
決算賞与とは決算前後のタイミングで支給する賞与であり、法人の節税対策として多く活用されています。
決算賞与が法人税の節税につながる理由は、支給の有無や金額を決算直前に決めることができるためです。
ただし決算賞与をその事業年度の損金に算入するにはいくつかの要件を満たす必要があります。
また、決算賞与はメリットだけでなく注意点が存在する点も事前にしっかり押さえることが大切です。
今回は決算賞与が法人税の節税につながる理由や、決算賞与のメリット・注意点について解説します。
決算賞与以外の決算直前に実施できる節税対策について以下の記事で紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。
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CONTENTS
決算賞与は法人税の節税につながる?

はじめに決算賞与の概要や、決算賞与の活用による法人税の節税の可否について解説します。
決算賞与の概要
決算賞与とは決算前後のタイミングで支給する賞与です。その年の業績に基づいて支給額を決定します。
決算賞与との性質の違いを強調し、夏・冬といった決まった時期に支給する賞与を通常賞与と呼ぶこともあります。
決算賞与が法人税の節税に効果的な理由
- 1.事業年度終了の日までに決算賞与の支給対象者全員に支給額を通知している
- 2.事業年度終了日の翌日から1ヶ月以内に、1の通知内容の通りに支給する
- 3.決算賞与の支給額として通知した額を当期中に費用として経理処理している
決算賞与の仕訳方法
前述のように、決算賞与を当期の損金にするには決算賞与の支給額として通知した額を当期中に費用として経理処理する必要があります。
以下のケースを例に仕訳方法を紹介します。
- ・決算賞与の合計額:800万円
- ・賞与から控除される社会保険料や所得税の合計:100万円
まずは賞与を計上する仕訳です。日付は期末日にするのが一般的です。
上記の例の場合、仕訳は以下のようになります。
- 賞与 8,000,000 / 未払費用 7,000,000
- 預り金 1,000,000
翌期に支払う額を未払費用勘定、賞与から控除する額を預り金勘定で計上します。
なお、未払費用ではなく未払金勘定を使用することも可能です。
どちらの勘定科目でも問題ありませんが、一度決めた勘定科目の使用を継続する必要があります。
支払時の仕訳は以下の通りです。
- 未払費用 7,000,000 / 普通預金 7,000,000
※今回は預り金を当期中に計上する方法を紹介しましたが、賞与の計上時ではなく、支払い時に処理する方法でも問題ありません。
決算賞与を損金算入するための3つの要件

決算賞与を損金として認められるためには、税法で定められた要件を正確に満たす必要があります。これらの要件は税務調査でも厳しくチェックされるポイントであり、一つでも欠けると当期の損金として認められず、想定していた節税効果が得られなくなる可能性があります。
ここでは、その重要な3つの要件について、それぞれ具体的に解説します。
要件① 全ての従業員への通知
決算賞与をその事業年度の損金とするためには、まず、決算日までに賞与を支給する全ての従業員に対して、それぞれの支給額を通知している必要があります。この通知は口頭ではなく、後から証明できるよう「賞与通知書」などの書面で各従業員に交付しておくことが非常に重要です。
通知書には支給対象期間、支給日、支給額などを明記し、全従業員へ同時期に通知することが求められます。税務調査の際に客観的な証拠として提示できるよう、通知した事実を記録として残しておくことが、否認リスクを避けるための鍵となります。
要件② 決算日の翌日から1ヶ月以内の支払い
次に、通知した決算賞与を、決算日の翌日から1ヶ月以内に全ての対象従業員へ支払う必要があります。例えば、3月決算の会社であれば、4月30日までに支払いを完了させなければなりません。
この際、一部の従業員に支払いが遅れたり、退職を理由に支払わなかったりすると、全員に支払ったと見なされず、会社が支払った賞与総額が損金として認められないリスクがあります。支払いの証明を確実にするため、現金手渡しではなく、銀行振込を利用するべきです。これにより、支払いの日付と金額が客観的な記録として残ります。
要件③ 事業年度での損金経理
損金算入の最後の要件は、通知した決算賞与の総額を、その事業年度の費用として会計帳簿に計上していることです。決算日までに支払いが完了していない場合は、「未払金」や「未払費用」といった勘定科目を用いて、当期の費用として処理します。
この損金経理が行われていない場合、たとえ他の要件を満たしていても、その期の損金として認められません。決算整理仕訳の際に、支給総額を正確に費用計上することが不可欠です。この一連の会計処理が、税務上の節税効果を確定させるための最終ステップとなります。
決算賞与のメリット

