会社設立に必須の定款とは何か?概要や記載事項、注意点について解説!

2023.04.21

CONTENTS

定款とは

まず初めに、定款の基礎を解説します。

概要

定款とは、「会社の憲法」とも呼ばれ、会社設立時に発起人全員の同意によって設立される会社の基本理念を記した文書です。

定款には、会社名、事業内容、住所などの基本的な会社情報に加え、会社の組織構成や業務内容、経営者の役割、会社の指針となる様々な規則を明確に定義し記載する必要があります。

 

以前は紙で作成するのが一般的でしたが、近年はPDF形式の電子定款も普及しています。

保管

定款の原本は、会社に1部、公証人が受理した1部が保管されます。

公証人が認証した定款は、公証役場で定款の認証日から20年間保管されます。

定款は、会社が存在する限り安全な場所に保管しておきましょう。

提出先

定款は、補助金申請時や行政機関への許認可申請時、法人口座開設時などに提出が必要です。
しかし、定款の原本は上述の通り保管・保存期間が定められており、安易に持出することはできません。
そのため、定款の原本をコピーした写しに、写しの内容が原本と相違ないことを証明する「原本証明」を添付し提出するのが一般的です。

定款に記載する内容

会社法では、定款に記載する内容について一定の基準が定められており、大きく以下の3つの内容に分けられます。

・絶対的事項
・相対的事項
・任意的事項

それぞれ詳しく見ていきましょう。

絶対的記載事項

絶対的事項とは、定款に必ず記載しなければならない内容です。
記載がないと、定款そのものが無効となってしまい認証を受けられないため注意しましょう。
詳しい項目は以下の通りです。

商号

商号とは、会社の名称を指します。
商号に使用できる文字には一定の決まりがあるため、事前に確認しておきましょう。

事業目的

会社を設立する際に、その会社の事業内容を記載するのが事業目的です。

事業目的を定める最も重要な理由は「取引の安定性」の確保です。
これによって、会社の目的が単に会社のビジョンやミッションを定めるだけではないことを示しています。

本店所在地

本店所在地とは、文字通り会社が登記されている住所を指します。

実際に営業していない住所や、賃貸契約で商業利用が禁止されている住所は記載しないようにしましょう。

 

在宅勤務で本店所在地を別住所にしたい場合は、「バーチャルオフィス」の利用も可能です。

バーチャルオフィスは、在宅勤務の方や小規模なビジネスをされている方に広く利用されている選択肢で、実際のオフィスを持たずにビジネスアドレスを持つ機会を提供するものです。

資本金

資本金は、会社設立のためにどれだけの資金を投下したのか、その総額を表すものです。

資本金の額は、売上を上げるために必要なコストや、取引先に与える印象など、さまざまな観点から検討する必要があります。

 

また、資本金の額は創業融資などの審査にも影響するため、融資を検討する場合はその点も考慮して決定しましょう。

発起人の氏名と住所

会社設立に必要なものは発起人の氏名と住所です。

発起人とは、資本金の拠出や定款の作成など、会社を設立するための手続きを行う人物を指します。

株式会社の場合、発起人は会社設立後出資した資本金の額に応じて株式を発行され、株主になります。

相対的記載事項

相対的記載事項とは、「法律上記載する必要はないが、記載しなければ効果を発揮しない事項」のことです。
より分かりやすく言うと、「記載しないと無効になってしまうため、決定したら必ず定款に記載しなければならない事項」です。


一例として、株式会社の「株券発行の定め(株券を発行する旨の記載)」があります。

平成18年の法改正により、株券を発行するかしないかを会社が選択できるようになりました。
したがって、株式会社であっても定款に株券を発行することを明記しない限り、株券を発行する義務はありません。

その他の相対的記載事項の例は下記の通りです。

 

・変態設立事項
(現物出資/財産引受/発起人の報酬/設立費用)
・株主名簿管理人
・株式の譲渡制限に関する規定
・株主総会の招集通知を出す期間の短縮
・取締役の任期の伸長又は短縮
・株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮

変態設立事項とは

発起人が自己または第三者の個人的な利益のために会社の財産基盤を損なわせる可能性のある4項目(現物出資/財産引受/発起人の報酬/設立費用)を指します。 これらを定款に明記することで、発起人による財産の流出を防ぎます。

変態設立事項を定めるには監査役が必要と少し特殊なことから、通常ではない=変態=変態設立事項と呼ばれています。

任意的記載事項

任意的記載事項とは、「絶対的事項および相対的事項に該当しない事項で、違法性のないもの」です。

相対的事項との違いは、定款に記載する必要はなく、他の書類で明らかにすることで効力を発揮する点です。

下記は任意的記載事項の一例です。

・株主名簿の起算日
・株券の再発行手続
・株主総会の議長議決権の代理公使
・取締役会の招集権者
・公告方法

・定時株主総会の召集時期
・会社役員の員数
・事業年度

定款のフォーマット

会社設立に関連する定款の形式は、主に以下の4つです。

定款フォーマットの種類

小規模会社

(株式非公開、取締役1名、監査役・会計参与非設置)

 

・中小規模会社
(株式非公開、取締役1名以上、取締役会非設置、監査役非設置)

 

・中規模会社
(株式非公開、取締役3名以上、取締役会設置会社、監査役設置会社)

 

・大規模会社
(公開会社、取締役会設置、委員会設置、会計監査人設置会社)

定款フォーマットを決定する要素

上記のフォーマットのどれを使用するかは、会社または法人の意図する法域が定める以下の要件によって決定されます。

公開会社か非公開会社か

公開会社とは、定款で株式の譲渡制限を定めていない株式会社です。
非公開会社はその逆で、定款で株式の譲渡制限を定めている株式会社を指します。

譲渡制限がないと、共同創業者が辞めた後勝手に株式を売却する恐れがあるので、会社が上場するまでは譲渡制限を設けたほうがよいでしょう。

取締役の人数

取締役の人数によって、1名、1~3名、3名以上と形式が変わります。

また、取締役の任期についても人数とともに記載が必要です。

取締役会の設置

取締役会を設置する場合、取締役は3名以上でなければなりません。

取締役会を設置しない場合、意思決定機関は株主総会となり、その手続きの長さ、物理的な会議の必要性、株主間の多数の意見の集約などにより、意思決定に時間がかかります。

取締役会を設置すると、ほとんどの意思決定を取締役だけで行うことができるため、迅速な経営判断が可能になります。

監査役の配置

取締役会を設置した場合、監査役の配置は必須です。

まとめ

定款は、会社設立の際に必ず作成する重要な書類です。

定款に記載する内容は会社法で定められており、これに適合していない定款は無効となります。


会社設立の第一歩である定款について理解することは必要ですが、ご自身で対応するのが難しい場合は無理せず専門家に相談しましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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