エンジェル税制とは?節税効果と確定申告の流れについて解説!

2024.03.11

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エンジェル税制とは、エンジェル投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。

優遇措置は投資を行った年と、当該株式を売却した年に受けられます。

どの優遇措置を受けるかによって企業が満たすべき要件が異なるため事前に確認する必要があります。

また、確定申告の流れも事前の把握が必要です。

 

今回はエンジェル税制の節税効果や、エンジェル税制の適用を受ける際の確定申告の流れについて解説します。

 

起業家がエンジェル投資家に援助を受けるメリットについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

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CONTENTS

エンジェル税制の概要

はじめに、エンジェル税制の概要を紹介します。

エンジェル税制とは

エンジェル税制とは、特定の要件を満たす非上場企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇を行う制度です。

起業して間もない企業に資金を出資する投資家のことを「エンジェル」または「エンジェル投資家」と呼びます。

エンジェル税制のメリット・デメリット

エンジェル税制を活用する最大のメリットは、高い節税効果を得ながら、将来性のあるスタートアップ企業を直接支援できる点です。所得が高い方や株式投資で利益が出ている方ほど、所得控除や株式譲渡益からの控除による税負担の軽減効果が大きくなります。

また、経済産業省や都道府県の審査を経た企業に投資するため、一定の信頼性が担保される点も魅力です。

 

一方、デメリットとしては、投資先の企業が未上場であるため、株式の流動性が低く、売却が困難な場合があります。また、事業が計画通りに進まず、投資資金が回収できない元本割れのリスクも伴います。制度を利用するための手続きが煩雑である点も注意が必要です。

エンジェル税制による節税効果

エンジェル税制による節税効果を得られるタイミングとして、投資した年と投資した未上場ベンチャー企業株式を売却した年の2つが挙げられます。

それぞれ節税効果を得られる仕組みや控除額を解説します。

投資した年

投資した年に受けられるのは、優遇措置AとBのいずれかです。

  • 優遇措置A:対象企業への投資額-2,000円を所得から控除
  • 優遇措置B:対象企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除

なお、優遇措置Aは以下いずれか低い方が控除額の上限となります。

  • ・総所得金額×40%
  • ・800万円(令和2年12月31日までは1,000万円)

投資した未上場ベンチャー企業株式を売却した年

株式売却によって損失が発生した場合の優遇措置は以下の2つです。

  • ・その年の他の株式譲渡益との通算による相殺が可能
  • ・相殺しきれなかった分は翌年以降3年間にわたり株式譲渡益との通算が可能になる

売却した年に優遇措置を受けられるのは、損失が発生した場合のみです。

【2023年新設】プレシード・シード特例

2023年4月1日に、エンジェル税制に「プレシード・シード特例」が新設されました。

これは、設立5年未満などの特に若いステージのスタートアップ企業への投資をさらに後押しする制度です。この特例では、対象企業への投資額全額(上限20億円)を、その年の他の株式譲渡益から控除できます。

 

優遇措置Bと似ていますが、対象企業の要件がより厳しく設定されている一方で、非課税となる投資額の上限が非常に大きいのが特徴です。上場株式などで多額の利益が出た年にこの特例を活用すれば、大幅な節税効果が期待できます。

 

この制度により、ハイリスクながらも大きな成長が見込める創業初期の企業への資金供給が促進されることが期待されています。

エンジェル税制の対象要件

エンジェル税制の適用を受けるためには、ベンチャー企業要件と個人投資家要件の両方を満たす必要があります。それぞれ詳しく解説します。

ベンチャー企業要件

まずはベンチャー企業要件です。ベンチャー企業が満たすべき要件は、同税制において優遇措置Aと優遇措置Bのどちらを選ぶかによって異なります。

 

優遇措置Aの場合

優遇措置Aの場合は以下2つを満たす必要があります。

  • ①創業から5年未満の中小企業者である
  • ②設立経過年数毎に設定されたその他の要件を満たす。

 

①はエンジェル税制で優遇措置Aの適用を受ける上ですべての企業が満たすべき要件です。

②は設立経過年数によって異なり、優遇措置Aの場合は従業員に関する要件やキャッシュフローに関する要件が設定されています。

たとえば1年未満かつ最初の事業年度を経過した事業者の場合、以下いずれかの要件を満たす必要があります。

  • イ.研究者または新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上で、直前期までの営業キャッシュフローが赤字。
  • ウ.試験研究費等が収入金額の5%超で直前期までの営業キャッシュフローが赤字。

 

