資金調達ラウンドとは、スタートアップ企業が成長のために資金調達を行うプロセスを段階ごとに分けたものです。
各プロセスは「ステージ」と表現され、ステージごとに特徴や資金調達方法に違いがあります。
自社の状況に適した資金調達方法を選ぶためには、現在資金調達ラウンドにおいてどのステージにいるか確認するのが効果的です。
今回は資金調達ラウンドについて詳しく解説します。
なお、会社設立直後のステージは「エンジェル」に該当し、代表的な資金調達方法として創業融資が挙げられます。
会社設立直後に利用できる資金調達方法については以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。
オンライン無料相談 受付中
CONTENTS
資金調達ラウンドとは
資金調達ラウンドとは、スタートアップ企業が成長のために資金調達を行うプロセスを段階ごとに分けたものです。
企業の成長に伴い資金調達ラウンドを進めていき、どのフェーズにいるかを考慮しながら財務戦略を立てていきます。
なお、資金調達ラウンドは投資家が投資を行う際の目安にも使われます。
投資家目線の場合は投資ラウンドという表現を用いるケースが多いです。
資金調達ラウンド|ステージごとの特徴と資金調達方法
資金調達ラウンドは大きく6つのフェーズに分けられます。それぞれの状況や資金調達手段として適している方法について詳しく解説します。
エンジェル
資金調達ラウンドの第一段階であるエンジェルは、起業前の段階です。
アイディアのみがある状態で、ビジネスの準備段階ともいえるでしょう。
エンジェルラウンドの特徴として以下の3点が挙げられます。
- ・準備段階のため多額の資金は必要としていない
- ・資金調達手段の選択肢が少ない
- ・従業員や顧客をほとんど抱えていない
エンジェルラウンドにおける主な資金調達手段として以下の2つが挙げられます。
- エンジェル投資家
- 起業前後で実績が少ない、もしくは実績がない会社に対して投資を行う個人投資家です。
- ベンチャーキャピタル
- 上場していないベンチャー企業やスタートアップ企業への投資を専門としている投資会社やファンドです。
- 投資対象はエンジェル投資家と似ていますが、ベンチャーキャピタルは法人、エンジェル投資家は個人という違いがあります。
エンジェルラウンドにおける資金調達の注意点として、出資比率が挙げられます。
投資家や投資ファンドからの出資を多く受け、投資家等の出資比率が高くなってしまうと、経営の自由度が下がってしまう恐れが大きいです。
出資比率による権利の違いについては以下の記事をご覧ください。
シード
シードラウンドは、起業直前や起業直後の段階です。企業として芽が出る前、つまり種の状態であるためシードと呼ばれます。
シードラウンドの特徴として以下の4つが挙げられます。
- ・エンジェルラウンドと同様に準備段階のため、ほかのラウンドほどの資金を必要とはしていない
- ・会社設立費用、市場調査、人材確保などに充てる資金が必要
- ・売上収益が発生する仕組みがないため赤字が続きやすい
- ・会社としての実績がないため資金調達手段の選択肢は少ない
シードラウンドの資金調達手段の例は以下の通りです。
- エンジェル投資家
- ベンチャーキャピタル
- 創業融資
- 創業直後で実績がない状態でも申し込める融資の総称です。
- 日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して実行する制度融資などを利用するケースが多くみられます。
- 創業融資については以下の記事をご覧ください。
- クラウドファンディング
- インターネットを通じて不特定多数の支援者から資金を調達する方法です。
- プロジェクト(アイディア内容)次第では高額の資金を集められる可能性もあります。
- クラウドファンディングについては以下の記事をご覧ください。
シリーズA
シリーズAラウンドは、本格的にビジネスを開始した段階です。
シリーズAラウンドの特徴として以下の3つが挙げられます。
- ・製品やサービスの本格的なリリースを開始しており、認知度の向上やユーザー獲得を目指す段階
