
消費税は、事業者にとって大きな負担となっています。 しかし、適切な節税策を講じることで、その負担を軽減することが可能です。
本記事では、簡易課税制度の活用、人件費の派遣費用や外注費への切り替え、登録事業者との取引、中間納付額の抑制、簡易課税から原則課税への変更など、事業者が実践できる消費税の節税方法を詳しく解説します。
これらの方法を理解し、自社の状況に合った節税策を選択することで、事業者は消費税負担を最小限に抑えることができるでしょう。
所得税の節税テクニックは以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
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事業者が納める消費税について

消費税は、商品やサービスを購入した際に支払う対価に税率を掛け合わせて算出される税金です。 消費税の課税対象となる取引は、「資産の譲渡等」「資産の貸し付け」「役務の提供」の3つに大別されます。
ただし、法令で定められた非課税取引については、消費税は課されません。消費者は、資産を購入したりサービスの提供を受けたりする立場にあるため、消費税を支払うだけで受け取ることはありません。
これとは対照的に、事業者は消費税の支払いと受け取りの両方を行います。事業者が他の事業者から商品を仕入れたり、サービスの提供を受けたりする場合、相手方に消費税を支払う必要があります。
一方で、事業者は商品を販売したりサービスを提供したりする際、取引先から消費税を受け取ることで売上を増加させます。
事業者には、消費税を計算して税務署に納税する義務があります。税務署への納付額は、原則的に受け取った消費税から支払った消費税を引いた差額となります。 この差額が大きいほど、納税額も多くなる仕組みになっています。
事業者が売上から受け取る消費税は、最終的には税務署への納税や仕入先への支払いに充てられるものです。
したがって、事業者が受け取った消費税は、会計上「預り消費税」や「仮受消費税」などと呼ばれます。事業者にとって、受け取った消費税は収益でも確定した税金でもないのです。
簡易課税制度の活用で節税効果を得る
消費税の計算方法は、原則的な方法以外にも簡易課税制度という選択肢があります。簡易課税制度の適用には、前々年度の課税売上高が5,000万円以下であるという条件があります。
この要件さえ満たしていれば、税務署への事前届出により簡易課税制度を利用できます。
簡易課税制度では、売上から算出された消費税額にみなし仕入率を掛けて、仕入税額控除が適用されます。
例えば、小売業の事業者の場合、みなし仕入率は80%に設定されているため、売上から預かった消費税額の20%のみを納税すればよいことになります。
みなし仕入率は業種によって異なり、小売業や卸売業(90%)、製造業(70%)などは比較的高い水準にあります。
また、建設業や飲食業は60%、サービス業は50%、不動産賃貸業は40%などと定められています。簡易課税制度は任意で選択できる制度なので、事前に試算を行い、適用するメリットがあるかどうかを見極めることが大切です。
人件費を派遣費用や外注費に切り替えて節税を図る
従業員を抱えて事業を展開している場合、給与や社会保険料などの人件費には消費税が課されません。一見すると、消費税が免除されることに利点があるように感じられますが、実際はそうではないのです。
経費の支払い時に消費税を負担していないため、支払った消費税額が増えず、結果的に消費税の納税額が膨らんでしまうのです。
この問題を解決するには、従業員やアルバイトを直接雇用するのではなく、派遣会社に人材を依頼する方法があります。
派遣会社への支払いは、給与とは異なり、派遣会社からのサービス提供の対価として扱われるため、消費税が課されます。
その結果、消費税の納税額を抑えることが可能になるのです。また、社内に人材を置く必要がない場合は、外部の人材に外注費として支払うという選択肢もあります。外注費も消費税の対象となる支払いであるため、納税額の削減に役立ちます。
登録事業者との取引で経費を最適化する
2023年10月からインボイス制度が導入されます。この制度のもとでは、消費税の課税仕入れを計上するためには、取引先から適格請求書を受け取る必要があります。
適格請求書の発行が認められるのは、国税庁に適格請求書登録事業者として登録した事業者のみです。登録事業者ではない相手や一般消費者からの購入については、課税仕入れとして認められません。
取引を行う際には、相手が登録事業者であるかどうかを事前に確認し、登録事業者からの仕入れを心がけることが、消費税の節税につながるポイントです。
インボイスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
インボイス制度の「2割特例」を戦略的に活用する
インボイス制度への対応を機に免税事業者から課税事業者になった方向けの負担軽減措置が「2割特例」です。これは、売上にかかる消費税額の8割を控除し、納税額を2割に抑えられる制度です。例えば、サービス業(みなし仕入率50%)の場合、簡易課税では納税額が売上税額の50%ですが、2割特例なら20%で済みます。
この特例は、2026年9月30日の課税期間まで利用可能です。簡易課税制度とどちらが有利かシミュレーションし、事前の届出なしで申告時に選択できるこの特例を戦略的に活用しましょう。
法人成りで最大2年間の消費税免税メリットを得る
現在、個人事業主で課税事業者の方は、法人を設立(法人成り)することで、消費税の納税義務が最大2年間免除される可能性があります。資本金1,000万円未満の新設法人は、原則として設立1期目と2期目の消費税が免除されるためです。
ただし、設立1期目の上半期(特定期間)の課税売上高と給与支払額が共に1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になるため注意が必要です。消費税だけでなく、法人税や社会保険料の観点からもメリット・デメリットがあるため、総合的な判断が求められます。
事業者が消費税の中間納付額を抑える方法

