不動産投資は節税になる?仕組みとリスク・注意点を税理士が徹底解説

全国47都道府県(フルリモート対応)で、税務顧問を通じて企業の成長を強力にバックアップする東京・新宿の税理士事務所、BIZARQ(ビズアーク)グループ 代表(公認会計士・税理士・行政書士)の吉岡伸晃です。

「不動産投資を始めれば、所得税や住民税を大きく節税できる」と耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。たしかに、高収入の会社員や経営者にとって、不動産投資が有効な節税手段となるケースは存在します。しかし、単純な節税目的だけで不動産投資に手を出すことには、極めて大きなリスクが伴います。不動産投資は数千万から数億円という大きな資金が動く「事業」そのものであり、正しい知識と理解が不可欠です。

今回は、不動産を用いた節税対策について、どのような仕組みで税金が安くなるのか、そして実施する際に必ず押さえておきたいリスクや注意点を専門家の視点から詳しく解説します。

なお、個人で実施できるその他の節税対策については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ご自身の状況に合わせてぜひご覧ください。
・個人事業主の節税対策とは?おすすめテクニック9選!
・会社員が個人でできる節税対策とは?サラリーマンにおすすめテクニック6選!
・公務員ができる節税対策とは?おすすめテクニック4選!

プロの視点不動産投資による節税は「目的」ではなく「結果」であるべき

東京・新宿エリアをはじめ、全国47都道府県の経営者様や投資家様からご相談をお受けする中で、「とにかく税金を安くしたいから不動産を買いたい」というお声を頻繁に耳にします。しかし、専門家の結論から申し上げますと、不動産投資において節税は「目的」にするべきではなく、正しい投資判断を行った上での「結果」であるべきです。

不動産投資で所得税が下がる最大の理由は「帳簿上の赤字」を作れることにあります。しかし、帳簿上の赤字だけでなく、実際のキャッシュ(現金)まで大きくマイナスになってしまっては、節税の意味がありません。家賃収入が得られない空室リスクや、修繕費の突発的な発生、そして後述する「デッドクロス」など、不動産特有のリスクを甘く見積もると、節税額以上に手元資金が流出し、資金繰りがショートしてしまう可能性があります。

私たちBIZARQグループが「未来財務サポート」で重視しているのは、目先の税金を減らすことではなく、5年後、10年後のキャッシュフローを最大化することです。「節税になるから」という不動産会社のセールストークを鵜呑みにせず、長期的な事業計画として採算が合う物件であるかを見極めることが何よりも重要です。

不動産投資が節税につながる理由と対象となる税金

不動産投資によって節税効果が期待できる主な税金は、「所得税」「住民税」「相続税」「贈与税」の4つに大別されます。それぞれの税金の性質について確認しておきましょう。

①所得税|収入から経費と控除を差し引いて計算

所得税は、個人の1年間の所得(儲け)に対してかかる国税です。収入額から必要経費を差し引いて「所得」を算出し、さらにそこから各種の所得控除を引いた「課税所得金額」に税率を乗じて計算されます。日本の所得税は、課税所得が大きくなるにつれて段階的に税率が高くなる「累進課税制度」を採用しており、最大で45%の税率が適用されます。高所得者ほど税負担が重くなるため、課税所得を圧縮する対策が求められます。

②住民税|所得割と均等割で構成される地方税

住民税は、都道府県や市区町村といった地方自治体に納付する税金です。前年の課税所得に一律10%の税率を乗じて計算する「所得割」と、所得の多寡にかかわらず一定以上の所得があるすべての住民に定額で課せられる「均等割」の2つによって構成されています。原則として、所得税の課税所得が小さくなれば、連動して翌年の住民税の所得割も小さくなる傾向があります。

③相続税|基礎控除を超える財産にかかる税金

相続税は、亡くなった方(被相続人)から相続や遺贈によって財産を受け継いだ際、その財産の総額が「基礎控除額」を上回る場合に発生する税金です。相続税の基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。財産の評価額をいかに引き下げるかが節税の鍵となります。

④贈与税|年間110万円等の基礎控除を超えるとかかる税金

贈与税は、個人から個人へ無償で財産が渡された際、一定の基礎控除額を上回る場合に発生する税金です。暦年課税の場合、基礎控除額は受贈者1人につき1年間(1月1日から12月31日)で110万円となっています。生前贈与を活用して財産を移転する際にも、対象となる財産の評価方法が重要になります。

