法人向け保険に節税効果はない?2019年税制改正の注意点とメリットを解説

全国47都道府県(フルリモート対応)で、最適な税務戦略と財務支援を通じて企業の成長を強力にバックアップする東京・新宿の税理士事務所、BIZARQ(ビズアーク)グループ 代表(公認会計士・税理士・行政書士)の吉岡伸晃です。

期末が近づくと節税対策として「法人向け保険」を検討する経営者の方は少なくありません。しかし、税法上のルールを正しく理解せずに加入すると、期待した効果が得られないばかりか、将来の税負担や資金繰りを圧迫する可能性があります。本記事では、法人向け保険の仕組みや注意点、経営上のメリットについて専門家の視点から分かりやすく解説します。

プロの視点法人向け保険は「節税」ではなく「課税の繰り延べ」である

法人向け保険を活用した節税対策について、私たちBIZARQグループが全国47都道府県からのご相談でお伝えしている結論があります。それは、法人向け保険の本質は「永久的な節税」ではなく、単なる「課税の繰り延べ(税金の先送り)」に過ぎないということです。

要件を満たした保険に加入して保険料を支払えば、その事業年度の課税所得を圧縮し、目先の法人税を抑えることは可能です。しかし、将来解約して解約返戻金を受け取ったり、満期保険金を受け取ったりした際には、その全額が「益金(収益)」として計上され、結局その年に法人税が課税されます。つまり、支払うべき税金を未来の事業年度へ先送りしている状態であり、トータルで負担する税額が減るわけではありません。

この「課税の繰り延べ」を有益に活用するためには、保険を解約して益金が発生するタイミングに合わせて、同額以上の大きな損金(経費)を作る「出口戦略」をあらかじめ計画しておくことが極めて重要です。例えば、社長の勇退に合わせた役員退職金の支給や、本社・工場の移転や大規模修繕、新たな設備投資などです。明確な資金使途(出口)がないまま「今年の税金を減らしたい」という理由だけで加入してしまうと、将来解約した際に利益が膨らみ、かえって資金繰りを圧迫するリスクが高まります。

東京・新宿エリアのスタートアップやIT企業をはじめ、数多くのクライアントを支援してきた経験から、経営において手元のキャッシュを維持することの重要性は言うまでもありません。過度な保険料の支払いで手元の資金を枯渇させてしまえば、重要な投資機会や突発的なリスクに対応できなくなります。法人向け保険は単なる税金対策としてではなく、中長期的な事業計画に基づいたリスクマネジメントおよび資金準備の手段として活用すべきです。未来財務サポートなどの専門サービスも活用しながら、数年先の財務状況を見据えた計画的な経営を行うことが、持続的な企業成長を支える有効なアプローチの一つと言えます。

法人向け保険の基礎知識と節税と言われる理由

法人向け保険の節税効果について深く理解するために、まずは基本的な仕組みと、なぜ節税対策として広く知られているのかを整理しておきましょう。

法人向け保険とは?個人向け保険との違い

法人向け保険とは、会社(法人)が契約者となり、保険料の負担者も法人となる保険契約を指します。個人向けの生命保険が、契約者個人の医療費や入院費への備え、家族の生活保障を目的としているのに対し、法人向け保険は企業活動を取り巻くリスクに備えることを主な目的としています。

法人向け保険の主な加入目的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 経営者や役員に万が一の事態が起きた際の「事業保障(運転資金の確保)」
  • 事業承継や相続発生時の自社株買い取り等の「対策資金」
  • 将来の「役員退職金」の原資確保
  • 従業員の退職金準備や遺族弔慰金など「福利厚生の充実」

個人向け保険が個人の家計を守るための保障であるのに対し、法人向け保険は企業の存続と継続的な成長を支えるための財務的基盤として機能します。

要件を満たせば保険料の損金算入が可能

個人事業主の場合、個人で加入した生命保険の保険料は事業の経費(必要経費)として計上することはできません。個人の確定申告における「生命保険料控除」の対象にはなりますが、控除額には年間一定の上限が設けられているため、節税効果は限定的です。

