医療法人の節税対策に効果的!投資促進税制について解説!

2024.02.16

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中小企業投資促進税制とは、対象期間中に一定の要件を満たす資産を取得して指定事業の用に供した場合、その固定資産の特別償却または税額控除を認めるという制度です。

略して単純に投資促進税制と呼ぶケースも多くみられます。

 

医療法人も要件を満たせば投資促進税制の適用が可能です。

ただし、医療法人の保有する資産のうち大きな割合を占める医療機器は、同制度の適用対象外となります。

医療法人で大きな節税効果を得るためには、投資促進税制だけでなく、他の優遇税制を上手く活用する必要があるでしょう。

 

今回は投資促進税制の概要や適用を受ける方法と、医療法人で適用を受けられるその他の優遇税制について詳しく解説します。

 

優遇税制は上手く活用すれば節税効果を期待できる制度です。しかし、税負担を最小限に抑えるためには、制度の活用だけでなく日々の会計処理においても節税を意識する必要があリます。

医療法人におすすめの節税方法については以下の記事で解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

医療法人も適用を受けられる投資促進税制の概要

はじめに、医療法人も適用を受けられる投資促進税制の概要を解説します。

投資促進税制とは

中小企業投資促進税制とは、対象期間中に要件を満たす新品の資産を取得して指定事業の用に供した場合、その固定資産の特別償却または税額控除を認めるという制度です。

略して投資促進税制と呼ばれます。

対象期間は、1998年6月1日から2025年3月31日までです。

 

同制度では特別償却と税額控除のいずれかを選択する必要があります。それぞれ適用される割合は以下の通りです。

  • ・償却限度額:取得価額の30%相当額
  • ・税額控除限度額:取得価額の7%相当額

制度の適用対象となる法人

制度の対象となるのは、以下の要件を満たす青色申告法人です。

  • ・資本金又は出資金の額が1億円以下
  • ・資本金や出資金がない場合、常時使用する従業員が1,000人以下

出資持分なしの医療法人は出資金が0円のため、常時使用する従業員数で判定を行います。

適用対象となる資産

同制度の適用対象となる資産は以下の通りです。

  • 1.取得価額160万円以上の機械および装置
  • 2.一定の要件を満たす測定工具・検査工具
  • 3.一定の要件を満たすソフトウェア
  • 4.貨物の運送の用に供される3.5トン以上の普通自動車
  • 5.内航海運業の用に供される船舶

医療法人で適用対象となる資産とは

国税庁公式サイトの同制度について説明されているページ内で、医療機器は同制度の対象外と明記されています。

医療機器は耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の中で「医療機器」に該当するものであり、機械および装置には含まれないためです。

つまり、医療機器は投資促進税制の適用対象になりません。

 

医療法人で適用対象となり得る資産としてソフトウェアが挙げられます。

前項で、同制度の適用対象となるソフトウェアは「一定の要件を満たすもの」と紹介しました。

具体的には、以下のいずれかに該当するものが対象となります。

  • ・1単位の取得価額が70万円以上
  • ・当該事業年度におけるソフトウェアの取得価額の合計が70万円以上

具体的には、電子カルテやレセコンなどが挙げられます。

 

また、医療法人にはあまり関係ありませんが、複写販売用の原本や開発研究用のもの、サーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のものは対象外です。

医療法人で投資促進税制の適用を受ける方法

同制度の適用を受けるにあたって、特別償却と税額控除のどちらを利用するか選択する必要があります。

この章ではそれぞれの適用を受ける方法や、同制度の適用を受ける際の注意点について解説します。

特別償却の適用を受ける場合

確定申告書等を提出する際に、償却限度額の計算に関する明細書の添付が必要です。

 

なお、特別償却とは通常よりも高額の償却ができる仕組みであり、特別償却をする分将来の償却可能額は少なくなります。つまり、将来的な償却額を前倒しで計上するイメージです。