決算賞与を支給するメリットを3つ紹介します。
法人税等の節税効果がある
決算賞与の最も大きなメリットは、法人税等の節税効果がある点です。
決算賞与の支給により当期の利益が少なくなるため、法人税等の額も減らせます。
実際にどれほどの節税効果があるか、以下の例を用いて紹介します。
- ・決算賞与計上前の税引前当期純利益:700万円
- ・決算賞与の額:200万円
- ・法人税等の実効税率:30%
決算賞与を計上しない場合、法人税等の額は以下のようになります。
- 700万円×30%=210万円
一方で決算賞与を計上する場合、法人税等の実効税率は以下のように変わります。
- (700万円-200万円)×30%=150万円
決算賞与はまとまった金額になりやすいため、法人税を大幅に減額できます。
その年の業績に基づいて金額を決められるという性質上、節税効果のコントロールがしやすい点もメリットです。
従業員のモチベーションアップにつながる
決算賞与の支給は従業員のモチベーションアップにもつながります。
前述のように、決算賞与は会社の業績によって支給の有無および支給額が決まる賞与です。
そのため、決算賞与の支給があれば「会社に貢献できている」「努力が評価された」と実感できるでしょう。
また、業績が上がれば支給額も上がる可能性があると考えれば、意欲の向上も期待できます。
従業員のモチベーションは会社の雰囲気や生産性に強く影響を与えます。
そして決算賞与の支給は、従業員のモチベーションに良い効果をもたらす可能性が高いのです。
利害関係者へのアピール効果を期待できる
決算賞与の支給により利害関係者へのアピール効果も期待できます。
前述のように、決算賞与は業績に応じて支給の有無や金額を決める賞与です。
そのため決算賞与を支給するという事実は、会社の業績が良いことの証明ともいえます。
また、決算賞与の支給は「社員へしっかり還元する」という印象にもつながります。
株主等に社員を大切にするという良いイメージを与えられるのはもちろん、人材確保の面でもメリットが大きいです。
このように決算賞与は自社内部だけでなく、外部の利害関係者に対しても良い効果を発揮する可能性があります。
決算賞与を支給する際の注意点

最後に、決算賞与を支給する際の注意点を3つ紹介します。
会社のキャッシュが減る
最も注意するべきなのが、決算賞与の支給によって会社のキャッシュが減る点です。
前述のように、決算賞与には法人税等の節税効果があります。
しかし決算賞与の計上によって減額される法人税等の額よりも、決算賞与の支払いによって流出するキャッシュの方が高額です。
「法人税等の節税効果がある」で挙げた例では、決算賞与の有無によって法人税等の額が以下のように変わりました。
- 決算賞与を計上しない場合
- 700万円×30%=210万円
- 決算賞与を計上する場合
- (700万円-200万円)×30%=150万円
法人税等の額が60万円減っており、節税効果があるのは事実です。
ただし決算賞与が200万円発生することを考えると、支出額は200万円-60万円、すなわち140万円増えています。
決算賞与を支給しない場合よりも支給する場合の方が、資金繰りに与える影響が強くなるのです。
納税額だけでなく、資金繰りについても考えた上で支給額を決める必要があります。
決算賞与が支給されない年に従業員の意欲が下がる恐れがある
決算賞与は従業員のモチベーションアップに効果的と紹介しました。
しかし同時に、決算賞与が支給されない年に従業員の意欲が下がる事態も起こり得ます。
すなわち、一度決算賞与を支給してしまうと、以降は従業員のモチベーションが決算賞与の有無に左右されるようになる恐れがあるのです。
決算賞与に対する期待値が上がり過ぎるのを防ぐため、決算賞与の支給条件や計算方法などを明確化する必要があるでしょう。
事務処理の手間が増える
決算賞与により事務処理の手間が増える点にも注意が必要です。
決算賞与に関する作業として以下の例が挙げられます。
- ・決算賞与の算定
- ・従業員への通知
- ・決算賞与から差し引く所得税や社会保険料等の計算
- ・経費計上
- ・決算賞与の支払い作業
決算前後の忙しいタイミングで事務処理の手間が増えるため、担当者の負担が重くなりすぎる恐れがあります。
決算賞与についてよくある質問