消費税を納める事業者のうち、地方消費税を除いた税額が48万円を超える場合、翌年の決算前に中間納付が義務付けられています。
中間納付の対象となった事業者は、指定された期日までに消費税を納付しなければなりません。中間納付の頻度は、前年の消費税額に応じて1回、3回、11回と定められています。
例えば、前年の国税分の消費税額が48万円超400万円以下の場合、年1回の中間納付が必要です。
中間納付額は、原則として前年の消費税額を基に算出されます。年1回の中間納付の場合、前年の消費税額の半分を納付することになります。
しかし、中間納付の時点で仮決算を実施し、その時点までの消費税額を計算して納付することも可能です。
年1回の中間納付の場合、期首から6ヶ月間の消費税額を算出し、申告書を作成することができます。
仮決算による税額が前年実績に基づく税額よりも低い場合、仮決算に基づく中間納付が認められます。
税務署に申告書を提出し、自ら納付書を作成して中間納付を行うことで、中間納付額を節税できます。
消費税の節税における注意点

消費税の節税を行う際には、いくつかの注意点があります。 ここでは、重要なポイントをいくつか紹介します。
簡易課税制度の適用は最低2年間継続が必要
先に述べたとおり、消費税の節税策として簡易課税制度を活用することができます。
ただし、簡易課税制度を適用する場合、最低でも2年間は継続して適用しなければなりません。
この期間内に大規模な設備投資を行い、多額の課税仕入れが生じた場合でも、簡易課税制度では考慮されません。
したがって、多額の仕入れが予定されていないか、設備投資などの計画を確認した上で適用を検討することが重要です。
簡易課税制度の適用には事前届出が必須
中間納付額の削減は節税にはならない
仮決算を行うことで、消費税の中間納付額を節税することは可能です。ただし、これはあくまで中間納付額を減らすだけであり、最終的に納める消費税の総額を減らすことにはつながりません。
中間納付を行う際には、資金繰りが多少楽になる程度の効果しかないことを理解しておくことが大切です。
外注費への切り替えは「偽装請負」に注意
人件費を外注費に切り替える節税策は有効ですが、実態が伴わないと税務調査で「偽装請負」と判断されるリスクがあります。給与と認定された場合、仕入税額控除が否認され、追徴課税が発生します。
外注と判断されるには、「代替性がある(他人が代わりに業務を行える)」「指揮命令関係がない」「費用請求権がある(時間給ではない)」といった要素を契約書や業務実態で明確に示す必要があります。節税目的で安易に形式だけを整えるのではなく、契約内容や業務の実態を適切に管理することが不可欠です。
多額の設備投資による消費税還付は税務調査の対象になりやすい
輸出業や大規模な設備投資を行った場合、支払った消費税が受け取った消費税を上回り、消費税の還付を受けられることがあります。これは正当な権利ですが、還付申告は税務署の重点的なチェック対象となる傾向があります。
特に、自動販売機の設置や不動産投資を利用した還付スキームは、国税庁が問題視しており、租税回避行為とみなされると還付が否認されるケースも増えています。意図しない不正を疑われないためにも、還付申告を行う際は、取引の正当性を証明できる書類を整備し、専門家に相談することをおすすめします。
簡易課税から原則課税への変更による節税効果

