医療法人の決算日はいつがいい?考え方と注意点について解説!

2023.10.31

確定申告の時期が定められている個人事業主と違い、法人は決算日を自由に決められます。

医療法人も同様に好きなタイミングを決算日にすることが可能です。

 

法人税および消費税の申告・納付期日は、決算日の翌日から2ヶ月後となります。

つまり、決算のタイミングによっては業務が忙しい時期と決算作業が重なる恐れがあります。

決算日は適当に決めるのではなく、季節変動等の要因を考慮した上での検討が必要です。

医療法人の設立時にはさまざまな事項を決める必要がありますが、決算日も入念な検討が必要な事項の1つといえるでしょう。

 

今回は医療法人の決算日について、考え方や注意点を解説します。

 

以下の記事ではクリニックを医療法人化するために必要な手続きを紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

医療法人の決算日について見る前に

医療法人ならではの内容について見る前に、まずは決算日に関する基本情報を紹介します。

そもそも|決算日とは

法人における決算日とは、法人の事業年度の最終日です。

決算日の翌日から2ヶ月後が、法人税・消費税の申告および納付期日となります。

医療法人は一般的な会社とは異なる性質を持つ法人ですが、決算日の考え方や扱いに変わりはありません。

 

個人事業主と法人の大きな違いの1つが、決算日を自由に決められるか否かです。

個人事業主の事業年度は1月から12月と定められており、決算日は12月31日となります。

また、確定申告の時期は翌年2/16~3/15と決められています。

個人事業主の決算日や確定申告の時期は業界・業種に関係なく定められているため、当然個人クリニックにも適用されるルールです。

 

一方、法人は決算日を自由に決められます。

そのため後述のように、繁忙期を避ける・大きな支払いが重なる時期は避けるといった対応が可能です。

 

なお、法人の事業年度は1年以内であれば自由に設定可能であり、決算日を月の途中にすることも問題ありません。

しかし実際のところ、決算日は月末にするのが一般的です。

日本の法人は3月決算が多い

国税庁が公表している法人数に関するデータによると、日本は3月決算の法人が圧倒的多数です。

3月決算の法人が515,359社、次いで9月決算が308,972社、12月決算が297,963社となります。

3月決算の法人が多い理由として、以下の要因が考えられます。

  • ・国や地方自治体の会計年度が4月から翌年3月のため
  •  (公的機関に合わせる方が好都合な場面が多いため)
  • ・他の法人と事業年度を合わせることで安心感を得られるため
  • ・改正された法律の施行日は4月1日のケースが多いため

 

ただし、他の月と比較すると3月決算が突出しているというだけで、他の月を決算月とする法人も決して少なくありません。

決算日を自由に決定できるメリットを活かすためには、さまざまな要素を考慮し、決算日として適切なタイミングを判断することが大切です。

医療法人の決算日はいつが良い?決算日を考える基準とは

法人は決算日を自由に決められるといわれても、そもそもどのように決めるべきか悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。

この章では医療法人の決算日を考える基準を2つ紹介します。

季節変動に合わせる

決算日を決める上で考慮するべき要素の1つが季節変動です。

売上が最も大きい時期や業務量が多い時期、すなわち繁忙期は避けることをおすすめします。

 

決算日を決める際に繫忙期を避けるべき理由として、以下の2点が挙げられます。

  • ・事前に予測した利益が大幅に変わる可能性が高いため
  •  →業績予測が立てにくいため、節税対策が難しくなります。
  •  
  • ・業務が忙しい中で決算作業も行うのは負担になる
  •  →申告・納付の期日が明確な以上、たとえ業務が忙しくても決算作業が必要です。

一概にはいえませんが、大きな売上が見込める月の前月や前々月、または業務量の少ない閑散期に合わせて決算日を設定するのがおすすめです。

決算日を大きな売上が出る時期の少し前にすれば、事業年度の最初のうちに大きな売上が発生することになります、

節税対策に割ける時間が多くなるため、税負担を最小限に抑えられる可能性が高いです。

 

