ホーム » BIZARQインサイト » 会社設立に印鑑は必要?電子化による変化と作成すべき印鑑の種類
会社設立に印鑑は必要?電子化による変化と作成すべき印鑑の種類

全国47都道府県(フルリモート対応)で、会社設立サポートや最適な財務戦略を通じて企業の成長を強力にバックアップする東京・新宿の税理士事務所、BIZARQ(ビザーク)グループ代表(公認会計士・税理士・行政書士)の吉岡伸晃です。
会社設立の準備を進める起業家の方から、「ペーパーレス化やデジタル化が進んでいる今の時代、法人用の印鑑は本当に新しく作らなければならないのでしょうか?」という疑問の声をよく頂戴します。たしかに、電子契約やクラウド会計が普及しつつある現代において、不要な初期コストや手間はできる限り削減したいと考えるのは自然なことです。
結論から申し上げますと、法務局での設立登記手続きの一部においては「印鑑レス」で進めることが可能になりましたが、会社設立完了後の現実的な事業運営においては、依然として印鑑が必要となる場面が数多く存在します。本記事では、会社設立手続きにおける印鑑の必要性やルールの変化、実務上揃えておくべき印鑑の種類や選び方、内部統制上のリスク管理まで、専門家の視点を交えて詳しく解説します。
なお、会社設立手続きの全体的な流れについては、会社設立の流れについてで詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
プロの視点電子化が進む今でも「会社印」の作成を強く推奨する理由
東京・新宿エリアを拠点に、全国47都道府県のスタートアップや中小企業の立ち上げをフルリモートで支援してきた私たちの現場感覚からお伝えすると、会社設立時には「代表者印・銀行印・角印」の3本セットをあらかじめ作成しておくことを強く推奨します。
たしかに、商業登記規則の改正により、マイナンバーカード等を用いた完全オンラインでの設立登記申請を行う場合に限り、法務局への印鑑届出は任意となりました。これにより「制度上は印鑑を作らなくても会社自体は設立できる」という状況が生まれたのは事実です。
しかし、会社は「設立して終わり」ではありません。ネット銀行など印鑑レスで法人口座を開設できる金融機関も増えましたが、実店舗を構える金融機関での融資取引、オフィスの賃貸契約などの重要局面では、依然として書面での実印や銀行印を求められるケースが少なくありません。とりわけ、スタートアップ企業が事業を軌道に乗せるための生命線となる日本政策金融公庫等からの「創業融資」の手続きでは、従来の紙の契約書を用いる場合、法人の実印(代表者印)と法人の印鑑証明書が求められます(※日本政策金融公庫等の電子契約サービスを利用する場合は、契約書への押印は不要となりますが、手続きや契約方法に応じた事前の確認が必要です)。
私たちBIZARQグループは累計8億円超の資金調達を支援してきましたが、金融機関との契約手続きの際、会社の実印や銀行印が手元になく、作成待ちのために融資実行やオフィスの契約スケジュールが大幅に遅延してしまったという失敗例を何度も目にしてきました。「手続き上不要になったから」という理由だけで印鑑を作らないでおくと、事業を最も加速させるべき創業期に思わぬ機会損失を招く恐れがあります。未来の経営をスムーズに進めるための確実な「初期投資」として、設立準備の段階で法人用の印鑑一式を揃えておくのが、最も確実で賢明な判断といえます。
会社設立時の印鑑提出ルール!書面とオンラインの申請方法による違い

会社設立の登記手続きにおいて印鑑が必要かどうかは、「法務局に書面で申請するか」「オンラインで申請するか」という手続きのルートによってルールが明確に異なります。
書面による申請の場合:登記申請までに代表者印の届出が必須
法務局の窓口へ直接書類を持参する、あるいは郵送で登記申請を行う「書面申請」のルートを選択する場合、登記申請までに法人代表者印(会社実印)を作成し、法務局へ届け出ることが法律上必須となります。
登記申請の際に提出する必須書類の中に「印鑑届書」が含まれており、ここに新しく作成した会社の実印を押印し、代表者個人の実印と個人の印鑑証明書を添えて提出する決まりとなっているためです。
設立の準備段階で印鑑の注文・作成が遅れてしまうと、登記申請そのものが後ろ倒しになり、希望していた設立日に会社を設立できなくなる恐れがあります。そのため、定款の作成や発起人決定などのステップと並行して、速やかに印鑑を作成・手配しておく必要があります。
オンラインによる申請の場合:印鑑届出は任意に変わった
一方、政府のデジタル推進の動きに伴い、申請書や委任状を含めてすべてオンラインで手続きを行う場合(完全オンライン申請)に限り、印鑑届書の提出が「任意」となりました。(※司法書士等の代理人に委任し、書面の委任状を法務局へ提出する場合は、登記所へ届け出た代表者印の押印が必要となります。)
