税務調査とは、事業者が正しく税務申告を行っているか確認するための調査です。
税務調査によって税務申告に漏れや誤りがある場合、追徴課税の対象になります。
税務調査は一般的な会社や個人事業主だけでなく、医療法人も対象です。
税務調査の頻度に明確な定めはなく、税務調査を一度も受けないケースも有りますが、税務調査の対象になった場合に備えた対策は欠かせません。
今回は医療法人の税務調査について、概要や実施される頻度、税務調査に向けた対策などを詳しく解説します。
医療法人にかかる税金については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
医療法人に対して行われる税務調査とは
はじめに、医療法人に対して行われる税務調査の概要を解説します。
税務調査の概要
税務調査とは、税務署が実施する事業者が正しく税務申告を行っているか確認するための調査です。
税務調査によって税務申告に漏れや誤りが発覚した場合、追徴課税の対象になります。
税務調査には、強制調査と任意調査の2種類が存在します。
強制調査は、後に刑事事件の立件を予定している場合、すなわち悪質な脱税行為の可能性が高いと認識されている場合に行われます。事前通達はありません。
任意調査は、納税者の了解に基づき行われる税務調査です。強制調査と違い事前通達されます。
了解に基づき行われる調査とはいえ、正当な理由なく拒否した場合は罰則の対象となります。
税務調査の日数はおおむね2~3日程度です。原則として納税地の住所(事務所やクリニック等)で行われます。
調査対象になるのは直近3~5事業年度分、最長で7年分となります。
税理士との顧問契約を締結している場合、税務調査には顧問税理士が立ち会うのが一般的です。
税務調査では会計・税務に関する深い質問が行われる可能性もあります。そのため税理士の立ち合いなく、すべて事業者本人が対応するのは容易ではありません。
顧問税理士がいない場合は税務調査が決まった段階で税理士を探し、税理士に立ち合いを依頼するのが安心です。
税務調査の頻度
税務調査の頻度に明確な定めはありません。
税務調査を受ける確率は、法人で2~3%程度、個人事業主で1%未満といわれています。
事業を営む期間中、一度も税務調査を受けないケースも有り得ます。
また、「法人成りをすると税務調査が来る」というわけでもありません。
税務調査が来る可能性の高い医療法人の特徴
税務調査の実施頻度に明確な定めはなく、税務調査がいつ行われるか・そもそも本当に実施されるかの正確な判断はできません。
しかし、税務調査が来る可能性が高くなる要素は存在します。
税務調査が来る可能性の高い医療法人の特徴を5つ紹介します。
規模が同程度の医療法人と比較した時に目立つ要素がある
医療法人に限らず、同規模の同業他社と比較した時に目立つ要素がある事業者は、税務調査に来る可能性が高いと考えられます。
目立つ要素の具体例は以下の通りです。
- ・利益率が低い
- ・特定の経費の支出が多い
- ・費用の内訳や割合が他の医療法人の傾向と異なる
業績が急激に伸びている
業績の急激な伸びが発生した時期は、会計・税務処理の誤りが起こりやすいタイミングともいえます。
したがって、税務調査に来る可能性が高くなるといえるでしょう。
特に、業績の伸びは大きいものの利益額に大きな変化はなく、利益率が下がったという場合には注意が必要です。
目立つ動きがみられた
不動産や器具備品等の高額の売買や、多額の還付金の発生等が挙げられます。
特殊な会計処理を必要とする取引は誤りが発生しやすく、過少申告の原因になりやすいため注意しましょう。
長期間税務調査を受けていない
前述したように、税務調査の頻度に明確な定めはありません。
しかし、長期間税務調査を受けていない事業者はそうでない事業者に比べて、税務調査が行われる可能性が高いと考えられるのは事実です。
課税対象売上が1,000万円弱
課税売上高が1,000万円を超えると、翌々事業年度から消費税の課税事業者になります。
