ROE(自己資本利益率)とは?企業の収益性を測る基本指標をわかりやすく解説!

2024.12.29

ROE(自己資本利益率)とは、企業の当期純利益に対する自己資本の割合です。

返済義務のない資本をどれだけ効率良く活用できているかを示す指標であり、投資判断に用いられます。

 

ROEが事業を展開する業種の平均を大きく下回る場合、自己資本を上手く活用できていない可能性が高いです。

経営効率や利益貢献が低いという判断につながってしまうため、ROEを上げるための施策が必要なケースもあります。

 

今回はROEの概要や目安、ROEを上げる方法について解説します。

 

ROEと似た概念である「自己資本比率」については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

ROE(自己資本利益率)とは

ROEは「Return On Equity」を略したもので、企業の当期純利益に対する自己資本の割合を意味する言葉です。

日本語では「自己資本利益率」と呼ばれます。

そもそも自己資本とは

自己資本とは、会社のもつ資本のうち返済不要な資本のことです。

貸借対照表の純資産の部に表示される項目で、株主からの出資金や利益剰余金などが該当します。

反対に、会社のもつ資本のうち返済義務がある資本が他人資本です。

借入金や社債など、貸借対照表の負債の部に表示されるものが他人資本に該当します。

なお、自己資本と他人資本をあわせたものを総資産または総資本と呼びます。

ROEからわかること

ROEは、返済義務のない資本をどれだけ効率良く活用できているかを示す指標です。

したがって、投資家目線では「その会社の株を取得する(出資する)ことで、どれだけ効率良くリターンを得られるか」の判断基準になります。

ROEが高いほど自己資本を使って効率良く利益を上げている状態です。

反対にROEが低ければ自己資本を上手く活用できておらず、経営効率や利益貢献が低い状態といえます。

ROEの計算方法

ROEの計算方法は以下の通りです。

  • ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100

 

たとえば当期純利益が20、自己資本が250の場合、ROEは以下のようになります。

ROE=20÷250×100=8%

 

多くの場合、自己資本と純資産の部の合計額は同額のため、純資産の部に記載された額をそのまま用いるケースが多くみられます。

ただしROEを算出する際に用いる自己資本に新株予約権は含みません。

そのため純資産に新株予約権がある場合は、「純資産-新株予約権」の金額を用いる必要があります。

ROAとの違い

ROAは「Return On Assets」を略したもので、総資産利益率を意味します。

ROAの計算式は以下の通りです。

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

自己資本だけを用いるROEと違い、ROAを求める際は自己資本と他人資本の合計である総資産を用います。

 

ROAは、企業が投下した資産をどれだけ効率良く活用できているかを示す指標です。

ROEとROAの違いをまとめると以下のようになります。

 

  • ROE:株主からの出資金等、自己資本をどれだけ効率良く活用できているかを示す指標
  • ROA:企業の総資産に対する収益性を示す指標

 

ROAは資産全体に焦点を当てている指標のため、投資家だけでなく取引先や金融機関等あらゆる利害関係者が重視する要素です。

ROEも重要な指標ではありますが、特に投資家が出資を判断する際に活用されます。

 

なおROEが高くROAが低い場合、自己資本に対する利益率は高いものの、総資本に対する利益率は低いということです。

すなわち他人資本が大きい状態であり、業績悪化や倒産リスクに注意する必要があるといえます。

 

反対にROEが低くROAが高い場合は、自己資本に対する利益率が低く、総資本に対する利益率は高い状態です。

したがって株主から調達した資金を効率良く活用できていない可能性があります。

ROEの目安とは

続いてROEの目安の数値と、数値の根拠となるデータを紹介します。

ROEの平均

今回は中小企業庁による「中小企業実態基本調査」と、同じく中小企業庁の「中小企業白書」で発表されているROEの平均値を紹介します。

 

まずは中小企業実態基本調査のデータです。

中小企業実態基本調査の令和5年度確報(令和4年度決算実績)第10章によると、中小企業のROEの加重平均は10.32%でした。

令和2年度は7.9%、令和3年度は8.29%であり、年々上昇していることがわかります。

 

