
資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)とは、日本政策金融公庫による融資制度のひとつです。
一般的な融資制度と違い、資本性ローンの借入金は金融機関の審査において自己資金に含めることができます。
ほかにも期限一括返済のため月々の返済負担が軽い等の様々なメリットがある制度です。
ただしメリットだけでなく、利益が出ている場合は高い利率が適用される、適用要件が厳しい等の注意点も存在します。
資本性ローンの利用を検討する前に、メリットと注意点両方の十分な理解が必要です。
今回は日本政策金融公庫の資本性ローンについて詳しく解説します。
創業融資全般については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
※今回は「資本性ローン」という言葉を「挑戦支援資本強化特例制度」の意味合いで用いています。
※本記事では国民生活事業の制度に絞って紹介しています。
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CONTENTS
資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)の概要

資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)とは、財務体質強化や資金調達の円滑化支援を目的とした制度です。
資本性ローンの特徴として、同制度による借入額は資本性資金に該当し、金融機関の審査において自己資本に含めることができる点が挙げられます。
資本性ローンを利用できるのは、以下2つの要件を満たす事業者です。
- 1.以下①~⑥いずれかの融資制度の対象になる事業者
- ①新規開業資金
- ②新事業活動促進資金
- ③海外展開・事業再編資金
- ④事業承継・集約・活性化支援資金
- ⑤企業再建資金
- ⑥ソーシャルビジネス支援資金
- 2.以下2つの要件を満たす
- ・地域経済活性化にかかる事業を行う
- ・(税務申告を1期以上行っている場合)原則として所得税等を完納している
融資額の使い道は、該当する融資制度が定める設備資金および運転資金と同じ内容が適用されます。
新規開業資金の対象になる事業者の場合、新規開業資金の資金使途がそのまま適用されるイメージです。
資本性ローンの適用利率は、直近の業績および返済期間によって異なります。
税引後当期純利益が黒字の場合、以下の利率が適用されます。
- ・返済期間5年1ヶ月:3.60%
- ・5年1ヶ月超7年以内:3.90%
- ・7年超10年以内:4.15%
- ・10年超15年以内:4.40%
- ・15年超20年以内:4.65%
返済期間が長いほど高い利率が適用される仕組みです。
税引後当期純利益が赤字の場合、返済期間に関係なく利率は0.5%が適用されます。
資本性ローンについて、その他の基本情報を紹介します。
- ・融資限度額:7,200万円
- ・返済期間:5年1ヶ月以上20年以内
- ・担保、保証人:どちらも無
- ・その他条件
- ・申し込み時に事業計画書の提出が必要
- ・完済まで、四半期ごとの経営状況の報告等を含む特約を結ぶ必要がある
資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)のメリット

資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)のメリットを4つ紹介します。
金融機関の審査において自己資本に含められる
資本性ローンの大きなメリットは、同制度による債務は金融機関の審査において自己資本とみなすことができる点です。
金融機関の融資審査は、債務が少なく自己資本割合が大きいほど有利になる傾向があります。
資本性ローンの債務は負債ではなく自己資本として扱われるため、審査に大きな影響を及ぼしません。
したがって他の融資を利用する場合に比べ、追加融資を受けやすくなるといえます。
なお、資本性ローンの債務を自己資本として扱えるのは、あくまでも金融機関の資産査定を受ける場面のみです。
会計上は他の融資と同じく借入金として扱われます。
劣後性を有している
資本性ローンは劣後性を有します。
劣後性とは返済順位が後回しになる性質のことです。破産手続きが必要になった場合、劣後性を有する債務は他の債務よりも返済順位が下がります。
劣後性がメリットになる理由として以下の2つが挙げられます。
- ・劣後性の存在によって返済するべき債務に明確な順位をつけられるようになる
- ・返済順位が下がるため、「資本に近い借入金」という性質を維持できる
資本性ローンを金融検査で自己資本として扱えるのも、資本性ローンが劣後性を有するためです。
期限一括返済のため月々の返済負担が軽い
期限一括返済のため月々の返済負担が軽い点も資本性ローンのメリットです。
通常の融資は毎月元金と利子の両方を支払う必要があります。
一方で資本性ローンは期限一括返済であり、毎月返済するのは利息のみです。
そのため、月々の返済負担は非常に軽く済みます。
借入期間中の資金繰りを圧迫する恐れが少ないため、返済が滞るリスクもほとんどないでしょう。
業績に応じた金利設定が適用される
前述のように、資本性ローンは業績に応じた金利設定が適用される仕組みです。
税引後当期純利益が黒字の場合は3.60~4.65%、赤字の場合は0.50%と、金利が大きく異なります。
利息を完全になくすことはできませんが、負担を抑えられる点は大きなメリットといえるでしょう。
なお、税引後当期純利益が黒字でも、以下の要件をすべて満たす場合は融資後3年間の金利が0.5%となります。
- 1.民間金融機関の支援を受けた上で事業計画書を策定している
- 2.以下の金額のうち、1で支援を担当した民間金融機関からの融資額が2分の1を超えている
- 事業計画上必要になる資金-自己資金による調達額
- 3.融資後3年間以下2つの要件を満たせる
- ・支援を担当した金融機関に対して事業計画の進捗について報告する
- ・支援金融機関からの経営指導を受けることが可能
資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)の注意点

