令和5年8月施行!医療法人の経営情報の報告義務化について解説!

2024.04.24

令和5年(2023年)8月から、医療法人の経営情報について都道府県へ報告が義務化されました。

令和5年8月1日以降に終了する会計年度(決算期を迎える医療法人)から対象となります。

都道府県への報告は原則として会計年度終了から3ヶ月以内に行う必要があります。

一部の例外を除き、すべての医療法人が対象です。

 

報告は一定の様式を使って行う必要があり、様々な項目が設けられています。

会計年度終了直後は通常の決算作業も必要であり忙しい時期のため、経営情報の報告準備も時間に余裕を持って早めに行うことが大切です。

記載する項目や気になる事項についても事前に確認しておくのが良いでしょう。

 

今回は医療法人に課される経営情報の報告義務について詳しく解説します。

 

医療法人の決算と密接に関係する税金については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

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CONTENTS

医療法人 経営情報の報告義務化とは

令和5年(2023年)8月以降、医療法人の経営情報について都道府県への報告が義務化されました。

令和5年8月1日以降に終了する会計年度が対象であり、会計年度終了から3ヶ月以内が期限となります。

医療法人単位ではなく、病院・診療所ごとに報告をする必要があります。

原則としてすべての医療法人が対象です。ただし例外として、社会保険診療報酬の所得計算の特例措置が適用される医療法人は対象外とされています。

医療法人 経営情報の報告義務化の目的

医療法人に対する経営情報の報告義務化の目的として、主に以下の4つが挙げられます。

  • ・医療法人の現状と実態を把握するための情報収集およびデータベースを整備するため
  • ・収集した情報を属性等に応じてグルーピングし分析を実施、結果を公表するため
  • ・データベースの情報を研究者等へ提供する制度を創設するための準備
  • ・医療現場で働く人の処遇改善を進める動きの一環として費用の見える化を実現するため

報告された経営情報はデータベース化および管理が行われ、医療政策等に活用される予定です。

報告方法

医療法人の経営情報は、会計年度終了後3ヶ月以内に医療法人の主たる事務所の所在する都道府県知事に報告する必要があります。

報告の仕方は医療機関等情報支援システムを使用する方法と書面で報告の2種類です。それぞれ詳しく解説します。

 

※今回紹介する情報は東京都保健医療局および厚生労働省公式サイトの内容を参照しています。提出方法は都道府県によって異なる可能性があるため、必ず都道府県の公式サイト等をご確認ください。

医療機関等情報支援システム(G-MIS)

医療機関等情報支援システム(G-MIS)は厚生労働省が運営するシステムです。

同システムを利用し、電子媒体で届出を行うことができます。

 

G-MISでファイルを提出する流れは以下の通りです。

  • ①G-MISの利用登録(ユーザー登録等)を行う
  • ②①で発行したログイン情報を利用しG-MISにログインする
  • ③各「事業報告書等(ひな形)」のリンクをクリックし、報告書等の様式をダウンロードする
  • ④ダウンロードしたファイルに報告内容を記載し、入力後ファイルを保存する
  • ⑤事業報告書等提出一覧画面を開き、「新規」をクリックする
  • ⑥画面の指示に従い基本情報を入力し、「保存」をクリックする
  • ⑦表示された画面で提出するファイルをアップロードする
  • ⑧画面の指示に従いファイルの提出を進める

 

なお、G-MISでは経営情報と事業報告書等の2つの提出が必要です。どちらも同じシステム上で完結しますが、画面上の提出欄が異なるためご注意ください。

書面で報告

書面で提出する場合、所定の報告様式に加えて「医療法人の経営情報等報告書」の提出も必要です。

各様式をダウンロードし、PC上で入力したものを印刷、もしくはプリントアウトして手書きで必要事項を記入します。

書類を順番通りになるように揃えた上で、都道府県が指定する住所へ送付します。

提出部数は1部ですが、控えが必要な場合は控えとして必要な部数および返信用封筒の用意も必要です。

報告する情報の例

医療法人に報告が義務付けられている経営情報等の具体例を紹介します。

 

