納税資金のために借入は可能?融資交渉のポイントについて解説!

2024.05.30

法人税や法人事業税などの税金は利益を基に計算します。そのため、事業年度が終了し決算作業を進めるまではっきりとした税額はわかりません。

結果として想定よりも税額が大きく、納税によって資金繰り悪化の可能性が出てきたり納税資金が足りないというケースが起こり得ます。

 

融資は資金調達が必要な場面で多く用いられる手法です。

しかし、融資は原則として資金使途が限られている上、融資目的を伝える必要があります。

そのため「納税資金のために借入は必要?」「どのように交渉すれば良いかわからない」とお悩みの人も多いでしょう。

 

今回は納税資金のための融資の可否や、交渉の際に押さえるべきポイントについて詳しく解説します。

 

資金使途については以下の記事でも解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。

 

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CONTENTS

納税資金の融資の可否

結論として、納税資金のために融資を受けられるケースもありますが、すべての納税資金が融資の対象になるわけではありません

納税資金のために借り入れる場合、税金の種類が主な判断基準となります。

この章では納税資金で融資を受けられるケースと受けられないケースをそれぞれ詳しく解説します。

納税資金で融資を受けられるケース

納税資金で融資を受けられる可能性があるのは、一時的に資金が足りず、以下のような税金が払えないケースです。

  • ・法人税
  • ・法人住民税
  • ・法人事業税

これらの税額は利益に基づいて決まるため、想定よりも税額が大きく納税資金が足りないというケースは珍しくありません。

上記の納税資金が足りておらず、かつ、売掛金のような将来的に入金される債権が多く存在する場合は、納税資金のための融資を受けられる可能性が高いです。

納税資金の融資が受けられないケース

納税資金の融資が受けられないケースとして、大きく3つのパターンが挙げられます。

消費税の納税資金が不足している場合

消費税は税を負担する人と納める人が異なる間接税です。

法人が支払う消費税は、売上等にかかる消費税から仕入等にかかる消費税を引いた額であり、納付する法人が直接負担しているわけではありません。

よって消費税分の納税資金の不足は自己責任とみなされ、融資の対象外となります。

源泉徴収税の納税資金が不足している場合

源泉徴収とは給与や報酬から一定率の所得税を差し引き、納税者に代わって納める制度です。

源泉徴収によって差し引いた税金を源泉徴収税や源泉所得税と呼びます。すなわち源泉徴収税も消費税と同様、法人が負担する税金ではありません。

そのため、源泉徴収税の納税資金も融資の対象外です。

将来的な入金の見込が薄い

将来的な入金の見込が薄い、つまり資金繰りが解消される可能性が低い場合も、納税資金の融資を受けられない可能性が高いです。

納税資金に限らず、銀行は返済能力があると判断した場合のみ融資を行います。

特に納税資金は短期融資が前提であり、近いうちに資金繰り改善の見込がある場合のみが対象となります。

売掛金等のような近いうちに入金見込みのある債権が少ない場合、融資は難しいと考えた方が良いでしょう。

納税資金 融資交渉のポイント

「納税資金で融資を受けられるケース」で挙げたパターンに当てはまっても、必ずしも融資を受けられるとは限りません。

あくまで交渉の余地があるというだけで、最終的な判断は面談や審査の結果を踏まえて行われます。

納税資金のために融資を受けられるか否かは、交渉によって左右される可能性が高いです。

この章では融資交渉のポイントを4つ紹介します。

取引をしたことのある金融機関へ交渉する

納税資金の融資は、これまでに取引をしたことのある金融機関に交渉するのがおすすめです。

理由として以下の2点が挙げられます。

  • ・すでに信頼関係が構築されているため、交渉がスムーズに進む可能性が高い
  • ・融資契約を締結し返済実績を積めばさらに信頼が高まり、将来高額の融資を受けられる可能性が上がる