続いて中小企業白書のデータです。

2024年版中小企業白書 第15表 中小企業(法人企業)の経営指標(2022年度)」の中では、全業種の平均ROEは11.50%となっています。

中小企業実態基本調査の方に記載されているのは加重平均であり、計算方法に少し違いがあるため、ズレが生じていると考えられます。

 

いずれにせよ、中小企業のROEの平均値は10%前後といえるでしょう。

業界別ROEの目安

ROEの平均値は業界によっても大きく異なります。

中小企業白書によると、業種別のROEの平均値は以下の通りです。

 

  • 建設業:12.58%
  • 製造業:10.27%
  • 情報通信業:11.10%
  • 運輸業・郵便業:9.15%
  • 卸売業:30.09%
  • 不動産業、物品賃貸業:9.55%
  • 学術研究、専門・技術サービス業:11.14%
  • 宿泊業、飲食サービス業:4.11%
  • 生活関連サービス業、娯楽業:6.06%
  • サービス業(ほかに分類されないもの):11.08%

出典:2024年版中小企業白書 第15表 中小企業(法人企業)の経営指標(2022年度)

 

前節で紹介した全体の平均はあくまで目安とし、業種別の平均値を目標とするのが良いでしょう。

ROEを上げる方法

最後に、ROEを上げる方法を3つ紹介します。

利益を上げる

ROEの数値は会社の当期純利益を自己資本で割ることで計算すると紹介しました。

したがって自己資本の額が同じ場合、利益を上げればROEの数値も高くなります

 

利益を上げる方法は以下の2種類に大別されます。

  • ・売上を上げる
  • ・コストを削減する

 

売上を上げて利益を上げる方法の例は以下の通りです。

  • ・客単価を増やす
  • ・新規顧客を獲得する
  • ・付加価値の高い事業を展開する

 

コストを削減して利益を上げる方法の例を紹介します。

  • ・使用していない設備の維持費や固定費を見直す
  • ・業務効率化を高める
  •  

ただし、コストを削減し過ぎると業務に支障をきたし、かえって売上減少につながる恐れがあるためご注意ください。

無駄の削減や業務効率化等、不要なコストの削減のみに抑えることが大切です。

総資産回転率を高める

総資産回転率とは、総資産がどれだけ効率的に売上を上げたかを示す指標です。「売上高 ÷ 総資産」で計算します。

「投資 → 販売 →回収」を1回転としており、回転率が高いほど資産を活用できている状態です。

総資産回転率を高める方法は、分子である売上高を増やす方法と、分子である総資産を減らす方法に大別されます。

売上を上げる方法の例は前節で紹介した通りです。

総資産を減らす方法として以下の例が挙げられます。

  • ・不良債権や不良在庫を処分する
  • ・遊休資産を処分する
  • ・借入金の繰り上げ返済を行う

総資産を削減する方法の場合、不要な資産のみを処分することを意識しましょう。

誤って必要な資産を処分することがないよう注意が必要です。

自己資本を減らす

分母である自己資本を減らせばROEの数値が上がります。

自己資本を減らす方法の例は以下の通りです。

  • ・株主への配当を増やし利益剰余金を減らす
  • ・当期純利益のマイナスとなる自社株式の取得を行う
  • ・他人資本を増やし、自己資本の比率を下げる

 

ただし自己資本を減らしすぎると他人資本による影響を受けやすくなる恐れがあるため注意が必要です。

他人資本の割合が大きい、すなわち自己資本比率が低い場合のリスクについては以下の記事をご覧ください。

 

 

まとめ

ROEとは企業の当期純利益を自己資本で割った数値です。

自己資本をどれだけ効率良く活用できているかを示します。ROEが高いほど、自己資本を使って効率良く利益を上げている状態です。

中小企業全体のROEの平均は10~11%程度ですが、業種によって違いが大きいため、業種別の平均を目指すのが良いでしょう。

 

ROEを上げる方法として、利益を上げる、総資産回転率を高める、自己資本を減らすの3つを挙げました。

いずれもROEを上げるという面だけで見れば効果的な方法です。

ただし、何かを減らすという方法は、減らしすぎによるリスクにも注意する必要があります。

 

ROEを上げる施策をとる際はリスクを注意しつつ計画的に行い、小まめな効果分析も実施しましょう。

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吉岡 伸晃

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