事業再構築補助金とは、中小企業等の新分野展開・事業や業種の転換・事業再編等の事業再構築の支援を目的とする補助金です。
事業再構築補助金は補助金上限が高いですが、要件が厳しく、採択率も高くありません。
また、医療機関はそもそも適用対象となる範囲が狭く、注意点も多い制度です。
事業再構築補助金の適用を前提としすぎず、適用範囲や注意点を入念に確認する必要があるでしょう。
今回は事業再構築補助金について、医療機関の適用範囲や申請する際の注意点等を解説します。
以下の記事では医療機関の開業時に活用できる融資について紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金とは、中小企業等の新分野展開・事業や業種の転換・事業再編等の支援を目的とする補助金です。
主に新型コロナウイルス感染症による影響を受けた事業者を対象としています。
2024年4月現在、事業再構築補助金には全部で8種類の類型があり、それぞれ異なる要件が定められています。
すべての類型に共通する必須要件は以下の2つです。
- ・事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、
該当の計画について認定経営革新等支援機関の確認を受ける - ・付加価値額を一定割合以上増加させる
類型ごとの申請要件については、同制度公式サイトの申請要件ページをご確認ください。
補助上限額および補助率は以下の通りです。
- ・成長枠:最大7,000万円 補助率2分の1
※大幅な賃上げ達成で3分の2へ引き上げ - ・グリーン成長枠:最大8,000万円または1億円 補助率2分の1
- ※大幅な賃上げ達成で3分の2へ引き上げ
- ・卒業促進枠:成長枠およびグリーン成長枠に準じる
- ・大規模賃金引上促進枠:成長枠およびグリーン成長枠の上限に3,000万円上乗せ
- ・産業構造転換枠:最大7,000万円 補助率3分の2
- ・サプライチェーン強靱化枠:最大5億円 補助率2分の1
- ・最低賃金枠:最大1,500万円 補助率4分の3
- ・物価高騰対策・回復再生応援枠:最大3,000万円 補助率3分の2 ※一部4分の3
補助上限額は従業員規模によっても異なるため、必ず公式サイトの案内をご確認ください。
また、上記はいずれも中小企業の補助上限額および補助率です。中小企業等と中堅企業で異なるケースもあります。
中小企業と中堅企業の範囲は以下の通りです。
- 中小企業
- ・製造業その他:資本金3億円以下の会社または従業員300人以下の会社および個人
- ・卸売業:資本金1億円以下の会社または従業員100人以下の会社および個人
- ・小売業:資本金5,000万円以下の会社または従業員50人以下の会社および個人
- ・サービス業:資本金5,000万円以下の会社または従業員100人以下の会社および個人
- 中堅企業
- 中小企業の範囲外で資本金10億円未満の会社
補助対象になるのは、事業拡大へつながる事業資産への投資にかかる経費です。
機械装置や技術導入費、外注費等の幅広い経費が対象になりますが、いずれも本事業の対象として明確に区別できる必要があります。
医療機関 事業再構築補助金の適用可否
続いて、医療機関における事業再構築補助金の適用可否について解説します。
対象となる医療機関の範囲
事業再構築補助金の対象となる医療機関の例として、以下の3つが挙げられます。
なお、いずれも事業再構築補助金の必須要件を満たすことが大前提です。
個人クリニック
個人事業主は事業再構築補助金の対象者である中小企業者に含まれるため、個人クリニックは本制度の対象になります。
ただし、収益事業を行っていない場合は対象外です。詳細は後述します。
社会医療法人
医療法人は原則として事業再構築補助金の対象外ですが、例外的に社会医療法人のみ本制度の対象に含まれます。
ただし前項で紹介した個人クリニックと同様、対象になるのは収益事業を行う場合のみです。
公益財団法人、一般財団法人、一般社団法人の経営する病院
あまり数は多くありませんが、公益財団法人、一般財団法人、一般社団法人の経営する病院も本制度の対象です。
事業再構築補助金の対象外となる医療機関の例
続いて、事業再構築補助金の対象外、つまり本制度の適用を受けられない医療機関の例を紹介します。
- 大病院
