マル経融資とは、商工会や商工会議所等から経営指導を受けている小規模事業者が利用できる融資制度です。
経営改善に必要な資金を、無担保・無保証人で借りることができます。
マル経融資は金利が低いなどのメリットがある一方で、時間がかかるなどのデメリットも存在します。
また、マル経融資を利用するためにはさまざまな手続きが必要なため、要件や利用するまでの流れについて十分な理解が必要です。
今回はマル経融資について詳しく解説します。
なお、マル経融資は創業融資としては利用できません。創業融資については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
マル経融資とは
マル経融資とは、商工会や商工会議所等から経営指導を受けており、一定の要件を満たす小規模事業者が利用できる融資制度です。
小規模事業者の資金調達力に関する課題を解決する目的で導入されています。
マル経融資の概要について紹介します。
- 対象者
- 以下の要件をすべて満たす小規模事業者(商工業者に限ります)
- ・商工会、商工会議所、都道府県商工会連合会が実施する経営指導を受けている
- ・商工会や商工会議所などの長の推薦を受けた
- 限度額
- 2,000万円
- 返済期間
- 運転資金:7年以内 うち据置期間1年以内
- 設備資金:10年以内 うち据置期間2年以内
- 利率
- 日本政策金融公庫の定める特別利率F※
- 担保や保証人の必要性
- どちらも不要
※日本政策金融公庫による融資は、融資制度の種類、資金使途、融資期間、担保の有無などによって異なる利率が適用される仕組みです。
同じ融資でも条件によっては「特別利率」の対象になり、基準利率よりも低い利率が適用されるケースもあります。
また、マル経融資には災害等の影響を受けた事業者を対象とする特例制度が存在します。
特例は前述した内容以外に追加の要件が定められており、通常よりも限度額や返済期間が有利な内容となっている仕組みです。
具体例として、比較的新しい特例である2つの制度について紹介します。
1つ目は新型コロナウイルス感染症関連の特例です。
新型コロナウイルスの影響により、平均売上高が一定以上減少している、もしくは債務負担が重くなっている事業者が対象です。
融資限度額は、通常の限度額に加えて別枠1,000万円が定められています。
返済期間は20年、うち据置期間が5年以内(別枠の1,000万円以内)です。
2つ目に紹介するのが、令和6年能登半島地震関連の特例です。
令和6年能登半島地震で災害救助法の適用を受けた地域内に事業所があり、対象の事業所が当該地震により直接影響を受けた事業者を対象とします。
また、直接的な被害を受けた事業者と一定の取引がある事業者も、間接被害を受けたとして、同特例の対象になります。
融資限度額は、通常のマル経融資の限度額+別枠1,000万円です。適用される利率はケースによって異なります。
マル経融資のメリット
マル経融資のメリットを2つ紹介します。
無担保・無保証人で利用できる
マル系融資の特徴かつ最も大きなメリットは、無担保・無保証人で利用できることです。信用保証協会による保証も不要です。
担保や保証人を用意できない事業者でも利用できるため、融資を受ける上での負担が少ないといえるでしょう。
日本政策金融公庫にはほかにも無担保・無保証人の制度があるものの、中でもマル系融資は特に貸付限度額や利率が有利な制度となります。
金利が低い
前項でも紹介したように、マル系融資は適用される金利が低めです。
適用される利率は特別利率F、2024年8月1日時点では1.45%となっています。
なお日本政策金融公庫の利率は、同じ枠内でも一定の幅が定められているケースが一般的です。
たとえば有担保で融資を利用する事業者の特別利率Aは0.95~2.85%で、正確な利率は利用者の条件などを考慮して決定されます。
一方でマル系融資の特別利率Fは1.45%と一律で幅がないため、事前に利率を正確に把握できる点もメリットといえるでしょう。
マル経融資のデメリット
続いて、マル経融資のデメリットを2つ紹介します。
