現物出資とは?要件とメリット・デメリットについて解説!

2024.09.07

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現物出資とは、金銭以外の財産を出資に充てる方法のことです。

対象にできる財産や現物出資が認められるケースには一定の要件があり、金銭の出資よりもルールが複雑といえます。

 

現物出資にはさまざまなメリットがある一方で、注意するべきデメリットも存在します。

現物出資を検討している場合、要件およびメリット・デメリットそれぞれについての理解が必要です。

 

今回は現物出資について詳しく解説します。

 

資本金・出資金の決め方については以下の記事をご覧ください

 

 

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CONTENTS

現物出資とは

現物出資とは、金銭以外の財産を出資に充てる方法です。

会社設立時に限らず、増資の際にも現物出資を行うことができます。

現物出資の対象になる財産

現物出資の対象にできるのは以下の要件を満たす財産です。

  • ・譲渡可能なもの
  • ・金銭で価格を評価できるもの
  •  

法務局の公式サイトにて、対象となる財産の具体例が挙げられています。内容を一部引用して紹介します。

 

  • 動産
  • 商品、半製品、原材料、器具備品、事務用品、車両など
  •  
  • 不動産
  • 土地、建物、地上権、賃借権など
  •  
  • 有価証券
  • 株式、社債、国債証券、地方債証券など
  •  
  • 知的財産権
  • 著作権、商標権、特許権、営業権など
  •  
  • のれん
  • 取引先関係や営業上のノウハウなど
  •  
  • 金銭債権
  • 取引先への売掛金や貸付金など
  •  
  • その他
  • 営業の一部または全部

現物出資という名前ではありますが、有形の財産に限らず、知的財産権やノウハウなど無形資産も認められています。

現物出資が認められる要件

会社設立時の現物出資ができるのは発起人のみです。

発起人とは、株式会社の設立に際して出資および会社設立の各種手続きを行う人のことです。

ただし、単に出資や会社設立手続きをしただけでは発起人としては扱われません。

発起人となるのは、発起人として定款に署名押印をした人のみです。

※以下の記事で詳しく解説しております。

 

 

持分会社の場合には発起人制度がなく、社員となる者であれば現物出資が認められます。

 

会社設立時に現物出資を行う場合は、定款に以下の記載が必要です。

  • ・対象者の氏名(法人の場合は名称)
  • ・対象の財産に関する詳細情報(種類、取得日、所在地など)
  • ・当該財産の価額
  • ・現物出資を行う者に対して割り当てる株式数

また、原則として裁判所が選任した検査役により、財産価値が適切であると評価を受ける必要もあります。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は検査役による調査が不要です。

  • ・対象とする財産の合計が500万円以下である
  • ・対象とするのが市場価格のある有価証券であり、かつ、記録された価額が市場価格以下である
  • ・専門家によって、対象の財産の価額が相当である旨の証明を受けている
  •  ※弁護士、公認会計士、税理士など。不動産の場合は不動産鑑定士による評価のみ認められます

増資のタイミングであれば発起人以外による現物出資も可能です。

 

なお、今回紹介した要件は株式会社の場合のものです。

持分会社で行う場合は、定款に記載するべき事項などに少し違いがあります。詳しくは税理士や弁護士などの専門家にご確認ください。

【参考】定款の記載事項

現物出資に関する項目は、定款の「相対的記載事項」に該当する項目です。

 

定款の記載事項は以下の3種類に分けられます。

 

  • 絶対的記載事項
  • 定款に必ず記載しなければならない項目です。
  • 絶対的記載事項に漏れがある場合、対象の定款そのものが無効とみなされ、公証人による認証が受けられません。
  •  
  • 相対的記載事項
  • 法律上記載する義務はないものの、記載しなければ効果を発揮しない項目です。
  • 記載しなければ無効になってしまうため、相対的記載事項に該当する内容の決定をした場合は必ず記載しなければなりません。
  •  
  • 任意的記載事項
  • 前述した2種類に該当しないもので、かつ、違法性のない項目です。ほかの書類等によって明らかにすれば効力が発揮されます。

 

