租税回避とは?節税・脱税との違いについても解説!

2024.08.23

租税回避とは、不合理な手段によって納税額を抑える、もしくは納税を逃れる行為の総称です。

租税回避に該当する行為はペナルティの対象にはなりません。ただし近年は一部の租税回避行為を否認する規定が存在します。

 

租税回避は税法が想定していない変則的な手法であり、決して推奨できません。

税負担を抑えるためには、合法的な行為である節税手法を選ぶようにしましょう。

 

今回は租税回避について詳しく解説します。

 

合法的な手段である節税については以下の記事をご覧ください。

 

 

 

 

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CONTENTS

租税回避とは

租税回避とは、不自然・不合理な手法により納税額を抑える、もしくは納税を免れることです。

いわゆる「法の抜け穴を突く」行為が租税回避に該当します。

 

租税回避は明確な違法行為ではないものの、税法が想定していない異常もしくは変則的な手法です。

節税と脱税の間、グレーゾーンに属する行為といえるでしょう。

租税回避行為の定義と法的位置づけ

租税回避行為とは、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除すること」と定義されています。

 

この定義は金子宏教授によるもので、租税法学において広く受け入れられています。租税回避行為の特徴は、

 

①選択した法形式の異常性

②通常の法形式と同様の経済的成果の実現

③税負担の減少

 

という3つの要素で説明されることが多く、法的には「合法だが望ましくない」という微妙な位置づけにあります。

租税回避はペナルティの対象にはならない

租税回避はペナルティの対象になりません。その理由として、租税法律主義の存在が挙げられます。

 

租税法律主義とは、法律に基づいた課税しか行わないという考えです。

税の世界は租税法律主義によって成り立っており、法律の定めに従って課税や徴収が行われます。

 

前述のように、租税回避は税法が想定していない異常な手法ではあるものの、明確な違法行為ではありません。

つまり、租税回避に該当する行為にペナルティを課す根拠となる法律が存在しないのです。

したがって租税回避と判断される行為はペナルティの対象にならず、脱税のように附帯税が課されることもありません。

租税回避の否認規定

現在、日本には租税回避行為を包括的に否認する規定は存在しません

前述のように租税法律主義が前提のため、根拠となる法律が存在しない行為は税を免れることができ、ペナルティも課されないのが現状です。

 

しかし、明確な違法行為ではないものの、一部の租税回避行為を否認する規定が存在します。

租税回避行為を否認する規定の主な例は以下の通りです。

 

  • 同族会社等の行為又は計算の否認(所得税法157条、法人税法132条、相続税法64条等)
  • 同族会社における経済的合理性のない特殊な取引は、同法律を根拠に否認されるケースがあります。
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  • 役員給与のうち不相当に高額な部分の損金不算入(法人税法34条2項)
  • 役員報酬が不当に高額とみなされた場合、該当の部分は損金算入が認められないという規定です。
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  • 内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(租税特別措置法66条の6)
  • タックスヘイブン対策税制と呼ばれるものです。詳しくは「租税回避に該当する行為の例」で紹介します。

租税回避否認規定の具体例

租税回避を防止するために、税法には様々な個別否認規定が設けられています。例えば、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定、法人税法132条の2の組織再編成に係る行為計算否認規定、法人税法132条の3の連結納税に係る行為計算否認規定などがあります。

 

また国際的な租税回避に対しては、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)や移転価格税制などが整備されています。これらの規定は、租税回避の手法が複雑化・巧妙化するにつれて、より精緻に発展してきました。

 

近年では、BEPSプロジェクトなど国際的な取り組みも進んでおり、租税回避への対応は国際的な課題となっています。

租税回避と節税の違い

租税回避と節税の違いは、対象の行為が税法の想定する範囲内で行われるものが否かです。

 

