クリニックを医療法人化するための手続きを徹底解説!

全国47都道府県(フルリモート対応)で、医療法人設立サポートやクリニックの税務顧問を通じて企業の成長を強力にバックアップする東京・新宿の税理士事務所、BIZARQ(ビズアーク)グループ 代表(公認会計士・税理士・行政書士)の吉岡伸晃です。
個人経営のクリニック(診療所)が軌道に乗り、日々の医業経営が安定してくると、「そろそろ自院も医療法人化を検討すべきだろうか?」と考える院長先生は非常に多くいらっしゃいます。
しかし、医療法人の設立は、一般的な株式会社や合同会社の設立とはワケが違います。国や都道府県が定める「医療法」に基づいた極めて厳格な要件をクリアしなければならず、手続きは非常に複雑で長期間に及びます。
準備不足やスケジュール管理のミスがあると、法人化の計画が半年から1年以上も先送りになってしまうケースが珍しくありません。だからこそ、必要な情報をいち早く入手し、綿密な計画のもとでスムーズに準備を進めることが重要です。
今回は、クリニックを医療法人化するためにクリアすべき絶対要件や「社団」「財団」の違い、具体的な手続きの流れ、費用、最新のスケジュール感について、医療法務・税務に強いBIZARQの視点で分かりやすく徹底解説します。
※なお、医療法人を無事に設立した「その後」に待ち受けている具体的な行政手続きや対応期限については、以下の記事で詳細にまとめていますのでぜひ合わせてご覧ください。
【プロの視点】医療法人化は単なる節税ではない!クリニックの「永続性」と「攻めの経営」を実現するビジネスインフラ
医療法人化を検討されるドクターの多くは、「所得税が高くなってきたから法人税に変えて節税したい」という、いわば「守りの動機(過去の処理)」からスタートされます。確かに税制上の優遇措置は非常に大きいのですが、専門家として私からドクターの皆様へお伝えしたいのは、「医療法人化の本質とは、クリニックの社会的信用を高め、組織として『永続性』を持たせるための最大の経営戦略である」という視点です。
個人経営のクリニックの場合、万が一院長先生に不測の事態(死亡や長期療養など)があった場合、診療所は原則としてその瞬間に「廃止」せざるを得ず、地域医療やスタッフの雇用が守れなくなってしまいます。
医療法人という永続的な組織にすることで、出資持分の譲渡や理事長の交代手続きのみで、次の世代へスムーズにクリニックを事業承継できるようになります。さらに、法人格を持つことで「分院展開(マルチクリニック化)」や「介護福祉事業(サ高住やデイサービスなど)への進出」といった、個人では不可能だった未来 of 経営を加速させるための『攻めの選択肢』が圧倒的に広がります。医療法人化は、地域に根ざした強いメディカルビジネスを構築するための最高峰のインフラなのです。
知っておきたい医療法人の基礎知識 社団と財団の違い
医療法人の設立要件を見る前に、医療法人の組織形態である「社団」と「財団」の違いについて整理しておきましょう。医療法人には大きく分けて以下の2種類が存在します。
- 社団医療法人
複数の「人(社員)」が集まって設立する法人です。個人クリニックから医療法人化するケースの9割以上がこの社団医療法人に該当します。なお、平成19年以降に設立される社団医療法人は、解約時や財産分配時に出資額以上の払い戻しを受けられない「持分のない医療法人」となります。 - 財団医療法人
個人や法人が寄付した「財産(お金や土地、建物など)」を基礎として設立される法人です。人がベースとなる社団とは違い、財産そのものに法人格が与えられるため、設立時に一定規模以上の確固たる財産拠出が求められます。
個人経営のクリニックからの法人成りであれば、基本的には「社団医療法人」を選択して手続きを進めることになります。
医療法人化を果たすためにクリアすべき3つの絶対要件
個人経営のクリニックを医療法人にするためには、都道府県から認可を受けるための厳しいハードルを越えなければなりません。必要な要件は、大きく以下の3つに分類されます。
要件① 人的要件(理事・監事・社員の設置)
医療法人には、その永続性と非営利性を担保するため、原則として以下のような厳格な人員の設置が義務付けられています(医療法第46条の5第1項)。
- 理事(3名以上)
理事会を構成し、法人の職務執行や重要な意思決定を行う権限を持ちます。原則として現クリニックの院長先生が「理事長」に就任します。 - 監事(1人以上)
