在宅医療の開業で失敗しないためのポイントをご紹介!

2023.01.17

在宅医療とは、事情によって通院できない患者さんに対して医師やスタッフが患者さんの自宅へ訪問して医療行為を行うことです。

在宅医療の開業は、外来クリニックの開業とは異なる注意点が存在します。
本記事では、在宅医療の開業で失敗しないために押さえたいポイントを紹介します。

CONTENTS

在宅医療を見る前に クリニック開業のおおまかな流れ

在宅医療は外来とは異なる注意点が存在するとはいえ、クリニック開業の大まかな流れは同じです。そこで、はじめにクリニック開業の流れについて解説します。

クリニック開業で必要となる主な作業は以下のとおりです。

コンセプトの明確化

クリニック開業に際してはじめに行うべき作業といえます。
「クリニックを開業する理由」「クリニックの理想像」などの明確化が必要です。

開業地の選定や調査

開業予定地の大まかな候補を決め、診療圏調査や将来性の予測・分析などを行います。

物件探し、契約

クリニック開業の方法として、物件探しをふくめゼロからすべて準備する新規開業と、すでに運営されているクリニックを引き継ぐ事業承継の2種類があります。
開業の方法によって物件探しの進め方も異なるため、どちらの方法で開業するかの検討も必要です。

個人クリニックの事業承継については、以下の記事で詳しく解説しています。



事業計画の策定

事業計画書の作成もクリニック開業で欠かせない作業です。
事業計画の策定が必要な理由や具体的な進め方について以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。



資金調達

資金調達の方法の決定や、金融機関への融資申し込みを行います。

設計、内装工事

診療科目や対応範囲に合わせて設計を立てます。
業者の選定や業者との打ち合わせなども必要です。

医療機器の導入

医療機器の導入方法として、購入とリースの2種類が挙げられます。
以下の記事で、それぞれのメリット・デメリットを紹介しています。



什器備品や薬品等の用意

待合スペースのソファや診療室のデスク・椅子をはじめとした什器備品、薬品、消耗品の用意も必要です。

広告宣伝業務

ホームページやチラシの作成などを行います。

人事労務、求人関連

具体的な作業内容として、採用・研修・社会保険関連手続きなどが挙げられます。

各種行政手続き

税務署への開業届、保険医療機関指定申請、公費申請など、各種行政手続きの実施も必要です。

在宅医療の開業で押さえたいポイント

在宅医療と外来は医療行為の進め方が大きく異なります。
そこで今回は、在宅医療の開業で押さえたいポイントについて解説します。

在宅医療への取り組み方を明確にする

まずは在宅医療への取り組み方の明確化が必要です。
具体的には、医療行為として在宅医療のみを行うのか、在宅医療と外来の両方を行うのかを決める必要があります。

保険医療機関の指定にあたっては、原則として外来に対応できる体制の整備が必要です。
在宅医療のみを実施する医療機関が保険医療機関の指定を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・無床診療所である
・在宅医療の提供地域を規定、対象の範囲を被保険者に周知する
・対象地域の患者から往診または訪問診療を求められた際、正当な理由なく断ることがない
・対象地域内に協力医療機関を2ヶ所以上確保する
・対象地域内で在宅医療を提供していること・在宅医療導入に係る相談に随時応じることを広く周知する(当該医療機関の連絡先も周知する)
・診療所の名称や診療科目を公道などから容易に確認できる状態にしたうえで、診療所で十分な相談ができるよう設備や人員などの体制を整える
・通常の診療時間以外も連絡に対応できる体制を整える


在宅医療のみか外来も実施するかによって条件が変わります。
最初に在宅医療への取り組み方を明確にしないとその後の開業準備を進めにくくなるため、最初に在宅医療への取り組み方を明確化する必要があります。

在宅医療専門の診療所が持つ課題やハードルを知る

診療所の運営を継続するためには、在宅医療ならではの課題やハードルを知ることも大切です。

在宅医療を専門とする診療所には、以下のような課題があります。

 

訪問時間の確保が難しい

自宅に訪問し医療行為を行うため、患者や家族との時間調整が必要です。準備や移動にかかる時間も考慮しつつ訪問時間をしっかり調整・確保するのは容易ではありません。

 

24時間体制が求められる

在宅医療を専門とする医療機関が保険医療機関の指定を受けるためには、通常の診療時間以外も連絡に対応できる体制の整備が必要です。
そのため実質的には24時間体制が求められるといえます。

 

資金や人材など大きなリソースが必要

在宅医療を専門とする機関ならではの要件を満たすためには、必然的に資金や人材などの大きなリソースが必要になります。

 

外来型のクリニック以上に強い連携体制が求められる

患者さんや家族とのコミュニケーションだけでなく、他の医療機関や各種施設との強い連携体制も必要です。

在宅医療ならではの課題を認識しておかないと、開業後に思わぬ原因で経営が傾く恐れがあります。

在宅医療に取り組む理由や理念を明確にする

在宅医療ならではの課題やハードルがあるからこそ、在宅医療に取り組む理由や理念の明確化が大切です。

在宅医療を通じてできることとして、以下3つを明確にしていくと自然と理念が明確化しやすくなるでしょう。

自身が患者さんや家族にできること

・自身が医師として得られること
・地域に貢献できること

明確なコンセプトや強い理念がなければ、在宅医療を続ける理由がわからなくなったり、運営を諦めてしまう恐れが大きくなります。

「なぜクリニックを開業するのでは」ではなく、「なぜ在宅医療を専門とするクリニックを開業するのか」を決めることが大切です。

丁寧な発信や他院との差別化に努める

自身のクリニックを選んでもらうためには、クリニックを知ってもらう必要があります。
丁寧な発信や、自身のクリニックならではの特徴アピールによる他院との差別化が大切です。

そもそも、どのようなクリニックかわからない、他院と比べて魅力的なポイントがない状態では、患者さんにとって選ぶ理由がありません。
「なぜそのクリニックを選ぶのか」という理由を明確にできるよう、情報発信および差別化をする必要があります。

また、在宅医療は外来専門のクリニックよりも地域との強い連携体制が求められます。
そのため患者向けだけでなく、医療従事者や関係者への情報発信も大切です。

【参考】在宅医療の開業に要する資金

在宅医療を専門とする診療所の場合、開業資金は1,500万円~2,000万円程度です。
医療機器や内装工事の必要性が小さい分、外来を行うクリニックに比べて開業資金を抑えられます。

在宅医療専門の診療所は開業資金が少ないため、融資額も少なく済むケースが多いです。

ただし前述したように、在宅医療ならではの課題も複数存在します。開業資金の小ささだけで在宅医療の開業を決めるのは危険です。
在宅医療ならではの課題やハードルもしっかり押さえたうえで開業の検討しましょう。

外来診療を行うクリニックの開業資金については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

高齢化の進行により、在宅医療の需要は今後さらに高まることが予想されます。
在宅医療専門であれば開業資金が抑えやすい点は、開業にあたっての大きなメリットといえるでしょう。

 

しかし、在宅医療を専門とするクリニックは複数の要件を満たす必要があるうえに、在宅医療ならではの課題やハードルも存在します。
需要の高さや開業資金の安さだけで在宅医療の開業を決めてしまうと、経営悪化につながるさまざまなトラブルのリスクが高くなります。

在宅医療の特徴をしっかり押さえたうえで、開業の検討や準備を進めていきましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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