医療法人の設立そのものは、法務局での登記申請が受理された段階で完了です。
しかし、診療所を開設し医療行為を行うためには、医療法人設立後もさまざまな手続きが必要です。
必要な手続きに不備や漏れがあると医療法人としての活動が進まず、トラブルになってしまう恐れもあります。
そのため、設立までは勿論設立後の手続きについてもしっかり押さえることが大切です。
今回は医療法人の設立後に必要な手続きについて詳しく解説します。
クリニックを医療法人化するための手続きについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
医療法人の設立後に必要な手続き
医療法人の設立後に必要な手続きについて、届出先や手続きの種類ごとに解説します。
保健所への届出
診療などの医療行為は、保健所の許可を得なければ行うことができません。
診療所での診療を行うため、保健所への届出は必要不可欠となります。
すべての医療法人でほぼ確実に必要な届出として下記の4つが挙げられます。
診療所の開設許可申請
医療法人としての診療所(医療機関)を開設するための許可申請です。
個人で運営していたクリニックをそのまま利用できるわけではなく、医療法人としての診療所開設が必要となります。
以下のようにさまざまな添付書類が必要であるため、早めの準備がおすすめです。
- ・医療法人の定款写し
- ・法人の登記事項証明書
- ・診療所を開設する土地および建物の登記事項証明書
- ・敷地や建物の平面図
- ・敷地周辺の見取り図
診療所使用許可申請
有床の診療所を開設する場合に必要な許可申請です。
診療所使用許可を受けなければ患者様を入院させることができないためご注意ください。
無床の診療所の場合は必要ありません。
法人診療所開設届
診療所の開設から10日以内に提出が必要な書類です。
以下の添付資料もあわせて提出する必要があります。
- ・管理者の臨床研修等修了登録証の写し、免許証の写し
- ・管理者の職歴書
保健所によっては、医師の登録証の写しや免許証の写しも必要です。
個人診療所廃止届
医療法人の診療所開設にともない個人クリニックは閉鎖となります。
そのため、法人診療所の開設許可申請を受けた後は個人診療所廃止届の提出が必要です。
厚生労働省地方厚生局への届出
厚生労働省地方厚生局へ必要な届出として以下の2つが挙げられます。
法人の保険医療機関指定申請書
開設する診療所で公的医療保険の適用を受ける診療を行うために必要な届出です。
この申請書を提出しなければ保険医療機関の指定を受けられず、保険診療報酬の請求もできません。
前述した保健所への開設届を提出後、すみやかに提出する必要があります。
提出期限(締切日)は自治体によって異なるため、自治体の案内をご確認ください。
個人の保険医療機関指定廃止届
個人クリニックで保険医療機関の指定を受けていた場合、個人の保険医療機関指定廃止届の提出も必要です。
法人の保険医療機関指定申請書とあわせて提出すると効率的です。
税務署への届出
医療法人に限らず、法人を設立した場合は税務署への届出が必要です。
書類によって期日が異なりますが、事務作業の手間を最小限に抑えるため、もっとも期日が早い書類にあわせて全て一緒に提出するのがおすすめです。
法人設立届出書
法人を設立した際に必ず提出が必要な書類のひとつです。
本店所在地や事業目的など各種項目について、定款・登記簿謄本と同じように記載する必要があります。
提出期限は法人設立から2ヶ月以内です。
給与支払事務所等の開設届出書
給与支払いを行う事務所を開設した場合に必要な書類です。
提出期限は法人設立から1ヶ月以内と、税務署への届出の中ではもっとも早く設定されています。
青色申告承認申請書
青色申告を行うために必要な書類であり、青色申告を行わない場合は不要です。
しかし、青色申告には各種控除制度や赤字の繰越制度などさまざまなメリットがあるため、節税のため青色申告にすることをおすすめします。
設立1期目から青色申告にするためには、法人設立から3ヶ月以内に青色申告承認申請書の提出が必要です。
棚卸資産の評価方法の届出書
棚卸資産の評価方法を設定するために必要な書類です。
棚卸資産は複数の評価方法があり、それぞれ異なるメリット・デメリットを有します。
そのため、目的に合わせた評価方法の選択が大切です。
棚卸資産の評価方法の届出書の届出書を提出しない場合、自動的に最終仕入原価法が適用されます。
設立第1期から適用を受けたい場合、設立第1期の確定申告期限までに提出が必要です。
減価償却資産の償却方法の届出書
法定償却方法以外で減価償却を行う場合に必要な書類です。
減価償却資産の償却方法の届出書を提出しない場合、自動的に法定償却方法が適用されます。
「棚卸資産の評価方法の届出書」と同様に、設立第1期から適用を受けたい場合は設立第1期の確定申告期限までに提出する必要があります。
自治体への届出
都道府県税事務所および市町村役場へ、法人設立届出書の提出が必要です。
税務署へも法人設立届出書を提出していますが、税務署は国税・地方自治体は地方税に関する届出と、異なる性質を有します。
提出期日やフォーマットは自治体によって異なるため、自治体の案内をご確認ください。
各種名義変更
個人クリニックとして使っていた診療所を医療法人の診療所とする場合、電気・ガス・水道などの名義変更が必要です。
医療法人の開設後、なるべく速やかに実施しましょう。
ほかにも法人口座の開設や法人用クレジットカードの発行など、必要な手続きは多岐にわたります。
やるべきことをリスト化し整理すると、不備や漏れのリスクを抑えることができ安心です。
医療法人設立後の手続きに関する注意点
医療法人設立後の手続きについて注意するべきポイントを2点紹介します。
診療の内容などによって必要な手続きが異なる
前章で紹介した医療法人設立後に必要な手続きは、いずれも医療法人全般に共通する内容です。
追加で発生する可能性のある手続きとして、以下の具体例が挙げられます。
- ・生活保護法指定医療機関指定申請書
- 生活保護法に基づく医療を行う場合に必要です。
- ・労災保険指定医療機関指定申請書
- 労災指定病院になるために必要な書類です。都道府県労働局へ提出します。
- ・診療用エックス線装置備付届
- エックス線装置を利用する場合、装置の設置から10日以内に提出が必要です。
対象の場合は、これらの手続きも忘れないようにしましょう。
不備や漏れに注意
医療法人の設立後に必要な手続きは多く、内容によって手続きを行う場所や期日が異なります。
税務署のように、届出先は同じでも書類によって期日が異なるケースもあります。
医療法人の設立自体は登記が終われば完了ですが、診療所の開設や医療行為実施のためには医療法人設立後の各種手続きも必要不可欠です。
必要な手続きについてしっかり管理しなければ不備や漏れが出てしまい、診療所の開設や運営に遅れが生じる恐れがあります。
必要な手続きを一覧にし、期日や提出先を明確にした上で、優先度の高いものから着手することをおすすめします。
内部の人間だけですべて対応しようとせず、医療法人の設立サポートに強みを持つ専門家に相談するのも効果的です。
まとめ
医療法人の設立が完了しても、すぐに医療行為ができるわけではありません。
診療所の開設許可申請をはじめ、さまざまな手続きが必要です。
ほかの法人と同じように、税務署および自治体への法人設立届出書の提出も行う必要があります。
今回は医療法人全般に共通して必要な手続きを中心に紹介しました。
前章で触れたように、実施する医療行為の内容によっては追加で必要な手続きもあります。
必要な手続きが膨大であるため、不備や漏れのないよう手続き内容の整理や明確化を行うのが安心です。
スムーズかつ確実な手続きのため、医療法人の設立サポートに強みを持つ専門家に相談するのもおすすめです。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士