所得税・住民税における不動産投資の節税の仕組み

なぜ不動産投資が所得税や住民税の節税につながるのか、そのメカニズムを紐解いていきましょう。最大のポイントは「損益通算」と「減価償却費」の存在です。

損益通算|不動産所得の赤字を給与所得などと相殺

不動産投資が所得税・住民税の節税につながる理由の一つは、不動産所得の赤字について、一定の制限のもとで給与所得や事業所得など他の黒字の所得と損益通算できるためです。これを税務用語で「損益通算」と呼びます。

個人の所得は税法上10種類に区分されており、他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」と、個別に計算する「分離課税」に分かれます。会社員の方の「給与所得」や、個人事業主の方の「事業所得」、そして家賃収入から生じる「不動産所得」は、いずれも総合課税の対象です。
(参考:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」)

例えば、給与所得が1,000万円ある会社員が、不動産投資で200万円の赤字(不動産所得のマイナス)を出したとします。損益通算を行うことで、課税の対象となる総所得金額は800万円に圧縮されます。累進課税制度の下では、所得が減ることで適用される税率の区分が下がる可能性もあり、結果として所得税・住民税の負担が軽減される傾向があります。

経費計上の幅広さ|不動産関連の多様な支出が経費になる

不動産所得を計算する際、収入(家賃や礼金など)から差し引くことができる「必要経費」の幅広さも節税に寄寄します。経費を漏れなく計上することで、不動産所得を合法的に引き下げ、あるいは赤字にすることが可能になります。

項目概要・具体例
租税公課固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税、印紙税など
損害保険料火災保険料、地震保険料など(その年に対応する期間分のみ)
修繕費原状回復のための壁紙の張り替え、設備の修理費用など
借入金利子不動産投資ローンの利息部分(※元本返済部分は経費になりません。また、不動産所得が赤字となった場合、土地を取得するための借入金利子部分は、給与所得など他の所得と損益通算できない点に要注意です)
管理費管理会社へ支払う業務委託手数料など
減価償却費建物の購入費用を耐用年数にわたって分割して計上する費用

減価償却費の活用|キャッシュアウトを伴わない極めて有効な経費

不動産投資による節税の「要」とも言えるのが「減価償却費」です。減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少していく固定資産(建物や設備など)の購入代金を、一度に全額経費にするのではなく、法律で定められた「法定耐用年数」に応じて分割して経費計上していくルールのことです。
(参考:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」)

土地は時間が経過しても劣化しないため減価償却の対象になりませんが、建物部分は対象となります。構造によって耐用年数が異なり、木造・合成樹脂造は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造(RC造)は47年です。

耐用年数が短い木造物件の方が、1年あたりに計上できる減価償却費が大きくなるため、短期的な節税効果を狙って中古の木造アパートを購入する投資手法も存在します。

減価償却費の最大のメリットは、「実際の現金の支出(キャッシュアウト)を伴わずに、帳簿上の経費を作れる」という点です。これにより、手元に現金を残しながら、書類上は赤字を作り出して損益通算を行うことが可能になります。

相続税・贈与税における不動産投資の節税の仕組み

不動産投資は、所得税だけでなく、将来の「相続税」や生前の「贈与税」の節税対策としても有効な手段として知られています。その理由は、現金と不動産とで「財産の評価方法」が異なるためです。

評価額の圧縮|現金よりも不動産の方が評価額が下がる

相続税や贈与税を計算する際、現金や預貯金は「額面通り」に評価されます。つまり、1億円の現金はそのまま1億円として課税対象になります。

一方、不動産の場合は、購入価格や市場での取引価格(時価)ではなく、国が定める一定の基準に基づいて算出された「評価額」が用いられます。

土地や建物は、相続税・贈与税上、路線価方式・倍率方式・固定資産税評価額など一定の評価方法により評価されるため、現金・預貯金と比べて評価額が低くなるケースがあります。ただし、実際の評価額は物件の種類・所在地・利用状況等によって異なり、近年では居住用マンションの評価方法の見直しなども行われているため、個別具体的な試算が不可欠です。