優遇措置Bの場合

優遇措置Bの場合、以下2つの要件を満たす必要があります。

  • ①創業から10年未満の中小企業者である
  • ②設立経過年数毎に設定されたその他の要件を満たす。

 

①は優遇措置Bの適用にあたってすべての企業が満たすべき共通の要件です。

②ついて、優遇措置Bの場合は従業員に関する要件や経費に関する要件が設定されています。

たとえば1年未満かつ最初の事業年度を経過した事業者の場合、以下のうちどちらかを満たす必要があります。

  • カ. 研究者または新事業活動従事者が2人以上かつ常勤の役員・従業員の10%以上。
  • キ. 試験研究費等が収入金額の3%超。

 

また、以下の4つはAとBどちらの場合でも満たす必要がある共通の要件です。

  • ・特定の株主グループ以外の外部からの投資を6分の1以上取り入れている会社である
  • ・大規模法人(資本金1億円超等)及び大規模法人と特殊な関係(子会社等)にある法人の所有に属していない
  • ・未登録・未上場の株式会社である
  • ・風俗営業等に該当する事業を行う会社ではない

個人投資家要件

個人投資家が満たすべき要件は以下の2つです。

  • ・金銭の払い込みにより、対象となるベンチャー企業の株式を取得している
  • ・投資先が同族会社である場合、持株割合が大きい者から第3位までの株主グループの持株割合を順に加算し、その割合が初めて50%超になる時における株主グループに属していない

たとえばAの持分割合が25%、Bの持分割合が20%、エンジェル投資家Cの持分割合が10%となった場合、エンジェル税制の適用対象外となります。

【具体例】エンジェル税制の節税シミュレーション

エンジェル税制の節税効果を具体的に見てみましょう。

 

例えば、総所得金額1,000万円の方が、優遇措置Aの対象企業に300万円投資した場合を考えます。この場合、投資額から2,000円を引いた約300万円が所得控除の対象となり、所得税率が33%から23%に下がります。その結果、所得税額が約163万円から約89万円に減り、約74万円もの節税が可能になります。

 

また、株式譲渡益が500万円ある方が、優遇措置Bの対象企業に500万円投資したケースでは、投資額の全額を株式譲渡益から控除できるため、譲渡益にかかる税金(約101万円)がゼロになり、大きな節税効果が得られます。

 

このように、ご自身の状況に合わせてシミュレーションしてみることが重要です。

エンジェル税制 確定申告までの流れ

エンジェル税制の適用を受けるには、単に確定申告をすれば良いわけではありません。

税制の適用を受けるために事前に必要な手続きがあります。この章では、確定申告までの流れを解説します。

企業側が都道府県へ申請を行う

はじめに、投資を受ける側である企業から都道府県に対して申請が必要です。

申請を行うタイミングは、投資を受ける前と受けた後の2パターンに大別されます。

投資前の申請には、エンジェル税制の対象か確認できる・経済産業省のホームページで会社名等が公表されるといったメリットがあります。

ただしその分時間や手間がかかる点には注意が必要です。

 

申請後、都道府県からベンチャー企業へ確認書が交付されます。

確定申告に必要な書類を投資家へ提出する

同税制の適用を受けるためには、前項で紹介した確認書が必要です。

企業から投資家へ交付された確認書を渡しましょう。

確定申告を行う

エンジェル税制の適用を受けるには、確定申告書とあわせてエンジェル税制に関する書類の提出をする必要があります。

書類は全部で以下の11種類があり、優遇措置AとBのどちらを受けるか、投資と売却どちらの時点の確定申告かによって提出するべき書類が異なります。

 

  • 1.都道府県等が発行する確認書(企業から受け取り)
  • 2.企業が交付する投資家が一定の株主に該当しない旨の確認書
  • 3.株式投資契約書の写し
  • 4.株式異動状況明細書
  • 5.株式の譲渡(売却)等に関する書類
  • 6.投資先企業の清算結了の登記事項証明書、破産手続開始の決定の公告等
  • 7.株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書
  • 8.特定権利行使株式及び特定投資株式分がある場合、株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書
  • 9.特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書
  • 10。所得所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(特定投資株式に係る譲渡損失の計算及び繰越控除用)
  • 11.特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書

 

必要書類の組み合わせは以下の通りです。

  • ・優遇措置A:1~4、9、11の計6種
  • ・優遇措置B:1~4、7、9の計6種
  • ・売却時点:1~5、8、10の計7種
  • ・清算結了:1~4、6、8、10の計7種

※破産手続開始の決定による損失が生じた場合

確定申告に必要な書類

エンジェル税制の適用を受けるためには、確定申告時に複数の書類を提出する必要があります。主な必要書類は以下の通りです。

 