節税は合法的かつ一般的な手段で納税額を抑える行為を指します。制度を上手く活用し、税の過払いを防ぐための行為ともいえます。

節税行為として以下の例が挙げられます。

  • ・保険料控除や医療費控除など、適用対象となる所得控除制度の活用(所得税)
  • ・iDeCoやNISAの活用(所得税)
  • ・役員報酬を適正な範囲で増額(法人税)
  • ・保険や共済の加入(所得税・法人税)
  • ・少額減価償却資産の特例の活用(個人事業主の所得税・法人税)

税理士による節税対策のアドバイスも、原則として税法が想定する一般的な方法によって実施できる手段に限ります。

 

租税回避は、前述のように税法が想定していない行為を指す言葉です。

法律に反しているわけではないものの、一般的な手段とはいえません。税負担を抑えるためであっても、決して推奨できない行為です。

租税回避と脱税の違い

租税回避と脱税の違いは、法律に反しているか否かです。

不当な行為で税負担の軽減をすることで、明確な違法行為です。

脱税はペナルティの対象であり延滞税や重加算税等の附帯税が課されます。

特に悪質な場合には刑事罰の対象になるケースもあります。

脱税に該当する行為として以下の例が挙げられます。

  • ・売上や収入の過少申告
  •  ※「所得隠し」と呼ばれるケースも多いです。
  • ・経費の水増し
  • ・二重帳簿の作成
  • ・期末在庫の調整

租税回避は税負担を軽減させるための不自然な行為ではあるものの、違法行為ではなく、附帯税のようなペナルティも課されません。

租税回避行為のリスクと影響

租税回避行為は法的には違法ではないものの、様々なリスクを伴います。まず、税務調査の対象となる可能性が高まり、否認された場合には追徴課税や加算税が課される経済的リスクがあります。

 

また、租税回避行為が公になると企業イメージの低下を招き、ブランド価値の毀損や消費者からの信頼喪失といった社会的リスクも存在します。実際に国際的な大企業の租税回避行為が報道され、不買運動につながった事例もあります。

 

さらに、近年ではESG投資の観点から、過度な租税回避を行う企業は投資先として敬遠される傾向にあり、資金調達面でも不利になる可能性があります。

租税回避に該当する行為の例

租税回避に該当する行為の例を3つ紹介します。

タックスヘイブンの活用

タックスヘイブンとは、法人税や所得税等の税率が低い国や地域を意味する言葉です。

タックスヘイブンを活用した主なスキームとして以下の4つが挙げられます。

 

  • タックスヘイブンで事業を行う
  • タックスヘイブンに移住し、現地で会社を設立して事業を行う手法です。
  • タックスヘイブン現地での事業実態が明確に存在するため、明確に現地の税法が適用されます。租税回避にも該当せず、特に問題のない行為です。
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  • タックスヘイブンに会社(ペーパーカンパニー)を設立する
  • タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、日本の会社からタックスヘイブンの会社に送金して税額を抑える手法です。
  • 日本の会社は支出が増えるため所得が圧縮され、タックスヘイブンの会社は低い税率が適用されるため、法人税を抑えられます。
  •  
  • タックスヘイブンに設立した会社を経由して贈与をする
  • 贈与者である個人からタックスヘイブンの会社(ペーパーカンパニー)に財産を移転し、その後タックスヘイブンの会社から個人に贈与をする手法です。
  • 法人から個人への贈与は所得税の対象となり、贈与税よりも低い税率が適用されます。
  • また贈与者からタックスヘイブンへの財産移転についても、タックスヘイブンは法人税の税率が低いため日本国内よりも税額を抑えられます。
  •  
  • タックスヘイブンへ移住する
  • タックスヘイブンへ移住し、現地の居住者(日本の非居住者)となって相続税の税負担を抑える手法です。
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ただし現在は「タックスヘイブン対策税制」と呼ばれる規定が設けられています。

タックスヘイブンに設立したペーパーカンパニーを活用する手法は日本の税制の対象になるケースが多いです。

 

