個人開業クリニックの事業承継を徹底解説!

2023.01.04

クリニックを個人開業する手段には、すべてを一から進める新規開業と、すでに運営されているクリニックを引き継ぐ事業承継の2種類があります。
開業と聞くと新規開業のイメージが強いかもしれません。しかし事業承継による開業も視野に入れることで選択肢が広がり、自身に合ったクリニック開業ができる可能性が高くなります。

本記事では個人開業のクリニックの事業承継について、メリット・デメリットや具体的な進め方を解説します。

医療法人の承継については以下の記事で解説していますので、ぜひそちらもご覧ください。

CONTENTS

クリニックの事業承継とは​

事業承継とは、事業経営を別の人に引き継ぐことです。
クリニックで事業承継した場合、現在運営しているクリニックの土地・建物・設備などをそのまま別の医師が引き継ぎ、クリニックを運営します。
事業承継されたクリニックは新規開業という扱いになりますが、事業主が違うだけでそれ以外の部分はこれまでのクリニックと基本的に同じです。

また、承継と似た言葉に「継承」があります。
継承は、財産や権利・義務といった具体的な物を引き継ぐ意味合いが強いです。

承継は、身分・事業・精神など、抽象的・精神的なものを受け継ぐ意味合いの強い言葉です。
つまり「事業承継」は、事業に対する理念や想いも引き継ぐ意味合いが込められています。
継承と承継は現実的には同じ意味で使われる場面も少なくありませんが、法律上は事業承継という言葉が用いられます。

クリニックの事業承継によるメリット​

クリニックを事業承継によって開業するメリットは以下の4つです。

・開発費用を抑えられる
・スタッフを引き継げる

・一定の売り上げが見込める
・事業計画を立てやすい


それぞれ詳しく紹介します。

開業費用を抑えられる

スタッフを引き継げる

クリニックで働いているスタッフを引き継げるため、採用費を抑えられる・育成の手間が小さい・スムーズな仕事が期待できるなどのメリットがあります。

一定の売り上げが見込める

事業承継では患者さんを引き継げるため、事業承継が済んだ直後から一定の売上が見込める点も大きなメリットです。
すでに患者さんと信頼関係ができている・地域に受け入れられた状態でスタートできるなどのメリットもあります。

事業計画を立てやすい

その地でクリニックを運営してきた実績に基づき、具体的な事業計画を立てられます。

クリニックの事業承継によるデメリット​

クリニックの事業承継はメリットだけではなく、下記のようなデメリットもあります。

前院長のスタイルと合わない恐れがある
細かな出費がかかる

理想に合う案件が見つかるとは限らない

それぞれ詳しく解説します。

前院長のスタイルと合わない恐れがある

前院長の考え方や方針と合わないケースは少なくありません。

事業承継によって院長が変わったとはいえ、これまでのクリニックと方針を大きく変えてしまうと、引き継いだスタッフや患者さんからの印象が悪くなる恐れがあります。

細かな出費がかかる

必要に応じてリニューアルや医療機器の追加導入などが必要です。
また、事業承継ではのれん代もかかるため、
事業承継によるクリニック開業は低コストとイメージすると想定以上の出費になる恐れがあります。

のれんとは

事業承継における買取価格と事業の時価純資産価額との差額。
事業のブランド力など付加価値の大きさを示します。

理想に合う案件が見つかるとは限らない

親族間以外での事業承継(第三者承継)の場合、承継先となるクリニックを探す必要があります。
しかし、エリアや診療科目によっては譲渡希望案件として出ているクリニックの数が少なく、理想に合う案件が見つからないケースもあるでしょう。

クリニックの事業承継の流れ​

クリニックの事業承継は、大きく以下の流れで進みます。

・クリニックの希望を洗い出す
・承継先の候補を探す
・希望する承継先の見学・院長との面談など
・承継先の決定・基本合意書の締結
・買収監査~承継実行


それぞれの工程について詳しく解説します。

※クリニックの事業承継は、親族を後継者として承継する親族承継と、M&Aによる第三者承継に分けられます。今回紹介するのは第三者承継の流れです。

クリニックの希望を洗い出す

はじめに開業場所・診療科目・対応する範囲など、クリニックに関して希望する要素を考えます。洗い出した要素をもとに承継先候補を探すため、大切な工程です。

希望通りの案件が見つかるとは限らないため、ある程度の柔軟性が必要です。
ただし、妥協しすぎると理想と大きく違うクリニック運営になってしまうためバランスをとる必要があります。

