開業医が知っておくべき確定申告と節税対策について解説!

2022.12.30

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自身でクリニックを開業・経営している開業医の人は、毎年所得税の確定申告が必要です。
確定申告は細かなルールが多く期限も設定されているため、スムーズな確定申告のためには事前にポイントを押さえておく必要があります。
所得税の節税につながるテクニックも知っておくと便利です。

本記事では、開業医の人が知っておくべき確定申告と節税対策について詳しく解説します。

クリニックの経費や医療法人・個人事業主の違いについては、以下の記事で解説しています。

CONTENTS

開業医は確定申告が必要!​

確定申告とは、毎年1月1日~12月31日の間に発生した所得から納付する所得税額を計算し、税務署に申告することです。

毎年の収入が医療機関・学校・企業などから得る給与のみで、総額が2,000万円未満の場合は確定申告を実施する必要がありません。
給与を支払う事業主が毎月の給与から所得税を徴収しており、さらに年末に所得額を確定・精算する年末調整を実施するためです。

勤務医の場合、年収2,000万円未満でほかに収入がなければ所得税の確定申告は不要です。
そのため、クリニックに勤務していた頃に確定申告をしたことがない医師の方も多いかもしれません。

一方で開業医の場合、収入は給与所得ではなく事業所得に該当します。給与所得以外に年間20万円以上の収入を得ている人は確定申告が必要です。
したがって、開業医には確定申告の義務があります。

確定申告は翌年の2月16日~3月15日に行うよう定められています。
(土日祝の場合はその次の平日が期日。還付申告の場合は2月15日以前の提出も可)
2022年分の確定申告は、2023年2月16日~3月15日が受付期間です。

開業医の確定申告の流れ​

開業医の確定申告の大まかな流れは以下のとおりです。

・収入額を算出する
・経費額を算出する
・事業所得の計算~税額の算出


それぞれの工程について詳しく解説します。

収入額を算出する​

はじめに行うのは、1年間の収入額の算出です。

開業医の収入は、大きく以下の3種類に分けられます。

保険診療収入

医療保険や国民健康保険など、保険適用となる診療によって得た収入です。

自由診療収入

保険適用外の診療による収入です。診療内容は多岐にわたります。

雑収入

医療行為以外によって得た収入です。
診断書の作成費や患者の紹介料、歯ブラシ・健康食品など関連する品物の売り上げも雑収入に含まれます。

これらの金額を合計して1年間の収入額を出します。

経費額を算出する​

収入と同様、1年間トータルでかかった経費額の算出も必要です。

開業医の場合、実際にかかった経費で計算と、「社会保険診療報酬の特例」の適用のどちらかを選べます。

社会保険診療報酬の特例とは、実際の経費額ではなく、社会保険診療報酬に所定の割合を乗じた金額を経費として扱える制度です。
社会保険診療報酬が5,000万円以下かつ自由診療収入と雑収入を含めた報酬総額が7,000万円以下の場合のみ適用を受けられます。

概算経費率は以下のように定められています。

社会保険診療報酬額2,500万円以下: 72%
2,500万円超3,000万円以下: 70%+50万円
3,000万円超4,000万円以下: 62%+290万円
4,000万円超5,000万円以下: 57%+490万円


その年の社会保険診療報酬額が3,500万円であった場合、社会保険診療報酬の特例を用いると経費は以下の額になります。

3,500万円×62%+290万円=2,460万円

なお、社会保険診療報酬の特例を適用した場合、社会保険診療報酬部分には青色申告特別控除の適用を受けられません。青色申告特別控除は自由診療や雑収入の部分のみ適用されます。