しかし前述の通り、これはあくまで「登記手続き上のルール」に過ぎません。会社の印鑑証明書(法人の印鑑証明書)が必要になった場合には、印鑑を登記所へ提出する必要があります。後から印鑑を作成して届出を行う手間を考えると、オンライン申請を行う場合であっても、設立時にあわせて印鑑届出まで完了させておくのが実務上はスムーズです。(参考:法務省 商業・法人登記のオンライン申請について)
| 申請方法 | 設立登記時の印鑑届出 | 印鑑作成のタイミング | 実務上の必要性 |
|---|---|---|---|
| 書面申請 | 必須 | 登記申請前までに作成 | 事業運営上、必要となる場合がある |
| オンライン申請 | 任意 | 任意のタイミングで作成可能 | 事業運営上、必要となる場合がある |
会社設立時に揃えておくべき印鑑の種類と役割
会社で利用される主な印鑑の種類として、「代表者印」「銀行印」「角印」の3つが挙げられます。法律上、会社設立において法務局への届出対象となるのは代表者印のみですが、実務における利便性やリスク管理の観点から、これら3本をセットで作成するのが一般的です。それぞれの役割と使う場面について解説します。
代表者印(会社実印):会社の実体を証明する最重要印鑑
代表者印は、法人代表者の意思や決定を公式に表す印鑑であり、会社において最も重要度の高い印鑑です。「実印」「代表実印」「丸印」などとも呼ばれます。
法務局に登録できる印鑑にはサイズの規定があり、「一辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まる大きさ」と定められています。代表者印が丸い形状をしているのは法的な義務ではなく慣例に基づくものですが、実務上は可読性や伝統的な見栄えから、丸印で作るのが一般的です。
代表者印は、会社の権利や義務に直結するような極めて重要な場面でのみ使用されます。
- 取引先との重要な基本契約書や秘密保持契約書(NDA)
- オフィスや店舗の不動産売買・賃貸借契約
- 金融機関との金銭消費貸借契約(創業融資等)
- 官公庁への重要な許認可申請
- 株式や有価証券の取引
銀行印:金融機関との取引に特化した印鑑
銀行印は、法人口座の開設や金融取引の契約、手形・小切手の発行など、金融機関関連の手続きにおいて専用で用いる印鑑です。「銀行届出印」「金融機関届出印」とも呼ばれます。
ルール上は、代表者印をそのまま銀行印として兼用することも可能です。しかし、将来的に従業員を雇用してバックオフィス業務や経理の手続きを任せる際、実印を兼用していると無断で重要な契約を結ばれる(悪用される)内部統制上のリスクがあるため、分けて作成することを強く推奨します。
銀行印も代表者印と同様に丸い形をしていますが、代表者印と明確に区別して誤用を防ぐために、代表者印よりもひと回り小さく(例:代表者印が18mmなら銀行印は16.5mmなど)作るケースが多く見られます。
角印(社判):請求書など日常業務で多用される認印
角印は、日常的な実務で頻繁に使われる四角形の印鑑です。「会社印」「社判」「角判」とも呼ばれ、会社における認印のような役割を有します。
見積書、発注書、請求書、領収書など、日常的な商取引において会社としての意思や発行元を示す場面で広く用いられます。利用頻度が最も高い印鑑ですが、日常業務で実印を流用すると、印影が外部に広く出回ることで偽造リスクが高まります。また、担当の従業員に実印を預けることによる悪用リスクも懸念されるため、実印とは別に日常用の認印(角印)を用意しておくのが安全です。
ゴム印(住所印):手書きの手間を省く実務効率化の味方
これまで紹介した代表者印・銀行印・角印の3本セットに加えて、作成しておくと非常に便利なのが「ゴム印(住所印)」です。
正式な実印の押印は不要であるものの、会社名、所在地、代表者名などの会社情報を明記(記名)することが求められる封筒の宛名、各種申込書、手書きの領収書などで、手書きの手間を大幅に削減できます。
近年はインボイス制度(適格請求書等保存方式)が定着していますので、用途に合わせてパーツを自由に組み替えられる「セパレートタイプ(親子判)」で作成しておき、インボイスの登録番号(Tから始まる13桁の番号)が入ったパーツを組み込めるようにしておくと、実務において非常に重宝します。
クラウド会計・電子契約時代におけるこれからの印鑑運用

近年、バックオフィス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しており、印鑑を取り巻く環境や運用方法も時代に合わせて変化しています。ここでは、最新のバックオフィス事情における印鑑の役割について解説します。
クラウド会計システムと電子印鑑のハイブリッド活用
BIZARQでも導入を強力に支援している「freee会計」や「マネーフォワード クラウド会計」などのクラウド会計・請求書発行システムを利用する場合、システム上でPDFの請求書や見積書をワンクリックで発行・送付することが可能です。
