
個人でクリニックを運営する開業医が加入する保険の選択肢として、通常の国民健康保険、医師国保、協会けんぽの3つが挙げられます。
このうち医師国保か協会けんぽのどちらかを選ぶケースが多いです。
医師国保と協会けんぽは保険料の決まり方や扶養家族に関する規定など様々な違いがあります。
保険の負担を最小限に抑えるためには、それぞれの違いを押さえた上で自分に合う方を選ぶことが大切です。
今回は医師国保と協会けんぽの違いや選び方について解説します。
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前提|開業医が加入できる保険の種類

前提として、個人でクリニックを運営する開業医であれば、通常の国民健康保険、医師国保(医師国民健康保険組合)、協会けんぽの3種類から選択できます。
実際は医師国保か協会けんぽのいずれかを選ぶケースが多いです。
ただし、医療法人の医師や5人以上のスタッフを雇う開業医は、原則として協会けんぽに加入する必要があります。
医師国保の概要
医師国保とは、各都道府県の医師会が運営する健康保険制度です。
医師会の組合員である医師および従業員、組合員の家族が加入できます。
医師国保の根拠となる法律は自治体が運営する国民健康保険と同じ国民健康保険法です。
そのため、基本的な仕組みは自治体が運営する国民健康保険と同じです。
また、国民健康保険法に定める保険は世帯単位の加入が義務付けられています。
そのため、同一世帯に医師国保加入者と自治体運営国保の加入者が混在する状態は認められません。
自治体による国民健康保険と医師国保の違いとして、保険料の計算方法が挙げられます。
自治体の国民健康保険は前年の総所得金額等を基に計算します。
総所得金額等が多ければ保険料も増え、総所得金額等が少なければ保険料も少なくなる仕組みです。
一方、医師国保の保険料は収入や所得に関係なく一律で定められています。
そのため所得が多いほど、所得に対する保険料の割合は小さくなります。
なお、以下のいずれかに該当する場合は開業医でも医師国保に加入できません。
- ・医療法人を運営している
- ・5人以上の従業員を雇用している
これらに該当する場合は協会けんぽの対象になります。
協会けんぽの概要
協会けんぽとは全国健康保険協会および同組織が運営する公的医療保険制度の呼称です。
以降の文章では協会けんぽという言葉を「全国健康保険協会が運営する保険制度」として用います。
前提として、法人および5人以上の従業員を雇用する個人事業主は社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が必須です。
協会けんぽは健康保険の一種であり、主に中小企業を対象としています。
雇用する従業員が5人未満の個人事業主であっても、希望する場合は協会けんぽへの加入が可能です。
このように、社会保険の強制適用ではないものの任意で加入をする事務所のことを任意適用事務所といいます。
協会けんぽの根拠法令は健康保険法です。
また、協会が定める全国健康保険協会運営規則も存在します。
協会けんぽの特徴として以下の4点が挙げられます。
- ・業種や従業員数の制限がない
- ・標準報酬月額と都道府県ごとに設定された保険料率によって保険料が決まる
- ・被扶養者の保険料の支払いは不要
- ・保険料は被保険者である従業員と雇用主が折半で負担(労使折半)
個人事業主である開業医が協会けんぽに加入するのであれば、社会保険の加入手続きが必要です。
医師国保と協会けんぽの違い

医師国保と協会けんぽで大きく異なる項目は以下の3点です。
- ・保険料の決まり方
- ・扶養家族の保険料
- ・自家診療に関する規定
それぞれ詳しく解説します。
保険料の決まり方
医師国保と協会けんぽの大きな違いの1つが保険料の決まり方です。
医師国保の保険料は組合員種別と年齢の2つの条件のみで決まります。
例えば東京都医師国民健康保険組合の場合、第Ⅰ種組合員(東京都医師会会員である医師)の医療保険料は以下の通りです。
- ・医療給付費保険料:34,500円
- ・後期高齢者支援金等保険料:5,000円
- 合計:39,500円
このように、年齢や収入・所得は関係ありません。
そのため高所得者であればあるほど、所得に対する保険料の割合は小さくなります。
一方、協会けんぽの保険料は以下の2つによって決まります。
- ・標準報酬月額
- 毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもの
- ・都道府県ごとに設定されている保険料率
毎月の報酬額が高額になるほど保険料も増える仕組みです。
このように、医師国保と協会けんぽでは保険料の決まり方が大きく異なります。
医師国保は収入・所得に関係なく保険料が一定であり、協会けんぽは収入が増えれば保険料も増えていきます。
扶養家族の保険料
医師国保に限らず、国民健康保険法に定める保険には扶養の制度がありません。
そのため医師国保の場合、家族分の保険料も組合員である医師や従業員が支払う必要があります。
東京都医師国民健康保険組合の場合、第1種組合員の医療保険料は月額39,500円、中学生~74歳の家族分は月額12,500円です。
医師本人、配偶者、中学生以上の子どもの3人で医師国保に加入する場合、月額保険料は39,500円+12,500円×2人=64,500円になります。
協会けんぽの場合、保険料は前述のように被保険者の報酬月額に保険料率を乗じて計算します。
被扶養者の人数は保険料に影響しません。
本人1人分の保険料のみで、被扶養者である家族も健康保険の適用を受けられます。
自家診療に関する規定
医師国保では自家診療分の保険料の請求が認められません。
自家診療とは自身が開設または所属する医療機関で、組合員本人(医師や従業員)およびその家族が診療を受けることです。
当該医療機関で発行された処方箋による薬剤の給付も自家診療に含まれます。
医師国保の公式サイトでは、自家診療分の請求および給付はできない旨が明記されています。
ただし、都道府県によっては条件付給付が認められるケースがあるため、詳しくは各医師会の公式サイトをご確認ください。
一方で、協会けんぽでは自家診療が認められています。
自家診療を受けた分の請求・給付も可能です。
医師国保と協会けんぽのどちらが得?

医師国保と協会けんぽは制度の仕組みが大きく異なる以上、どちらが得と一概にはいえません。
この章では医師国保の方が得になるケースと協会けんぽの方が得になるケース、それぞれの例を紹介します。
医師国保の方が得なケース
医師国保の方が得になるのは、被保険者であり医師会組合員である医師本人の収入等が高額な場合です。
協会けんぽは報酬月額に保険料率を乗じて保険料が決まる仕組みのため、収入が多いほど保険料も高額になります。
収入が高額である場合は、医師国保の方が得な可能性が高いです。
ただし、同一世帯の家族が医師国保に加入する場合、家族の保険料も支払う必要があります。
家族の人数によっては、医師国保の方が保険料の合計額が高額になる可能性がある点にご注意ください。
協会けんぽの方が得なケース
前述のように、協会けんぽは報酬月額によって保険料の額が変わります。
そのため給料が安価な場合は協会けんぽの方が保険料を抑えられる可能性が高いです。
また、家族を保険に加入させる場合や、自家診療を考えている場合も、協会けんぽの方が適しているでしょう。
まとめ
医師国保と協会けんぽの違いとして、「保険料の決まり方」「扶養家族の保険料」「自家診療に関する規定」の3つが挙げられます。
給料が高い場合は、医師国保の方がお得になる可能性が高いです。
反対に給料が低い場合、報酬月額によって金額が決まる協会けんぽの方が保険料を安く済むでしょう。
また、家族も保険に加入させるのであれば、協会けんぽの方が保険料の総額を抑えられる可能性があります。
医師国保と協会けんぽのどちらが得かはケースによって異なります。
それぞれの違いを押さえた上で、自分に合う方を選びましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士







