固定資産税とは、土地・建物・償却資産などの資産に対して課せられる税金です。
償却資産税とは、固定資産税の一種であり償却資産にかかる税金です。
クリニックや医療法人で所有する医療機器も、一定額を超えるものは償却資産税の対象です。
医療機器は高額なものが多いため、固定資産税・償却資産税の負担が大きくなってしまうケースも珍しくありません。
しかし、ポイントを押さえることで固定資産税を減らすことは可能です。
今回は医療機器にかかる固定資産税について解説すると共に、固定資産税の節税方法も紹介します。
クリニックや医療法人における節税対策については以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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CONTENTS
医療機器にかかる固定資産税(償却資産税)とは
医療機器にかかる税金である固定資産税(償却資産税)について詳しく解説します。
固定資産税(償却資産税)とは
固定資産税とは、土地・建物のような不動産や償却資産などの固定資産に課せられる税金です。
固定資産税の額は、固定資産の価格を基に決定されます。
償却資産税とは、土地と建物以外の事業用資産である償却資産にかかる税金です。
固定資産税の対象となる資産のうち、償却資産にかかる税金を限定して償却資産税と呼ぶイメージです。
償却資産税で重要なのが、事業用資産にかかるという点です。
土地や家屋といった不動産の場合、事業目的でなくても税金が発生します。
事業を行なっていないサラリーマンであっても、自身名義の不動産を保有している場合は固定資産税の納税義務が生じます。
一方でプライベートの目的で保有する土地や家屋以外の高額な固定資産は、固定資産税の対象ではありません。
償却資産税は事業者のみに関係する税金であるといえます。
クリニックや医療法人で保有する医療機器は事業目的で用いる償却資産に該当します。
したがって一定の条件を満たす場合、医療機器は償却資産税の対象となります。
固定資産税の対象になる資産とは
固定資産税の対象になる資産は、大まかに土地・建物・償却資産の3種類に分けられます。
今回のテーマである医療機器は償却資産に該当するため、この項では固定資産税の対象になる資産のうち、償却資産に絞って解説します。
前提として、事業目的で保有する固定資産すべてが償却資産税の対象になるわけではありません。
事業用資産のうち、減価償却費が損金および必要経費となる資産が償却資産に該当します。
また、以下の資産は償却資産税の対象になりません。
- ・自動車税、軽自動車税の対象となる資産
- ・無形固定資産
- ・耐用年数1年未満、または取得価額10万円未満のもの
※固定資産ではなく消耗品に該当し減価償却の必要性がないため、償却資産にも該当しません。 - ・一括償却資産として処理したもの
- ※一括償却資産については後述します
- ・繰延資産
- ・棚卸資産
以上を踏まえた上で、償却資産税の対象となる固定資産の例を紹介します。
- ・門や塀などの構造物
- ・パソコン
- ・複合機
- ・冷暖房設備
- ・デスクやチェア
- ・応接セット
- ・キャビネット
- ・ロッカー
- ・看板
クリニックや医療法人ならではの償却資産の例も紹介します。
- ・各種医療機器
- ・検査機器
- ・待合室用のソファ
- ・ベッド
- ・モニター
固定資産の会計処理
固定資産に該当するか否かは、取得価額が10万円以上かどうかで判断します。
金額が10万円未満の場合は固定資産に該当しません。購入時に全額を消耗品費として費用計上します。
原則として1個あたりの金額が10万円以上かで判断しますが、組み合わせて使うのが前提の場合、セットあたりの金額で判断が必要です。
例としてテーブルとソファを一緒に使うのが前提となる応接セットが挙げられます。
取得費用が10万円以上の場合は原則として固定資産として計上します。
ただし青色申告の中小企業者等の場合、一括償却資産・少額減価償却資産という償却方法の選択ができるケースもあります。
一括償却資産
10万円以上20万円未満の場合に選べる方法です。
耐用年数を問わずすべて3年で償却します。
一括償却資産として扱う固定資産は償却資産税の対象外となります。
少額減価償却資産
10万円以上30万円未満の場合に選べる方法です。
購入した年に全額の減価償却を行います。
なお年間300万円までという上限があります。また、少額減価償却資産は償却資産税の課税対象です。
取得費用が30万円以上の場合は、通常の固定資産として扱う必要があります。
医療機器にかかる固定資産税を節税する方法とは
固定資産税を節税する方法を3つ紹介します。
一括償却資産として処理する
取得費用が10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産として処理する方法が固定資産税の節税に効果的です。
通常の固定資産や少額減価償却資産として処理した資産は、償却資産税の課税対象になります。
一方で前述したように、一括償却資産は償却資産税の対象になりません。
そのため一括償却資産として処理することで、その分発生する償却資産税を抑えることが可能です。
単純に固定資産税額を抑えたいと考えるならば、可能な限り一括償却資産として処理するのが効果的でしょう。
ただし10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産だけでなく少額減価償却資産としての処理も可能です。
少額減価償却資産として処理する場合、取得価額を購入した年に全額減価償却費として計上します。
経費計上できる額が大きいため、少額減価償却資産として処理する方が法人税等の節税にはつながるのです。
このように、法人税と固定資産税、どちらを節税したいかによって適した処理方法が異なります。
自身に合った処理方法を行うためには、専門家である税理士に相談するのが確実です。
資産の購入を1月2日以降にする
購入を考えている固定資産が急ぎで必要なものではない場合、資産の購入を1月2日以降にするのもおすすめです。
固定資産税の対象となるのは、その年の1月1日に所有していた資産です。
すなわち1月2日以降に購入した資産の場合、課税されるのは翌年からとなります。
12月末頃に資産の購入をするよりも、少し先延ばしにして1月2日以降に購入した方が、その年の固定資産税を小さくできるのです。
購入のタイミングを1月2日以降に延ばす方法は、いわば課税のタイミングを遅らせるイメージです。
償却資産を購入する以上、いずれ固定資産税が課せられるのは避けられません。
その年の税額を小さくしたい・課税を先送りにしたい場合に適した方法です。
不要な資産を処分・固定資産台帳から外す
不要な資産を処分・固定資産台帳から外すことも、固定資産税を抑えるために大切です。
課税対象になるのは固定資産台帳に掲載されている資産です。
現在は保有していない資産であっても、固定資産台帳に記載したままになっている場合、その資産も償却資産として申告してしまうリスクが高くなります。
また、保有はしているものの使っていない固定資産についても、実態としては不要な資産であるにもかかわらず保有している以上は償却資産と扱われてしまいます。
使っていない・すでに処分した医療機器が固定資産台帳に掲載されたままで、結果として固定資産税まで払っているケースは珍しくありません。
処分した医療機器はすぐに固定資産台帳から削除しましょう。
まとめ
固定資産税は法人税や消費税ほど大きなインパクトはないため、あまり気にしていないという人もいるかもしれません。
しかし、固定資産の処理方法や購入時期によっては発生する固定資産税の額が大きく変わる可能性があります。
また、すでに処分した医療機器や使っていない資産についても、固定資産台帳に掲載されているために申告をし続けているケースも多いです。
結果として必要以上の固定資産税を支払う事態になってしまいます。
固定資産税を最小限に抑えるためには、固定資産税について正しく理解した上で、適切な対応をとることが大切です。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士