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2026.07.09
自己資金があっても創業融資は受けるべき?4つの理由と面談のコツ

全国47都道府県(フルリモート対応)で、資金調達・創業融資を通じて企業の成長を強力にバックアップする東京・新宿の税理士事務所、BIZARQ(ビズアーク)グループ 共同代表の吉岡和樹です。
起業や独立開業を検討している方の中には、「自己資金が十分にあるなら創業融資を受ける必要はない」「借金(融資)はしないに越したことはない」と考える人も多いかもしれません。
しかし、結論から申し上げますと、自己資金がある場合でも創業融資は積極的に利用するのがおすすめです。理由として、創業融資は他のビジネスローンなどの融資に比べて利用しやすいことや、創業期は想定よりも支出が増えやすいこと等が挙げられます。とはいえ、やみくもに高額の融資を受ければ良いわけでもなく、自社の状況に合った適切な金額で申し込むことが大切です。
今回は、自己資金があっても創業融資を利用するべき理由や、実際に創業融資を利用する際の審査通過のポイントを資金調達のプロの視点から詳しく紹介します。
なお、自己資金の額自体は、創業融資の審査で必ずチェックされる非常に重要な要素の1つです。自己資金についての基本的な考え方は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
【関連記事】創業融資を受けるのに必要な自己資金の割合は?注意点を徹底解説!
目次
【プロの視点】「無借金経営」は危険?手元キャッシュを最大化する攻めの財務戦略
数多くのスタートアップや起業家の資金調達を支援してきたプロの税理士の視点からまずお伝えしたいのは、創業期において「自己資金だけでギリギリのスタートを切る」ことは、かえって致命的なリスクになり得るということです。
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によれば、開業時に苦労したことのトップは「資金繰り、資金調達(56.9%)」であり、開業後も現在進行形で苦労していることとして「資金繰り、資金調達(36.2%)」が上位に挙がっています。これは、東京・新宿エリアのようなビジネスの激戦区はもちろん、全国どの地域においても、事業を軌道に乗せるまでには予期せぬトラブルや想定外の出費が付き物であることを示しています。
手元の自己資金を初期の設備投資や仕入れで使い果たしてしまうと、売上の入金が少し遅れただけで、黒字であっても資金が底をつく「黒字倒産」の危機に直面してしまいます。同調査でも、開業時の平均資金調達額1,219万円のうち、金融機関等からの借り入れが平均827万円と全体の約68%を占め、自己資金(平均279万円)を大きく上回って資金を補填している実態が明らかになっています。
事業計画に基づいた明確な資金使途の範囲内で適正に見積もって創業融資を受け、手元の現預金(キャッシュ)を厚く保っておくことは、単なる借金ではなく、厳しい経営環境を生き抜くための「安全マージン(防衛資金)」の確保に他なりません。過去の決算書(実績)がない状態でも、未来の事業計画の妥当性だけで融資を受けられるこの「特権」を最大限に活用し、強固な財務基盤を構築することこそが、次世代のビジネスを成功に導く最大の戦略と言えるでしょう。
自己資金があっても創業融資を利用するべき4つの理由

最初に紹介したように、自己資金が十分にある場合でも創業融資を利用するのがおすすめです。ここでは、自己資金があってもあえて創業融資を利用するべき理由を4つに分けて詳しく解説します。
創業融資は他の融資の中でも比較的利用しやすい
結論から言うと、過去の決算書(事業実績)が求められない分、他のビジネスローンに比べて間口は広く設定されているからです。
後に難易度の高い別のプロパー融資などを申し込むよりも、まずは起業家向けに用意されている日本政策金融公庫の「新規開業資金」や「スタートアップ創出促進保証制度」などを活用した創業融資を選ぶのがおすすめといえます。
