会社設立と個人事業主どちらが良い?それぞれのメリットとデメリットを徹底解説!

2023.02.01

個人事業主として事業展開を進めてきた人が、会社設立(法人成り)をするケースは多くみられます。

特に所得額が大きい・事業拡大を目指しているなどの場合、会社設立をした方が大きなメリットを得られる可能性があります。

 

ただし会社設立のメリットだけではなく、デメリットも把握したうえでの判断が必要です。

人によっては個人事業主のままでいる方が良いケースもあるでしょう。

 

本記事では会社設立と個人事業主、それぞれのメリット・デメリットや、どちらが良いか判断するポイントを紹介します。

CONTENTS

個人事業主が会社設立するメリット​

まずは会社設立によって得られるメリットの紹介です。

社会的信用が高くなる

個人事業主が会社設立をするメリットのひとつとして、社会的信用が高くなる点が挙げられます。

一般的に法人の方が個人事業主よりも社会的信用を獲得しやすいです。

 

法人の方が個人事業主よりも社会的信用が高いといえる具体的な理由を紹介します。

・金融機関の融資がより通りやすくなる
・取引先を法人のみと限定している企業も多い
・個人事業主として取引している得意先から法人成りを求められるケースもある


より信用を獲得したい・社会的に強みのある肩書が欲しいと考えている場合、会社設立がおすすめです。

個人事業主よりも節税しやすい

法人のほうが個人事業主よりも節税しやすい可能性が高いです。

 

個人事業主の所得税は、所得が大きくなるほどに税率も高くなる累進課税を採用しています。

一方、法人税の税率は一定です。

そのため、所得が一定を超えた場合は法人成りしたほうが税額を抑えられます。

 

法人は個人事業主よりも経費にできる範囲が広いというのも、節税しやすい理由のひとつです。

法人だからこそ経費にできる支出として、以下の具体例が挙げられます。


・経営者(事業主)本人の役員報酬
※一定のルールに従う必要があります
・家族従業員に対して支払う給与
・出張手当
・要件を満たした生命保険料
・退職金


また、青色申告の承認を受けた場合、欠損金(所得の赤字)を最大で10年繰り越すことができます。

繰り越された欠損金は翌期以降の黒字と相殺が可能です。

法人税の課税対象になるのは欠損金と相殺した後の黒字部分であるため、節税につながります。

事業拡大がしやすくなる

個人事業主のままでいるよりも法人成りをした方が、将来的に事業拡大がしやすくなります。
事業拡大がしやすくなる理由として、以下の3つが挙げられます。

融資に通る可能性が高くなる

個人事業主よりも法人の方が、金融機関の融資に通りやすいです。

資金調達がしやすくななるため、より大きな資金を必要とする事業にも着手できるでしょう。

人材を集めやすい

一般的に個人事業主が運営する事務所よりも、社会的信用のより高い法人のほうが求人への応募が集まりやすい傾向にあります。

したがって、会社設立をしたほうが従業員を集めやすく、優秀な人材が集まる可能性も高くなります。

事業承継がしやすい

個人事業主が亡くなると、相続人が事業承継をしなければ自然と廃業になります。

しかし、名義人が亡くなった口座は一時的に凍結されてしまい、事業承継における手間が大きくなりがちです。

法人口座は経営者の死亡による口座の凍結・相続対象になることがないため、事業への影響を最小限に抑えられます。

個人事業主が会社設立するデメリット​

続いて個人事業主が会社設立をするデメリットを3つ紹介します。

会社設立および維持に手間とコストがかかる

法人成りによる大きなデメリットのひとつが、会社設立および維持は、個人事業主よりも手間とコストがかかる点です。

株式会社の場合、会社設立には最低でも20万円はかかります。

ただし20万円で済むのは専門家に依頼せず自身で対応・必要な備品がすべて揃っている場合であり、実際にはより大きな費用がかかります。

会社設立費用の相場は25~30万円程度です。

※会社設立にかかる費用は以下の記事でも詳しく解説しています。



また、個人事業主は所得が赤字であれば所得税は発生しませんが、法人の場合は所得が赤字でも納税の必要があります。

赤字でも支払いが必要な税金が法人住民税です。

法人住民税は法人税の額を基に算定される法人税割と、資本金や従業員の数に応じて一定額が発生する均等割によって構成されています。

均等割は赤字・黒字に関係なく必ず納付が必要であるため、赤字でも納税の必要性が起こり得るのです。

なお、均等割の金額は事業所の所在する自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。

社会保険の加入義務がある

個人事業主と違い、法人は社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入が義務付けられています。
従業員を雇っておらず社長一人だけの場合でも、社会保険への加入が必須です。