また、閑散期は本業でやるべきことが少ない時期といえます。

この時期に決算作業があたるように決算日を設定すれば、本業への影響を抑えられる上に業務の平準化にもつながるため効果的です。

支払いが重なる時期は避ける

決算に伴う支出の負担を考慮すると、決算日とその他の支払いが重なる時期は避けるのが無難です。

この理由で避けるべきタイミングとして5月が挙げられます。

 

すでに紹介したように、法人税と消費税の納期は決算日の翌日から2ヶ月後です。

そのため、決算日が5月末の場合、法人税と消費税の納期は7月末になります。

そして、7月は労働保険料・夏季賞与・源泉所得税(納期特例の適用対象である場合)の支払いも発生し、支出が多い時期です。

ここに税金の支払いも加わると支払いが多額になってしまい、負担が大きくなり資金繰りが悪化する恐れがあります。

したがって特別な理由がある場合を除き、あえて5月を決算日にするのはおすすめできません。

 

ほかにも毎年特定の時期に多額の支出が発生すると事前にわかっている場合、その時期に税金の支払いが重なるのを避けるのも1つの手段です。

医療法人で決算日を決める際の注意点

最後に、医療法人で決算日を決める際の注意点を2つ紹介します。

自院の実情に合わせて考える

決算日を決める上で最も大切なのが、自院の実情に合わせて考えることです。

 

前章で決算日の考え方として2つの例を紹介しましたが、医院によっては他に考慮するべき重要な事項が存在するケースもあります。

たとえば決算日として避けるべきタイミングの例として5月を挙げましたが、すべての医療法人が5月を避けるべきとは限りません。

夏から秋の売上が大きい医院や、7月以外に高額の支出が発生するとわかっている医院の場合、5月は決算期に適している可能性があります。

逆に5月の売上が最も大きい医院や5~7月の業務量が多い医院の場合、5月決算はかえって負担になる恐れがあります。

紹介した考え方は参考程度におさえ、自院の実情を最優先に考える必要があります。

 

また、日本は3月決算の法人が最も多いと紹介しました。

安心感を得るために多くの会社に合わせて3月決算にするのも1つの選択肢です。

公的機関の会計年度が4月から翌年3月であるため、3月決算は何かと都合が良いのも事実といえます。

 

実際のところ決算日を考える基準となる要素は非常に多く、いつにするべきか一概にはいえません。

自院にとって最適なタイミングにしたいと考えるのであれば、専門家である税理士に相談するのが安心です。

必要に応じて決算日の変更を検討・実施する

事業を開始した後も、所定の手続きを行えば決算日の変更が可能です。

自院に合わない決算日と判明したら、一度決めた決算日を無理に維持するのではなく、決算日を変えることも検討するべきでしょう。

医療法人で決算日を変更するために必要な手続きは以下の4点です。

  • ・社員総会における決算日変更の決議
  • ・都道府県への定款変更認可申請
  •  ※医療法人が定款の内容を変更するためには知事の認可が必要です
  • ・定款変更の手続き
  • ・税務署へ異動届の提出

まとめ

個人が運営するクリニックと違い、医療法人は決算日を自由に決められます。

法人税および消費税は決算日の翌日から2ヶ月以内に申告・納付が必要なため、決算日の直後は作業量が多くなります。

また、売上の大きさに合わせて事前に節税対策をできるか否かによって、法人税の計算基礎となる所得額が大きく変わります。

したがって、決算日は季節変動や業務量を考慮した上で決める必要があります。

 

医療法人における決算日の考え方を紹介しましたが、最も優先するべきは自院の実情です。

紹介した考え方はあくまで参考程度に押さえ、自院にとって適切なタイミングを選ぶことを優先しましょう。

決算日を決める上で疑問や悩みがあれば、ぜひ専門家である税理士へご相談ください。


医療法人やクリニックの税務相談・節税対策は
BIZARQにお任せください。
全国オンライン対応・ご相談は無料です。


医療法人やクリニックの
税務相談・節税対策は
BIZARQにお任せください。
全国オンライン対応・
ご相談は無料です。

Picture of 吉岡 伸晃
吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

03-6709-9216【営業時間】9:00~18:00 LINEで問い合わせ