そのため、課税売上高が1,000万円を超えないよう調整する事業者は珍しくありません。
課税対象売上が1,000万円弱の場合、売上の調整や隠ぺいの懸念が高くなり、税務調査の対象になる可能性も上がります。
医療法人の税務調査に向けた対策
医療法人の税務調査に向けた対策を3つ紹介します。
日頃から正しい会計処理を行う
税務調査に向けた対策として最も大切なのが、日頃から正しい会計処理を行うことです。
税務調査は事業者が正しく税務申告を行っているか確認するために行われます。
たとえ税務調査が行われたとしても、税務申告の内容が正しければ全く問題ありません。
日々の正しい会計処理とそれに基づく正しい税務申告が、最も効果的な対策といえるでしょう。
しかし、正しい会計処理をしているつもりでも、税務調査によって実は誤りがあったと発覚するケースは珍しくありません。
また、業界・業種によって誤りが起こりやすい取引も存在します。
すべての会計処理を正しく行う前提の上で、特に誤りが起こりやすい・厳しいチェックが行われやすい部分の対策を優先するのが良いでしょう。
医療法人の会計処理において重要性が高く、税務調査での指摘を受けやすい部分の例を紹介します。
保険未収金
保険未収金の計上漏れや計上時期の誤りは指摘を受けやすい部分です。
特に期末の未収金の計上漏れには注意が必要です。
自由診療収入
自由診療収入は金銭直接授受をとるケースが多く、計上漏れや過少計上が起こりやすいです。
そのため、税務調査で非常に重視されます。
窓口収入と給付金のバランス
窓口収入は一部抜き取りが起こりやすい部分です。
しかし、窓口で支払われる患者の自己負担金と保険者が支払う給付金の割合には明確な定めがあります。
窓口収入と給付金のバランスのズレから、一部抜き取り・隠ぺいは確実に発覚します。
薬品材料仕入
薬品材料仕入は、医療法人の費用の中でも特に金額が大きく、架空・水増し・仮装計上等の不正が起こりやすい部分です。
そのため税務調査でも厳重なチェックが行われます。
人件費および外注費
架空の人件費および外注費の有無や、給与とするべき外注費が存在しないか等がチェックされます。
領収書をはじめ書類を適切に保管する
税務調査で指摘を受けるリスクを下げるためには、正しい会計処理だけでなく、書類の適切な保管を行うことも大切です。
書類が保存されていない場合、該当の支出は経費と認められず修正申告が必要になる恐れがあります。
法人の場合、帳簿および帳簿作成に関して作成・受領した書類の保存期間は7年です。
ただし、欠損金や災害損失金額が生じた事業年度の分は10年間保存する必要があります。
税務調査前に過少申告が発覚したらすぐに修正申告をする
税務調査前に過少申告が発覚した場合、すぐに修正申告を行いましょう。
税務調査の事前通知前に修正申告をすれば、過少申告のペナルティの1つである過少申告加算税が発生しないためです。
事前通知を受けた後でも、税務調査までの間に修正申告をすれば税務調査後に修正申告をした場合に比べて税率が5%低くなります。
「税務調査で指摘を受けてから対応する」ではなく、税務調査の前にこれまでの確定申告について確認し、誤りが発覚したらすぐに対応しましょう。
まとめ
税務調査の頻度に明確な定めはないため、いつ調査が入るか正確な判断はできません。
ただし、税務調査が来る可能性の高い医療法人にみられる特徴は存在します。
税務調査が入りやすい医療法人の特徴を有する場合、税務調査を意識するのも良いでしょう。
税務調査に向けた対策として最も大切なのが、日頃から正しい会計処理を行うことです。
帳簿や書類の適切な保存や、過少申告が発覚した際の迅速な対応も大切です。
なお、税務調査の立ち合いや事前の対策を、専門知識のない事業者が全て対応するのは容易ではありません。
税務調査に向けた効果的な対策をするため、税務のプロである税理士へ相談するのが安心です。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士