「タックスヘイブンで事業を行う」「タックスヘイブンへ移住する」は、要件さえ満たせば問題なく現地の税制が適用されます。

ただし両社とも実行のハードルが高いため、節税対策として簡単に実施できる手法とはいえません。

 

タックスヘイブンについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

 

国際的な租税回避対策の動向

近年、OECDやG20を中心に国際的な租税回避対策が強化されています。特にBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトでは、多国籍企業による過度な租税回避を防止するための15の行動計画が策定されました。

 

日本でも2015年以降、外国子会社合算税制(CFC税制)の強化や恒久的施設(PE)認定の厳格化など、国際的租税回避への対応が進んでいます。

 

また、各国間での税務情報の自動的交換制度も整備され、タックスヘイブンを利用した租税回避行為の透明性が高まっています。こうした国際的な協調の進展により、かつてのような単純なタックスヘイブン活用は難しくなってきています。

会社設立の繰り返し

会社の新設を繰り返して消費税の免除を受ける行為です。

 

消費税は前々事業年度(基準)の課税売上高が1,000万円を超えると課税義務が生じます。

しかし、会社設立後2期間は基準期間が存在しないため、課税売上高を用いた判定ができません。

したがって、会社設立後2期間は消費税の免税事業者となります。

 

この仕組みを活用し会社設立を2年ごとに繰り返せば、消費税の納税義務を逃れ続けることができます。

 

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、設立後2期間が経過していなくても消費税の課税事業者となります。

  • ・設立時の資本金が1,000万円以上である
  • ・前事業年度の上半期で、課税売上高と給与支払額の両方が1,000万円を超えている
  • ・大企業の子会社

 

消費税の免税については以下の記事をご覧ください。

 

デジタル経済における租税回避の新たな手法

デジタル経済の発展に伴い、従来の税制では対応が難しい新たな租税回避の手法が出現しています。

例えば、インターネットを通じたサービス提供では物理的拠点がなくても事業展開が可能なため、低税率国にサーバーや知的財産権を置き、高税率国での課税を回避するスキームが見られます。

また、暗号資産(仮想通貨)を活用した国際送金や、デジタルプラットフォーム上での取引を通じた課税逃れなども問題となっています。

 

これに対し、各国ではデジタル課税の導入や経済的実質に基づく課税アプローチの強化が進められています。日本でも令和3年度税制改正において国際的な課税ルールの見直しが行われ、デジタル経済に対応した税制の整備が進んでいます。

租税回避はしても良い?するべきではない?

租税回避は明確な違法行為ではないため「するべきではない」とは言い切れません。

ただし税法が想定していない異常な行為であるため、決して勧めることはできない行為です。

税負担が不当に軽減される結果になった場合は、対象の行為が認められない・悪質な脱税行為であると判断されるケースもあります。

また、タックスヘイブン税制のように租税回避を防ぐ税制が施行される可能性も考えられます。

 

税負担を軽減するための行為は、合法的に認められた節税のみにとどめておくのが確実かつ安心です。 

合法的な節税と租税回避のバランス

企業や個人が取るべき適切な税務戦略は、単に税負担を減らすことだけを目的とするのではなく、長期的な視点からの総合的な判断が重要です。合法的な節税措置を活用することは経済合理性がありますが、租税回避と判断されるリスクがある行為は慎重に検討する必要があります。

 

特に重要なのは、その取引や行為に「経済的合理性」があるかどうかです。税金対策だけを目的とした不自然な取引構造は、たとえ形式的に合法であっても、税務当局による否認リスクが高まります。

 

また、近年では企業の社会的責任(CSR)の観点から、適正な納税を行うことが企業価値向上につながるという認識も広がっています。専門家(税理士)に相談することで、合法的な手法で税負担を軽減しつつ、法に従った適切な経営を行うことが最善の選択と言えるでしょう。