最後に、資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)の注意点を3つ紹介します。
利益が出ている場合は高い利率が適用される
概要で紹介したように、資本性ローンは利益が出ている場合は高い利率が適用される仕組みです。
利率は3.60~4.65%と、融資の中でも比較的高い水準となっています。
利益が出ており融資額も高額な場合、利息だけでもかなりの負担になってしまう可能性があります。
税引後当期純利益が赤字の場合は利息が0.5%に下がりますが、利息を抑えるために赤字状態を作り出す行為は健全ではありません。
また、資本性ローンは繰り上げ返済ができません。
残債を減らせないため、期間中はずっと高額の利息を払い続けることになる可能性もあります。
期限一括返済のため最終回に多額の支出が発生する
資本性ローンのメリットとして、期限一括返済のため月々の返済負担が軽い点を挙げました。
月々の返済負担が軽い点は確かにメリットですが、同時に借入額を一括で返済する必要がある点がデメリットになり得ます。
期限に一括で返済できるだけの資金を用意しておく必要がある上、返済によって資金繰りが急激に悪化する恐れもあります。
資本性ローンは月々の返済負担が軽いため期間中の資金繰りにはあまり影響しませんが、期限前後の資金繰りには注意が必要です。
適用要件が厳しい
資本性ローンは適用要件が比較的厳しい制度です。
適用要件を改めて紹介します。資本性ローンを利用するには、以下2つの要件を満たす必要があります。
- 1.以下①~⑥いずれかの融資制度の対象である
- ①新規開業資金
- ②新事業活動促進資金
- ③海外展開・事業再編資金
- ④事業承継・集約・活性化支援資金
- ⑤企業再建資金
- ⑥ソーシャルビジネス支援資金
- 2.以下2つの要件を満たす
- ・地域経済活性化にかかる事業を行う
- ・(税務申告を1期以上行っている場合)原則として所得税等を完納している
1の融資制度はいずれも細かな要件が定められている制度です。
また、選択肢に含まれる融資制度の対象でも、資本性ローンを利用するにはさらに厳しい条件を満たす必要があるケースもみられます。
たとえば③の「海外展開・事業再編資金」は、本来海外展開を行う事業者を広く対象とする制度です。
しかし資本性ローンを利用できるのは、「海外展開・事業再編資金」対象者のうち、海外直接投資(転貸資金を除く)を行う事業者に限ります。
このように適用要件が厳しいため、利用難易度は高い制度といえます。
まとめ
資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)は、借入金を金融機関の資産査定において自己資本とみなせる点が大きな特徴です。
ほかにも、業績に応じた金利が適用される・月々の返済負担が軽い等のメリットがあります。
一方、利益が出ている場合は金利が高い・期限一括返済のため最終回に多額の支出が発生する等のデメリットに注意が必要です。
資本性ローンは一般的な融資とは異なる性質を持つ制度です。
メリットとデメリットの両方を把握した上で、利用するべきか入念な検討をしましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士