賃上げ促進税制とは?制度の概要と適用要件をわかりやすく解説

2026.03.11

賃上げ促進税制とは、青色申告者である中小企業者等が一定の要件を満たす賃上げをした場合に税額控除を受けられる制度です。

令和4年度税制改正で創設された制度ですが、令和6年度税制改正で強化されました。

 

賃上げ促進税制は大きな節税効果が期待できる分、要件が厳しい点に注意が必要です。

制度による節税効果だけでなく、賃上げによる資金繰りへの影響も考慮する必要があります。

 

今回は賃上げ促進税制について詳しく解説します。

 

賃上げ促進税制の適用を受けられるのは青色申告者のみです。

青色申告の申請方法については以下の記事をご覧ください。

 

 

(賃上げ促進税制は企業規模に応じて複数の種類がありますが、本記事では中小企業向けの制度について紹介します)

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CONTENTS

賃上げ促進税制の概要

賃上げ促進税制とは、青色申告者である中小企業者等が一定の要件を満たす賃上げをした場合に、法人税(個人事業主は所得税)の税額控除を受けられる制度です。

令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象となります。

賃上げ促進税制の対象となる事業者

賃上げ促進税制の対象は以下2つの要件を満たす事業者です。

  • ・中小企業者等または常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
  • ・青色申告者

 

ただし、青色申告の中小企業でも以下の法人は対象外です。

  • ・大規模法人1社から2分の1以上の出資を受けている
  • ・2以上の大規模法人から合計3分の2以上の出資を受けている

制度の適用要件および税額控除の割合

賃上げ促進税制の適用要件は、制度を利用するために必ず満たすべき必須要件と、上乗せ措置を受けるために必要な上乗せ要件に大別されます。

それぞれの要件と税額控除の割合について解説します。

必須要件

賃上げ促進税制の適用を受けるためには、以下いずれかの要件を満たす必要があります。

  • 1.雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加
  • 2.雇用者給与等支給額が前年度比2.5%以上増加

雇用者給与等支給額に含まれるのは、国内雇用者に対する給与等の支給額のみです。

国内に所在する事業所で作成された賃金台帳に記載された雇用者が国内雇用者に該当します。

 

前述の要件を満たす場合、雇用者給与等支給額の増加額の一部を法人税または所得税から税額控除できます。

控除割合は以下の通りです。

  • 1を満たす場合:増加額の15%
  • 2を満たす場合:増加額の30%

上乗せ要件1

上乗せ要件を満たす場合、税額控除率が一定割合上乗せされます。

 

上乗せ要件1の適用要件は以下の2つです。

  • ・教育訓練費の額が前事業年度比5%以上増加
  • ・教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上

 

上乗せ要件1を満たした場合、税額控除率が10%上乗せされます。

したがって、前節で紹介した必須要件の1を満たす場合は税額控除率が25%、2を満たす場合は税額控除率が40%になります。

また、後述する上乗せ要件2との併用も可能です。

 

上乗せ要件1の対象となるのは国内雇用者のみです。

以下に該当する人は国内雇用者ではないため、上乗せ要件1の対象に含まれません。

  • ・対象の法人の役員
  • ・対象の法人との業務委託契約に基づき業務を行う個人事業主
  • ・使用人兼務役員
  • ・対象の法人または個人事業主と特別な関係にある者
  • ・内定者等の入社予定者

上乗せ要件2

上乗せ2は「子育てとの両立・女性活躍支援」とも呼ばれます。

以下いずれかの要件を満たす必要があります。

  • ・適用事業年度中に、くるみん認定、くるみんプラス認定、えるぼし認定(2段階目以上)を取得した
  • ・適用事業年度終了の時において、プラチナくるみん認定、プラチナくるみんプラス認定、プラチナえるぼし認定を取得している

 

くるみん認定は次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度です。

一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画達成・一定の基準を受けた企業が受けられます。

より高い水準の取組を行い一定の基準を満たした企業は、申請することでプラチナくるみん認定を受けられます。

 

えるぼし認定は女性活躍推進法に基づく認定制度です。

一般事業主行動計画の策定・届出等を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした事業主が受けられます。

