海外で資金調達する方法とは?クロスボーダーローンについて解説!

2025.10.08

クロスボーダーローンとは、日本国内の金融機関が海外現地法人に対して直接融資を行う方法です。

融資契約は金融機関と海外現地法人の間で締結されますが、最初の問い合わせは国内親会社から行うのが一般的です。

また、多くのクロスボーダーローンでは国内親会社による連帯保証が必要となります。

 

今回はクロスボーダーローンの仕組みやメリット・デメリット、実際にクロスボーダーローンを提供している金融機関の例を紹介します。

 

以下の記事でさまざまな資金調達方法を紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

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CONTENTS

クロスボーダーローンとは

クロスボーダーローンとは、日本国内の金融機関が海外現地法人(海外子会社)に対して直接融資を行う方法です。

「現地貸付」と呼ぶ金融機関もあります。

クロスボーダーローンの大まかな仕組み

クロスボーダーローンの大まかな仕組みを紹介します。

  • 1. 融資を受けようとする現地法人名義の口座を開設
  • 2.日本国内の親会社から金融機関に対してクロスボーダーローンの相談(問い合わせ)
  • 3.金融機関による審査
  • 4.日本国内の親会社による保証の差し入れ
  • 5.金融機関と海外現地法人の間で融資契約を締結
  • 6.金融機関から海外現地法人に対する融資が実行
  •  1で解説した現地の口座に対して入金が行われます
  • 7.通常の融資と同様、海外子会社から金融機関に対して返済

 

実際の融資契約は金融機関と海外現地法人の間で締結されます。

ただし契約締結の前に、親会社による問い合わせおよび保証の差し入れが必要です。

 

金融機関によって多少の相違がある可能性があるため、詳しくは金融機関へ直接お問い合わせください。

クロスボーダーローンのメリット

クロスボーダーローンの主なメリットとして以下の3つが挙げられます。

  • 親会社の財務状況に影響を与えない
  • ・海外の金融機関からの融資に比べて金利が低いケースが多い
  • 現地通貨で融資を受けられることもある

クロスボーダーローンは日本親会社から金融機関へ利用申込を行いますが、実際に融資契約を結ぶのは海外現地法人です。

親会社が借入を受けるわけではないため親会社の財務状況には影響を与えません。

ほかにも利用する金融機関によっては、現地で融資を受けるよりも金利が低い・現地通貨での借り入れが可能等のメリットも得られます。

クロスボーダーローンのデメリット

クロスボーダーローンの主なデメリットは以下の3つです。

  • ・ほかの資金調達方法に比べて手続きが煩雑な傾向にある
  • 国や地域によっては利用できない
  • 送金コストがかかる

クロスボーダーローンは国を跨ぐ融資である以上、手続きが煩雑な傾向にあります。

資金調達までにどうしても時間がかかってしまう点はデメリットです。

また、国や地域によっては利用できない点や、国内金融機関への返済が海外送金にあたるためコストがかかる点にも注意が必要です。

クロスボーダーローンを提供する金融機関の例

クロスボーダーローンの利用条件は金融機関によって大きく異なります。

この章ではクロスボーダーローンを提供する金融機関の例を6つ紹介します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は「海外展開・事業再編資金(クロスボーダーローン)」という名称でクロスボーダーローンを提供しています。

制度の基本情報を紹介します。

 

  • 利用対象者
  • 以下のいずれかに該当する事業者
  • ・経営革新計画の承認を受けた特定事の海外現地法人
  • ・経営力向上計画の認定を受けた特定事業者の海外現地法人
  • ・地域経済牽引事業計画の承認を受けた特定事業者やみなし特定事業者の海外現地法人
  •  
  • 利用できる国・地域
  • タイ、ベトナム、香港、シンガポール、フィリピン、メキシコ
  •  
  • 利用できる通貨
  • 日本円、米ドル
  •  
  • 資金使途
  • 一定の要件を満たす設備資金および長期運転資金
  •  
  • 融資限度額
  • 14億4千万円
  •  
  • 返済期間
  • 設備資金:20年以内
  • 運転資金:7年以内
  • いずれも据置期間2年以内
  •  
  • 保証人
  • 国内親会社による連帯保証が必要

 

