IT導入補助金とは、小規模事業者等のITツール導入の支援を目的とする補助金です。
複数の申請区分が存在し、それぞれ補助対象や補助率、導入するITツールの要件などが異なります。
IT導入補助金を申し込むのであれば、まずは自社に適した申請区分を選ぶことが大切です。
今回はIT導入補助金の概要や申請区分ごとの詳細、IT導入補助金の申請方法について詳しく解説します。
会社設立時に利用できる補助金については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、ITツール導入の支援を目的とする補助金です。
2024年2月16日以降の受付分については、全部で5つの申請区分が設けられています。
一部の申請区分を除き中小企業および小規模事業者等を対象としています。個人事業主も要件を満たせば利用可能です。
この章ではIT導入補助金の対象経費や補助率などについて、申請区分ごとに詳しく解説します。
通常枠
通常枠は、自社の課題に合ったITツールの導入による業務効率化や売上アップをサポートする申請区分です。
ITツールの要件として、以下の業務プロセスのうち1種類以上を保有するソフトウェアを申請することが定められています。
- 1.顧客対応・販売支援
- 2.決済・債権債務・資金回収管理
- 3.供給・在庫・物流
- 4.会計・財務・経営
- 5.総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
- 6.その他業務固有のプロセス
なお「汎用・自動化・分析ツール」は汎用プロセスに該当し、単体での使用はできません。
補助率は2分の1以内です。
補助額は対象となるITツール等の保有プロセス数によって以下のように異なります。
- ・1プロセス以上:5万円以上150万円未満
- ・4プロセス以上:150万円以上450万円以下
補助対象となる経費の例は以下の通りです。
- ・ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分) ※必須
- ・拡張機能、データ連携ツール、セキュリティなどのオプション
- ・導入コンサルティング、導入研修やマニュアル作成、保守サポートなどの役務
インボイス枠(インボイス対応類型)
IT導入補助金のインボイス枠は2種類存在します。
インボイス対応類型は、インボイス制度に対応した各種ソフトやハードウェア等の導入による生産性向上をサポートすることを目的とする類型です。
補助率および補助額は、補助対象の種類によって以下のように異なります。
- インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト
- ・補助率4分の3以内、5分の4以内:補助額50万円以下
- ※中小企業は4分の3以内、小規模事業者は5分の4以内となります
- ・補助率3分の2以内:50万円超~350万円以下
- PC・ハードウェア等
- ・PCやタブレット等:補助率2分の1以内、補助額10万円以下
- ・レジや券売機等:補助率2分の1以内、補助額20万円以下
補助対象となる経費の例は以下の通りです。
- ・インボイス制度に対応しており、会計・受発注・決済の機能を1種類以上有するソフトウェア ※必須
- ・拡張機能、データ連携ツール、セキュリティなどのオプション
- ・導入コンサルティング、導入研修やマニュアル作成、保守サポートなどの役務
インボイス枠(電子取引類型)
インボイス枠(電子取引類型)は、取引関係における発注者のうち一定の要件を満たす事業者を対象とする制度です。
インボイス制度に対応した受発注ソフトを導入し、当該取引関係における受注者(小規模事業者等)に対して無償でアカウントを供与し利用させる場合に適用を受けられます。
補助対象となる経費は、インボイス制度に対応した受発注システムです。
補助率および補助額は、発注者の規模によって以下のように異なります。
- ・中小企業、小規模事業者等:3分の2以内
- ・その他の事業者等:2分の1以内
いずれの場合も補助額は350万円以下(下限なし)です。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバーインシデントに関するさまざまなリスクの低減策を支援する制度です。
セキュリティ対策推進枠の補助対象になるのは、ITツールの導入費用及びサービス(最大2年分)です。
具体的には、以下2つの要件を満たすものが対象となります。
- ・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているもの
- ・IT導入支援事業者によりITツール登録されたサービス
補助率は2分の1以内、補助額は5万円以上100万円以下です。
複数社連携IT導入枠
複数社連携IT導入枠は、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援する目的の申請区分です。
