
資金調達余力とは、金融機関からあといくらぐらい借入が出来そうかを表すものです。
融資の可否や借入額を決める際の判断基準になります。
資金調達余力の求め方には計算式があるわけではなく、主に3つの指標を用いて測ります。
3つの指標はそれぞれ全く異なる要素を基にしており、1つでも引っかかると融資を受けられない可能性があります。
懸念事項となる要素を解消する、もしくは融資以外の資金調達方法を選ぶのが良いでしょう。
今回は資金調達余力を測る指標や、資金調達余力が小さい場合の資金調達手段について解説します。
なお、資金調達余力は事業実績がある程度ある場合に考えるべき事項です。創業融資の場合は押さえるべきポイントが異なります。
創業融資の審査に通るためのコツについては以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
資金調達余力とは

資金調達余力とは、金融機関からあといくらぐらい借入が出来そうかを表すものです。
「借入力」「借入余力」「返済余力」とも呼ばれます。
資金調達余力は、すでに事業実績のある企業に対する融資の可否や融資額の判断に深く関わる要素です。
明確な計算式があるわけではなく、様々な指標を用いて求められます。
資金調達余力を図る3つの指標

資金調達余力を図る指標は大きく3つです。それぞれ詳しく解説します。
借入月商倍率
借入月商倍率とは、現在の借入金残高が、平均的な月間売上高の何倍に相当するかを表す財務指標です。
借入月商倍率は以下の計算式で求めます。
- 借入月商倍率=借入残高÷平均月商
※月額月商は一般的に年商÷12ヶ月で求めますが、季節変動の大きい企業の場合は季節変動指数の考慮が必要です。
たとえば借入残高が5,000万円、平均月商が2,000万円の場合、借入月商倍率は以下のようになります。
- 5,000万円÷2,500万円=2.5
一般的に、借入月商倍率の目安は3倍程度といわれています。
前述した計算式で求めた値が3以下であれば、借入月商倍率の面では特に問題ないでしょう。
3~6はやや懸念されるレベル、6を超えると新たに融資を受けるのは難しいと判断されます。
借入月商倍率は財務諸表の数字から簡単に計算できるため、融資申し込みの前に必ずチェックしましょう。
借入月商倍率が6よりも大きい場合、借入残高が減るまで新規融資の申し込みは避けることをおすすめします。
債務償還年数
債務償還年数は、キャッシュフローの全額を返済に充てた際、現時点の借入金を完済できるまでに何年かかるかを示す指標です。
債務償還年数の求め方は以下のように複数存在します。
- 最もシンプルな計算式
- 借入金残高÷簡易キャッシュフロー(経常利益+減価償却費-法人税等)
- 借入金残高から運転資金を差し引く計算式
- (借入金残高-運転資金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)
- より実態に近づけるための補正をかけた計算式
- (借入金残高-運転資金-現預金残高)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)
借入金が多い、およびキャッシュフローが少ない場合は年数が長くなります。
そして最もシンプルな計算式は借入金残高をそのまま分子にあてるため、債務償還年数が長くなってしまう仕組みです。
実態に近づけるための補正をかけた計算式を使えば、債務償還年数はシンプルな計算式を使う場合よりも短くなります。
実際に金融機関が資金調達余力を測る際は、補正をかけた計算式を使うと考えられます。
ただし、計算に用いる要素が増えれば式が複雑になりミスの恐れが大きくなるため、自身で計算する際はシンプルな式を使うのがおすすめです。
債務償還年数は、10年がひとつの目安となりますが、内閣府が公表した「令和3年度 年次経済財政報告」によると、2020年度における主要業種の債務償還年数は11.2年です。
中小企業に限ると13.0年で、目安である10年を大きく上回ります。
このように目安と実態が大きく異なるため、債務償還年数の理想について明確な基準を出すのは難しいのが事実です。
有利子負債依存度
有利子負債依存度は、総資産のうち有利子負債が占める割合を示すものです。
以下の計算式で求めます。
- 有利子負債依存度(%)=有利子負債÷総資産
※有利子負債の例として、借入金や社債などが挙げられます
有利子負債依存度の目安は60%です。60%を超える場合は危険性が高く、新たな融資は難しいと判断される可能性が高くなります。
資金調達余力が小さい場合|融資以外の資金調達方法