日本政策金融公庫のクロスボーダーローンは中小企業事業の制度の1つです。

経営力向上、経営革新、地域経済の活性化等に取り組む海外現地法人の支援を目的としています。

海外展開・事業再編資金(クロスボーダーローン)の公式サイトはこちら

りそな銀行

りそな銀行は海外進出および海外ビジネス支援を目的とした制度の1つとして、クロスボーダーローンを提供しています。

手続きの基本的な流れは前章の「クロスボーダーローンの大まかな仕組み」で紹介した内容と同様です。

融資限度額や金利等の条件は明記されていないため、詳しくはりそな銀行の店舗へお問い合わせください。

りそな銀行 クロスボーダーローンの詳細はこちら

十六銀行

十六銀行は外為関連サービスを複数提供しており、そのうちの1つがクロスボーダーローンです。

公式サイトから確認できる事項として以下の2つが挙げられます。

  • ・現地通貨建での融資が可能なケースがある
  •  (対象国や取扱通貨に制限があるため要確認)
  • ・原則として親会社による保証が必要

 

利用対象者や上限額など、条件の詳細は十六銀行へ直接お問い合わせください。

十六銀行 クロスボーダーローンの詳細はこちら

北陸銀行

北陸銀行は親会社や海外現地法人のニーズに合わせたさまざまな融資制度を提供しています。

北陸銀行のクロスボーダーローンの特徴は以下の3点です。

  • ・適用される金利は国内での調達金利に基づく
  • ・原則として親会社による保証が必要
  • ・現地通貨で融資できるケースがある

 

融資条件については北陸銀行へお問い合わせください。

北陸銀行 クロスボーダーローンの詳細はこちら

あいち銀行

あいち銀行のクロスボーダーローンは日本円、米ドル、タイバーツでの融資に対応しています(2025年7月時点)。

現地通貨建ての融資であれば、融資額の入金時に為替リスクは発生しません。

ただし子会社から金融機関への返済は海外送金に該当するため、送金コストが発生します。

 

原則として親会社による保証が必要です。

また、金利は日本国内での調達金利に基づきます。

 

あいち銀行 クロスボーダーローンの詳細はこちら

商工中金

商工中金(商工組合中央金庫)は中小企業に対するクロスボーダーローンを複数回実施しており、事例の紹介もしています。

公開されている事例を4つ紹介します。

 

  • カンボジア現地法人に対するクロスボーダーローン
  • 融資対象者:カンボジア現地法人
  • 融資先の業種:パッケージ等の企画製造業
  • 金額:253 万 US ドル
  • 資金使途:既存債務のリストラクチャリング等に必要な資金
  • 詳細はこちら
  •  
  • ベトナム現地法人に対するクロスボーダーローン
  • 融資対象者:ベトナム現地法人
  • 融資先の業種:水回り製品や蝶番等の建築金物の金属加工業
  • 金額:100 万 US ドル
  • 資金使途:既存債務のリストラクチャリング及びベトナム工場拡張
  • 詳細はこちら
  •  
  • マレーシア現地法人に対するクロスボーダーローン
  • 融資対象者:マレーシア現地法人
  • 融資先の業種:厚紙印刷や特殊印刷等を行う印刷業者
  • 金額:2億円
  • 資金使途:工場増設(トレーディングカード需要に応えるための印刷ラインの増設)
  • 詳細はこちら
  •  
  • 中国現地法人に対するクロスボーダーローン
  • 融資対象者:中国現地法人
  • 融資先の業種:ノベルティーやインテリアグッズ、ファブリック小物等の製造
  • 金額:2億円
  • 資金使途:中国工場の生産体制見直しおよび工場の安定稼働のための体制再構築
  • 詳細はこちら

 

商工中金は中小企業専門の金融機関です。

中小企業のサポートを目的とした取り組みの一環として、クロスボーダーローンを提供しています。

ニーズに合わせたオーダーメイド型のサービスを提供するため、同じクロスボーダーローンでも融資先によって条件がまったく異なります。

そのため、クロスボーダーローンについての個別ページはありません。

融資条件等の詳細は商工中金へ直接お問い合わせください。

まとめ

クロスボーダーローンとは日本国内の金融機関から海外現地法人に対して直接融資を行う方法です。

 

クロスボーダーローンの相談や問い合わせ自体は日本親会社から行いますが、入金は海外現地法人の口座に行われます。

そのため、融資を受けても親会社の財務状況には影響を与えません。

海外の金融機関からの融資に比べて金利が低いケースが多い点や、現地通貨で融資を受けられることがある点もメリットです。

一方で、手続きが煩雑、国や地域によっては利用できない、送金コストがかかる等のデメリットがあります。

 

メリットとデメリットの両方を考慮した上で、自社に適した方法であるか検討するべきでしょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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