- ・PMF(Product Market Fit)の実現が1つの目標となる
- ※自社製品が市場に適合している、つまり製品やサービスが売れる状態となっていること
- ・設備投資、人件費、マーケティング費など高額のコストが発生する場面が多い
なお、前項のシードラウンドとシリーズAラウンドの間に「プレシリーズA」を設けるケースもあります。
プレシリーズAの特徴は以下の通りです。
- ・本格的なリリースの前で、製品やサービスの改善を重ねている段階
- ・事業が軌道に乗る前で収益が発生していないものの、高額のコストが発生する
エンジェルラウンド・シードラウンドまでは、起業前から用意してきた自己資金のみで対応できる企業も多くみられます。
しかしシリーズAでは設備投資やマーケティング費などのコストが発生するため、本格的な資金調達が必要になるケースが多いです。
事業内容や業種によっては、数千万~数億規模の資金調達が必要なケースも珍しくありません。
シリーズAの資金調達手段として、前項で紹介したシードラウンドと同じく以下の4つが挙げられます。
- ・エンジェル投資家
- ・ベンチャーキャピタル
- ・創業融資
- ・クラウドファンディング
シリーズB
シリーズBラウンドは、ビジネスが軌道に乗り成長が十分に見込める段階です。
シリーズBの特徴を3つ紹介します。
- ・市場における認知度や売上が大きく向上する
- ・売上収益が伸びて経営が安定するため、シリーズBの段階で黒字化するケースも多い
- ・採用活動や新規商品の開発も積極的に行われる
売上収益が発生し黒字化が期待できる一方で、設備投資や新規顧客の開拓などのために支出も発生しやすいです。
そのため、より高額の資金を調達できる手段をとる必要があります。
シリーズBにおける資金調達手段としては以下の例が挙げられます。
- ・ベンチャーキャピタル
- ・日本政策投資銀行からの出資
- ・民間金融機関からの融資
企業としての実績が充実してくるため、メガバンクを含む民間金融機関からの融資も受けやすくなります。
シリーズC
シリーズCは、黒字経営が安定化し、経営基盤のさらなる安定を図る段階です。
また、IPOやM&Aなどを意識し始める時期でもあります。
シリーズCにおいて調達した資金の使い道として、以下の2つが挙げられます。
- ・経営基盤の安定化
- ・企業規模のさらなる拡大
シリーズCの資金調達手段はシリーズBと同じく、以下の3つが主な選択肢といえるでしょう。
- ・ベンチャーキャピタル
- ・日本政策投資銀行からの出資
- ・民間金融機関からの融資
ただし収益が十分に安定しており、追加の資金調達は不要と考えるケースもみられます。
なお、これ以上の事業拡大を考えていないといった理由から、シリーズCが最終的な資金調達ラウンドになる企業も多いです。
シリーズD
シリーズDは、さらなる事業拡大や、IPO・M&Aなどの出口戦略に本格的に着手する段階です。
日本全国および海外を視野に入れた事業展開や、関連事業の開発を進めるケースもみられます。
シリーズCと同様にベンチャーキャピタル、日本政策投資銀行による出資、銀行からの融資などが主な資金調達手段です。
多くのスタートアップ企業にとって、シリーズDが最終資金調達ラウンドとなります。
シリーズCやシリーズDで十分な資金調達を行い、IPOやM&Aにより投資回収を行うという流れが一般的です。
まとめ
資金調達ラウンドは、スタートアップ企業が成長のために資金調達を行うプロセスを段階ごとに分けたものです。
それぞれのラウンドによって調達した資金の使い道や適した資金調達手段が異なります。
自社が資金調達ラウンドのどの段階にいるかを把握した上で、将来を見据えた財務戦略を立てることが大切です。
資金調達を上手く進めて、企業としての成長を実現させましょう。
資金調達に強い税理士によるオンライン無料相談受付中
創業融資・資金調達・補助金申請はサポート実績豊富なBIZARQ会計事務所にお任せください。
現在30分から1時間程度のオンライン無料相談を実施中です。
記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士