まず、投資先の企業から「都道府県知事の確認書」「一定の株主に該当しない旨の確認書」「株式異動状況明細書」を受け取ります。加えて、自身で用意するものとして「投資契約書の写し」が必要です。

また、税務署の様式である「特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書」を作成します。

 

株式投資型クラウドファンディングを利用した場合は、事業者がこれらの書類を一括で用意してくれることが多く、手続きの負担が軽減されます。書類に不備がないよう、事前にしっかり確認・準備しましょう。

確定申告における注意点

エンジェル税制の確定申告にはいくつかの注意点があります。

 

まず、必要書類が多く、特に企業側が都道府県から確認書を取得する手続きには時間がかかる場合があるため、確定申告の期限に間に合うよう、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが不可欠です。

年末調整で納税を完了している会社員の方も、エンジェル税制の適用を受けるには自身で確定申告を行う必要があります。

 

また、どの優遇措置(A、B、プレシード・シード特例)を選ぶかによって節税効果が異なるため、自身の所得や株式譲渡益の状況を考慮して最も有利なものを選択することが重要です。

 

手続きが複雑で不安な場合は、税理士などの専門家に相談することも有効な手段です。

エンジェル投資 投資先企業の探し方

最後に、投資先企業の探し方を3つ紹介します。

マッチングサービスの活用

マッチングサービスは自身の希望条件に合う投資先企業を効率良く探せる手段です。

近年はエンジェル投資をしたい・受けたい人向けのマッチングサービスが充実しており、手軽に利用できます。

交流イベントへの参加

起業家が集まるイベントやベンチャー企業交流会など、交流イベントに参加するのもおすすめです。

条件を絞り込んでの投資先探しがしにくい分、予想外の出会いや人脈作りにつながる可能性もあります。

株式投資型クラウドファンディング

令和2年4月1日以降、株式投資型クラウドファンディング業者が経済産業大臣の認定事業者に追加されています。

一般的なクラウドファンディングと同様、プロジェクト内容を確認した上での投資が可能です。

エンジェル税制についてよくある質問

ここでは、エンジェル税制に関して個人投資家の方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。制度利用の際の疑問点や不安を解消するためにお役立てください。

エンジェル税制は誰でも利用できますか?

エンジェル税制は、特殊な利害関係者を除き、基本的には誰でも活用できる汎用性の高い制度です。

ただし、投資家自身にも要件があります。具体的には、金銭の払込みによって対象企業の新規発行株式を取得していること、そして、投資先企業が同族会社である場合には、その判定の基礎となる株主グループに属していないことが求められます。

つまり、親族が経営する会社への投資などでは対象外となるケースがあります。

 

これらの要件を投資時点で満たしていれば、会社員、経営者、退職者など、職業を問わず制度を利用して節税メリットを受けることが可能です。

NISAやiDeCoとの違いは何ですか?

エンジェル税制、NISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、いずれも税制優遇のある制度ですが、目的と対象が異なります。

 

NISAは上場株式や投資信託への投資で得た利益が非課税になる制度、iDeCoは掛金が所得控除され、将来の年金資産を形成するための制度です。

一方、エンジェル税制は、非上場のベンチャー企業への投資が対象で、投資した年に所得控除や株式譲渡益からの控除を受けられる点が最大の違いです。

 

NISAやiDeCoが比較的リスクの低い資産形成を目指すのに対し、エンジェル税制はハイリスク・ハイリターンなベンチャー投資を促進し、即時的な節税効果を狙う制度と言えます。

投資した企業が倒産した場合はどうなりますか?

投資したベンチャー企業が残念ながら上場せずに倒産してしまった場合でも、税制上の救済措置が用意されています。株式の価値がなくなったことによる損失は「株式等に係る譲渡所得等」の計算上、譲渡損失として扱われます。この譲渡損失は、その年の他の株式譲渡益と相殺することが可能です。

 

もしその年に相殺しきれない損失が残った場合でも、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越し、将来の株式譲渡益から控除することができます。これにより、投資が失敗に終わった場合でも、税負担を軽減することで投資リスクを一部緩和する効果が期待できます。

まとめ

エンジェル税制はエンジェル投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。

投資した年と当該株式の売却により損失が出た年に優遇措置を受けられます。

適用を受ける優遇措置の種類によって満たすべき要件が異なるため注意しましょう。

また優遇措置AとBのどちらを受けるか、投資と売却どちらの時点の確定申告かによって提出するべき書類が異なる点にも注意が必要です。

 

エンジェル投資を行う前に、まずはエンジェル税制の仕組みについて理解を深めましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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