医療法人は株式会社等の一般的な法人と違い、構成のために複数の運営機関および構成員が必要です。
構成員の種類によって法的なルールや役割が異なります。
医療法人の設立を検討している方は、医療法人の構成員について正しい理解が必要です。
今回は医療法人に必要な構成員について、役割別に詳しく解説します。
医療法人の概要については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
CONTENTS
医療法人の構成員について見る前に|運営機関の紹介
構成員について見る前に、まずは医療法人を構成する運営機関について解説します。
大前提として、医療法人には社団医療法人と財団医療法人の2種類があります。
簡単に言うと、社団法人は複数の人の集まりが基盤になった法人であり、財団法人は寄付などによるお金の集まりが基盤となった法人です。
財団法人には出資の概念がなく、設立資金も寄付でまかないます。
社団医療法人と財団医療法人には細かな違いが複数ありますが、そのひとつが法人に必要となる運営機関の種類です。
そのため、今回は運営機関ごとの詳しい解説をするとともに、各運営機関を必要とする法人種別についても解説します。
理事会
理事会は理事によって構成される機関です。
社団医療法人・財団医療法人の両方に必要な機関であり、それぞれ以下のような役割を有します。
- 社団医療法人の理事会
- 後述する社員総会で決議された意思決定を円滑に進めるための機関です。
- 職務執行機関とも表現できます。
- 財団医療法人の理事会
- 財団医療法人では理事会が実質的な意思決定機関であり、同時に職務執行機関の性質も有します。
医療法人における社員とは、株式会社でいう株主に相当する構成員です。
一方で理事は株式会社でいう取締役であり、医療法人の常務を担当します。
社員と理事は異なる性質・役割であり、医療法人において必ずしも社員=理事である必要はありません。
したがって、社団医療法人の理事会を構成する理事が社員でないケースもあります。
なお、実際には社員と理事を兼任している医療法人が多い傾向です。
社員総会
前項でも少し触れましたが、社団医療法人の意思決定機関です。
社団医療法人では運営関連をはじめ、重要な事項については社員総会での議決を要します。
議事を開くには原則として総社員の過半数の出席が必要であり、出席者の過半数によって決します。
社団医療法人における社員総会は、年1回以上の開催が必須である定時社員総会と、必要に応じて開催する臨時社員総会の2種類が存在します。
評議員会
財団医療法人の意思決定機関です。
財団医療法人の事業計画や決算については、定期評議員会による審議・決定を必要とします。
なお、理事会の項で紹介したように、財団医療法人の実質的な意思決定機関の役割は理事会が担うといえます。
業務執行や理事の職務執行に関する決定など、実務に近い面の意思決定を理事会が行うためです。
ただし、事業計画の決定・変更や重要な資産の処分等については、評議員会の意見を聞く必要があります。
運営の根幹を左右する重要な要素については評議員会による意思決定が必要というイメージです。
社員総会と同様、毎年1回は定期評議員会の開催が必要です。
医療法人の構成員
医療法人の構成員について具体的に解説します。
役員
医療法人の役員は以下の3種類です。
- ・理事長
- ・理事
- ・監事
役員は社団医療法人・財団医療法人どちらの種類にも共通して必要となります。
任期は最長2年ですが、再任(重任)によって2年を超える任期となることは認められています。
医療法人の役員について、それぞれ詳しく解説します。
理事長
理事長は医療法人の代表者です。
後述する理事のうち、医師または歯科医師である者の中から選出する必要があります。
理事長は医療法人を代表する役割ではありますが、独断での自由な意思決定ができるわけではありません。
前述のように、意思決定機関はあくまでも社員総会です。
そのため、理事長は社員総会の決議に従う必要があります。
理事
理事は株式会社でいう取締役であり、医療法人の常務を担当する役割です。
トラブルによって理事長が職務を遂行できない場合は、ほかの理事が理事長の職務を行います。
社団医療法人・財団医療法人どちらにおいても、理事長を含めて3人以上の理事を設置する必要があります。
前章で紹介したように、社員=理事とは限りません。
理事長以外の者については、医師または歯科医師でなくても理事としての就任が可能です。
なお、病院・診療所・その他施設の管理者は原則として医療法人の理事に就任する必要があります。
監事
監事は医療法人の業務や財産状況などの監査を行います。
社団医療法人・財団医療法人ともに1人以上の監事の設置が必要です。
監事は医療法人の監査を行う役割であるため、以下のような人の就任は禁止、もしくは不適格とされています。
- ・理事や職員など内部関係者
- ・理事の親族
- ・出資者
- ・取引関係や顧問関係にある個人および法人代表者
監事の要件や求められる資格・経験は都道府県によって異なるため、事前にご確認ください。
社員
社員は社団医療法人における構成員で、株式会社でいう株主のような役割です。
出資金の有無や額に関係なく、社員1人につき1議決権を有します。
医療法人における議事・議決の性質上、社員総会を構成するためには2人以上の社員が必要です。
ただし、モデルとして提示されている定款によると、3人以上の社員を置くことを理想としていることがわかります。
実際、多くの都道府県で社員の必要数を3人以上と定められています。
社員の設置数が少ない場合、指摘や指導を受ける恐れがあります。
医療法人に最低限必要な社員の数は都道府県によって異なるため、必ず都道府県の案内をご確認ください。
評議員
評議員は財団医療法人における評議員会の構成員です。
評議会の人数は理事の定数を超える必要があります。
一般的に理事の最低人数は3人ですが、この場合評議員の必要人数は4人以上となります。
評議員として就任できるのは、以下のいずれかに該当する自然人のみです。
- ・医師、歯科医師、薬剤師などの医療従事者
- ・病院や診療所など医療機関の経営に関する知見を有する人
- ・当該医療法人で医療行為を受ける患者
- ・その他評議員の就任が必要と認められる人
評議員の選任は、寄附行為(財団法人におけるルールをまとめた規則)の内容に基づいて実施されます。
理事と違い法的な任期の定めはありませんが、実際には寄附行為によって任期が定められているケースが多いです。
なお、当該医療法人の役員および職員との兼任はできません。
職員
病院や診療所などで勤務する人(従業員)です。
医療法人の運営や意思決定といった根幹となる部分には携わりません。
医療法人において、社員と職員はまったく異なる性質を有します。
それぞれの役割を混同しないようご注意ください。
まとめ
医療法人において最低限必要な構成員の種類および数は以下の通りです。
- ・理事:3人 うち理事長1人
- ・監事:1人
- ・社員:3人(社団医療法人のみ)
- ・評議員:理事の定数より多い数(財団医療法人のみ)
上記のほか、病院や診療所の従業員である職員も必要となります。
医療法人の構成員には複数の種類があり、それぞれルールが定められています。
また、都道府県によって最低人数や決まりが異なるケースもあるため、事前の確認が必要不可欠です。
医療法人を設立するためには、構成員に関する内容をはじめ、さまざまなルールを網羅する必要があります。
法的な知識が求められる場面も多く、専門知識のない人が完璧にこなすのは容易ではありません。
ルールに沿った適切な設立・運営を実現するためには、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士