  • 医療法人に関する情報
  • 右上に、医療法人整理番号、法人番号、病床・外来管理番号、医療機関コードを記入する欄があります。
  •  
  • 病院等の基本情報
  • 病院や診療所の名称や所在地等のほか、役員数・職員数の記入も必要です。
  •  
  • 会計期間
  •  
  • 消費税の経理方式
  •  
  • 主たる診療科
  •  
  • 医業収益
  • 合計のほか、入院診療収益、外来診療収益、その他の医業収益といった要素別の収益も記入する必要があります。
  • それぞれ内訳の記入欄も設けられていますが、内訳は任意記載です。
  •  
  • 医業費用
  • 材料費、給与費、委託費、設備関係費、研究研修費、経費、控除対象外消費税等負担額、本部費配賦額の記入が必要です。
  • 項目によってはさらに内訳の記入欄が設けられています。
  •  
  • 医業利益または医業損失
  • 報告書をExcelで作成する場合は入力した数値をもとに自動計算が行われます。
  •  
  • 医業外収益
  • 医業外収益の合計額のうち、受取利息および配当金、運営費補助金収益、施設設備補助金収益については内訳の記入が必要です。
  •  
  • 医業外費用
  • 医業外収益の合計額のうち支払利息部分は所定の項目に記入する必要があります。
  •  
  • 経常利益または経常損失
  • 報告書をExcelで作成する場合は入力した数値をもとに自動計算が行われます。
  •  
  • 臨時収益
  • 合計額のうち、運営費補助金収益、施設設備補助金収益については所定の項目に記入が必要です。
  •  
  • 臨時費用
  • 臨時費用について特に内訳の記入欄は設けられていません。
  •  
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益
  • いずれも報告書をExcelで作成する場合は入力した数値をもとに自動計算が行われます。
  •  
  • 職種別給与総額及びその人数に関する情報
  • 職種や常勤・非常勤等、各種別に必要事項を記入します。

病院と診療所で様式が異なる

使用する様式ですが、病院と診療所で異なる点にご注意ください。

病院と診療所で一部の項目に違いがあります。

 

たとえば診療所用の様式には、「入院診療収益」の内訳項目として「公害等診療収益」が設けられています。この内訳項目は病院用の様式にはありません。

逆に病院用様式のみに設けられている項目として、「医業収益」の「室料差額収益」が挙げられます。

 

また、病院用では必須項目として定められているものの、診療所では任意の項目もあります。

「委託費」の「うち給食委託費」が一例です。診療所用の様式にのみ、任意記載と明記されています。

様式を誤ると書き直しの負担が生じるため、使用するべき様式を必ず確認しましょう。

医療法人 経営情報の報告義務に関するよくある質問

最後に、医療法人における経営情報の報告義務に関するよくある質問3つを紹介します。

報告した情報はどのように公表される?

厚生労働省の公式サイトでは、国民にわかりやすく伝わるよう、データベースの属性等に応じてグルーピングした結果が公表されると明記されています。

医療法人を特定できるような、個別の情報が公開されるわけではありません。

報告しないとどうなる?

令和6年4月時点では、医療法人の経営情報の報告義務を怠った場合について特に罰則は設けられていません。

ただし「罰則がないから報告しなくても問題ない」というわけではありません。義務である以上、提出は必須と考えましょう。

また、今後は罰則が設けられる可能性もあるため、最新情報の確認が必要です。

運営する病院・診療所が複数の都道府県をまたいでいる場合の提出先は?

医療法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事が提出先です。

病院・診療所の数や所在地に関係なく、提出先は一か所にまとめられます。

まとめ

医療法人は所定の様式を使用し、会計年度の終了後3ヶ月以内に経営情報の報告を行う必要があります。

必要事項の記入はもちろん、様式のダウンロードやシステム上での各種作業など、やるべきことが多数あります。

時間に余裕をもって進めなければ、期限までに提出できない恐れもあるため注意が必要です。

報告義務の内容や提出方法等を事前に確認した上で、早いうちから作業を進めていきましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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