理想との乖離を小さくしつつ必要に応じて柔軟に対応できるよう、クリニックのコンセプトや経営理念を軸とするのがおすすめです。

承継先の候補を探す

続いては承継先の候補を探します。
ただし、いきなり承継先候補となるクリニックを探すわけではありません。まずはM&Aのサポートを依頼する業者を探します。
事業承継では専門的かつ複雑な手続きが多いため、M&Aを専門とする仲介業者や専門家のサポートを受けるのが一般的です。

仲介業者等との契約が完了したら、承継先の候補となるクリニックを探します。
クリニックに対する希望をもとに、サポート業者から紹介を受けられるケースもあります。

希望する承継先の内見・院長との面談など

承継先候補となるクリニックが見つかったら、承継元とやり取りをした上でクリニックの内見や面談を行います。認識のすり合わせやスムーズな事業承継のために大切な工程です。
面談で確認するべき内容として、最低限以下の3つが挙げられます。

・クリニックのコンセプト・方針
・内装設備や医療機器の老朽化具合
・利益に関係する部分(現状の収支、借入金の有無、競合の状況、人口の推移など)


確認したい事項や気になる点は、内見・面談の段階でなるべくクリアにしておきましょう。

承継先の決定・基本合意書の締結

承継先が決まったら、承継元との間で条件を調整し、基本合意書を締結します。
調整するべき条件として、以下の例が挙げられます。

譲渡対価
老朽化具合や現状の収支など、不利な条件があれば減額を相談するのが良いでしょう。

承継時期
承継時期によって事業承継の進め方やスムーズに進むか否かが変わるケースがあります。

契約関連
クリニックが現時点で取引先やスタッフなどと締結している契約の内容や、契約を引き継ぐか否かなどを決定します

ほかにも確認するべき事項は多くあるため、仲介業者のサポートを受けながら漏れなく確認しましょう。

買収監査~承継実行

基本合意書はあくまでも合意内容を証明する書類であり、法的な拘束力は持ちません。
事業承継実現のためには、以下の手続きが必要となります。

買収監査

財務書類の数字が適正であるか・承継元クリニックにリスクがないかなどをチェックする工程です。クリニックが小規模である場合は省略することもあります。

最終譲渡契約書の締結

承継条件の最終的な調整を行い、両者合意後に契約を締結します。

承継実行(対価支払い)

最終譲渡契約書の内容に沿って承継を進め、対価の支払いによって承継が完了となります。

各種行政手続き

承継元との手続きが完了しても、すぐに開業できるわけではありません。
クリニックを管轄する保健所への診療所開設届提出および検査、保険診療医療機関の指定申請など、各種手続きが必要です。

クリニックの事業承継は専門家にご相談ください!​

クリニックの事業承継には、複雑かつ高度な知識が必要です。業界や業種によっても注意するべき点やポイントが異なります。
事業承継をスムーズに進めるためには、具体的な行動を始める前に専門家に相談するのが安心です。
クリニックの事業承継であれば、クリニックや医療業界における経験・強みを持つ専門家のサポートを受けましょう。

まとめ​

クリニックの事業承継には、新規開業よりも費用や労力を削減できるといったメリットがあります。しかしメリットだけではなく、前院長とのスタイルが合わない恐れ・希望する案件が見つからない恐れなど、デメリットの把握も必要です。事業承継のメリット・デメリット両方を押さえたうえで、実行を進める必要があります。

クリニックの事業承継には多くの工程がある上、専門知識が求められる場面も多くあります。
事業承継の成功およびスムーズな進行のために、ぜひ専門家にご相談ください。


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吉岡 伸晃
吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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