通常のビジネス融資は、審査の際に必ず過去の「事業実績(決算書)」の確認が行われます。しかし、創業直後は当然ながら事業実績がありません。そのため創業融資の審査では、事業実績の代わりに「創業計画」や「申込者の現況(過去の経験など)」を使って審査を行います。つまり、これまでの実績ではなく、申込者のポテンシャルや今後の見通しで審査をしてもらえるのです。
ただし、間口は広く設定されていますが、決して「誰でも無条件で借りられる」わけではなく、その分、経営者としての事業経験や自己資金の計画的な蓄積過程が厳しく審査される点には注意が必要です。
実際に資金が必要になってからの申し込みでは遅い場合がある
結論から言うと、融資の申し込みから実際に資金が振り込まれる(着金)までに、通常1〜2ヶ月程度の時間がかかり、いざという時の支払いに間に合わない可能性が高いからです。
自己資金だけで初期の創業費や開業費をまかなえるため、創業時点での融資は必要ないと考えるケースも多いかもしれません。しかし、実際に事業がスタートして資金繰りが苦しくなり、融資が必要になってからの申し込みでは「遅すぎる(手遅れになる)」場合があります。
明日の支払いのための資金が必要になってから慌てて融資に申し込んでも、間に合いません。特に初回の融資申し込みは面談や書類確認など審査に時間がかかりやすく、入金される頃にはすでに資金ショートを起こしているというケースも珍しくありません。創業直後のうちに利用しやすい創業融資を申し込んでおき、手元の資金に十分な余裕を持たせておくのが最も安心で確実な経営判断です。
創業直後は想定よりも支出が増えるケースが多い
結論から言うと、想定以上の設備投資や広告費がかさむ一方で、売上が安定して入金されるまでに時間がかかるからです。
事業において必要となる資金は、最初の事業計画の想定よりも大きくなるケースが非常に多いです。特に創業直後は、予期せぬ備品の追加や採用コストなど支出が増えやすくなります。例えば東京にオフィスを構える場合など、テナント料や初期費用が予想以上にかさむことも珍しくありません。
そのため、必要な資金を「自己資金」および「初期の売上収入」のみでまかなう前提でスタートしてしまうと、近い将来に資金繰りが苦しくなるリスクがあります。創業直後は通帳の残高に余裕がある状態に見えていても、数ヶ月経った後には資金不足に陥っているケースも少なくないのです。想定以上の支出が発生しても資金の余裕を保てるよう、創業融資を受けておくのがおすすめです。
融資を受けた実績があると次の融資を受けやすくなる
結論から言うと、融資を受けて期日通りに返済したという「実績」が、金融機関からの確固たる信用(クレジット)に直結するからです。
融資を受けた実績があると次の融資(追加融資)を受けやすくなる理由は、主に以下の3つです。
- すでに融資を利用した金融機関の場合、金融機関側が申込者の概要や事業内容、経営者の人柄を深く理解した状態となっているため、次回の審査にかかる時間が短縮されやすい。
- すでに融資を利用した金融機関であれば、定期的な返済を通じて「約束を守る経営者である」という信頼関係が構築された状態で新たな融資の申し込みができる。
- 別の金融機関に対しても、他行での融資を問題なく返済した実績や、事業が上手くいっている旨の客観的なアピール材料となる。
新規事業への参入や事業拡大など、多額の資金が必要になる場面は多く存在します。そのような場面でスムーズな資金調達ができれば、その後の事業活動に大きなプラスとなるでしょう。金融機関との信頼実績を作るという意味でも、創業融資を利用しておくのがおすすめです。
創業融資を確実に利用するための3つのポイント

創業融資をスムーズに獲得し、事業のプラスにするための実務上のポイントを3つ紹介します。
自社に適した適切な金額を申し込む
結論から言うと、返済負担を適正に保ち、審査で「計画性が甘い」と指摘されるのを防ぐためです。
創業融資を利用する際は、やみくもに高額を狙うのではなく、自社に適した適切な金額を申し込みましょう。「とりあえず多めに借りておく」という姿勢は、面談において「資金使途が不明確である」と判断され、審査に落ちるリスクを高めます。事業計画に基づいた明確な資金使途の範囲内で、想定外の出費にも耐えられるよう、運転資金をあらかじめ適正に見積もって融資を受けておくことが重要です。