現物出資は定款に記載しなければ効力を発揮しない事項です。

記載がなければ現物出資は行われていないものとみなされ、対象の資産について資本金に加えることができなくなります。

現物出資の財産の評価方法

現物出資の対象とする財産の評価方法について特別な定めはありません。

ただし、実際の価値よりも過大な価額としてしまえば、書類上の財産価額と実態に大きな差が生じ、利害関係者に影響を及ぼす恐れが大きいです。

また、財産等の実際の価額が定款に記載された額を著しく下回る場合、発起人と設立時取締役には不足分の支払義務が生じます。

そのため、評価方法に定めがないとはいえ、適切な方法での評価による正しい価値算定が必要です。

 

なお土地や建物などの不動産については、鑑定評価額を下回る価額にはできない旨が定められています。

そのほかの資産については額面や時価を計上するのが一般的です。購入時の価額ではない点にご注意ください。

現物出資のメリット

現物出資のメリットを3つ紹介します。

資本金の総額を増やせる

現物出資のメリットの1つが、資本金の総額を増やせる点です。

金銭が少ない場合でも、現物出資を行えば多額の資本金を計上できる可能性があります。

 

資本金は会社の体力を表す指標であり、社会的信用を大きく左右する要素です。

たとえ事業が好調で黒字が出ていても、資本金が少額の場合は信用を得られない恐れがあります。

反対に利益自体はそれほど出ていなくても、資本金の総額が大きければそれだけで信頼につながるケースも多いです。

節税対策になる

現物出資によって節税対策ができるケースもあります。

 

現物出資が節税につながるのは、対象の資産が償却資産の場合です。

現物出資の対象とした財産は貸借対照表に資産として計上し、通常の資産と同じような会計処理を行います。

 

取得価額が10万円以上の固定資産を用いた場合、通常通り減価償却を行う必要があります。

減価償却費は経費の一種です。経費の額が増えることで所得を抑えられるため、法人税等の節税につながります。

資金が少なくても発起人になれる

現物出資を行えば、資金が少なくても発起人になることができます

 

資本金に定めはなく、理論上は1円でも設立可能です。発起人となるための出資金額についても特に定めはありません。

 

しかし前述のように、資本金は会社の体力を表す要素のため、ある程度の資本金を用意するのが理想です。

そのため元手がない状態で会社を設立するのはデメリットが大きいといわれています。

 

現物出資を行えば、資金が少なくても十分な資本金を計上できる可能性があります。資金が少ない場合でも発起人になれる方法といえるでしょう。

現物出資のデメリット

続いて現物出資のデメリットを3つ紹介します。

手続きに時間がかかる

現物出資の最も大きなデメリットは、手続きに時間がかかる点です。

理由として以下の3つが挙げられます。

  • ・対象の資産について価格調査を行う必要があるため
  •  検査役による調査を受ける場合はさらに時間がかかります
  • ・定款に記載するべき事項が増え、作成するのに時間がかかるため
  • ・登記が必要な資産の場合、別途登記手続きを行う必要があるため

現物出資の場合、会社設立までにかかる時間が、金銭による出資の場合よりも長くなる点にご注意ください。

現金比率が低くなる

現物出資を行う場合、資本金の額に対する現金比率が低くなります

「多額の資本金が計上されているが現預金そのものは少ない」というケースになりやすいのです。

そのためイメージと実際の現預金残高に乖離が起こりやすく、いつの間にか資金不足に陥っているという事態も起こり得ます。

 

会社設立直後は設備投資や事業に向けた準備など、支出が発生しやすいです。

現物出資の場合は現金比率が低くなりやすいからこそ、キャッシュフローや現預金残高に注意する必要があります。

出資者に所得税が課される

現物出資は「個人から法人に対する資産の譲渡」であり売却行為とみなされるため、評価額によっては出資者に所得税が課される恐れがあります。

具体的には現物出資によって取得した株式等の評価額が、現物出資の対象とした資産よりも高額の場合に所得税が課されます。

ただし現物出資に用いる資産の種類によって計算の仕方が異なるため、詳しくは専門家にご確認ください。

まとめ

現物出資とは、金銭以外の資産を用いて出資をする方法です。

会社設立時に現物出資ができるのは発起人のみであり、定款には一定の項目を記載する必要があります。

また、対象となる財産には一定の定めがあり、適正な価値算定を行う必要もあります。

 

現物出資は資金が少なくても出資できるなどさまざまなメリットがある方法です。

一方で手続きに時間がかかる、現金比率が低くなるといったデメリットも存在するためすべてのケースに適している方法とは限りません。

メリット・デメリットのそれぞれを押さえた上で、自身にとって適切な方法であるかを判断しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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