租税回避に関する最近の動向と事例

租税回避に関する国内外の事例や判例は、企業の税務戦略を考える上で重要な参考になります。

国内外の租税回避事例と判例

近年、国内外で様々な租税回避事例が報告され、それに対する裁判所の判断も蓄積されています。国際的には、アップルやグーグルなどの巨大IT企業によるアイルランドなどを活用した租税回避スキームが注目を集めました。

 

国内では、IBMの事件(2006年)やヤフー・IDCF事件(2016年)などが重要な判例となっています。特にヤフー・IDCF事件では、法人税法132条の2の「不当性」の判断基準として「経済的合理性基準」が示され、租税回避の判断において重要な先例となりました。

 

これらの事例から、形式的には法の要件を満たしていても、取引の経済的実質や事業目的が乏しい場合には否認される可能性が高いことが示されています。企業の税務戦略においては、こうした最新の動向を踏まえたリスク評価が不可欠となっています。

租税回避についてよくある質問

租税回避に関して多くの方が疑問を持たれています。法的な位置づけから実際のリスクまで、よくある質問とその回答をまとめました。正しい知識を身につけ、適切な税務戦略を立てるための参考にしてください。

租税回避は違法行為ですか?

租税回避は違法行為ではありません。租税回避とは、税法が規定していない行為を行って、合法的に税負担を軽減することを指します。

 

税法で規制されていない以上は合法的な行為であるため、租税回避を行ってもただちに罰せられるものではありません。ただし、租税回避とされる行為は異常な法形式に基づいた取引であり、経済的な合理性があるとはいえない点に注意が必要です。

租税回避と脱税の違いは何ですか?

租税回避と脱税は明確に異なります。脱税は所得隠しや虚偽申告など、違法な手段で税金を逃れる行為です。

 

一方、租税回避は法律の合間をぬい、違法や税金にあたる法律がないことを利用して課税をまぬがれる手段です。脱税は犯罪行為として罰則の対象となりますが、租税回避は法的には違法ではないため、直接的なペナルティはありません。

租税回避を行うとどのようなリスクがありますか?

租税回避行為は法的には違法ではないものの、いくつかのリスクが存在します。まず、税務調査の対象となる可能性が高まります。

 

また、租税回避と判断された取引が否認規定に触れる場合、後から課税対象とされることがあります。さらに、租税回避行為が公になった場合、企業イメージの低下を招くといった社会的リスクも考慮する必要があります。

租税回避を防ぐための法的措置はありますか?

租税回避を防ぐために、税法には様々な個別否認規定が設けられています。例えば、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定や、タックスヘイブン対策税制などがあります。

 

これらの規定により、租税回避と判断される行為に対して税務当局が課税できる法的根拠が整備されています。国も抜け道をなんとか埋めようと否認規定を設定するなどの対策を行っており、租税回避の手法が封じられていくケースも少なくありません。

租税回避と節税はどう違いますか?

節税は法の範囲内で税負担を減らすための対策を取ることを指します。例えば、事業に使った支出を必要経費として計上するために領収書をもらったり、税法上の特例や控除などを活用することが節税に当たります。

 

一方、租税回避は税法が想定していない方法によって税負担を軽減する方法です。節税は法が予定している範囲で税負担の軽減を図る行為であるのに対し、租税回避は法の抜け穴をついて税金から逃れることであり、性質が異なります。

まとめ

租税回避とは、不合理な手段によって税額を減らす、もしくは納税を逃れる行為の総称です。

明確な違法行為ではなくペナルティの対象にもなりませんが、税法が想定している一般的な手法とはいえません。

 

現在の日本には租税回避を包括的に否認する規定はありません。

ただし、一部の租税回避行為を否認する規定は存在します。

タックスヘイブン税制のように、租税回避を防止するための否認規定が今後増える可能性も考えられます。

 

税負担を軽減させるための行為は、合法的かつ自然な範囲内である節税対策のみを実施するのが安心です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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