コミットメントラインとは、あらかじめ契約した期間や融資枠の範囲内であれば、審査なしで融資を受けられる契約です。
一度契約をすればスピーディーな資金調達が可能になるため、安定した資金繰りが可能になります。
一方、金利とは別に手数料が発生するため、一般的な融資よりも負担額が大きくなる傾向です。
ほかにも注意するべきポイントが存在するため、コミットメントラインについて理解を深めた上で利用を検討する必要があるでしょう。
今回はコミットメントラインの仕組みやメリット、注意点について詳しく解説します。
なお、コミットメントラインは性質上、設立から間もない企業は利用するのが難しい制度です。
設立直後の企業でも利用できる融資については以下の記事で解説しています。
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CONTENTS
コミットメントラインの概要
はじめにコミットメントラインの概要を紹介します。
コミットメントラインとは
コミットメントラインとは、あらかじめ契約した期間や融資枠の範囲内で、申込者の請求に基づき審査なしで融資を受けられる契約です。「銀行融資枠」とも呼ばれます。
コミットメントライン契約の締結後、金融機関は契約した枠内での融資申し込みについて原則として拒否できません。
なお、コミットメントラインは大きく以下の2種類に分けられます。
リボルビングライン
資金使途やタイミングを問わず、契約した枠内であれば好きなタイミングで融資を受けられる契約です。
単に「コミットメントライン」と呼ぶ場合、一般的にはリボルビングラインのことを意味します。
スタンドバイコミットメントライン
緊急事態への備えとして一定の融資枠を確保する契約です。
非常時・不測の事態が発生した場合のみ融資を受けるのが前提となり、単なる資金調達手段としては用いられません。
コミットメントラインの契約形態
コミットメントラインの契約形態は2通りに分けられます。それぞれ詳しく解説します。
バイラテラル方式
バイラテラル方式は、各金融機関と個別に契約を締結する方法です。「相対型」とも呼ばれます。
1つの金融機関との契約となるため、後述するシンジゲート方式に比べると融資限度額が低めの傾向です。
シンジゲート方式
シンジゲート方式は、複数の金融機関と契約する方法です。「協調型」とも呼ばれます。
複数の金融機関によって組成されたシンジゲート団と申込者が、1つの契約書に基づき同一条件で契約を締結します。
複数の金融機関から融資を受けられるため、バイラテラル方式に比べると融資限度額が高くなります。
対象企業
コミットメントラインの対象になるのは「特別融資枠契約に関する法律」の適用対象法人です。
同法の「第二条 定義」から要件を満たす法人の具体例を紹介します。
- ・会社法に規定される大会社(資本金5億円以上または負債の部の合計額が200億円以上)
- ・資本金3億円超の会社
- ・純資産の額が10億円超の会社
- ・監査証明を受ける必要のある株式会社
- ・会社法第二条第二号に規定する外国会社のうち、一定の要件を満たす会社
- ・保険業法第二条第五項に規定する相互会社
- ・金融商品取引法第二条第九項に規定する金融商品取引業者のうち、一定の要件を満たす会社
- ・貸金業法第二条第二項に規定する貸金業者
コミットメントラインの対象になるのは、規模の大きい法人および特殊な業種の法人といえるでしょう。
コミットメントラインのメリット
この章ではコミットメントラインのメリットを2つ紹介します。
スピーディーな資金調達が可能になる
コミットメントラインの大きなメリットは、スピーディーな資金調達が可能になることです。
通常、融資を受けるには審査に通過する必要があります。
審査にかかる期間はケースによって異なりますが、申し込んでから1週間から1ヶ月程度が目安です。
資金が必要な場面になってから融資を申し込んでも手遅れというケースが有り得ます。
コミットメントラインの場合、契約の枠内であれば審査なしで融資を受けられます。すでに融資契約は締結済みのため、新たに行う手続きもほとんどありません。
申し込みさえすればすぐに融資が実行されるため、資金調達の時間を大幅に短縮できます。
なお、金融機関は原則としてコミットメントラインで融資の申し込みを断ることができません。
そのため、金融機関の都合に左右されることなく自社の好きなタイミングで融資を受けられます。
資金繰りが安定する
コミットメントラインは資金繰りの安定化にも有用な手段です。
一度契約を締結すれば、契約の枠内で自由に融資を受けられます。
必要なタイミングでほぼ確実な資金調達が可能になるため、資金繰りの安定化につながります。
資金繰りの悪化が原因で関係者に迷惑をかける恐れや、大口のチャンスを逃す恐れ等を最小限にできるでしょう。
なお、前章で紹介したように、コミットメントラインは大きく2種類に分けられます。
好きなタイミングでの資金調達に適しているのはリボルビングラインの方です。
スタンドバイコミットメントラインは、緊急で資金が必要な場面のみを前提としています。運転資金等の調達には適していないためご注意ください。
コミットメントラインの注意点
続いて、コミットメントラインの注意点を3つ紹介します。
金利とは別に手数料が発生する
大きなデメリットとして、金利とは別に手数料が発生する点が挙げられます。そのため、通常の融資に比べて負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。
手数料は大きく以下の2種類に分けられます。
コミットメントフィー
融資枠のうち、利用していない分にかけられる手数料です。一般的には融資額の〇%と設定されます。
コミットメントフィーは融資枠を契約・確保するための対価といえるでしょう。
なお、コミットメントフィーはバイラテラル方式・シンジゲート方式の両方で発生します。
アレンジメントフィー
アレンジメントフィーはシンジゲート方式で発生する手数料です。
シンジゲート方式において、各種調整を行うアレンジャーに支払う対価としての性質を持ちます。
「契約したけれど結局融資を受けなかった」となった場合でも手数料の支払いは必要です。
特にコミットメントフィーは未利用枠にかかるため、融資を受けない場合の方が高くつきます。
このように融資を利用しなくても負担が発生する点に注意が必要です。
対象となる企業が限られている
前述のように、コミットメントラインの対象になるのは規模の大きい法人や特定の業種を営む法人のみです。
一定の業種を営む場合を除き、未上場の中小企業で契約できるケースは非常に少ないでしょう。
資金調達手段としてメリットが大きい方法ではあるものの、そもそも利用できない可能性が高い点を押さえる必要があります。
審査が厳しい
コミットメントラインの契約をすれば融資を受ける際の審査は不要になりますが、契約前の審査は当然行われます。
そして一般的な融資に比べて、コミットメントラインの契約時に実施される審査の方が厳しい傾向です。
単純に審査基準が厳しいだけでなく、金融機関との信頼関係の有無も重要になるといわれています。
そのため、初めて取引する金融機関でいきなり契約を結ぶのは難しいといえるでしょう。
まとめ
コミットメントラインとは、あらかじめ契約した枠内であれば審査なしで融資を受けられる契約です。
対象になるのは「特別融資枠契約に関する法律」の適用対象法人、すなわち大規模法人や特定の業種を営む法人のみとなります。
コミットメントラインの大きなメリットとして、審査の必要がなくなるためスピーディーな資金調達が可能になる点が挙げられます。
資金繰りが安定するため、キャッシュ不足が原因で関係者に迷惑をかけたり大口のチャンスを逃す等のリスクを最小限にできるでしょう。
ただし、金利とは別に手数料がかかる点に注意が必要です。
また、対象法人が限られている上に審査が厳しいため、そもそも利用できないというケースも多くみられます。
コミットメントラインの利用を前提とし過ぎず、あくまで選択肢の1つとして考えておくのが良いでしょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士