クリニック開業時、医療機器はリースと購入どちらで準備するべき?

2022.12.27

クリニック開業時にやるべき作業のひとつとして、医療機器の準備が挙げられます。
医療機器を揃える方法としてリースと購入の2種類がありますが、どちらにするべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。

リースと購入どちらにするか決めるためには、それぞれの違いや特徴を知ることが大切です。

本記事ではリースと購入それぞれのメリット・デメリットを紹介したうえで、どちらが良いかを解説します。

クリニック開業時に必要な資金については、下記の記事で解説しています。

CONTENTS

医療機器をリースで用意するメリット​

医療機器をリースで用意する大きなメリットは以下の4つです。

・購入よりも小さな労力で用意できる
・機器の入れ替えがしやすい
・管理費を抑えられる
・会計などの処理の手間が小さい


メリットについてそれぞれ詳しく解説します。

購入よりも小さな労力で用意できる

医療機器の準備にリースを利用するメリットのひとつが、購入よりも小さな労力で用意できる点です。

医療機器の多くは高額であるため、購入時に多くの手続きが必要となります。
融資や分割払いを利用する場合、さらに大きな手間になります。
また、自己保有の固定資産になるため保険などの諸手続きも必要です。

同じ金額の医療機器であっても、リースの場合は手間が少なくて済むケースが多くみられます。クリニックの所有物ではないため、保険や固定資産関連の手続きも必要ありません。
購入に比べて初期費用が小さく、金銭的な負担も抑えられます。

自己資金での購入や融資を利用する場合に比べ、リースは比較的手軽に医療機器を準備できる方法です。

機器の入れ替えがしやすい

機器の入れ替えがしやすい点も、リースならではの大きなメリットです。

リースの場合、契約内容によっては利用期間を自由に調整できます。
契約の途中変更や解約などはできないケースが多いですが、契約の段階で利用期間を短く設定すれば、利用を短期間に抑えられます。

新機種への乗り換えも、購入に比べてリースの方が楽です。
医療機器を購入した場合、入れ替えに伴って古い機器の処分費用や処分手続きなどが発生しますが、リースであればこれらのコストも発生しません。

リース契約期間の終了に合わせて新たな医療機器のリース契約を行えば、手軽に機器の入れ替えができます。

管理費を抑えられる

リースは購入に比べて、医療機器の利用に伴う管理費を抑えることができます。

購入した医療機器の種類や金額によっては、器具備品として固定資産税が発生します。
また多くの場合、保険料の支払いも必要です。これらの管理費はランニングコストとして、利用の間継続的に発生します。

医療機器をリースで利用する場合、固定資産税や保険料は機器の保有者であるリース会社が支払います。クリニックが支払う必要がないため、結果として管理費が抑えられるのです。

会計などの処理の手間が小さい

会計処理の手間が小さい点も、リースで医療機器を揃えることの大きなメリットです。

医療機器の購入費は、購入した年に全額費用計上できるわけではありません。
医療機器の耐用年数に応じて減価償却を行い、毎年少しずつ費用計上していく必要があります。
すなわち医療機器の耐用年数が終了するまで、もしくは処分などをするまでの間、毎年会計処理を行うことになります。

また、購入によってクリニックで医療機器を所有する場合、償却資産の申告も必要です。

リースの場合は基本的に、リース会社に支払ったリース料金をそのまま経費として計上できます。また、クリニックの所有物ではないため、償却資産の申告も必要ありません。
このようにリースでは、会計処理の手間を小さくできます。

医療機器をリースで用意するデメリット​

医療機器をリースで用意するデメリットとして、以下の3点が挙げられます。


解約できない・中途解約手数料が高額
リース契約の多くは中途解約が禁止されており、万が一解約する場合は高額な手数料の支払いが必要なケースがほとんどです。

契約期間後は返却や新たな機器の契約が必要

リース契約の期間が終了してから新たな契約をするまでの間は必要な作業が増えます。


特別仕様や最新型などリースで用意できない医療機器も多い

一概にはいえませんが、リースは購入に比べて選べる医療機器の種類が少なめです。

メリットだけでなく、デメリットも認識しておくことが大切です。

医療機器を購入で用意するメリット​

続いては医療機器を購入で用意するメリットを紹介します。
購入の大きなメリットは以下の4つです。

・クリニックの所有物にできる
・特別仕様も含め幅広い選択肢がある
・総額で考えると安い可能性が高い
・税務上の制度が利用できる

それぞれ詳しく解説します。

クリニックの所有物にできる

医療機器を購入する大きなメリットは、対象の医療機器をクリニックの所有物にできることです。

リースでは医療機器をクリニックに設置できるものの、あくまで借り物であるため、リース会社との契約やルールに従う必要があります。契約内容によっては、不自由さや不便さを感じることがあるかもしれません。