事業所得の計算~税額の算出​

収入額・支出額を計算したら、以下の流れで事業所得の計算から税額の算出まで進めます。

事業所得の計算

収入-支出=事業所得で計算します。

課税標準の計算

事業所得の算出後、損益通算(ほかの所得に赤字があれば、黒字の所得から差し引くことが可能)、純損失や雑損失の繰越控除を行います。

所得控除を差し引いて課税所得を計算する

社会保険料控除・扶養控除・医療費控除などを所得額から差し引きます。

税額を計算する

課税される所得金額に応じて設定されている税率および控除額を用いて計算します。
詳細は国税庁公式サイトをご覧ください。

国税庁|No.2260 所得税の税率

税額控除を差し引く

税額控除は算出された税額から直接控除できます。
税額控除の例として住宅ローン控除や配当控除が挙げられます。

開業医が確定申告に向けて行いたい節税対策とは​

所得税を抑えるためには、事前に節税対策を行うことが重要です。
開業医が確定申告に向けて行いたい節税対策を3つ紹介します。

・所得控除を最大限活用する
・共済に加入する
・経費にできる支出を漏れなく計上する

それぞれ詳しく解説します。

個人事業主の節税対策について以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。

所得控除を最大限活用する

節税のためには、所得控除を最大限に活用することが大切です。

たとえば生命保険料や個人年金保険料の支出があれば、所得控除のひとつである生命保険料控除を利用できます。ほかにも扶養控除や寄付金控除など、開業医を含めた個人事業主が利用できる所得控除制度が多数存在します。

所得控除を活用するか否かで、所得税額は大きく変わります。

なお、生命保険料控除をはじめとした所得控除制度は、確定申告書で申告しない限り適用されません。自動的に税額が調整されるわけではないため、計上できるものがあれば漏れなく計上しましょう。

共済に加入する

共済への加入も、開業医の節税対策としておすすめできる手段のひとつです。

個人事業主向けの共済で支払った掛金は経費計上が可能です。経費の額が大きければそれだけ所得額が小さくなるため、結果として節税につながります。

効果的・おすすめできる共済を2つ紹介します。

小規模企業共済

個人事業主の退職金のような制度です。
掛金合計額の80%~120%相当額を受け取れます。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

取引先事業者が倒産した際の経営難に備える制度です。
取引先事業者が倒産した際、無担保・保証人なしで借入を利用できます。

これらは節税につながるだけでなく、将来への備えとしても効果的です。

経費にできる支出を漏れなく計上する

実額経費で確定申告を行う場合、経費にできる支出を漏れなく計上することが大切です。

開業医が経費として計上できる支出のうち、計上漏れしやすいものの例を紹介します。

旅費交通費

クリニックへの通勤費や取引先との打ち合わせ先に向かう交通費などが該当します。

研修費

業務に関する研修に要した費用です。学会や講習会の参加費などが該当します。

図書研究費

業務に関する勉強に要した費用です。書籍の購入代・資格受験費などが挙げられます。

通信費

事業で使うインターネット代や電話代、取引先や税務署などに書類を送付する際の切手代なども経費計上が可能です。

開業医の確定申告は専門家に相談するのが安心​

確定申告では収入・支出・各種控除など考慮するべき部分が多く、作業や計算が煩雑になりがちです。専門知識がない人の場合、計上漏れをしてしまう可能性があります。

本来の所得よりも小さく申告してしまうと、意図の有無に関係なく延滞税や加算税のリスクがあります。一方で経費計上や控除の適用に漏れがあると、必要以上に税額が大きくなってしまいます。

確定申告を正しく、かつ節税対策もしっかり行うためには、専門家のサポートを得るのが安心です。

一言で専門家といっても人によって得意分野が異なるため、クリニックや医師の確定申告に強い専門家を選びましょう。

まとめ​

開業医は勤務医と違い、毎年の確定申告が必要です。
確定申告では収入と支出それぞれのトータル額を計算するだけでなく、適用できる所得控除や税額控除なども忘れずに計上する必要があります。
所得の過少申告は、延滞税や加算税のリスクがあり注意が必要です。一方で経費計上や控除の適用に漏れがあると所得額が大きくなり、結果として税額も必要以上に大きくなってしまいます。

正確さと節税対策の実施の両方を実現させるためには、当事者のみですべて対処しようとせず、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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