医療法人の業務や財務状態を客観的に監査する役割です。透明性を保つため、法人の理事や社員、またはその親族(配偶者や子など)は就任できず、基本的には第三者の専門家や信頼できる知人を立てる必要があります。 - 社員(3名以上)
株式会社の「株主」に相当する存在で、社員総会において重要事項を決議する権限を持ちます。理事を兼任しても問題ありません。
要件② 資産要件(基本財産と2ヶ月分の運転資金)
医療法人は、安定した医療を継続して提供できるだけの強固な財産基盤を持っている必要があります(医療法第41条第1項)。資産は主に以下の2つに区分されます。
- 基本財産
クリニックの土地や建物(医療施設)、または法人の土台となる運営基金などです。施設が個人所有であれば法人へ拠出・賃貸し、賃貸物件であれば「法人への賃貸(引継ぎ)が可能であること」が条件となります。 - 普通財産(運転資金)
基本財産以外の流動資産です。実務上最も重要なのは、「初年度の年間支出予算の『2か月分相当』に見合う現預金などの運転資金」あらかじめ用意しなければならない点です。医療機関は、社会保険診療報酬を請求してから実際に窓口に入金されるまでに約2か月のタイムラグが発生するため、その間の運転資金が確保されていることを証明する必要があります。
要件③ その他の要件(契約の引き継ぎや定款の作成)
上記のほか、個人時代にクリニック名義で結んでいた土地・建物の賃貸借契約、医療機器のリース契約などをすべて「医療法人名義」へ確実に引き継ぎ、債権者から承認を得る必要があります。また、法人の根本原則となる「定款(または寄附行為)」を正しく作成し、最終的に都道府県知事の認可、および法務局での設立登記を完了させることが必須要件となります。
準備から登記まで!医療法人化に必要な7つの手続き・ステップ

クリニックを医療法人化するためには、およそ以下の7つのステップを順番にクリアしていく必要があります。
ステップ1 必要書類の準備(既存書類 + 新規作成書類)
まずは膨大な書類を収集・整理します。現行クリニックに関係する「既存の書類」と、法人化にあたり「新しく作成する書類」に分けて準備します。
【クリニック開業時に作成済み、または現行クリニックの既存書類】
- 医療法人の役員・社員になる予定の人の印鑑証明書および履歴書
- 医師免許証(または歯科医師免許証)の写し
- クリニック開業時に保健所へ提出した「開設届」の控え
- クリニックの図面一式(平面図、敷地見取図など)
- 医療機器等のリース契約書、不動産の登記事項証明書(謄本)や賃貸借契約書
- 事業用の借入金がある場合、その金銭消費貸借契約書や返済予定表
- 工事請負契約書や領収書など、引き継ぐ負債の根拠となる書類一式
- 直近過去2年間の収支実績表、および税務署へ提出した確定申告書の控え
【医療法人化にあたり新しく作成・用意する書類】
- 医療法人設立認可申請書
- 医療法人の定款(または寄附行為)
- 法人設立者の経歴書(現クリニックの院長先生のもの)
- 役員(理事・監事)の就任承諾書
- 設立後2〜3年の事業計画書、および収支予算書
- 医療法人設立総会の議事録
- 財産目録および予算書
- 社員および役員の名簿
- 負債及びリース引継ぎ承認書(個人の負債やリースを法人が引き継ぐことを、信販会社や銀行が承認したことを示す書類)
ステップ2 必要書類の作成
用意した書類の作成・記入を進めます。実務上、行政の審査において最も補正(修正指示)が入りやすく、難易度が高いのが「負債及びリース引継ぎ承認書」です。個人事業主の時代から、購入時の領収書や契約書を完璧に保管していなければ、負債を法人へ引き継ぐことが認められません。日頃からのスマートな書類管理が、法人化の成功を大きく左右します。
ステップ3 設立総会の開催
社員や役員が集まり、設立の意思確認や定款の内容、役員人事などを決定する設立総会を開催します。実務上は、事前に作成した「設立総会議事録」に全員が内容を確認した上で署名・捺印を行えば、実際の開催を伴わずに書類手続きとして進めることが可能です。
ステップ4 医療法人の申請(仮申請と事前協議)
ここが最大の山場です。医療法人の申請は、いきなり本番の書類を提出するのではなく、まずは各都道府県の担当部署へ書類一式を提出する「仮申請(事前協議)」から始まります。行政の担当者と何度も面談や修正のやり取り(事前協議)を行い、書類を100%完璧な状態に仕上げたのち、初めて「本申請」の受付が認められます。本申請の提出期限は非常に厳格なため、関係者から捺印をもらうスケジュール調整など、1日の遅れも許されない緻密なタスク管理が必要です。