一方、法人が契約者となる法人向け保険の場合、商品タイプや契約内容が税法上の一定要件を満たすことで、支払った保険料の一部または全額を法人の「損金(経費)」として算入することが認められています。

損金を計上することで、その事業年度の課税所得が圧縮され、結果として支払うべき法人税額が小さくなります。「保険料の支払いが経費になり、当期の税負担を抑えられる」という側面があるため、法人向け保険が節税手段として語られることが多いのです。

ただし、すべての法人保険が全額損金になるわけではなく、保険の種類や解約返戻率に応じて損金算入できる割合は厳密に定められています。

法人向け保険が本来の意味での節税にならない理由

前章で触れたように、当期の税負担を抑えられる点は事実ですが、それでも法人向け保険を根本的な「節税策」と捉えるべきではない明確な理由があります。

保険金・解約返戻金受け取り時の課税リスクと出口戦略

法人向け保険の保険料を損金に計上して毎年の所得額を減らす試みは、利益が大きい年度の資金繰り対策として一定の合理性があります。しかし、保険契約には必ず解約や満期といった「出口」が存在します。将来、保険を解約して解約返戻金を受け取ったり、満期保険金や死亡保険金を受け取ったりした際、入金されたお金は法人の「益金(収益)」として扱われます。

したがって、保険料を支払っていた期間に繰り延べていた課税が、お金を受け取った年度に一気に発生することになります。加入から解約までのトータル期間で見れば、負担する税額の総額は原則として変わりません。

もし、保険金を受け取った年度に相殺できるだけの損金(役員退職金の支給、大規模な設備投資、赤字の補填など)を用意できなければ、結果として税負担が後年に偏るだけで終わってしまいます。

ここで特に注意すべきなのは、出口戦略として代表的な「役員退職金の支給」における税務上のリスクです。不相当に高額な役員退職金は、税務調査において「過大役員退職金」と判定され、適正額を超える部分について損金算入を否認されるリスクがあります。解約返戻金と相殺する目的で退職金を支給する場合でも、同業他社との比較や役職・在職年数に応じた客観的基準に基づき、適正額を算出しておくことが必須です。

2019年の税制改正による損金算入ルールの厳格化

かつては、支払った保険料の全額または半額を損金算入でき、数年後に解約すると高い返戻率でお金が戻ってくる貯蓄性の高い商品が広く活用されていました。

しかし、国税庁の通達改正により、2019年(令和元年)7月以降の契約から、法人向け生命保険(定期保険および第三分野保険)の損金算入ルールが大幅に厳格化されました。

現在は、保険の「最高解約返戻率(保険期間中で最も解約返戻率が高くなる時点の割合)」に応じて損金算入割合が細かく制限されており、解約返戻率が高い商品ほど、支払時に損金算入できる割合が小さくなる仕組みになっています。現在の最高解約返戻率ごとの損金算入割合は以下の通りです。

最高解約返戻率損金算入の取扱い(原則)
50%以下支払保険料の全額を損金算入可能
50%超〜70%以下【例外】被保険者1人当たりの年換算保険料が30万円以下の場合は全額損金算入可能。
【原則】
・保険期間開始〜最高解約返戻率となる期間の最初の4割:60%損金算入(40%は資産計上)
・最初の4割経過後〜保険期間の75%:全額損金算入
・75%経過後:全額損金算入+資産計上額を均等に取り崩して損金算入
70%超〜85%以下・保険期間開始〜最高解約返戻率となる期間の最初の4割:40%損金算入(60%は資産計上)
・最初の4割経過後〜保険期間の75%:全額損金算入
・75%経過後:全額損金算入+資産計上額を均等に取り崩して損金算入
85%超・契約から10年間:年間支払保険料×最高解約返戻率×0.9を資産計上、残りを損金算入
・11年目〜最高解約返戻率となる期間:年間支払保険料×最高解約返戻率×0.7を資産計上、残りを損金算入
・最高解約返戻率となる期間経過後:全額損金算入+資産計上額を均等に取り崩して損金算入

※「被保険者1人当たりの年換算保険料が30万円以下」の例外規定について、同種の複数契約がある場合は保険料を合算して30万円以下であるかを判定するため、加入時には注意が必要です。