適切な融資額は業種や事業内容など様々な要素によって異なるため一概にはいえません。ただし、創業融資による借入額は「自己資金の3倍前後」がひとつの目安と言われています。一般的に、創業時の資金調達額のうち自己資金が占める割合は全体の2〜3割程度と言われており、残りを金融機関等からの融資でまかなうケースが多く見られます。
また、論理的な融資希望額の決め方として以下の計算式も挙げられます。
(設備資金 + 運転資金3ヶ月分)- 自己資金 = 融資希望額
自社に適した無理のない融資額を論理的に計算して申し込みましょう。
審査の要となる創業計画書を丁寧に作る
結論から言うと、創業計画書が経営者の「返済能力」と「事業の実現性」を金融機関に証明する唯一かつ最大のプレゼン資料になるからです。
創業計画書とは申込者の現況や創業予定のビジネスに関する計画をまとめた資料です。創業融資の審査において最も重視される資料のため、審査で高評価につながるような内容に仕上げる必要があります。創業計画書を作る上で押さえたいポイントとして、以下の5点が挙げられます。
- 嘘や誇張表現をしない
審査で有利にするためとはいえ、売上見込みや自己資金に関する嘘や誇張表現は厳禁です。かえってマイナス評価になり、審査に落ちる恐れが大きくなります。 - 根拠や妥当性のある内容を記載する
根拠がない・主観が強すぎる内容では、事業に対する知識や準備が不足していると捉えられてしまう恐れがあります。 - なるべく具体的な内容を書く
ターゲット顧客や販売戦略など、具体的でわかりやすい内容であれば、担当者が情報を把握しやすく、審査がスムーズに進む可能性が期待できます。 - 熱意や真剣さをアピールする
事業に対する気持ちのアピールも、実績のない創業融資の審査では非常に大切な要素です。 - 矛盾や漏れを起こさない
異なる項目同士(資金の使い道と調達額など)に整合性がないと、計画の曖昧さや準備不足等の悪印象を与えてしまう恐れがあります。
担当者に好印象を与える面談のコツを押さえる
結論から言うと、面談での受け答えや態度が、そのまま「経営者としての資質」の評価に直結するからです。
創業融資の審査に通過する可能性を上げるため、事前に面談のコツを押さえておきましょう。創業融資の面談でチェックされるポイントはある程度明確なため、事前の対策がしやすいです。面談に向けて最低限押さえるべきコツとして、以下の3つが挙げられます。
- 相手に不快感を与えないよう注意する
言葉遣いや面談にふさわしい服装にする等、相手に不快感を与えないための社会人としての基本的なマナーをしっかり押さえましょう。 - 質問に対して的確に答える
聞かれた質問の意図を汲み取り、的確に答えることが重要です。曖昧な答え方や話の脱線は審査に悪影響を及ぼす恐れがあります。 - 冷静に落ち着いた受け答えをする
想定外の厳しい質問を受けた場合でも、感情的な受け答えは審査に悪影響の恐れが大きいため、常に冷静に落ち着いた受け答えをしましょう。
面談の必勝法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】創業融資の面談の必勝法とは?よくある質問やポイント、注意点を紹介!
「自己資金と創業融資」まとめ
- 自己資金があっても創業融資を受け、手元のキャッシュを最大化する
創業期は想定外の支出が発生しやすいため、自己資金があってもあらかじめ融資を受けて現預金に余裕を持たせておくことが、資金ショートを防ぐ最大の防衛策となります。 - 融資実績を作り、将来の資金調達を有利に進める
創業融資を借り入れて期日通りに返済したという「実績」を作ることで、金融機関との信頼関係が構築され、事業拡大時に次の融資審査をスムーズに進めることができます。 - 適正な融資額の算出と、精緻な創業計画書の作成が審査通過の鍵
明確な資金使途の範囲内で融資額を設定しましょう。審査を確実に通過するためには、矛盾や漏れのない創業計画書の作成と、面談での的確な受け答えといった事前準備が不可欠です。
創業時点で十分な自己資金があっても、創業融資を利用して手元のキャッシュフローを最大化しておくことは、変化の激しい経営環境を生き抜くための極めて有効な戦略です。過去の決算書が不要な創業融資は比較的利用しやすい制度であり、融資実績を作るという意味でも非常に役立ちます。また、創業融資を利用すれば資金に余裕が生まれ、将来資金不足に陥るリスクを抑えられます。