ステップ5 医療法人の認可(医療審議会による調査審議)
本申請が受理されると、都道府県に設置されている「医療審議会」において、書類に不備がないか、要件を満たしているかどうかの厳格な調査審議が行われます。この審議を無事に通過すると、知事から「医療法人設立認可書」が交付されます。
ステップ6 医療法人の登記(正式な法人設立)
知事の認可書が手元に届いた段階では、まだ医療法人は誕生していません。認可書の交付から原則として2週間以内に、法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局へ「設立登記申請」を行う必要があります。この登記が法務局に受理された日こそが、医療法人の正式な「設立日」となります。
ステップ7 その他、開設・廃止などの行政手続き
登記が完了して法人が成立した後も、クリニックとして実際に保険診療を行うためには、以下のような膨大な後続手続きが待っています。自治体や厚生局ごとに期日が厳しく定められているため、漏れなく対応する必要があります。
- 個人のクリニックの「廃止届」の提出と、医療法人としての新たな「診療所開設許可申請・開設届」の提出(保健所)
- 金融機関における「医療法人名義」の法人口座開設
- 厚生局への「保険医療機関指定申請」(※これを忘れると、一定期間保険診療ができず全額自己負担になってしまうため極めて重要です)
- 各自治体と結んでいた公費負担医療(難病や乳幼児医療など)に関する再契約手続き
- 税務署や地方税事務所への法人設立届出書、青色申告承認申請書などの提出
着手から運営まで10ヶ月?医療法人化の最新年間スケジュール感

医療法人の設立手続きは、院長先生が「やろう」と思い立ってから知事の認可が下りるまでに、最低でも約6か月の期間を要します。さらに、その後の法人登記や、保健所・厚生局への各種社会保険・保険医療機関の指定手続きが完了するまでを含めると、全体で10か月程度かかるケースが一般的です。
また、医療法人の申請はいつでも好きなときにできるわけではなく、多くの都道府県において「年に2回」しか申請の受付期間が設けられていません。
例えば、東京都における直近の設立認可までの事務日程(予定)は以下の通り非常に厳格に指定されています。
【第1回(夏受付・冬認可サイクル)】
- 申請書の受付期間
令和7年8月18日(月曜日)から令和7年8月22日(金曜日)まで(郵送必着) - 医療審議会の開催
令和8年2月初旬 - 認可書の交付
令和8年2月下旬
【第2回(春受付・夏認可サイクル)】
- 申請書の受付期間
令和8年3月12日(木曜日)から令和8年3月18日(水曜日)まで(郵送必着) - 医療審議会の開催
令和8年8月初旬 - 認可書の交付
令和8年8月下旬
※上記の日程は、東京都内に主たる事務所を置く医療法人のスケジュールです。他道府県で設立される場合は、各道府県庁等によって日程が異なりますので個別の確認が必要です(参考:東京都保健医療局「医療法人の設立・運営|医療政策」)。
もし、この年2回しかない受付期間に書類が1枚でも間に合わなかったり、事前協議で却下されたりした場合、次のチャンスまで丸々半年間、計画が先送りになってしまいます。そのため、事前のスケジュール管理はプロの力を借りて完璧に行うのが実務上の定石です。
専門家へ依頼した場合の医療法人化にかかる費用相場
医療法人の設立認可申請は、作成すべき書類が数百枚に及び、予算書や事業計画書の作成には高度な税務・財務の知識が求められます。そのため、ドクターが診療の合間にすべてをご自身で行うのは事実上不可能に近く、ほとんどの場合は医療法人に強い税理士や行政書士、司法書士などのプロへ外注することになります。
依頼するクリニックの規模や分院予定の有無によって前後しますが、一般的な実務の手続きごとの報酬目安(費用相場)は以下の通りです。
- 医療法人設立認可申請(行政書士・税理士)
600,000円〜 - 医療法人の設立登記申請(司法書士)
85,000円〜 - 保健所への診療所開設・廃止手続き
200,000円〜 - 厚生局への保険医療機関指定申請等の手続き
100,000円〜
このほかに、印紙代や交通費、通信費、スタッフの社保移行手続きに伴う社労士費用などが実費として発生します。初期の財産目録作成から知事認可、登記、保健所・厚生局の手続きまで一括でトータルサポートを依頼する場合、総額で「700,000円〜1,000,000円」程度が一般的な市場相場となっています。