創業直後は利用できない
マル経融資を利用できるのは、同一の商工会・商工会議所の管轄地区内で直近1年以上事業を営んでいる事業者です。
つまり、最低でも創業から1年以上経過していないと利用できません。創業融資としての利用はできない点にご注意ください。
おすすめの創業融資については以下の記事をご覧ください。
融資実行までに時間がかかる
マル経融資は商工会等の経営指導を受けている小規模事業者が対象と紹介しました。
そして商工会等からの経営指導ですが、原則として6ヶ月以上の期間受ける必要があります。
その後、商工会等における審査に通過した場合のみ推薦を受けることができ、融資への申し込みが可能となる仕組みです。
また、融資に申し込んでからは日本政策金融公庫による審査も行われます。
すなわち商工会等と公庫の計2回審査が行われる仕組みです。両方の審査にかかる期間を合わせると2ヶ月以上となるケースもあります。
以上の理由から、マル経融資は融資利用に向けて行動を開始してから融資実行までに時間がかかる制度です。
マル経融資を利用するまでの流れ
マル経融資を利用するまでの流れは大きく5つの工程に分けられます。それぞれ詳しく解説します。
商工会議所等の経営指導を受ける
マル経融資を利用するためには、商工会議所等の経営指導を受ける必要があります。
もし商工会議所等に加入していない場合、まずは加入手続きが必要です。
加入手続きの完了後、原則として6ヶ月以上にわたり経営指導を受けることになります。
経営指導員へ相談する
マル経融資を受けるには、商工会や商工会議所等による推薦を受ける必要があります。
まずはマル経融資を利用したい旨について、申し込み窓口となる経営指導員への相談が必要です。
審査会の審査・推薦を受ける
商工会議所等による推薦は必ず受けられるとは限らず、審査会による審査に通過する必要があります。
審査会は民間金融機関の関係者や税理士などの専門家、外部有識者等などの複数名によって構成されます。
審査の結果、審査会の全員の一致があれば推薦を受けられるという仕組みです。
必要書類を提出し融資に申し込む
商工会議所等の審査に通過するとマル経融資の申し込みが可能になります。
マル経融資の申し込みに必要な書類の例は以下の通りです。
- ・直近2期分の決算書および確定申告書
- ・(直前の決算から6ヶ月以上が経過している場合)最近の残高試算表
- ・法人税、法人住民税、事業税の納税を証明できる書類
- ※個人事業主の場合は所得税、住民税、事業税の領収書や納税証明書
- ・(法人の場合)履歴事項全部証明書
- ・(設備投資の申し込みの場合)対象の設備の見積書やカタログ等
融資の申し込み額によっては事業計画書など追加書類が必要になります。必要書類の詳細については、商工会等の経営指導員や公庫の担当者にご確認ください。
日本政策金融公庫による審査が行われる
必要書類を提出し申し込みが完了した後、公庫による審査が行われます。
審査にかかる期間は最短でも2週間ほどといわれています。
審査に通過し契約締結が完了した後に、融資額の入金が行われる仕組みです。
以降は返済計画表の内容に沿って毎月返済を進めていくことになります。
まとめ
マル経融資は小規模事業者が無担保・無保証人で融資を受けられる制度です。
金利が低く設定できる返済期間が長いため、融資を受ける上での負担も少なめといえるでしょう。
マル経融資を受けるためには、商工会議所等による経営指導を原則として6ヶ月以上受ける必要があります。
また、商工会議所等の審査会と日本政策金融公庫の計2回審査を受けることになります。
マル経融資の申し込みまでに時間がかかる点や、必要な手続きが多い点に注意が必要です。
マル経融資は一見複雑な制度ですが、商工会議所等のサポートを前提とする制度です。わからないことがあっても経営指導員に相談しながら進められます。
今回紹介した内容を押さえつつ、商工会議所等のサポートを受けながら、マル経融資の申し込みに向けた準備を進めましょう。
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