反対に、納税資金の融資を初めて取引する金融機関に申し込むのはおすすめできません。

納税資金の融資は、短期融資が前提かつ必要な額がわかりやすいといった特徴があります。

このように、条件がわかりやすい融資をあえて取引実績のない金融機関に申し込むと

「なぜ取引実績のある金融機関に申し込まなかったのか」

「懸念事項があるとして断られたのでは」

等、不信感を持たれてしまう恐れがあります。

 

特別な理由がある場合を除き、取引をしたことのある金融機関を選ぶのが良いでしょう。

試算表を作成し納税額を明確にする

納税資金のために融資を申し込む際は、事前に試算表を作成して納税額を明確にしましょう

 

金融機関は、融資による貸付金を申し込み時の資金使途と異なる用途で使われることを警戒します。

そのため、納税資金のための融資であれば、納税額分のみの融資が大前提です。

 

しかし、納税資金のための融資は決算書が完成するよりも前に申し込むのが一般的です。

決算作業が完了し納税額が明確になってから融資に申し込んでも、納税期日に間に合わない恐れが大きいためです。

 

納税額分の融資が前提でありながらも、融資に申し込むタイミングではまだ決算書ができていません。

そのため、大まかな納税額および必要な融資額を伝える手段として試算表を作る必要があります。

 

試算表は決算作業が終わる前に作成するため、決算書ほど正確ではありません。

しかし納税額の目安程度であれば、試算表の情報だけでも把握できます。納税額だけでなく、当期の業績や現時点の財務状態を証明する資料としても有用です。

 

会計年度の終了後なるべく早いうちに試算表を作成し、大まかな納税額を計算した上で融資の申し込みをしましょう。

将来的な資金繰りに大きな問題がない旨を伝える

融資交渉の際は、将来的な資金繰りに大きな問題がない旨をアピールしましょう。

 

法人税等は納付期日が同じで一度に多額の支出が発生し得るため、普段は資金繰りが安定した企業でも一時的に資金不足になるケースが珍しくありません。

しかし、通常は資金繰りに問題がない企業であれば、支出が重なる時期さえ乗り越えればその後は再び安定するのが一般的です。

実際「売掛金等の債権がすぐに入金されれば問題なく納税できる」「期日が少し遅ければ問題ない」といったケースも多いでしょう。

 

金融機関は返済能力の有無を重視します。そのため一時的に資金繰りが悪化した状態でも、その後の改善がほぼ確実であれば問題視されません。

むしろ「懸念事項がなく安心して取引できる顧客」として好意的に見てもらえる可能性もあります。

 

キャッシュ不足が一時的で将来的な資金繰りは問題ない見込みを伝えれば、融資交渉がスムーズに進むと期待できます。

短期融資を前提とする

納税資金は原則として短期融資です。

納税資金分の返済期間が長期の場合、次の決算期を迎える頃にも前期の納税資金として受けた融資を返済中というケースが起こり得ます。

このような事態を避けるため、納税資金のための融資は短期融資が前提となります。

返済期間は金融機関によって異なる可能性がありますが、6ヶ月以内のケースが多いです。

 

長期融資の申し込みは断られる可能性が高いだけでなく、納税資金の融資に関する知識が不十分と悪印象を与えてしまう恐れがあります。

納税資金のための融資は短期が前提である旨を押さえた上で交渉しましょう。

まとめ

納税資金で融資を受けられる可能性があるのは、法人税や法人住民税、法人事業税等の納税が目的の場合です。

消費税や源泉徴収税のように、企業が直接負担するわけではない税金では利用できません。

また、法人税等の納税資金として充てる目的であっても、近い将来に資金繰りが解消される可能性が低いと融資を断られる可能性が高いです。

 

納税資金として融資を受けられそうなケースに該当しても、必ずしも融資を受けられるとは限りません。

融資を受けられるか否かは交渉の結果に大きく左右されます。

納税資金のための融資を確実に受けられるよう、融資交渉のポイントをしっかり押さえましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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