医療法人の定款変更は、一般的な会社よりも必要な手続きが多く時間もかかります。
手続きに不備や漏れがあると定款変更が認められず、後の法人運営に多大な影響を与える恐れがあります。
医療法人がスムーズな定款変更を行うためには、医療法人ならではのポイントを押さえることが大切です。
今回は医療法人の定款変更について、流れや注意事項を紹介します。
なお、財団医療法人の組織・運営に関する根本原則は定款ではなく「寄附行為」と呼びます。
医療法人における定款と寄附行為、変更のために必要な手続きはどちらも同じです。
本記事では簡略化のため、寄附行為もまとめて定款という表現を使っております。
医療法人に関する基本事項は以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
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CONTENTS
医療法人の定款変更に関する基本事項
はじめに、医療法人の定款変更に関する基本事項を紹介します。
医療法人の定款変更には知事の認可が必要
医療法人は一般的な会社と違い、定款の内容を変更するためには知事の認可を受ける必要があります。
医療法人の定款変更における認可の必要性は、医療法第54条の9第3項で定められている内容です。
変更内容が医療法に反する場合、定款の変更が認められないケースもあります。
原則知事の認可が必要ですが、以下の変更事項であれば事前に知事の認可を受ける必要はありません。
- ・事務所の所在地の変更(診療所等の所在地変更は認可が必要)
- ・公告の方法の変更
知事の認可が必要ない変更内容の場合、定款変更後に都道府県へ「定款(寄附行為)変更届」を提出します。
いずれにせよ、医療法人が定款変更を行う際は都道府県に対する何らかの手続きが必要です。
申請時期および必要な期間
基本的に認可の申請時期に関する特別な定めはありません。
随時申請を受け付けているため、定款変更を行いたいタイミングに合わせて手続きを行います。
ただし都道府県によってルールが異なる可能性があるため、事前に都道府県の案内を確認しましょう。
また、定款変更の申請は必ず受理されるわけではなく、申請後に審査が行われます。
審査に要する期間は一概にはいえませんが、ある程度の時間がかかる点に注意が必要です。
東京都保健医療局のホームページには定款等の変更について「仮申請から認可書交付まで3か月程度時間を要する」と記載されています。
また、滋賀県のホームページには「事前審査に要する期間は平均1~2ヶ月程度」と記載があります。
このように、申請してすぐに認可を受けられ定款変更ができるわけではありません。
提出した書類に不備がある場合や審査の混雑状況によってはさらに時間がかかるケースもあります。
医療法人 定款変更の流れ
続いて、医療法人における定款変更の流れについて具体的に解説します。
前述のように事前に知事の認可を受ける必要がなく、定款変更後に「定款(寄附行為)変更届」を提出すれば良いケースもありますが、今回は事前に知事の認可を受ける必要がある場合の定款変更の流れについて解説します。
必要書類を用意して事前審査を受ける
定款変更認可の本申請をする前に、まずは事前審査を受ける必要があります。
必要書類は変更内容によって異なりますが、今回はすべてのケースで共通する必要書類と、ケース別の必要書類を紹介します。
【すべてのケースで共通する必要書類】
- ・定款変更認可申請書
- ・定款新旧対照表
- ・現行の定款および変更後の定款案
- ・定款変更に関する決議が行われた社員総会の議事録の写し
- ※財団医療法人の場合は理事会および評議員会の議事録の写し
- ・医療法人の履歴事項全部証明書、印鑑証明書
【変更内容によっては必要になる書類】
<新たに診療所等を開設する場合>
- ・定款変更後一定期間の事業計画書
- ・定款変更後一定期間の予算書
- ・開設する診療所の診療項目、建物、従業員等の概要を記載した書類
- ・開設する診療所の管理者の氏名を記載した書類
- ・敷地内用がわかる図面
- ・建物の各階平面図
<分院を廃止する場合>
- ・病院等の廃止届の写し
同じ変更内容であっても都道府県によって必要書類が異なるケースがあるため、事前に必ず都道府県の公式サイトで必要書類をご確認ください。
必要書類を用意したら、都道府県の公式サイトに記載されている提出先へ送付をします。
都道府県によっては書類送付の前に担当者への連絡が必要なため、こちらも忘れないようご注意ください。
必要に応じて補正し本申請をする
事前申請の必要書類が都道府県に届き次第、担当者が事前申請の提出書類を確認します。
内容によっては補正を求められるため、指示に従って必要な対応を行いましょう。
補正が完了すれば本申請が可能になるため、申請書類一式を提出します。
申請書類は正本と副本が必要です。
必要部数は都道府県によって異なり、滋賀県は正本・副本1部ずつ、千葉県は正本1部・副本2部と記載されています。
部数が足りなければ手続きにさらなる時間を要してしまうため、提出前に必要部数を必ずご確認ください。
登記事項に関わる場合は法務局で変更登記を行う
本申請の後、内容に問題なければ認可証等が交付されます。
この段階になれば定款変更が可能になるため、必要な手続きを行います。
定款の変更内容が登記事項に関わる場合は、法務局での変更登記が必要です。
認可証等を受け取ってから2週間以内に登記申請を行いましょう。
変更登記の完了後、法務局から交付される登記事項証明書を添付して登記完了届を提出します。
定款の変更箇所が登記に影響しない場合は、法務局での変更登記および都道府県への登記完了届の提出は不要です。
医療法人の定款変更に関する注意点
最後に、医療法人の定款変更に関する注意点を2つ紹介します。
変更事項によって必要書類が大きく異なる
前章でも紹介したように、定款の変更内容によって必要書類が大きく異なります。
変更事項ごとの必要書類を確認しないと、書類の不備や漏れが起きる恐れがあります。
たとえば医療法人の名称変更や会計年度等の変更であれば、必要書類の数は他の変更事項に比べてそれほど多くありません。
一方、新たな診療所を開設する場合、事業計画書・予算書・概要を記載した書類等が必要です。
都道府県によっては、物件の賃貸借契約書や建物図面が求められるケースもあります。
必要書類の不備や漏れがあると、認可を受けるまでにかかる時間が長くなってしまいます。
都道府県のホームページで必要書類について十分に確認しましょう。
必要書類を確実に揃えられるよう、事前に担当者へ確認するのも1つの手段です。
必ず都道府県ごとの案内を確認する
医療法人の定款変更の手続きについて、必ず都道府県ごとの案内をご確認ください。
これまでに紹介したように、医療法人の定款変更について基本的な部分は共通していますが、細かなルールは都道府県によって異なります。
都道府県ごとの違いが生まれやすい部分として、事前申請に要する期間や本申請に必要な書類の部数が挙げられます。
すでに紹介したように、本申請に必要な書類の部数が滋賀県は正本・副本1部ずつ、千葉県は正本1部・副本2部です。
例に挙げた2県と異なる部数を必要とする都道府県も存在します。
別の都道府県の案内を確認してしまうと、申請の不備や漏れが起き認可までに時間がかかる恐れがあります。
全体に共通する基本的なルールではなく、都道府県ごとのルールを確認しましょう。
まとめ
医療法人の定款変更は会社のような法人と違い、事前に知事の認可を受ける必要があります。
すぐに本申請をできるわけではなく、必要書類をそろえた上で事前審査を受ける必要があります。
事前審査には一定の時間がかかるため、早めの準備・対応が必要です。
定款の変更内容によって、事前審査で提出が必要な書類は大きく異なります。
また、同じ変更内容でも都道府県によって異なるルールが設定されているケースもあります。
医療法人が定款変更を行う場合は、必ず都道府県ごとの案内を確認しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士