「クリニックの医療法人化手続き」まとめ
- 医療法人には「社団」と「財団」があり、個人クリニックからの法人成りは原則「社団医療法人」を設立する。
- 理事3名・監事1人以上の配置や、初年度の年間支出の「2か月分」の運転資金の確保など、厳しい人的・資産要件のクリアが必要。
- 申請のチャンスは各都道府県で「年2回」程度と厳格に定められており、着手から運用開始までには約10ヶ月を要する長期の計画的なプロジェクト。
医療法人化は、院長先生個人の税負担を劇的に減らすだけでなく、クリニックの社会的信用を高め、次のステージ(分院展開や事業承継)へ打って出るための最強の経営カードです。しかし、クリアすべきルールが非常に厳格で、一歩間違えると診療が一時的にストップしてしまうような重大なリスク(保険指定のタイムラグなど)も孕んでいます。
「自院の場合、今法人化するとどれくらいの節税効果と経営メリットがあるのか試算してほしい」「年2回の申請チャンスを絶対に逃さず、最短で確実な法人化を成功させてほしい」とお悩みの院長先生は、ぜひBIZARQにご相談ください。私たちは、医療経営のインフラに精通した「未来を加速させる税理士」として、面倒で煩雑な書類作成や行政・厚生局との交渉、さらには設立後のクラウド会計を活用した医療DXの構築まで、4士業の強みを活かしてワンストップでシームレスにエスコートいたします。
ドラスティックな組織改革と財務基盤の強化については、当法人の医療・クリニック開業/法人化サポートもご覧ください。自院の具体的なシミュレーションやスケジュールのご相談は、お気軽に税理士無料相談をご利用ください。
クリニックの医療法人化に関するよくある質問
はい、できなくなります。個人経営のときは、クリニックの通帳から院長先生が個人の生活費や買い物のために自由にお金を引き出しても問題ありませんでしたが、医療法人になると、クリニックのキャッシュはすべて「法人のもの」になります。院長先生であっても、あらかじめ決められた毎月の「役員報酬(給料)」以外の金額を、法人の口座から私用に引き出すことは一切認められません。もし勝手にお金を引き出してしまうと、税務調査において役員貸付金とみなされ、法人側に利息を計上しなければならなくなったり、最悪の場合は役員賞与として重い税金を課されたりするペナルティの対象になるため、公次の資金管理を完全に分離する必要があります。
医療法人は、医療法に基づいた「非営利性」が絶対原則の組織であり、出資者への利益の配当や、医療行為に関係のない一般的なビジネス(物品販売や不動産賃貸など)を行うことが厳しく制限されています。一方、MS法人は、通常の株式会社や合同会社と同じ「営利法人」です。そのため、医療法人ができない「クリニックの窓口で販売するサプリメントや化粧品の仕入・販売」「医療ビルの不動産管理」「事務作業やレセプト業務の受託」などをMS法人が担い、医療法人からMS法人へ適正な対価(業務委託料など)を支払うことで、グループ全体として合法的に利益を分散・還流させ、自由度の高い経営や大きな節税効果を生み出すことができます。分院展開や売上規模が大きくなってきた段階では、医療法人とMS法人の2社体制を構築するのが実務上の非常に強力なセオリーです。
これらのリース契約や事業用負債は、原則としてすべて個人のドクターから「医療法人」へと名義を引き継ぐ(債務引受・契約変更を行う)必要があります。手続きのステップ2で解説した「負債及びリース引継ぎ承認書」を各リース会社や銀行に発行してもらう必要があります。ただし、個人時代の確定申告書や領収書などのエビデンスが不十分であったり、ドクター個人の信用状態に問題があると判断されたりすると、引継ぎが拒否されてしまうリスクがあります。その場合は法人化が非常に難しくなるため、事前に当事務所のような専門家が契約内容をチェックし、各金融機関や信販会社とシームレスな調整を行うことが極めて重要です。
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この記事の監修者

吉岡 伸晃 Nobuteru Yoshioka
BIZARQグループ 代表 / 公認会計士・税理士・行政書士
大手監査法人での経験を経て、現在はスタートアップから医療法人まで幅広い企業の財務・経営戦略をサポート。事業計画策定や資金調達支援に強い。