しかし、医療機器を購入すればクリニックの所有物になるため、利用における自由度が高くなります。
なるべくルールを少なくしたい・クリニックの自由度を高めたいなどの場合には、購入が適しています。

特別仕様も含め幅広い選択肢がある

購入はリースに比べ、特別仕様も含め選択肢が幅広いケースが多いです。

リースで利用できる医療機器は限りがあり、理想的なものが見つからない恐れもあります。
特に最新機器や特別仕様の医療機器などの場合、リースでは見つけにくい、もしくは選択肢がかなり少なくなる傾向があります。

購入の場合、リースよりも選択肢が多い可能性が高いです。
必要とする医療機器によっては、購入の方が利用しやすいと考えられます。

総額で考えるとリースより安い場合がある

医療機器の購入はリースの利用に比べ、総額で考えると安価な場合があります

リースは手数料が高額であるため、一度に支払う金額は小さくても利用期間や契約内容によっては合計額が大きくなります。
購入は初期費用が高くインパクトは大きいですが、リース手数料のような高額の付随費用は発生しません。ローンや借入金で購入する場合の手数料や利息も、リース手数料に比べると安いことが多いです。

高額な手数料込のリース料金を長く払い続けていると、合計額がかなり大きなものになってしまいます。そのため、ひとつの機器を長く使う場合、結果として購入の方が安くなる可能性が高くいのです。

税務上の制度が利用できる

医療機器を購入する場合、税務上の制度を利用できるケースがあります。

取得価額が500万円以上の高額医療機器を購入した場合、医療用機器等の特別償却の適用を受けられます。
この制度を利用すれば、取得価額の12%を特別償却費として計上が可能です。
結果として節税対策につながる効果が期待できます。

医療用機器等の特別償却制度は、医療機器を購入した場合のみ適用を受けられます。
クリニックに導入する医療機器の種類によっては、購入によって税務上の制度を利用した方が大きな恩恵を受けられる可能性があります。

なお、医療用機器等の特別償却の対象となる医療機器には細かな規定があるうえ、税務面での有利不利を判断するのは容易ではありません。
税務上の制度利用を考えているのであれば、税理士などの専門家に相談するのが安心です。

医療機器を購入で用意するデメリット​

医療機器の購入には、以下のようなデメリットがあります。

管理や会計処理の手間が大きい
毎期の減価償却や保険料の支払いなど、管理コストが大きくなります。

初期費用が大きい
リースに比べ初期費用が大きく、金銭面での負担がかかります。

短期間での入れ替えが難しい
購入した医療機器を処分する際は処分費用や手続きが必要であるため、短期間での入れ替えが難しくなります。

医療機器を購入する場合、手間や費用など発生するコストが大きい点に注意が必要です。

結局、クリニック開業時はリースと購入どちらが良い?​

医療機器のリースと購入には、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。
クリニック開業時にリースと購入どちらを利用するべきかはケースによって異なるため、一概にはどちらが良いと断言することはできません。

リースと購入どちらが適しているか、判断基準の例を以下にご紹介します。

・長期間利用する機器
購入のほうが合計額を小さくできる可能性が高いです。

・短期間で交換や処分の可能性が高い
発生する手間を考えると、リースの方が手軽で便利です。
金額面はケースによるため、合計額を計算したうえで比較検討する必要があります。

・とにかく手間を小さくしたい
管理や会計処理など、さまざまな面でリースの方が手間を小さくできます。

上記はあくまで一例であり、クリニックの状況や理想条件などを細かく考慮することが大切です。
特に金銭面や税務面でどちらのメリットが大きいかは判断が難しいため、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

まとめ​

医療機器の用意はクリニック開業時に必要な作業の中でも、特に大きなコストが発生する部分です。リースと購入どちらで用意するかによって、発生する金額やその後必要となる作業など、さまざまな面で違いが生まれます。

リースの購入どちらも異なるメリット・デメリットを有するため、違いや特徴を押さえたうえで、どちらが適しているか考えることが大切です。
判断が難しいと感じたら、無理せず専門家に相談してアドバイスを受けるのが良いでしょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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