このように、単に節税目的だけで解約返戻率の高い保険を利用する手法は大きく制限されています。目先の損金作りではなく、本来のリスクヘッジや資金準備を目的として保険を選択することが不可欠です。

法人向け保険がもたらす4つの経営メリット(節税以外の効果)

「本質的な節税にならないのであれば加入する意味がないのか」というと、そうではありません。法人向け保険には、税金対策以外の側面で企業経営の安定に貢献する重要なメリットが存在します。

1. 経営者個人が手元に残せる資金が増加する

法人向け保険を活用するメリットの一つとして、経営者個人の可処分所得や資金効率への好影響が挙げられます。

仮に経営者が個人の役員報酬から高額な生命保険料を支払おうとすると、その分だけ役員報酬を高く設定する必要があり、個人にかかる所得税・住民税や社会保険料の負担が増加します。個人の生命保険料控除には上限があるため、高額な保険料負担は個人家計の圧迫につながります。

一方、法人向け保険を活用して法人の資金から保険料を支払えば、役員報酬を増額して個人契約保険へ加入する場合と比較すると、個人負担を抑えられるケースがあります。

2. 万が一のリスクに備えた死亡退職金や運転資金の確保

会社の中核である経営者に万が一の事態が発生した場合、取引先や金融機関からの信用低下により、資金繰りが急速に悪化するリスクがあります。

また、遺されたご家族への死亡退職金の支給や、当面の事業運転資金、借入金の返済資金など、まとまったキャッシュが急遽必要になります。これらをすべて自己資金だけで賄うのは容易ではありません。

法人向け保険で適切な保障額を設定しておけば、不測の事態が発生した際に迅速に保険金を受け取ることができ、会社の事業継続や雇用を守るための資金的クッションとして機能します。

3.福利厚生の充実による従業員の安心感と人材確保

法人向け保険は、役員だけでなく従業員を対象として活用することも可能です。例えば養老保険などを活用し、将来の退職金準備や死亡時の弔慰金、病気・ケガの際のサポート体制を構築できます。

福利厚生の充実は、従業員のエンゲージメント(定着率)を高めるだけでなく、近年の労働不足環境における採用活動においても他社との差別化要因になります。

ただし、保険料を福利厚生費として損金算入するには、原則として全従業員を同等の条件で対象とする(普遍的加入)などの厳格な税法上の要件を満たす必要があります。役員や特定の幹部従業員のみを対象にしてしまうと、福利厚生費として認められず、対象者個人の「給与(賞与)」と判定されて課税対象となるリスクがあるため、制度設計には注意が必要です。

4. 円滑な事業承継や相続対策のための資金準備

事業が好調な中小企業ほど、蓄積された利益によって自社株(非上場株式)の評価額が高くなりやすい傾向があります。経営者の相続が発生した際、後継者に高額な相続税が課され、納税資金が不足して事業承継に支障をきたすケースがあります。

法人向け保険の死亡保険金を活用すれば、会社が後継者等から自社株を買い取るための資金(金庫株の取得資金)を準備でき、後継者はその売却代金を相続税の納税に充てることができます。事前の準備により、経営権の分散を防ぎつつ円滑な事業承継を進めることが可能になります。

節税効果(損金算入)が見込める法人向け保険の種類

法人向け保険には多様な種類があり、保障目的や税務上の取り扱いが異なります。自社のリスク管理や財務目的に応じた選択が重要です。

経営者の事業保障を目的とした生命保険

経営者や役員の万が一のリスクや退職金準備を目的とする保険です。

  • 定期保険
    一定期間の死亡リスクに備える保険。解約返戻金がない、または極めて低いタイプ(最高解約返戻率50%以下)であれば、支払保険料の全額を損金算入できるケースが多く、純粋な事業保障と損金計上を両立しやすい特徴があります。
  • 養老保険/逓増定期保険
    保障と貯蓄性を兼ね備えた保険。退職金原資の積み立てなどに活用されますが、2019年の税制改正により、解約返戻率に応じた損金算入割合の制限を受けます。