社会保険料は会社と被保険者が折半する仕組みであり、国民健康保険および国民年金に比べて高額に設定されています。
したがって支払う保険料の総額は、個人事業主よりも法人のほうが高くなります。

 

一定の要件を満たす従業員を雇っている場合は、雇用保険への加入も必要です。
従業員に支払う賃金に雇用保険料の会社負担割合を乗じて計算します。

必要な手続きが増える・複雑化する

法人は個人事業主よりも必要な手続きが増えるうえ、個人事業主よりも複雑なものが多いです。

法人ならではの手続きや複雑となるものについて、以下の例が挙げられます。

社会保険に関する手続き

法人は社会保険への加入が義務付けられていると紹介しました。

社会保険では毎年必ず算定基礎届を提出する必要があります。

加入状況や従業員の有無によって複雑度合いは異なりますが、いずれにせよ大きな手間になるのは事実です。

住所変更に伴う手続き

個人事業主が引っ越しや事務所移転によって住所が変わった場合、税務署へ所定の届出書をすれば変更手続きが可能です。

一方で法人の場合、以下の手続きを行う必要があります。

法務局での本店移転登記
税務署・都道府県税事務所・市区町村への届出(税務関連)
・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの届出(保険関連)
その他郵便局や銀行等への届出

住所以外でも、何らかの変更があった際に発生する手続きが個人事業主よりも多いです。

法人税の申告・法人ならではの会計処理

法人税の確定申告は、所得税の確定申告よりも高度で複雑です。

社会保険関連の支出や決算整理仕訳など、法人ならではの会計処理も多く存在します。

会社設立せず個人事業主のままでいるメリット​

会社設立をせず個人事業主のままでいるメリットとして、以下の2つが挙げられます。


・法人に比べ、発生する手間やコストを小さく抑えられる
・利益が少なければ発生する税金も小さく済む。赤字であれば所得税は発生しない


会社設立によって発生するデメリットを避けられる点が、個人事業主のままでいるメリットと言い換えられるでしょう。

会社設立せず個人事業主のままでいるデメリット​

会社設立せず個人事業主のままでいるデメリットは以下の3つです。

・法人よりも社会的な信用を獲得しにくい
事業拡大に限界がある
・法人に比べて節税の手段が少なく、所得額によっては納税額が大きくなる

会社設立をする・個人事業主のままでいる どちらが良い?​

会社設立をする・個人事業主のままでいる、どちらが得になるかはケースバイケースです。

個人の考え方や何を優先するかによっても適した形態が異なるため、自分の理想を考慮して決める必要があります。

 

そのうえで、会社設立をするか・個人事業主のままでいるか、判断基準の例を紹介します。

現状の所得額が大きい、税負担を減らしたい

会社設立がおすすめです。

所得額が一定を超える場合、法人成りした方が税額を抑えられる可能性があります。

また法人の方が節税の手段が大きいため、税負担軽減を優先させる場合は法人成りが適しています。

現状の所得額はそれほど大きくない

会社設立をする明確な理由や目的がなければ、個人事業主のままで良いでしょう。

 

所得額が一定を超える場合は法人成りした方が税金を抑えられると紹介しました。

言い換えると、所得が一定以上でなければ、所得税の方が法人税よりも小さいということです。

事務手続きや会計処理の手間を最小限にしたい

個人事業主のままでいる方が、事務手続きや会計処理の手間は小さく済みます。

会社設立によって作業の負担が大きくなった結果、事業が不安定になってしまっては本末転倒です。

事務手続きや会計処理に不安がある・自身で対応するため手間を小さくしたい場合、個人事業主のままでいることをおすすめします。

事業拡大を目指している

法人成りをした方が、事業拡大がスムーズに進む可能性が高いです。

所得額や手間・コストも考慮したうえでの判断が必要ですが、会社設立を検討しても良いでしょう。

事業を長く続けたい、事業承継も視野に入れている

個人事業主よりも法人のほうが、事業承継がしやすいです。

事業を長く続けたい・事業承継を視野に入れている場合、会社設立をした方が良い可能性があります。

ただし相続発生前の事業承継も可能であり、必ずしも法人成りした方が事業承継を楽にできるとは限りません。

メリット・デメリットそれぞれを考慮したうえで、総合的な判断が必要です。

まとめ​

会社設立をする・個人事業主のままでいる、どちらも異なるメリット・デメリットがあります。

どちらの方が適しているかはケースバイケースのため、一概には断言できません。

今回紹介した判断基準も、あくまでひとつの目安です。

メリット・デメリットの両方を考慮したうえで、総合的に判断する必要があります。

もし会社設立をするべきか否か判断に迷ったら、専門家に相談するのもおすすめです。

客観的な立場による専門知識なアドバイスが、判断の助けになるでしょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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