事業者が消費税の納税方法を簡易課税から原則課税に変更することで、節税効果を得られる場合があります。
特に、設備投資などで多額の課税仕入れが発生する事業年度においては、原則課税への切り替えを検討すべきでしょう。ここでは、簡易課税と原則課税の違いや、原則課税に変更するメリットについて解説します。
原則課税への切り替えで節税を実現
簡易課税の適用には、基準年度の売上高が5,000万円以下という条件がありますが、必ずしも簡易課税が有利とは限りません。
特に、設備投資などで課税仕入額が増える見通しの事業年度においては、簡易課税では課税売上のみが計算対象となり、仕入税額が考慮されません。
一方、原則課税の場合は、仕入税額が税計算に反映され、納付税額が減少します。決算時には、簡易課税と原則課税の両方を比較検討し、原則課税の方が有利と判断された場合は、簡易課税の適用を取りやめることも検討に値します。
例)不動産会社における設備投資のケース(課税売上割合は100%とする)
- 課税売上高:12,000千円(うち消費税:889千円)
- 課税仕入高:2,200千円(うち消費税:163千円)
- 設備投資額:30,000千円(うち消費税:2,222千円)
簡易課税
項目 | X0年度 | X1年度 | 合計 |
|---|---|---|---|
消費税 | 889 | 889 | 1,778 |
課税仕入税額控除 | 445 | 445 | 890 |
納付税額 | 444 | 444 | 888 |
原則課税
項目 | X0年度 | X1年度 | 合計 |
|---|---|---|---|
消費税 | 889 | 889 | 1,778 |
課税仕入税額控除 | 2,385 | 163 | 2,548 |
納付税額 | -1,496 | 726 | -770 |
(単位:千円)
原則課税を適用した場合、X0年度は設備投資により1,496千円の還付が受けられるものの、翌X1年度には逆に282千円を追加で納付しなければなりません。
ただし、2年間の平均で考慮すると、原則課税を選択した方が明確に有利となります。
適用に際しての注意点
消費税の税額計算方法は、事業者が選択した場合、原則として2年間の継続適用が義務付けられています。また、売上の課税、不課税、非課税、免税の区分によって、仕入税額控除の額が変動するなど、手続きや計算面での注意が必要です。 その注意点をまとめると以下のようになります。
手続き上の注意点
1.簡易課税を選択した場合(原則課税の選択も同様)、2年間は継続して適用しなければなりません。
2.消費税の原則課税、簡易課税の選択届出は、適用を受けようとする事業年度開始の前日までに行う必要があります。
計算上の注意点
免税売上や非課税売上が多い場合、仕入税額控除の計算において、課税売上割合に応じて仕入控除税額を計算するため、設備投資等による仕入税額を全額控除できないケースが生じる可能性があります。したがって、慎重にシミュレーションを行うことが重要です。
消費税の節税は専門家への相談が成功のカギ

これまでにご紹介したように、消費税の節税方法は多岐にわたりますが、同時に多くの注意点も存在します。簡易課税と原則課税の有利不利判定、法人成りのタイミング、インボイス制度への対応など、自社にとって最適な選択をするには高度な専門知識が不可欠です。誤った判断は、かえって納税額を増やしたり、税務調査で追徴課税を受けたりするリスクを伴います。
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消費税の節税についてよくある質問

消費税の節税を検討する事業者様から寄せられる、よくある質問とその回答をまとめました。基本的な疑問から、インボイス制度導入後の変化まで、節税に取り組む上での参考にしてください。不明点があれば、専門家である税理士に相談することが解決への近道です。
節税と脱税の違いは何ですか?
節税は、法律で認められた範囲内で税負担を軽減する合法的な行為です。例えば、簡易課税制度を選択したり、経費を適切に計上したりすることがこれにあたります。
一方、脱税は、売上を意図的に隠したり、架空の経費を計上したりするなど、法律に違反して不正に納税を免れようとする違法行為です。脱税には重いペナルティが課せられるため、ルールに則った節税を心がけることが重要です。
個人事業主でもできる簡単な節税方法はありますか?
個人事業主の場合、まずは課税売上高を1,000万円以下に抑え、免税事業者であり続けることが最も簡単な方法です。
また、インボイス発行のために課税事業者になった場合は、2026年9月まで適用できる「2割特例」の活用が効果的です。さらに、事業で使った経費を漏れなく計上し、仕入税額控除を最大限に活用することも基本的な節税策となります。
インボイス制度導入で、節税方法は変わりましたか?
税理士に相談するメリットは何ですか?
税理士に相談する最大のメリットは、自社の状況に合った最適かつ安全な節税策の提案を受けられる点です。消費税の計算方法は複数あり、事業内容や設備投資の計画によって有利な方法が異なります。専門家である税理士は、正確なシミュレーションを行い、最適な選択をサポートします。
また、税務調査のリスクを低減し、万が一調査が入った場合も的確に対応してくれるため、経営者は安心して事業に専念できます。顧問契約を結ぶことで、継続的な経営アドバイスを受けられるのも大きな利点です。
まとめ
消費税の節税を実現するには、簡易課税制度の活用、人件費の派遣費用や外注費への切り替え、登録事業者との取引などの方法があります。
中間納付額の抑制も一時的な資金繰りの改善につながりますが、真の節税にはなりません。簡易課税から原則課税への変更も、設備投資が予定されている場合には有効な節税策となり得ます。
ただし、いずれの方法も適用期間や手続き、計算面での留意点があるため、慎重な検討とシミュレーションが不可欠です。事業者は自社の状況を踏まえ、最適な節税方法を選択することが重要です。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士