この際、無機質なテキストだけの請求書よりも、会社としての信頼感・体裁を整えるために、あらかじめ作成した「角印」の印影をスキャンして画像データ化し、システム内に「電子印鑑」として設定しておく運用がスタンダードになっています。つまり、物理的な角印を作成しておくことは、結果としてデジタル上での美しい書類作成や業務効率化にも直結するのです。
電子契約の普及と書面契約が残るケースへの備え
クラウドサインなどに代表される電子契約の普及により、取引先との契約締結において物理的に紙へ押印する機会は確実に減少傾向にあります。スピード感を重視するIT・ベンチャー企業間では、もはや電子契約がデフォルトになりつつあります。なお、税務上の観点から見ると、書面の契約書では契約金額に応じた印紙税(収入印紙)が発生しますが、電子契約であれば印紙税が非課税になるという大きなコストメリットもあります。
しかし、取引先が大企業や歴史ある企業の場合、社内規定により電子契約が認められず、紙の契約書に実印の押印と印鑑証明書の添付を求められるケースは未だに多く存在します。最新のITツールを駆使して自社の生産性を高める「攻め」の姿勢を持ちつつも、アナログな取引先の事情にも柔軟に対応できる「守り」の体制として、実印をはじめとする印鑑一式を持っておくことは、ビジネスの機会を逃さないための重要な戦略です。
「会社設立時の印鑑の必要性と作成すべき種類」まとめ
- 登記手続きにおける印鑑ルール
書面での登記申請では代表者印の届出が必須ですが、完全オンライン申請を利用した場合は提出が任意となりました。 - 実務上の必要性と機会損失の回避
登記上は不要になっても、金融機関との取引やオフィスの賃貸契約などでは印鑑が必要となる場合があります。創業融資についても契約方法によって印鑑の要否が異なるため、設立時に印鑑を用意しておくとスムーズです。 - 作成すべき印鑑の種類とリスク管理
代表者印(実印)、銀行印、角印(認印)の3本セットを基本とし、手書きの手間を省くゴム印も揃えると便利です。実印の兼用は極力避け、リスク管理の観点から用途ごとに分けて作成することをおすすめします。
東京・新宿をはじめ全国47都道府県での会社設立、創業融資による資金調達、クラウド会計の導入でお悩みなら、ぜひBIZARQ(ビズアーク)グループへご相談ください。税理士・公認会計士・弁護士・社労士・行政書士がワンチームとなり、あなたのビジネスの立ち上げと未来の財務戦略を全力で加速させます。税理士無料相談はこちらから。
「会社設立時の印鑑」に関するよくある質問
代表者印・銀行印・角印の実用的な3本セットで購入した場合、おおむね10,000円〜20,000円程度が相場の目安となります。印鑑を保管するケースが不要であれば10,000円以下に抑えられる安価な販売店もありますが、持ち運び時の欠けや紛失を防ぐ利便性、そして会社の顔としての安心感・セキュリティを考慮すると、しっかりとしたケース付きでの購入をおすすめします。また、法人印鑑の費用は使用する素材(材質)によっても大きく変動します。
インターネットの法人印鑑専門店などで注文する場合、即日出荷や翌営業日出荷に対応している店舗が増えており、注文から手元に届くまで1〜3日程度が平均的な日数となります。ただし、手彫りのこだわった印鑑をオーダーする場合や、お住まいの地域、混雑期などによってはさらに日数がかかることもあります。会社設立の手続きを余裕を持って進めるためにも、設立予定日の1週間前には印鑑作成の注文を完了させておくと安心です。
法人印鑑の材質について、法律上の規定は一切ありません。自社のブランディングイメージや予算に合わせて選ぶと良いでしょう。代表的な材質とその特徴を紹介します。
- 柘(ツゲ)
コストパフォーマンスが非常に高く、比較的安価に作成できる定番の木材です。使用後にこまめに朱肉を拭き取るなどの手入れを行なえば、長く使い続けることができます。 - 彩樺(さいか)
北海道産の樺の木などを樹脂で高圧処理した、環境保全を考えて作られたエコな材質です。耐久性が高く、ひび割れしにくいのが特徴です。 - 牛角(うしつの)
水牛の角を使った動物性の素材で、朱肉の馴染みが良く、美しさ・耐久性ともに非常に優れています。高級感があり、末永く愛用したい方に適しています。
また近年では、これらに加えて、朱肉の汚れを水洗いでき、落としても欠けたり燃えたりしない半永久的な耐久性を誇る「チタン製」の印鑑を選ぶスタートアップ経営者も増える傾向にあります。
この記事の監修者

吉岡 伸晃 Nobuteru Yoshioka
BIZARQグループ 代表 / 公認会計士・税理士・行政書士
大手監査法人での経験を経て、現在はスタートアップから医療法人まで幅広い企業の財務・経営戦略をサポート。事業計画策定や資金調達支援に強い。