貸家建付地としての評価減|人に貸すことでさらに評価額が下がる

投資用不動産として第三者に物件を貸し出している場合(賃貸物件)、さらに評価額を引き下げることができます。

人に貸している土地(貸家建付地)や建物(貸家)は、所有者が自由に使用や売却ができないといった制約を受けるため、自用地(自分で使っている土地)と比較して評価額が減額されます。借地権割合や借家権割合、賃貸割合などを考慮して計算されるため、現金で保有している場合に比べて、評価額が大きく下がるケースもあります。

ただし、令和8年度税制改正により、令和9年(2027年)1月1日以後に相続等により取得する一定の貸付用不動産のうち、被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した物件については、原則として課税時期における通常の取引価額(実勢価格、一定の場合は取得価額等を基に地価変動等を考慮した80%相当額)で評価されることになりました。そのため、「不動産を購入すれば必ず大幅に相続税評価額を圧縮できる」とは限らず、取得時期や物件種別に応じた慎重な検討が必要です。

ただし、評価通達に基づく評価額が実勢価格と著しく乖離し、課税の公平において著しく不適当と認められる場合には、財産評価基本通達総則6項に基づき個別評価が行われる可能性がある点には注意が必要です。また前述の通り、令和8年度税制改正によっても一定の貸付用不動産の評価方法自体が見直されるため、過度な評価圧縮のみを目的とした不動産取得には専門家による慎重な検討が求められます。

節税対策として不動産投資を行う際の重大なリスクと注意点

ここまで節税のメリットを解説してきましたが、不動産投資には決して無視できない重大なリスクが潜んでいます。「節税になるから」という安易な理由で飛びつくと、取り返しのつかない失敗を招く恐れがあります。

空室リスクと家賃下落|収入を得られない恐れがある

投資用不動産は賃貸経営として運用するのが原則ですが、購入した物件に必ず入居者が入るとは限りません。立地条件が悪く賃貸需要がないエリアであったり、周辺環境の変化によって需要が落ち込んだりした場合、長期的な空室が発生し、家賃収入が途絶えるリスクがあります。また、築年数の経過とともに家賃を下げざるを得ないケースも多々あります。収入がない状態でもローンの返済や固定資産税の支払いは続くため、生活そのものを圧迫しかねません。

黒字化による税負担増|想定を超える収入で逆効果になるケース

空室リスクとは逆の事態ですが、投資が非常にうまくいき、家賃収入が経費や減価償却費を大きく上回った場合、不動産所得は「黒字」になります。前述の通り、不動産所得は総合課税であるため、給与所得などと合算されて課税所得が押し上げられ、結果として所得税や住民税の負担が購入前よりも重くなるケースがあり得ます。こうなると、当初の「節税」という目的は達成できなくなります。

資金繰り悪化|ローン負担が重く生活を圧迫するリスク

不動産投資は、金融機関から多額のローン(借入)をして物件を購入する「レバレッジ効果」を効かせるのが一般的です。しかし、借入額が大きすぎたり、金利が上昇したりすると、毎月の返済負担が重くのしかかります。万が一、空室や大規模修繕が重なれば、手元の資金(キャッシュ)が枯渇し、黒字倒産のような状態に陥るリスクがあります。

物件選びの失敗|節税効果が小さい物件を選んでしまう

所得税の節税効果を最大化するには、短期間で大きな「減価償却費」を計上できる物件(例:耐用年数を過ぎた中古の木造アパートなど)を選ぶ必要があります。新築のRC造マンションなどは法定耐用年数が47年と長いため、1年あたりの減価償却費が小さくなり、不動産所得を赤字にしにくく、結果として毎年の節税効果は限定的になる傾向があります。投資の目的に合致しない物件を選んでしまう失敗は後を絶ちません。

デッドクロスの罠|帳簿は黒字なのにキャッシュが赤字に

不動産投資において最も警戒すべき落とし穴が「デッドクロス」と呼ばれる現象です。

減価償却費は耐用年数が終了すると計上できなくなりますが、ローンの元本返済はその後も続きます。ローンの元本返済部分は経費として認められないため、「帳簿上は経費が減って黒字(利益が出ている)になり、税金が高くなる」にもかかわらず、「実際にはローンの返済があるため、手元に残る現金(キャッシュフロー)はマイナスになる」という恐ろしい状態に陥ります。