- 大病院は一般的に病床規模が500床以上の病院を指します。
- 大病院は規模が大きく必然的に従業員数も多くなるため、事業再構築補助金の対象である「中小企業者」に含まれません。
- 大学病院
- 大学病院は法人の種類としては「地方独立行政法人」にあたります。
- そして、地方独立行政法人は事業再構築補助金の対象になり得る以下3つのいずれにも該当しません。
- ・中小企業者
- ・法人税法別表第二
- ・公益法人等とみなされる法人
- したがって、大学病院も同制度の対象外です。
- 一定以上の規模のクリニック
- 個人クリニックであっても、従業員数が300人以上の場合は同制度の対象外となります。
医療機関における事業再構築補助金の注意点
最後に、医療機関における事業再構築補助金の注意点を4つ紹介します。
収益事業を行っていない医療機関は対象外
適用対象となる医療機関の範囲に含まれていても、収益事業を行っていない医療機関は事業再構築補助金の対象外です。
「事業再構築補助金の概要」の「5.補助対象外事業」から、根拠となる部分を引用します。
「⑬国庫及び公的制度からの二重受給
テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する他の制度(補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業」
保険診療報酬は補助対象外事業と明記されています。したがって保険診療のみを行っている医療機関では事業再構築補助金の適用を受けられません。
医療機関における収益事業として以下の例が挙げられます。
- ・施設内での歯ブラシ、補聴器、義肢等の医療関連物品販売
- ・食事が必要な患者に対する配食サービス
- ・他の医療機関に対するコンサルティングや医療提供に関するマニュアル等の販売
申請しても必ず受給できるとは限らない
補助金全体に共通する注意点として、採択数や予算を上回る申請がある場合は審査が行われる点が挙げられます。
つまり事業再構築補助金の要件を満たしている場合でも、申請すれば必ず受給できるとは限りません。
申請に向けて時間や労力をかけて作業をしても、審査に通過できないという事態が高い確率で起こり得ます。
補助金は原則として後払い
事業再構築補助金に限らず、補助金は原則として後払いです。
そのため、補助金が入るまでの間は自己資金や融資による借入金でまかなう必要があります。
そもそも前項の通り、事業再構築補助金に申請しても受給できるとは限りません。
後払い・受給できるとも限らない制度である以上、補助金をあてにし過ぎないよう注意が必要です。
認定支援機関の支援を受ける必要がある
事業再構築補助金の全体で共通する必須要件の1つが「事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること」です。
要件を満たした事業計画を立てても、認定経営革新等支援機関の確認を受けなければ申請できません。
認定経営革新等支援機関は、中小企業庁が策定した、中小企業に対する専門的な支援を行うための機関です。
補助金申請関連だけでなく、資金調達や優遇税制の活用など幅広い支援を行います。
認定経営革新等支援機関として登録するには、専門性の高さや中小企業の支援に関する一定の要件を満たし、所定の手続きをする必要があります。
認定経営革新等支援機関は、中小企業庁が提供する「認定経営革新等支援機関 検索システム」から検索が可能です。
顧問税理士が認定経営革新等支援機関である場合は、顧問税理士に相談するのがスムーズでしょう。
まとめ
事業再構築補助金は、新分野展開や業態・業種転換、事業再編等の幅広い場面で活用できる補助金制度です。
医療機関の場合、要件を満たす個人クリニックや社会医療法人等のみが対象になります。
大病院や大学病院、収益事業を行わない医療機関等は対象外です。
また、事業再構築補助金は申請すれば必ず受給できるとは限りません。補助金が後払いである点にも注意しましょう。
申請をするには、事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要もあります。
事業再構築補助金について十分に理解を深めた上で、申請をするか検討しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士