同制度の適用を受けた事業年度の税額は抑えられますが、償却期間全体でみて法人税の総額が減るわけではありません。

税額控除の適用を受ける場合

控除を受ける金額を確定申告書等に記載した上で、金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

 

税額控除を利用すると、設備取得費が実質7%引きとなるイメージです。

前項で紹介した特別償却と異なり、確実な節税効果があります。

投資促進税制の注意点

投資促進税制は、特別償却と税額控除のどちらかを選ぶ必要があり重複適用はできません

また、同制度の適用を受ける資産について、租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却・税額控除を受けることも不可能です。

 

なお、同制度を適用できるのは、対象の資産を事業に使い始めた事業年度となります。

資産を購入しただけでは適用を受けられない点に注意が必要です。

医療法人で適用を受けられるその他の優遇税制

最後に、医療法人で適用を受けられるその他の優遇税制2つを紹介します。

医療機器の特別償却制度

医療機器の特別償却制度とは、一定の要件を満たす医療機器を取得した際に割増償却ができる制度です。

医療機器を取得した年度に計上できる減価償却費が増えるため、所得の軽減につながります。所得が大きくなりそうな年に活用すれば大きな節税効果を得られるでしょう。

 

同制度は機器の種類や要件によって以下の3種類に大別されます。

高額な医療用機器の特別償却制度

以下すべての要件を満たす医療機器が該当します。

  • ・取得価額が500万円以上
  • ・高度な医療の提供に資するものまたは医薬品医療機器等法の指定を受けて2年以内のもの

 

高額な医療用機器にかかる特別償却制度における償却割合は、取得価額の12%です。

医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度

以下3つの要件を満たす機器等が対象となります。

  • 1.取得価額が30万円以上
  • 2.医師および医療従事者の勤務時間短縮に資する機器
  • 3.医師勤務時間短縮計画に基づいて取得した機器
  • 償却割合は取得価額の15%です。

3の医師勤務時間短縮計画については、都道府県の医療勤務環境改善支援センターの確認を受ける必要があります。

地域医療構想の実現のための病床再編等の促進のための特別償却制度

病床の再編等を目的に取得または建設をした病院用や診療所用の建物、建物附属設備を対象とする制度です。

医療機器とは異なる性質を持ちますが、医療機器の特別償却制度の1つとして扱われています。

償却割合は取得価額の8%です。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、以下の要件を満たす中小企業者等が適用を受けられる制度です。

  • ・青色申告者である
  • ・中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた
  • ・新品の特定経営力向上設備等を取得(もしくは製作・建設)し、指定事業の用に供した

 

同制度では、特別償却と税額控除のいずれかを選択できます。

それぞれの適用割合は以下の通りです。

  • ・特別償却:取得価額の全額(即時償却が可能)
  • ・税額控除:取得価額の7%相当額

 

対象の資産として以下の4つが挙げられます。

  • ・取得価額が160万円以上の機械および装置
  • ・取得価額が30万円以上の工具、器具および備品
  • ・取得価額が60万円以上の建物附属設備
  • ・取得価額が70万円以上のソフトウェア

まとめ

投資促進税制は、期間中に一定の固定資産を取得して指定事業の用に供した場合、特別償却または税額控除を認めるという制度です。

医療法人でも適用を受けられますが、医療法人で大きな割合を占める医療機器は対象外となります。医療法人の場合、適用対象となり得る資産としてソフトウェアが挙げられます。

なお、特別償却と税額控除の併用はできません。また、対象の資産について、他の制度の特別償却や税額控除の重複適用も不可能です。

 

医療法人で適用を受けられる優遇税制として、ほかにも医療機器の特別償却制度や中小企業経営強化税制が挙げられます。

 

医療法人で税負担を最小限に抑えるためには、優遇税制を上手く活用することが大切です。

「どの制度を利用できるかわからない」「制度の使い方について疑問や不安がある」とお悩みであれば、ぜひ専門家である税理士へご相談ください。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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