぞれについてより詳しく解説します。
自己資金として認められるお金
出所を証明しやすく自己資金としてスムーズに認められるお金として、以下の例が挙げられます。
- 預貯金
- 本人名義の口座の貯金が対象です。
- なお、残高の大小だけでなく、口座取引の内容もチェックされます。
- 口座残高の中に借入金が含まれている場合、その分は自己資金として認められません。
- 贈与
- 親族等からの贈与も自己資金として認められます。
- お金の出所を示す書類として、贈与契約書を用意しておくと確実です。
- 出資金
- 会社設立に際して外部から受けた出資金も自己資金として認められます。
- 資産の売却によって得た資金
- 有価証券や土地、その他資産の売却によって得た資金が該当します。
- お金の出所を証明するため、売買契約書や譲渡証明書が必要です。
- これらの書類がない場合、売却資産であっても自己資金として認められない恐れがあります。
- 現物出資
- 事業に必要となる現物資産によって出資した分も自己資金に含められます。
- なお、現物出資をする場合は時価算定が必要です。
- みなし自己資金
- みなし自己資金とは、創業融資の申し込み前に使用した事業資金を意味します。
- 例として、オフィスの契約時に支出した敷金・礼金、設備投資に要した資金等が挙げられます。
- みなし自己資金の証明書類として、契約書や領収書が必要です。
自己資金として認められない可能性があるお金
以下のお金は自己資金として認められない可能性があります。
- タンス預金
- タンス預金とは、銀行口座に入れず自宅等で保管しているお金や財産を指します。
- タンス預金は、お金の出所の証明やお金の流れの記録ができません。
- 仮に自身の給与等から貯蓄したものであっても、証明する手段がない以上は自己資金として認められません。
- 借入金
- 既に紹介したように、借入金は自己資金として認められません。
- 預貯金の中に借入金が含まれていた場合、預金残高から借入金部分を引いた額が自己資金となります。
- 有価証券
- 株式等の有価証券は現金同等物として扱われますが、そのままでは自己資金として認められません。
- 売却して現金にする必要があります。
まとめ
創業融資の審査では、自己資金の金額や割合が非常に重要視されます。
自己資金なしで融資を受けられるケースもありますが、自己資金がある場合に比べて条件が厳しくなります。
創業融資の審査をスムーズに通過し希望額の融資を受けるためには、自己資金をなるべく多く用意するのが理想といえます。
自己資金はお金の出所が明確であり、借入金ではないと証明されたお金のみが該当します。
自分で用意したお金であっても、タンス預金のようにお金の流れを追えないものは自己資金として認められません。
自己資金に該当するお金であっても、証明書類がなければ認められない可能性もあります。
自己資金に該当するものや必要書類について押さえ、創業融資の審査に向けて自己資金割合を増やしていきましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士