事業活動のリスクに備える損害保険

事業活動に伴う賠償事故や財産損害に備える保険です。

自社ビルや設備の破損に備える「火災保険」、社用車の「自動車保険」、役員の個人賠償責任をカバーする「役員賠償責任保険(D&O保険)」、情報漏洩やサイバー攻撃に対応する「サイバー保険」などがあります。特にIT企業やクリニックなどでは、情報漏洩リスクへの備えが不可欠です。

損害保険の多くは掛け捨て型であり貯蓄性を持たないため、支払った保険料の全額を当期の損金として計上できるのが一般的です。実質的なリスク対策を行いつつ経費化できるため、非常に実用性の高い手段と言えます。

「法人向け保険に節税効果はない?2019年税制改正の注意点とメリット」まとめ

  • 法人向け保険の節税は「課税の繰り延べ」
    永久的な節税ではなく、受け取り時の益金に対する「出口戦略」が必須。
  • 2019年税制改正によるルールの厳格化
    解約返戻率が高い保険ほど、支払時の損金算入割合が小さくなるよう制限されている。
  • 節税以外のメリットに目を向ける
    事業保障、退職金準備、福利厚生の充実など、リスクヘッジと将来の資金準備の手段として活用すべき。

東京・新宿をはじめ全国の税務・財務戦略や法人保険の活用法でお悩みなら、ぜひBIZARQ(ビズアーク)グループにご相談ください。私たちは、過去の数字を処理するだけの税理士ではなく、経営者の皆様が描く5年後、10年後のビジョンから逆算し、最適な保険の活用法や税務顧問による日常のサポートをご提案します。平均年齢33歳の機動力と、ITツールを駆使したレスポンスの速さで、全国47都道府県どこからでもご相談を承ります。経営の「次の一手」に迷ったら、まずは私たちの税理士無料相談をご利用ください。

「法人向け保険」に関するよくある質問

A.結論として、永久に税金を免除する意味での「節税」にはなりません。本質は「課税の繰り延べ(税金の先送り)」です。支払時に当期の課税所得を減らし、将来へ納税を先送りすることで、一時的なキャッシュフローを調整する効果はあります。ただし、解約返戻金等を受け取る時期に益金が発生するため、役員退職金の支給など相殺できる損金を用意する「出口戦略」がなければ、トータルの税負担を軽減することはできません。

A.2019年7月以降の契約から、貯蓄性のある定期保険や第三分野保険の損金算入ルールが厳格化されました。最高解約返戻率が高い保険商品ほど、支払保険料のうち損金にできる割合が低くなるよう規定されたため、「高い返戻率を維持しながら全額または半額を損金にする」といった過度な節税商品は販売できなくなりました。

A.はい、一定の条件を満たす保険であれば現在でも可能です。まず、事業活動に不可欠な火災保険、自動車保険、賠償責任保険などの「損害保険」は、原則として全額損金処理が可能です。生命保険分野においても、最高解約返戻率が50%以下の掛け捨て型定期保険などは全額損金算入が認められます。ただし、契約者・被保険者・受取人の組み合わせや個別の契約条件によって税務上の扱いが異なるため、事前に専門家へ相談することをお勧めします。

A.受け取る解約返戻金が「雑収入」等の益金となり、課税対象となる点です。業績が好調で利益が出ている年度に無計画に解約すると、解約返戻金が利益に上乗せされ、税負担が急増する恐れがあります。役員退職金の支給時期や設備投資の実施タイミングに合わせて解約するなど、数年前から計画を立てておくことが極めて重要です。また、過去に流行した「法人から個人への名義変更プラン(低解約返戻金型保険の活用)」についても、2021年の通達改正により評価方法が見直された結果、従来のような大きな節税効果は期待しにくくなった点にも注意が必要です。

この記事の監修者

BIZARQグループ 代表 / 公認会計士・税理士・行政書士 吉岡伸晃

吉岡 伸晃 Nobuteru Yoshioka

BIZARQグループ 代表 / 公認会計士・税理士・行政書士

大手監査法人での経験を経て、現在はスタートアップから医療法人まで幅広い企業の財務・経営戦略をサポート。事業計画策定や資金調達支援に強い。

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