資金調達余力の指標は全部で3つあり、一般的にはすべての指標を用いて判断されると考えられます。
そして1つでも目安よりも悪い数値の指標がある場合、資金調達余力が低いと判断される可能性が高いです。新たに融資を受けるのは難しくなってしまうでしょう。
資金調達余力が低い場合は無理に融資を受けようとせず、融資以外の方法を検討するのも1つの手段です。
融資以外の資金調達方法を3つ紹介します。
補助金や助成金等の制度
補助金は、国や自治体の政策実現を目的に事業者をサポートする制度です。
主に経済産業省や地方自治体が管轄となります。
助成金は事業活動のアシストや事業の安定を目的とする制度で、主な管轄は厚生労働省です。
補助金と助成金の違いとして以下の3点が挙げられます。
- 審査の有無
- 補助金は審査があり、要件を満たしても受給できるとは限りません。助成金は要件を満たせば原則として受給されます
- 審査期間
- 補助金は審査期間が短め、助成金は長めもしくは随時募集されています
- 金額
- 制度によるため一概にはいえませんが、助成金よりも補助金の方が受給額が高めです
補助金と助成金はどちらも様々な種類があり、制度によって目的や要件、金額等が大きく異なります。
自身に合う制度を選ぶため入念な情報収集が必要です。
なお、申し込みから補助金・助成金の振込までには時間がかかるため、スピーディーな資金調達はできません。
出資を受ける
出資による資金調達のメリットとして以下の3点が挙げられます。
- ・返済不要の資金を調達できる
- ・補助金等の制度や後述するクラウドファンディングに比べてスピードが早い
- ・資金使途が自由
一方、以下の点に注意が必要です。
- ・出資割合によっては現在の経営陣以外の投資家が大きな議決権を持つ可能性がある
- ・株主総会による決議や法務局への登記等必要な手続きが多い
特に議決権割合は経営に直接的な影響を与えるため、出資による持株比率の変化には注意する必要があります。
なお、出資による資金調達では、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家について検討するのも良いでしょう。
ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家は、いずれも未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業に対して投資をします。
ベンチャーキャピタルおよびエンジェル投資家について解説した記事もありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングはインターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。
クラウドファンディングの主なメリットとして以下の3点が挙げられます。
- ・実績に関係なく実施できる資金調達方法である
- ・多くの人から賛同や応援を得る、プロジェクトの存在が広く知られる等の理由から高額の資金を集められるケースもある
- ・マーケティングや宣伝の面でも効果がある
一方、以下のような注意点が存在します。
- ・クラウドファンディングによる資金調達が成功するとは限らない
- ・プロジェクトとして公開したアイディアを第三者に盗まれる恐れがある
- ・手間のかかる場面が多い
クラウドファンディングの詳細は以下の記事をご覧ください。
まとめ
資金調達余力を測る指標として、借入月商倍率・債務償還年数・有利子負債依存度の3つが挙げられます。
それぞれ異なる考え方に基づくものであり、資金調達余力を判断する際は3つの指標すべてをチェックするのが一般的です。
目安よりも悪い数値の指標が1つでもある場合、新たな融資を受けるのは難しいと考えられます。
資金調達余力が小さい場合は融資以外の資金調達方法を検討するのが良いでしょう。
資金調達余力を測る指標の中には複雑な計算が必要なものもあり、専門知識のない人が正確な数値を出すのは容易ではありません。
資金調達余力を計算したい人や、資金調達余力について疑問や不安がある人は、ぜひ融資支援に強みを持つ専門家へご相談ください。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士