ただし、創業融資でただやみくもに多額の借入をすれば良いわけではありません。融資額が大きすぎると返済負担が重くなり、かえって資金繰りが苦しくなってしまう恐れがあります。事業計画に基づいた明確な資金使途の範囲内で、自社に適した融資額を申し込みましょう。また、審査に確実に通過するために、根拠や妥当性のある創業計画書を丁寧に作り込むことや、面談のコツを押さえることも大切です。
創業融資を利用できるのは創業後の限られた期間のみです。自己資金に余裕がある場合でも、この特権を利用してメリットを享受するのが良いでしょう。しかし、審査官を納得させる高精度な創業計画書の作成や、適切な融資額のシミュレーションを、起業準備で忙しい経営者様が独力で行うことは容易ではありません。
確実な資金調達を実現し、事業のスタートダッシュを決めたいとお考えの経営者様は、東京を中心とする全国47都道府県エリアからのご相談に対応している当法人の資金調達・創業融資サポートをぜひご検討ください。日本政策金融公庫などの融資動向に精通した専門チームが、事業計画の策定から面談対策までをワンストップでサポートいたします。創業時の資金に関するお悩みは、以下の税理士無料相談窓口より、いつでもお気軽にお問い合わせください。貴方の描くビジネスの未来を、私たちが強力にバックアップいたします。
「創業融資と自己資金」に関するよくある質問
創業融資の審査で「自己資金」として認められるのは、経営者自身がコツコツと貯蓄してきたことが客観的に証明できる資金です。具体的には、給与振込や毎月の積立などが記録された「個人の預金通帳の履歴(過去半年〜1年分程度)」が確認されます。逆に、自己資金として認められないのは「出所が不明な資金」です。例えば、審査の直前に突然数百万円の現金が口座に振り込まれたり、タンス預金をまとめて入金したりした場合は、一時的に借りてきた「見せ金」であると疑われ、自己資金の要件を満たさないと判断されて審査に落ちる原因となります。また、親族からの支援金(贈与)は自己資金とみなされるケースが多いですが、その場合も資金の出所を証明する契約書や親族の通帳の提示が求められることがあります。
制度上のルールとしては、一部の特例措置を活用すれば自己資金ゼロでも申し込み自体は可能ですが、実務上の融資審査を通過する確率は「極めて低い(ほぼ不可能に近い)」と言わざるを得ません。金融機関は、自己資金の額を単なる手持ちの現金としてではなく、「起業に対する本気度」や「計画的にお金を管理できる経営者としての資質」を測る重要なバロメーターとして評価します。そのため、自己資金が全くない状態で申し込むと、「計画性がなく、ビジネスに対する覚悟が足りない」と判断されてしまいます。確実に融資を獲得するためには、起業を思い立った日から少しずつでも専用の口座で自己資金を積み立てる実績を作ることが、何よりも重要となります。
いいえ、創業融資で借り入れた資金の使い道を、金融機関に無断で自由に変更することは重大な契約違反となります。融資の審査は、提出された創業計画書に記載されている「設備資金(店舗の工事費や機械の購入費など)」や「運転資金(仕入代金や数ヶ月分の固定費など)」の具体的な使い道とその妥当性を評価して行われます。例えば、設備資金として借りたお金を、個人の生活費や、計画書に記載のなかった別の投資(株や暗号資産など)に流用したことが発覚した場合、資金使途違反とみなされ、融資の「一括返済」を求められる非常に高いリスクがあります。計画に変更が生じる場合は、必ず事前に融資担当者へ相談し、了解を得るプロセスを守ることが不可欠です。
この記事の監修者

吉岡 和樹 Kazuki Yoshioka
BIZARQグループ 共同代表
上智大学を中退後、7年間にわたり中堅会計事務所に勤務し、2014年にBIZARQ Groupの前身となる会計法人を設立。「経営のアクセルを踏む『攻め』のコンサル」を信条とし、会計・税務だけでなく経営や財務の相談に幅広く対応。創業融資やリスケジュール支援など、資金調達を通じた伴走支援で企業の成長を力強く後押ししている。事業計画の策定と銀行対応に多数の実績を持つ。