決算賞与の導入を検討する際には、多くの経営者様や経理担当者様から具体的な運用に関する質問が寄せられます。ここでは、特に多く寄せられる役員への支給の可否、社会保険料の取り扱い、そして実行する際の具体的なスケジュール感といった疑問点について、Q&A形式で分かりやすく解説していきます。
決算賞与は役員にも支給できますか?
従業員に支給する決算賞与とは別に、役員に対しても賞与を支給し、損金に算入することは可能です。ただし、そのためには「事前確定届出給与」という手続きが必要になります。これは、事前に税務署へ「いつ、誰に、いくら支給するか」を届け出て、その内容通りに支給するものです。
従業員への決算賞与のように、決算間際に利益を見て金額を決めることはできません。したがって、業績に応じて支給する決算賞与の仕組みは、原則として従業員が対象となり、役員への適用は異なる制度を利用する必要があると理解しておくことが重要です。
決算賞与にかかる社会保険料の扱いはどうなりますか?
決算賞与も、夏や冬の通常の賞与と同様に、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料の対象となります。支給額に応じて計算された保険料を、従業員負担分と会社負担分に分けて納付する必要があります。
この会社が負担する社会保険料は、法人税の計算上、「法定福利費」として全額を損金に算入することが可能です。そのため、決算賞与を支給する際は、賞与の額面だけでなく、それに付随して発生する社会保険料の会社負担分もコストとして考慮し、資金計画を立てることが大切です。
いつまでに何をすれば間に合いますか?
決算賞与を当期の損金として計上するためには、まず「決算日」までに支給額を決定し、全従業員へ書面で通知を完了させる必要があります。そして、その支払いを「決算日の翌日から1ヶ月以内」に済ませなければなりません。
例えば3月31日が決算日の場合、3月31日までに通知を終え、4月30日までに支払いを完了させる必要があります。利益の着地見込みが見えてくる決算月の早い段階から、支給対象者や金額の検討、通知書の準備などを計画的に進めることが、スムーズな手続きと確実な節税のポイントです。
まとめ
決算賞与は決算前後のタイミングで支給する賞与で、法人の節税対策として多く活用される手段です。
決算賞与の性質上支給するのは翌期になるのが一般的ですが、一定の要件を満たせば当期の経費として扱えます。
当期の利益を把握してから支給の有無や金額を決められる上に損金算入も可能なため、法人税の節税対策として活用しやすいのです。
決算賞与には節税効果以外にも、従業員のモチベーションアップや利害関係者へのアピールにも効果的というメリットがあります。
ただし、支出が増える・事務処理の負担が重くなる・従業員の意欲が決算賞与の有無に左右される恐れがある等の注意点も存在します。
決算賞与のメリットと注意点を十分に把握した上で、決算賞与の支給有無や金額を検討することが大切です。
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決算賞与は効果的な節税策であると同時に、キャッシュフローや従業員のモチベーションに大きな影響を与える重要な経営判断です。損金算入の要件を一つでも満たせないと、多額の税金を支払うことになるリスクも潜んでいます。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士





