評価額最大80%減!小規模宅地等の特例について解説

2025.07.12

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小規模宅地等の特例とは一定の要件を満たす宅地等の相続税評価額を減額できる制度です。

減額割合は最大80%と、数ある特例制度の中でも特に大きな節税効果を得られます。

特例を適用できれば税負担を大幅に軽減できるでしょう。

ただし要件が厳しく注意点も多いため、どのような制度であるか事前にしっかり確認して理解を深める必要があります。

 

今回は小規模宅地等の特例について詳しく解説します。

 

そのほかの相続税対策については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、相続や遺贈によって取得した宅地等が一定の要件を満たす場合、当該宅地等の相続税評価額を減額できる制度です。

課税対象額を大幅に減らせるため、節税対策の手法として高い人気を誇ります。

特例の対象となる宅地等

特例の対象となる宅地等は4種類です。それぞれの概要や要件を解説します。

特定事業用宅地等

被相続人または親族が事業に使っていた土地です。

適用要件は、事業を行なっていたのがどちらであるかによって以下のように異なります。

 

  • 被相続人本人の場合
  • ・当該宅地等の上で行われていた事業を申告期限までに引き継ぐ
  • ・引き継いだ事業を申告期限まで継続する
  • ・当該宅地等を申告期限まで有する
  •  
  • 生計を一にしていた親族の場合
  • ・相続開始直前から申告期限まで事業を継続している
  • ・当該宅地等を申告期限まで有する

貸付事業用宅地等

被相続人等の不動産貸付業や駐車場業など貸付事業に使われていた土地が該当します。

要件は前述した「特定事業用宅地等」と同じです。

特定同族会社事業用宅地等

被相続人と特別の関係にある一定の法人(※)の事業に使われていた土地です。

※一定の法人:相続開始直前に、被相続人およびその親族等が発行済株式総数または出資総額の50%超をもつ法人

 

特例の適用を受けるためには以下の2つを満たす必要があります。

  • ・申告期限時点でその法人の役員である
  • ・当該宅地等を申告期限まで有する

特定居住用宅地等

被相続人または生計を一にしていた親族等が居住用に使っていた土地です。

土地を使っていたのが被相続人本人と親族のどちらであるか、および取得者の区分によって、要件が以下のように異なります。

 

【被相続人の場合】

  • 配偶者
  • 特別の定めなし
  •  
  • 配偶者以外の同居親族
  • ・相続開始直前から申告期限まで居住を続ける
  • ・当該宅地等を相続開始時から申告期限まで保有する
  •  
  • その他の親族(家なき子)
  • ・被相続人に配偶者や同居している別の親族がいない
  • ・相続開始前3年以内に、取得者本人、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族等が所有する家屋に居住していた時期がない
  • ・相続開始時に取得者が住んでいる家屋を過去に所有した事実がない
  • ・当該宅地等を相続開始時から申告期限まで保有する
  •  
  • 相続開始前3年以上の期間にわたり、自己と特別の関係にない第三者が所有する家に居住していた場合のみ対象になり得るイメージです。

 

 

【生計を一にしていた親族の場合】

  • 配偶者
  • 特別な要件はありません
  •  
  • 被相続人と生計を一にしていた親族
  • ・相続開始直前から申告期限まで引き続き居住する
  • ・当該宅地等を相続開始時から申告期限まで保有する

小規模宅地等の特例により減額される割合

特例による評価額の減額割合は宅地等の種類によって以下のように異なります。

カッコ内は限度面積です。

  • 特定事業用宅地等(400平方メートル):80%
  • 特定同族会社事業用宅地等(400平方メートル):80%
  • 特定居住用宅地等(330平方メートル):80%
  • 貸付事業用宅地等(200平方メートル):50%

 

貸付事業の用に供されていた土地は50%、それ以外の土地の減額割合は80%です。

 

例えば居住用の宅地等6,000万円に特例を適用した場合、相続税評価額は以下のようになります。

6,000万円-(6,000万円×80%)=1,200万円

課税対象を大幅に抑えられるため、税額の圧縮につながります。

特例の適用を受けるための必要書類

特例の適用を受けるために必要な書類として、以下の4つが挙げられます。

  • 1.小規模宅地等に係る計算の明細書
  • 2.遺言書または遺産分割協議書の写し
  • 3.相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
  • 4.当該宅地等が要件を満たす旨を証明する書類

 

4は国税庁が公開する手引きの中で具体例が紹介されているのでそちらをご確認ください。

 