デッドクロスを回避、あるいは乗り越えるためには、物件の売却(出口戦略)のタイミングを見極めることや、新たな物件を購入して新たな減価償却費を作り出すといった高度な財務戦略が求められます。

不動産投資の経費計上や確定申告を正しく行う

不動産投資で得た利益や損失は、正確に確定申告を行う義務があります。所得税や住民税の適正な申告を行うための注意点を確認しておきましょう。

経費計上の厳格化|プライベートな支出の混同はNG

節税のために経費を多く計上したい気持ちはわかりますが、不動産賃貸経営に「直接的に関係のない」プライベートな飲食代や旅行代金などを必要経費として計上することは認められません。

税務調査が入った際、経費の根拠を明確に説明できなければ、過少申告加算税や延滞税などの重いペナルティが課される恐れがあります。領収書や請求書を適切に保管し、事業に関連する支出であることを合理的に説明できる状態にしておくことが大前提です。

青色申告の活用|最大65万円の特別控除を利用

不動産投資がおおむね「5棟10室以上」といった事業的規模で行われている場合、正規の簿記による記帳やe-Taxによる電子申告等の要件を満たすことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けることが可能になります。さらに、令和8年度税制改正により令和9年分以降は、65万円の青色申告特別控除の要件を満たしたうえで一定の優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存等の追加要件を満たす場合、青色申告特別控除額が最大75万円に引き上げられます。

「不動産投資による節税の仕組みと注意点」まとめ

  • 損益通算と減価償却の活用
    不動産所得の赤字を給与等と相殺し、現金の支出を伴わない減価償却費で所得税・住民税の負担軽減を図る。
  • 財産評価額の圧縮効果
    現金よりも不動産のほうが相続税評価額が下がる性質を利用し、相続税・贈与税の負担を軽減できる。
  • デッドクロスや空室リスクに注意
    節税目的だけで物件を買うのは危険。将来のキャッシュフローと出口戦略を見据えた事業計画が必須。

東京・新宿をはじめ、全国47都道府県の不動産投資の財務戦略や、複雑な確定申告でお悩みなら、私たちBIZARQ(ビズアーク)グループの税務顧問にご相談ください。過去の税金計算だけでなく、5年後・10年後のキャッシュフローを見据えた「未来財務サポート」と、freeeやマネーフォワード等のクラウド会計を活用したDX化で、あなたの不動産経営をワンストップで強力にバックアップします。まずは当グループの税理士無料相談からお気軽にお問い合わせください。

「不動産投資の節税」に関するよくある質問

A.所得税の累進課税制度の性質上、課税所得が900万円を超えるなど、高い税率が適用されている会社員や経営者の方ほど節税効果を実感しやすくなります。逆に所得が低い場合は、損益通算による節税メリットが小さくなる傾向があります。

A.事前に長期的なキャッシュフローのシミュレーションを行い、ローンの返済期間を長めに設定する、減価償却が切れるタイミングで物件の売却(出口戦略)を検討する、自己資金の割合を増やして借入額を抑えるなどの対策が有効です。

A.ご自身で行うことも可能ですが、減価償却費の計算や経費の厳格な仕分け、青色申告による最大65万円控除の適用などには専門的な知識が求められます。税務リスクを減らし、正確な節税効果を得るためにも、不動産に強い税理士へのご相談を推奨します。

この記事の監修者

BIZARQグループ 代表 / 公認会計士・税理士・行政書士 吉岡伸晃

吉岡 伸晃 Nobuteru Yoshioka

BIZARQグループ 代表 / 公認会計士・税理士・行政書士

大手監査法人での経験を経て、現在はスタートアップから医療法人まで幅広い企業の財務・経営戦略をサポート。事業計画策定や資金調達支援に強い。

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全国47都道府県(フルリモート対応)で、医療法人およびMS法人の連携を活用した高度な医業財務戦略や組織再編を通じて企業の成長を強力にバックアップする東京・新宿の税理士事務所、BIZARQ(ビズアーク)グループ 代表(公認会計士・税理士・行政書士)の吉岡伸晃です。 医療関係者であれば、一度は「MS法人」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。本記事では、最近増えているこのMS法人の概要と、メリットデ...

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