業務上のつながりをもつ「サプライチェーン」や、特定の商圏で事業を営む「商業集積地」に属する小規模事業者等が対象となります。
複数社連携IT導入枠は制度の性質上、補助率・補助額が細かく区分されています。
また、補助対象者や補助対象経費についても他の申請区分とは仕組みが大きく異なります。
詳細は、公式サイトの複数社連携IT導入枠に関するページをご確認ください。
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金の申請フローは大きく8つの工程に分けられます。それぞれ詳しく解説します。
※「複数社連携IT導入枠」は例外的に申請フローや交付が決定した後の手続きが異なるため、個別にご確認ください。
制度の概要を把握し申し込む枠を決める
まずはIT導入補助金全体および申請区分ごとの概要を把握し、申し込む枠を決める必要があります。
申請枠が複数設けられている都合上、仕組みが複雑でわかりにくい・申請区分ごとの区別がしにくいと感じるかもしれません。
制度について理解を深め自社に適した枠を選ぶためには、IT導入補助金に詳しい専門家のサポートを受けるのが安心です。
申し込みに際して必要な手続きを行う
IT導入補助金の申し込みをするためには、事前に以下の手続きを行う必要があります。
- 「gBizIDプライム」アカウントの取得
- gBizID(GビズID)とは、1つのID・パスワードで行政の各種サービスにログインできるサービスです。
- IT導入補助金の申し込みではgBizIDプライムを使うため、事前にアカウントを取得する必要があります。
- 「SECURITY ACTION」宣言の実施
- 中小企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組む旨を自己宣言する制度です。
- 2段階の取り組み目標が用意されており、どちらか一方を選ぶ必要があります。
- 「みらデジ経営チェック」の実施
- 経営課題やデジタル化への取組状況を確認し、課題解決に向けた気付きを見つけるためのサービスです。
IT導入支援事業者およびITツールを選定する
自社の経営課題に合ったITツールおよびIT導入支援事業者の選定を行います。
IT導入補助金の公式サイト上で、ツール等を探すのに便利な「ITツール・IT導入支援事業者検索」が公開されています。
必要書類を用意し交付申請を行う
IT導入支援事業者およびITツールの選定が完了したら、交付申請を行いましょう。
交付申請を行うには、IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、申請マイページを開設する必要があります。手続きに時間がかかる可能性もあるため、早めに着手しましょう。
必要書類は申請区分や対象とするツールによって異なるため、詳細はIT導入補助金の募集要項等をご確認ください。
申請内容をもとに審査が行われるため、結果を待つ必要があります。
ITツールの発注~支払いを行う
IT導入補助金の交付決定通知が届いたら、ITツールの発注や支払いなど、補助対象となる事業の実施を行います。
なお、交付決定前に行われたITツールの契約・発注・請求等は、IT導入補助金の補助対象外です。
審査結果および交付決定通知が届くまでは発注等を行わないようご注意ください。
事業実績を報告する
事業実績を報告する流れは以下の通りです。
- 1.「申請マイページ」で、ITツールの発注や納品、支払いなどを行ったことがわかる証憑を提出する
- 2.IT導入支援事業者が内容の確認および必要情報の入力を行う
- 3.内容の最終確認後、補助金の申請者から事務局に対して事業実績報告を提出する
補助金が交付される
補助金額が確定すると、申請マイページで補助金額が確認可能となります。
内容の確認が完了した後に補助金が交付されます。
事業実施効果を報告する
事業実施効果報告の流れは以下の通りです。
- 1.所定の期限内に、補助事業者が申請マイページで必要情報を入力する
- 2. IT導入支援事業者が1の内容について確認する
- 3.2によって問題がなければ事業実施効果報告の提出をする
まとめ
IT導入補助金には複数の申請区分があり、それぞれ目的や対象経費が異なります。
自社に適した申請区分を選ぶためには、IT導入補助金全体および申請区分ごとの概要について把握する必要があります。
制度が複雑であり自社だけで対応するのは難しいため、IT導入補助金に詳しい専門家のサポートを受けるのが安心です。
IT導入補助金の対象になるのは、補助金の交付決定後に行われたITツールの契約・発注・請求等のみです。
交付決定前の分は補助対象外のためご注意ください。
本記事で紹介した内容をしっかり押さえ、必要な手続きを漏れなくこなしましょう。
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BIZARQ株式会社代表公認会計士