全3段階あり、前述のように賃上げ促進税制の上乗せ2を受けるには2段階目以上の認定を受ける必要があります。

 

上乗せ要件2を満たした場合、税額控除率が5%上乗せされます。

 

なお、税額控除額の上限は通常・上乗せ共通で法人税額または所得税額の20%です。

控除しきれなかった分は5年間の繰越ができます。

制度の適用方法

控除を受けるにあたって、事前に行うべき手続きは特にありません。

法人税申告や所得税の確定申告の際に以下が記載された書類を提出することで控除が適用されます。

  • 1.控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額
  • 2.控除を受ける金額
  • 3.2の金額の計算に関する明細

法人は上記に加え、法人税申告書の別記様式である「適用額明細書」も提出する必要があります。

参考:No.5927-2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)|国税庁

参考|全企業向け・中堅企業向け賃上げ促進税制について

前節までで解説した賃上げ促進税制は、中小企業者等を対象とした制度です。

ほかにも大企業も適用を受けられる全企業向けの制度や、中堅企業向けの制度も存在します。

 

全企業向け・中堅企業向けの制度は、控除対象雇用者給与等支給増加額の10%(上乗せ措置の要件を満たす場合は最大35%)の税額控除を受けられます。

いずれも中小企業等も活用可能です。

 

ただし、全企業向けは令和8年3月31日、中堅企業向け措置は令和9年3月31日で終了予定です。

賃上げ促進税制の注意点

最後に、賃上げ促進税制の注意点を2つ紹介します。

適用を受けられるのは青色申告者のみ

「賃上げ促進税制の対象となる事業者」で紹介したように、賃上げ促進税制は青色申告者を対象とした制度です。

中小企業者等であっても、白色申告の場合は税制の適用を受けられません。

 

現在白色申告の事業者が賃上げ促進税制の適用を受けるためには、青色申告の承認申請を行う必要があります。

青色申告の承認申請の提出期限は、法人・個人それぞれ以下の通りです。

 

  • 法人
  • 青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで
  • ただし設立の日の属する事業年度の場合は、設立の日から3月を経過した日と当該事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
  •  
  • 個人
  • 青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで
  • その年の1月16日以後に事業を開始した場合は、事業開始等の日から2ヵ月以内

 

上記の期限を過ぎてしまっている場合は、当該事業年度は青色申告ができないためご注意ください。

支給額の引き上げと資金繰りのバランスに注意が必要

賃上げ促進税制の適用を受けるためには給与支給額を一定以上増やす必要があります。

そして給与等の支給額を増やせば必然的に支出が増え、資金繰りに影響を及ぼす恐れがある点に注意が必要です。

 

税額控除により納付税額を抑えられても、支給額の引き上げによる支出額増加が原因で資金繰りが悪化しては本末転倒です。

資金繰りとのバランスを考慮し、無理のない範囲での引き上げに抑える必要があります。

節税のご相談はBIZARQへ

賃上げの実施は人件費の増加にも直結するため、単に制度を利用するだけでなく、資金繰りや利益計画を踏まえたうえで賃金戦略を設計することが重要です。

 

「自社が賃上げ促進税制の対象になるのか知りたい」
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このようなお悩みをお持ちの経営者様は、BIZARQ(ビズアーク)までご相談ください。制度の適用要件を丁寧に確認しながら、税額控除を最大限活用できる給与設計と財務戦略をご提案いたします。

まとめ

賃上げ促進税制とは一定の要件を満たす給与等支給額の引き上げを行なった場合に法人税や所得税の税額控除を受けられる制度です。

支給額の引き上げ分に一定率を乗じた額が控除額となります。

上乗せ措置の要件を満たすことで税額控除の割合の上乗せも受けられます。

 

賃上げ促進税制の適用を受けられるのは青色申告書を提出する中小企業者等のみです。

白色申告者が賃上げ促進税制の適用を受けようとする場合、まずは青色申告の承認申請を行う必要があります。

 

賃上げによる支出増加が原因で資金繰りが悪化しては本末転倒です。

資金繰りとのバランスを考慮し、経営に影響を及ぼしすぎない程度の増加額に抑えることが大切です。

 

資金繰りに悪影響を与えない範囲に抑えることを前提としつつ、制度を上手く活用しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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