なお、申告期限までに遺産分割が終わっていない場合は「申告期限後3年以内の分割見込み書」の提出も必要です。

小規模宅地等の特例の注意点

小規模宅地等の特例は大きな節税効果が期待できる制度ですが、その分ルールも厳格に定められています。

この章で注意点を5つ紹介します。

別居親族は同居親族よりも要件が厳しい

前章で宅地等の種類別に要件を紹介しました。

4種類のうち要件が最も細かく定められているのは特定居住用宅地等です。

取得者の区分によって要件が異なり、配偶者以外の親族の場合は同居・別居で厳しさが全く異なります

 

別居親族でも一定の要件を満たす場合に特例の適用を受けられる仕組みを、通称「家なき子特例」といいます。

現在は家なき子特例の要件は非常に厳しいですが、以前はこれほどまでに厳しくはありませんでした。

平成30年度税制改正までは、以下の2つさえ満たせば特例の適用が可能でした。

  • 1.当該宅地等を相続開始時から申告期限まで保有する
  • (現行制度にも存在するルール)
  • 2.相続開始3年以内に自己または自己の配偶者の持ち家に住んだ事実がない

前述した内容よりも要件が緩く、利用しやすい制度といえます。

 

しかし、2を満たす目的で、持ち家の名義を親族や法人に変えるというケースが多くみられました。

明確な脱税行為ではありませんが、税法の想定する範囲を超える手法といえるでしょう。

このような手法を防ぐため、平成30年度税制改正で厳しい要件が追加されたのです。

 

税法の想定しない手法で税負担を抑えようとすることを租税回避といいます。

租税回避の概要や節税・脱税との違いを以下の記事で解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。

 

同居親族かの判定が難しいケースに注意

前述のように、特定居住用宅地等は同居と別居で適用要件が大きく変わります。

そのためどちらに該当するかの正しい判断が必要です。

 

同居親族とみなされるのは被相続人と同居していた事実があり、かつ、対象の宅地等が生活の本拠であったと認められる場合のみです。

例えば以下のようなケースでは同居親族と認められません。

  • ・住民票の住所を被相続人の自宅にした上で、実際は別の場所に居住していた
  • ・介護等のため一時的に同居していた事実はあるが、相続人の家族は元の自宅に居住していた
  • (家族の住んでいる元の自宅が本拠とみなされるため)

 

ただし、明確な基準がないため判断に悩むケースもあるでしょう。

同居親族かの判定が難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。

限度面積を超える部分は評価減の対象外

特例による評価減の対象になるのは、宅地等の種類ごとに設定された限度面積までです。

たとえば事業用の土地600平方メートルを取得した場合、評価減を受けられるのは400平方メートルまでです。

限度面積超える200平方メートル部分は通常の評価額で計算する必要があります。

生前贈与は対象外

特例の適用を受けられるのは、相続や遺贈によって取得した場合のみです。

生前贈与による取得は対象外となります。

 

生前贈与を節税対策として活用するケースは多くみられますが、小規模宅地等の特例を利用した方が税額を抑えられる可能性もあります。

どの方法が最適かは状況によって異なるため一概にはいえません。

それぞれ税額のシミュレーションを行うのが確実ですが、複雑な計算が必要な可能性もあるため、税理士に相談するのが安心です。

申告期限後は適用できないケースがある

相続税の申告期限は相続開始の日の翌日から10ヵ月以内です。

しかし、遺産分割協議が難航している等の理由から、期限を過ぎてしまうケースは珍しくありません。

その場合は期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で仮の申告書を提出すれば、3年以内の修正申告または更正の請求が可能です。

反対に、分割見込書を提出しなければ、期限後申告では各種特例の適用を受けられない可能性が高いです。

小規模宅地等の特例も、期限後申告で適用を受けるためには原則として事前に分割見込書を提出する必要があります。

 

また、以下のようなケースでも特例の適用を受けられません。

  • ・申告期限後3年以内に遺産分割が完了しなかった
  • ・修正申告や更正の請求をしたのが申告期限から3年を超えた後である

まとめ

小規模宅地等の特例とは、宅地等の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

課税対象額を大幅に減らせるため、節税手法として高い人気を誇ります。

 

ただし、節税効果が大きい分要件が厳しく設定されているため、注意点も多く存在します。

また、宅地等の種類によって要件が異なり、状況によっては要件を満たすか否かの判定が難しいケースも多いです。

要件を満たすと判断したものの実際には適用対象外であった場合は税額が大きく変わってしまい、ペナルティを課せられる恐れもあります。

 

少しでも疑問や不安があれば、自己判断で対応しようとせず、専門家である税理士にご相談ください。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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